デュッセルドルフ通信 2005年10月3日
UCI総会
UCI総会。世界中の自転車競技関係者が集まります
UCI総会。世界中の
自転車競技関係者が集まります。
 情熱の国、スペイン・マドリードにやってきました。ロードレースの世界選手権?そう、それも大切なのですが、それに時をあわせてUCIの総会がここで開かれるのです。
 今回の総会ではUCI会長の選挙が行われました。前会長ハイン・フェアブルッゲン氏が会長になって以来14年ぶりに複数の候補が立った選挙でした。つまり、前会長の在任期間中は対立候補なし、全く無風の選挙だったということですね。会長任期は4年です。
 日本の総選挙、私の住んでいるドイツの総選挙と選挙ラッシュのなか、「これは行っておかなくては」と張り切って降り立ったマドリード。私初めて行きましたが、第一印象、一言で言うと「濃い」。
 まず色が濃い。光のせいなのか、民族性で町を彩るのが好きなのか、ものの色が鮮やかに見えるんです。スペイン出身の有名画家たちの絵に色鮮やかなものが多いのは、こういうことなのか・・・と妙に納得したりして。
 次に人が濃い。見た目も性格も。基本的に美男美女が多いですね。特に男性は色男が多く、フェロモン丸出しの人がいっぱいいます。
 これまでの私のスペイン男性のイメージ・・・
 1 髪の毛がテカってる。オールバック
  白いシャツをこれでもかというぐらい前をはだけて着る
 3 ひげともみあげがつながっている
 4 大きな瞳に濃い眉毛
 5 ギターを持っている(なんでやねん!)
 ギターは持っていなかったけど私のイメージはほとんど修正する必要がなさそうです。たぶん、芸能人じゃないんだけど、エンリケ・イグレシアス・・・・(んー、年輩の方々のためにお父さんの方も言っとくかな)フリオ・イグレシアスみたいな人がたくさんいます。こういう魅惑系の人が好きな女性は是非マドリードに!目の保養になること請け合いです。
 濃いのは性格も。明るいし、話し好きだし、リアクションが大きいし、世話焼きだし、男も女もみんな関西のおばちゃんみたいです(ほめて言ってますよ)。
 私が乗ったタクシーの運転手のおじさんなんか乗ってから降りるまでスペイン語でしゃべり続けですよ。私がスペイン語がわからないことなど、どーでもいいんです。たぶん。まぁ、ジェスチャーで、なんとなくわかるんですけど・・・「おいおい、ハ、ハンドル持って・・」みたいな。
 しかし、ヨーロッパの大都市でこれぐらい英語が通じないトコも珍しいですよ。(スペインに来たわけなので、私がスペイン語を勉強してくるべきなんですが・・・)
 ロードレースのコースを確認しようと思って、地図を買おうとしたんですが、
私: 「map? マドリード?」
売店の太ったおじさん: 「ハァ?」
私: (ごそごそと電子辞書を取り出し、『おぉっ、マッパというのか・・・真っ裸みたいで覚えやすいな』)「マ、マッパ?」
おじさん: 「オー、マッパ!シィ、シィ(はいはい)」
私: 「ポルファボール(ください)、クアントクエスタ?(いくら?)」
おじさん: 「シンコユーロ」
私: 「へ?シ、シンコ??」
おじさん: (指で5を作りながら)「シンコ、シンコ、シンコ!」(そんなに連呼しないで。なんか恥ずかしいから)
 こんな具合です。マッパにシンコ、おじさんのおかげでもう忘れません。
一番左、スクリーンの脇にいるのがマックェイド氏、小さくてわかりせんよね。
一番左、スクリーンの脇にいるのが
マックェイド氏。
小さくてわかりませんよね。
 さて、大脱線してしまいました。こんな濃~いマドリードで行われたUCI会長選挙の話でしたね。候補者は会長フェアブルッゲン氏の秘蔵っ子、UCIロード委員会委員長、パトリック・マックェイド氏、それからスペインレースオーガナイザー協会会長、グレゴリオ・モレノ氏、そして前アジア自転車競技連盟会長、ダルジャン・シン氏の3人でした。
 結果は、大本命パトリック・マックェイド氏が大差で勝利しました。
 では、ここで今後の世界の自転車競技の方向性を決めるともいえるマックェイドマニフェスト!行ってみましょう!
○大陸連盟について
UCIの大陸大会をプロモートするため大陸連盟とのコミュニケーションを強化します
大陸選手権やその他の地域大会を開催するため、アドバイスを行い、サポートをします

○各国連盟について
連盟のプロフェッショナル化のため的確なアドバイスができるよう、各国連盟のニーズに気を配ります
UCIがイニシアチブをとって進める計画が各国連盟の利益につながるよう努めます

○ロードについて
大陸カレンダー(大陸における大会スケジュール)を5つの大陸連盟と協力して充実させていきます
草の根から超ハイレベルまでの連続した競技人口構造が構築できるよう努力します
UCIプロツアーを、そのすばらしさが十分達成できるよう、さらなる改善に取り組みます

