デュッセルドルフ通信 2005年12月16日
日本代表にヤンチャな先輩が激励?

激走する渡邉晴智
  お寒うございます!
皆さんご無沙汰してしまいました。1ヶ月ぶりですね。
さて、早速ですがワールドカップ第2戦マンチェスター大会のお話から。
今回の舞台マンチェスターは私にとってはドイツ・デュッセルドルフから飛行機の直行便でおよそ1時間半。なんか国内出張のような感覚で行けちゃうところです。でも、デュッセル-マンチェスター便なんてあんまり需要がないんでしょうね。「豆」みたいな飛行機でした。一応ジェット機なんですけど、定員60人ぐらいで、なんかバスみたいな雰囲気。ちょっと間違うと「お客さん、満席なんで“立ち”になります。そこ吊り輪ついてますんで揺れたらつかまってください」なんて言われちゃいそうな感じです。
 ところで今回、レンタカーを「ベンツ」にしました「ベンツ」!なぜかって?ドイツに来てから、ずっと「左ハンドル右側通行」ばっかり乗ってるんですよ。突然「右ハン、左側通行」なんて走ったらなんか事故りそうじゃないですか。しかも、イギリス人は「車はドイツ人が良いエンジンを作り、イタリア人はすばらしいスタイルを作った。そしてフランス人が心地のよい内装を作り、最後にイギリス人がそれを競争させた」という笑い話があるくらいレース好きな民族ですよ。そんな国でチッコイ車に乗ってたら「確実にケガする」と思って・・・「多少お金がかかっても、ここで死んだらイカン」と小心者ぶりを発揮し、ちょっと強そうな車にしました。といってもCクラスの180。「レンタカーなんだからもっとドーンと行かんかい!」って話もありますが、ここが小市民の微妙な頑張りって感じでしょ?レンタカー屋に行って出てきたメタリックブルーのベンツに乗り込み「ひょえ~、カッコエェ~。メルセデス、フォーッッッ!」と有頂天で独り言を言いながら、競技場への路を走りました。
世界でも指折りの高速バンク。外観も美しい
世界でも指折りの高速バンク。
外観も美しい
 マンチェスターベロドローム・ナショナルサイクリングセンターは、ブリティッシュサイクリングチームの総本山。クリス・ホイやクレイグ・マクリーンといった選手たちが練習に汗を流すバンクです。フィットネススタジオ、テニスコートなどスポーツ施設いっぱいのスポーツシティという場所にあり、近くにサッカー場もありますが、「マンチェスターユナイテッド」のホームとは別の場所です。サッカーといえば、中田選手の「ボルトン」も車で30分ぐらいの場所ですね。
ケイリンイベントはどこを見てもスター揃い
ケイリンイベントは
どこを見てもスター揃い
 さあ、今回はワールドカップの他に世界中のケイリンスペシャリストを集めて行う「インターナショナルケイリンイベント」もあり、面白さ倍増でした。両方合わせて、結果については是非「KEIRIN LAND」の大会レポートをチェックしてくださいネ。インターナショナルケイリンイベントは、UCIが選りすぐりの選手を集めただけあってすごいメンツです。出走直前にくじ引きで出走が決まるため「頼む!日本人選手、比較的軽い組に入ってくれ!」と願うのですが、サッカーのワールドカップどころではなく、どこに入っても「死のグループ間違いなし」状態です。
 日本人選手を入れて全部で21人しか走れないので、当然、選に漏れる選手が出てくるわけで、ある外国チームのヘッドコーチなどは、私のところに来て「なんでウチの選手が1人も走れないんだ!イギリス人4人も入れやがって、おかしいだろ!お前なにも言わなかったのか?」と不満を述べていく始末。確かにイギリス人が4人入っているけど、これはホームゲームだから、盛り上げたいというUCIの配慮もわかるし・・・「お前、何も言わなかったのか?」って言ったって、私、何も聞かれてませんし、第一、選考を変える力なんて私にはありません。とんでもない八つ当たりにあってしまいました。
日本チーム集合
日本チーム集合
 しかし、「よくこれだけ揃いましたね」っていうぐらい豪華メンバーで、日本の競輪選手にとっても厳しい戦いになることは、容易に想像できました。詳しい結果については「KEIRIN LAND」に譲るとして、今回の日本チームのピットはいつものワールドカップとは少し雰囲気が違いました。部活でスポーツやってた人にはスグ理解できると思うんですけど、「卒業した何代か前の強くてヤンチャな先輩たちが久しぶりに練習を見に来たとき」みたいな感じです。ヤンチャな先輩って?もちろんケイリンイベントのためやって来た、稲村・渡邉・金子・荒井の4選手。金子選手は現在もナショナルチームのメンバーなんですが、やっぱり4人揃うと後輩たちも緊張しますよね。競走中も容赦なくゲキが飛ぶ反面、負けて帰ってきたときの「お疲れさん」という言葉と次へのアドバイス。厳しくてやさしい典型的な運動部の先輩の姿がそこにありました。得てしてそういう先輩ってワルが多いんですけど、今回の4人がワルかどうかはここでは伏せておきます(笑)
 今回のケイリンイベントは稲村成浩選手の11位が最高でした。あんまり、言い訳はしたくないですけど(本人たちは何も言い訳しないですよ。あくまで僕の言い訳です)4人が4人とも日本で全日本選抜競輪を走って、その足で成田からマンチェスターに来ての試合ですから選手にとってもまず日程的に厳しかったと言わざるを得ません。熾烈な戦いになるのは仕方がないので、次回は日程だけでもなんとかしたいですね。「選手決める権利もない人間がましてや日程を決める権限なんてあるわけないだろ!」うっ!鋭い。う~ん。どーしよーっかな~。と・・・とりあえず祈ってみます。(望み薄っ!)
探求意欲旺盛、成田和也
探求意欲旺盛、成田和也
 一方、ワールドカップ組で今回、私が感心したのは成田選手。「自分が出ない試合でも、せっかく来たのだから、なるべくいろんなものを見て吸収しよう」という気持ちがこちらにも伝わってきました。私のところへ来て「ルソー(フランス、ヘッドコーチ)に練習のこと聞きたいんですけど、聞いてもらえますか?」なんて言うし・・・内心「エッ?ルソー?フランス人やんけ。フランス語なんて片言しか・・・」と思いつつも「成田選手の情熱に一肌ぬがにゃあイカン」と思い、ドキドキで「ボンジュール」なんて話しかけ、後は英語に切り替えるという情けない作戦でアプローチ。でもさすが世界の一流コーチ。英語も理解してくれ、親切に教えてくれました。最後は「メルシー!」なんて成田選手も言ってました。
「今度、テオ・ボスいいっすか?」と成田選手の探求はとどまるところを知らず、とても頼もしく思ってしまった私でした。そして、最後にポツリ「みんな、あんまり僕と違う練習してるわけじゃないですね」って、「エェッ?でも、ギヤ倍とかウェイトのフルスクワットのやり方とか、少しは参考になったよね?ね?ね?」と、なんとか自分が役に立ったと思いたい私。
 まぁ、今回のフロリアン・ルソーやテオのアドバイスが練習に役立つかどうかは別として、「強い人からなにか盗んでやろう」こういう気持ちを持ちつづければ、きっと強くなれるのではないかと思いました。でも、今後中国人で強い選手とか出てきたら、私ピンチです。そのときは漢字で筆談ですね。「我欲教練習方法???」いや、日本チームのためになることなら、私も頑張ります!成田選手、中国人でも宇宙人でもドンと来い!
真ん中はレビー・マキシミリアン、おそるべき19歳
真ん中はレビー・マキシミリアン、
おそるべき19歳
 さて、日本人選手以外に目を移しましょう。前に一度紹介したドイツのレビー・マキシミリアン。ついに出てきました。初参戦でいきなりケイリン金メダル。鮮烈デビューです。彼のそばにはいつもパパがいて、自分の息子のマネージャーになってます。なんかちょっと「チチロー」みたいですけど、気さくないいパパです。パパに許可を得てケイリンの表彰台から降りてきたところで、ちょっとだけ話を聞くことができました。
ケイリンイベントポスター。両サイドのカタカナが意味不明
ケイリンイベントポスター。
両サイドのカタカナが意味不明
私「はじめてのワールドカップで優勝おめでとう。気分はどう?」
マックス「最高!」
私「正直どう?」
マックス「びっくりした。みんな強いし自信はそんなになかったんだ」
私「ジュニアでもケイリンはそんなにたくさん走っていたわけじゃなかったよね?」
マックス「うん、ワールドカップのケイリンは1国1人でしょ?今回、僕は出る予定じゃなかったんだ。それが急に出られることになって・・・初めてだし、失うものは何もないから思い切って行けたのがよかったみたい」
私「ドイツにはイェンス(フィードラー)とかレネ(ウォルフ)とか昔からすごくケイリンが強いんだけど、君も先輩たちに続くんだね」
マックス「是非そうなりたいなぁ」
私「日本で国際ケイリンってやってるの知ってる?」
マックス「もちろん。チャンスがあれば行きたいし目標のひとつだよ」
私「今、一番力を入れている種目は何?」
マックス「やっぱり、スプリントかな」
私「明日はそのスプリントだね。頑張ってね」
マックス「どうもありがとう」

