デュッセルドルフ通信 2006年3月13日
特派員が効果的な新練習法発見?
 皆さん!お元気ですか?トラック競技のシーズンももう大詰めですね。
 日本はもう花粉がバシバシ飛んでるって噂で、花粉症の人にはあまりありがたい話じゃありませんが、春が来たって証拠ですね。私の住んでいるドイツも2月の後半はカーニバルの季節でした。ドイツ人は普段まじめなくせにカーニバルの時期はえらいハメをはずします。私、はじめてドイツの冬を過ごしたわけですが、あの暗くて寒い冬が終わると思うと、おバカなことをしたくなる気持ちはわからないでもないです。2月のカーニバルの時期の木曜日は、老女のカーニバルと言って女性が男性のネクタイを切っていい日なんです。どうやら、ネクタイは男性の権威の象徴とみなされているらしく、「そんなモンちょん切っちゃえ!」って話らしいです。とはいうものの、「まさか見ず知らずの人のネクタイなんか切ったりしないだろう」とナメていたのですが、アフロヘアーのかつらをかぶり、ハサミを持ったおばさんがニヤニヤしながら街を歩いていたのを見たときは背筋が凍りましたね。日本だったらほぼ変質者です。速攻、トイレに行ってネクタイはずしました。でも、あたりを見回すとカラーテープをネクタイにしているおじさんや、切り取り線のついたネクタイをしている若者などもいて、「なるほど、切られるのを楽しむって手もあるのか・・・」と納得したりして・・・
港の美しさは世界一といわれるシドニーベイサイド
港の美しさは世界一といわれる
シドニーベイサイド
 また、このシーズンは仮装が目立ちます。企業もこの時期はそういうかっこうで出社してもいいところもあるみたいで、銀行の窓口のカワイイおねぇさんがネコのコスチュームを着てたりして、ちょっと“萌え~”となったりします・・・っていうか、あの、そういうのが特にスキってわけじゃなくて・・・ふだんまじめそうな人が・・・ちっ、ちがう、そんなんじゃなくて、個人的には看護婦さんが・・・あのー・・・
どんどんハマりそうなので、先に行きます。とにかく、そんな馬鹿騒ぎのなか、ネクタイカットにあうこともなくワールドカップ最終戦が行われるシドニーに向かうことができました。
やっぱ夏、ですよ。太陽最高!
やっぱ夏、ですよ。太陽最高!
 ついたシドニーは夏。
世界選手権の出場権利を賭けた最後の戦いの地にふさわしいギラギラの太陽がありました。シドニーの美しい港をみながら、「ファインディングニモのお父さんマーリンは、P.シャーマンを追ってここまで来たんだなぁ」などと、しょーもないことを考えるのもつかの間、決戦の場となるダンク・グレイベロドロームに着きました。ここは市の中心部からそれほど遠くない、緑に囲まれた美しい競技場です。
盛選手。中長距離もますます有望だ
盛選手。中長距離もますます有望だ
 さあ、いつものとおり結果詳細は大会レポートをごらんいただくとして、今回のワールドカップ、特筆すべきはまず、愛三工業、盛一大(もりかずひろ)選手のポイントレース銀メダルでしょう。前回LA大会に引き続いてのエンデュランス種目でのメダル獲得は、短距離中心だった日本自転車競技が中長距離でも層を厚くしていることを裏付けています。また、前回スクラッチで銅メダルだった西谷選手にも共通していえることですが、勝負度胸があるんですね。これまでの実績があまりないため、挑戦のつもりで思い切っていけるという部分もあるかもしれませんが、世界大会初参戦にして積極的に自分でレースを作ろうとする姿は、他国の選手から見ても「えっ?日本の選手が?」と新鮮に映ったはずです。これからが本当に楽しみになりました。頑張ってほしいですね。
スター揃いの表彰台。彼らと肩をならべるなんてうれしいぞ!日本!
スター揃いの表彰台。彼らと肩をならべるなんてうれしいぞ!日本!
 そして、もうひとつは、今シーズン心のどこかで、ずっと待っていた気がします。チームスプリントでのメダル。選手の粒が揃っていないと勝てないこの種目。やはり、日本の得意種目といわなくてはなりません。バランスよくそれぞれの脚質の選手が揃っているということはとても大切なことで、例えば今回の中国などは、1kmTTですごいタイムを出す選手がいても、トータルになるとやはり上までは上って来れないということになります。
一方、今回のフランスやオランダなどのように3人とも超S級というチームには粒ぞろいでも勝てないという現実を突きつけられます。しかし、今回3位となり銅メダルを獲得したこと、さらに見てください。この表彰台のメンバーを。このメンツと肩をならべて表彰台なんて、うれしいじゃありませんか。サッカーでいうと、「ロナウジーニョとファンニステルローイ、アンリ、ベッカム、若手もアドリアーノ、メッシがいまーす」みたいな表彰台ですよ。今回の日本の3人は当然、国際大会でもS級なわけですが、今後は“超”をつけるためにどうするかです。
みんないい顔してます。渡邉選手!そのカズスマイルをケイリンでも見せてくれ!