○トラックについて
トラック競技の世界における現況についてより詳細な評価を実施します。これによりそれぞれの大陸によって異なった構造を明らかにし、それぞれにあった普及戦略を作ります
ジュニア、女子のカテゴリーにおいて、特に大陸選手権、世界選手権での国際化を目指します

○BMXについて
BMXの施設を展開しようとする車連に対して、特にコースに関してアドバイスと援助を行います
UCIスーパークロスワールドカップを新しい大陸に広げていきます
BMXの展開戦略を継続し、オリンピックへの導入の準備をします

○MTBについて
MTBワールドカップをより質の高いものにします
MTBの競技人口を増やすイベントとして「マウンテンバイクマラソン」を新設します

○WCC(ワールドサイクリングセンター)について
WCC傘下の大陸センター、各国センターのネットワーク強化に努めます
各国車連のコーチや技術指導員に対するトレーニングや教育プログラムを企画します

○アンチドーピングについて
ドーピングに対する戦いを続けます
WADA(世界アンチドーピング機構)や各国のアンチドーピングの組織との関係維持に最大限の努力をします
UCIのルールはWADAの規定の延長上にあることを確認します

○国際組織とのコンタクトについて
IOCや他の国際連盟との良好な関係を続けていきます
各国政府やトップレベルの組織のなかでUCIの代表としての役割を果たします
 多少、端折らせていただいた部分もありますが、こんな感じです。マックェイド氏はレースのプロモーターとしてのキャリアを持った人ですから、大会によって自転車競技を普及させようという色が良く出ていると思います。
 この人の政策の目玉は、やはり今年から実施されたUCIプロツアーでしょう。自転車競技を普及させるにはやはり選手がキーであり、優秀な選手がなるべく多くの大会に出ることが人気アップにつながるという確固たる信念の下、選手の継続的なレースへの参加を強制化するシステムになっています。
 見る側にとっては大変喜ばしいことであると同時に、選手や派遣するチームにとっては大きな負担が強いられました。彼はロードに限らず、同じようなことを他の種目でも考えているようです。もし、同じような思想がトラックでも用いられたとすれば、競輪選手を中心にして、日本の競輪の合間を縫って世界の大会に出場しているJAPANチームは苦労することが予想されます。
 とはいうものの、マックェイド氏への批判が中心だった他の候補のキャンペーンに比べると、非常に理論的で、自転車競技の普及について世界規模で考えている人物だということがわかります。今後、自転車競技がヨーロッパだけでなく、世界中でどれぐらい人気がでるか、お手並み拝見ですね。
ゴール直前のトム・ボーネン(手前一番右)。この時点ではまだ先頭ではありません。
ゴール直前のトム・ボーネン(手前一番右)。
この時点ではまだ先頭ではありません。
 さて、おまけみたいになってしまいますが、ロードレース世界選手権のお話です。男子エリートはベルギーのトム・ボーネンが優勝。先頭集団が20人以上ひしめくなか、最後のちょい差しでアルカンシェル(世界選優勝者に与えられる虹色のジャージー)獲っちゃいました。このひと、スプリント勝負ほんとに強いですね。きっとトラックでも、ポイントレースなんかやらせたらすごく強いと思います。
ナショナルチーム高橋松吉監督
ナショナルチーム高橋松吉監督
 日本チームは福島晋一選手が125位、飯島誠選手が135位でした。順位は上位ではないけれど、完走は立派です。その前日に行われた女子では、沖美穂選手が60位、唐見実世子選手が、押し合いに巻き込まれ、もらい落車してしまったのにもかかわらず、気をとりなおして106位と頑張りました。
ロードレースゴール付近。後ろに見えるのは、サッカー、レアルマドリードの本拠地サンチァゴスタジアム
ロードレースゴール付近。後ろに見えるのは、
サッカー、レアルマドリードの
本拠地サンチァゴスタジアム
 その他の結果は、自転車雑誌に譲るとして、全体的にロードも少しずつ成績があがっているように思えますので、日本自転車競技全体がこの調子で盛り上がるといいですね。
 でも、この世界選ロードのスタートとゴール、「カスティリャーナ通り」というマドリードでも有数の大通りにあって、この通りの交通をレースやっているあいだ朝から晩まで止めちゃうんですから、ヨーロッパってすごいですね。日本だと銀座でレースやってるようなもんですから。
 この文化に育った選手たちと戦うのだから、日本選手も大変です。頑張らなくてはいけませんね。
 さあ、次回の予告です。来る10月、オランダ・アムステルダムでついにケイリン種目が6日間レース(ヨーロッパ各地で行われる、人気のトラック興行レース)に採用されます。
 日本でもおなじみ「テオ様」ことテオ・ボス選手やレネ・ウォルフ選手などが登場。この模様をお伝えする予定です。ついにトラックレースもシーズンに突入!お楽しみに。
 では、次回までアディオス、アミーゴ!!
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