結局スプリントでは優勝したテオ・ボスに1/4決勝で敗れ5位でしたが、それでもあのテオ・ボスから1本取っての敗退ですから、上出来といっていいデビューでした。これから、ますます目が離せない選手です。

BMC。シートポストの根元にすき間があるのわかります?
チームスプリントは残念な結果に
 さて、ここで大ニュース!以前のデュッセル通信で取り上げた「6日間レース」ですが2006年の皮切り、1月5日からはじまるロッテルダムの大会に日本の北津留翼選手が招待されることになりました!ジュニア時代「世界選手権2冠」の栄光を引っさげて、テオやテアン、レネといったスター相手に競輪S級に特進したばかりのルーキーがどのように立ち向かうのか!今からドキドキです!この様子はデュッセル通信でまたじっくりとお伝えしますのでお楽しみに!
BMC。シートポストの根元にすき間があるのわかります?
イギリスチームチームカー
 今年1年、私の気ままなコラムにおつきあいくださり、ありがとうございました。来年も日本人選手の活躍を中心に楽しくて新しいヨーロッパの自転車情報をドンドンお届けするため頑張りますので、是非ご覧になってください!
あ、そういえば、明日「マキシミリアン」って店で忘年会だった。危ない。すっぽかすところマックスのおかげで思い出した!

それでは皆様も良いお年を!

写真提供:Mitch Friedman
http://www.mitchophoto.com

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