みんないい顔してます。渡邉選手!そのカズスマイルをケイリンでも見せてくれ!
 「日の丸も悪くないけど、やっぱり加えて君が代が聞きたい」「回り道しないで、最短距離で仕上げます」
金子選手や渡邉選手のコメントにも、今に甘んじることなく「ウチら、もっと上を狙うぞ」という気持ちがにじみ出ています。モスクワ大会で金子選手が銅メダルをとって以来、スプリント系種目にはメダルがありませんでしたから、本当にこれからを楽しみにさせてくれました。世界選手権のケイリン種目ですが、最後までヒヤヒヤしました。しかし、どうやら世界選手権に出場できる雰囲気です。まだ、正式発表はありませんがたぶん大丈夫でしょう。他の種目ならともかく、ケイリンで出られるかどうかハラハラするのは、イヤですね。現地に来ていた日本のテレビクルーのカメラマンで、「ケイリン、世界選手権でられないかもしれない」と聞いてショックのあまり、食事がのどを通らなくなった人がいます。来シーズンは渡邉選手あたりに早めに表彰台に上がってもらって早く安心したいですね。
前がボジェ、後ろがトゥルナン。ふたりとも心境は複雑?
前がボジェ、後ろがトゥルナン。
ふたりとも心境は複雑?
 さて、出てきて以来、私がなにかと追いかけまわしているフランスのボジェですが、今回、私はある光景を目にしてちょっと切ない気持ちになりました。フランスチームは、今大会ボジェ、トゥルナン、ペルビスという、現ヘッドコーチ、フロリアン・ルソーの直系の選手たちで固めてきました。ボジェが急速に力を伸ばしているのは、皆さんご存知のとおりですが、スプリント準決勝はトゥルナンとボジェの戦いとなり、トゥルナンはボジェにあっさりと2本連敗で下されてしまったのです。その負け方も、1本目に負けたので2本目は違う展開に持っていったにもかかわらず「そうしたいならどうぞ」という感じで押し切られ、「どうやっても勝てない」という印象が残りました。スポーツの常ではありますが「世代交代」という言葉が私の脳裏にはっきりと映し出された瞬間でした。
フランス対決。ボジェ強し!
フランス対決。ボジェ強し!
 前回のコラムにも書きましたが、皮肉にもボジェがトラックのスプリント種目を目指すきっかけとなったのは当時無敵を誇ったトゥルナンのアドバイスだったのですから、トゥルナンの心中は察するに余りあります。下を向き、落胆の表情でローラーを踏むトゥルナン。そして、敗れたトゥルナンを気遣うルソー。ルソーもかつて無敗を誇り、年齢とともに力の落ちていく自分と必死に戦ってきた選手でした。王者が落ちていく苦しさを知っている彼はトゥルナンを励まさずにはいられなかったのかも知れません。
最近、表彰台のトリコロール率がまた増えてきた
最近、表彰台のトリコロール率が
また増えてきた
 トゥルナンに笑顔が戻ったのは、3-4位決定戦で、マレーシアのジョサイア・ヌグを下し、ウィニングランをしたときでした。そのときの場内のお客さんの拍手がひときわ大きかったのは、「まだまだトゥルナンに頑張って欲しい」という期待の現われに違いありません。王者の貫禄は表彰台のまんなかでなくても、しっかりと輝いていました。
が・・・・その後のことです・・・
私のいた場所とフランスのピットは非常に近い場所にあり、通路を隔てた向かいだったわけですが、通路を通るロシアチームのナイスバディマネージャーを思わず目で追っていると、同じ視線の動きをしているトゥルナンと目があいました。
トゥルナンはこっちに向かって「イイネ、イイネ、アレ!」って表情!「ニヤニヤしちゃって!おい!おまえ!そーゆーことだからボジェにやられるんだよ!邪念を捨てろ、邪念を!ったくー。さっきセンチメンタルな気持ちになったの、損しちゃったよ!返せ~」と、自分のことを棚にあげ、憤る私。
競技場の外周は自転車周回コース。あったかいし、アップにも最適
競技場の外周は自転車周回コース。
あったかいし、アップにも最適
 世界選手権は、もうすぐ。美人さんのバイク誘導かなんかで、おしりを追いかけて練習したら、再び最強のトゥルナンが帰ってくるかも?日本チームももっとモチベーションがあがる練習、考えますか・・・失礼、不謹慎でした。

 世界選手権は4月13日~16日、フランス・ボルドーにて。今シーズン、最高の激闘が見られるはずです。
Don't miss it !!!!

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