デュッセルドルフ通信 2006年8月18日
2年後、6年後がこわい。
ジュニアのレベルは着実に上がっている
日本はやっと梅雨明けしたと思ったら、台風が次々と来て、すぐにでも秋が来てしまいそうですね。「今年は太陽ギラギラの夏があまり楽しめなかったヨ~」と、がっかりの人も多いのでは?最近やってきた台風10号は「ウーコン」って名前ですって?台風も最近はアメリカとアジアの国々が順番に命名しているみたいですね。いろんな国の言葉で名前がつくから面白いですよね。ウーコンはどこの国が命名したんでしょう?不思議な雰囲気が漂いますねぇ。次の台風が雨台風だったら「シーコン」にして欲しいですね。風がすごい台風なら「ナラオ」あたりが妥当です・・・と、のっけからくだらない話ですみません。で・・・でも、もう一コだけ言わせて!お願い!双子の台風だったら「ジテンシャ」で。台風委員会(本当にあるみたいです)の日本代表様、ご検討願います。でもって、斜行したり蛇行したりする台風なら「シッカク」とか・・・(おーい、山田くーん、この人放り出して!)

エディ・メルクスサイクリングセンター、外観も非常に美しい
  さて、今年もジュニアの世界選手権トラック競技大会に行ってきました。場所はベルギーのゲントという都市。ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアをはじめ数々のタイトルを手中にしてきたベルギーの英雄、エディ・メルクスの名前を冠したエディ・メルクスサイクリングセンターが会場。250mの木製インドアトラックで、テニス、陸上、体操、サッカーなど様々なスポーツ施設および宿泊施設が同じ敷地にある国営のスポーツセンターです。

私の住んでいるデュッセルドルフからゲントまでは車で3時間くらいなので、レンタカーで行くことにしましたが、予約した時間にレンタカーが用意できていない。私の予約時間は10時。なんでも9時半に返すはずの人がまだ返しに来ないのだそう。「えぇ?そんな余裕のないスケジュール組んでるの?“昼の1時過ぎには行きます”と日本チームには言ってあるのに、間に合わねーぞ!」イライラする私にレンタカー会社の女性がのたもうた言葉は”It can’t be helped. That’s not my fault(しょうがないじゃない。私の責任じゃないわよ)”
これを聞いて私は完全にキレました。「おい!今、なんて言った?じゃあ、オレの責任かよ!予約ってなんのためだ?あぁ??レンタカーのブルース、車を借りる時の話やけど、予約した時間にレンタカーがあるかないかは・・・自由じゃないんだぁぁぁ!予約時間イズノットふりーだーぁぁむっ!!!お前じゃ話になんねぇマネージャー呼んでこーい!!!」
鬼の形相でわめく私にさすがに「これはヤベー。日本人だと思ってナメてたら、ちょっと筋が悪そうだゾ」と思ったのか「ごめんなさい。今呼んで来ますから」と引っ込み、中からスーツを着たちょっと偉そうなヒゲのおじさんが出てきました。「本当に申し訳ありません。今、前の借主と連絡をとったところ、あと30分で戻るそうですので、どこかでコーヒーでも飲んでいてください。お店の領収書はお持ちになってくださいね。こちらで払わせていただきますから」「(フン、ちったぁ話がわかるやつがでてきたな)あっそう。でも本当に時間がないので、戻ったらスグ出られるようにしといてください」ということで、近くのコーヒーショップで30分時間をつぶしました。「(あのオッサン、コーヒーって言ったけど、どうせ向こう持ちだし一番高いの頼んじゃお!)ラテ・マキアートひとつください(セコい!セコすぎる)。それから領収書ね」こうして、30分後、領収書を渡し、さらに1クラス下の料金で借りられるというディスカウントも受け、遅れを取り戻すべく、高速道路を時速200キロでベルギーへ向かったのでした(ドイツの高速は速度無制限ね)。


日本人選手も厳しい条件下で頑張ったが・・・
  今回は34カ国から男女263人の若い才能が集いました。日本からも短距離、中長距離あわせて6人の選手が出場。6人のうち3人は競輪選手2世。ロスの超特急と言われたオリンピック銅メダリスト坂本勉選手の息子、貴史君もいました。結果としてはヨーロッパで活躍するロード選手を目指す伊藤雅和君のポイントレース6位が最高位でしたが、高校生で板張りの短走路をほとんど走ったことのない選手達だったのに、毎日走っているヨーロッパ選手を相手に健闘したとは思います。ですが将来的には、やはり日本にも国際スタンダードである250mの板張りバンクが欲しいところですね。

ジュニアの大会はスクラッチなどの種目では、結構落車も多い
  全体的に見ると既にエリートカテゴリーで活躍しているマキシミリアン・レビーやケビン・シローをはじめて見た昨年の大会と較べると「やや小粒かな」という印象はありました。しかし、小粒といっても前年と較べて小粒ということであって、一方で粒の揃い方は整ってきている気がします。つまり、全体のレベルが上がってきているということです。また南アフリカやキューバといった自転車ではあまり耳慣れない国が出てきて、それなりの成績を残しはじめていることも変化と言えるでしょう。
こんななか、間違いなく目立っていた選手がいます。名前はジェイソン・ケニー。イギリスはマンチェスターに近いボルトン出身の顔はまだあどけない18歳。ケイリンはすべて1着で優勝。スプリントも200mTTは10”378で1位。その後は全く星を落とすことなく最短コースで優勝。チームスプリントもあわせると実に三冠!2012年のロンドンオリンピックに向けてイギリスにとってはいい素材がでてきました。

ジェイソン・ケニー。どこにでもいる人のよさそうな少年に見えるが、実力は証明済み
  大会を通して彼の走りを見ているとジュニアなので当然かも知れませんが、ワザのある走りをするというよりはタテの脚を豪快に爆発させて問答無用に勝ちに行くタイプです。特徴的なのは、道中の駆け引きにあまりこだわらないことです。直前にアテネで行われたヨーロッパ選手権でも同じ種目で三冠を獲りノリにノッていたこともあり余裕もあったのでしょう。ケイリンでも積極的に前を取りにいくほうでもありません。スプリントでも相手がペースを落とせばあっさりと前に出るし、先行していて相手が前に行こうとするのにも抵抗する雰囲気でもないんです。そのかわり、一度踏み出し始めるとそのあと流すようなことはありません。「油断さえしなければ終盤でなんとかなる」という自信が彼を冷静にさせているようです。道中の力の抜けた走りと、かかってからの豪快なダッシュのメリハリが彼の持ち味のようです。

家族や友人がたくさん応援に駆けつけるのもジュニアの大会の特徴
ジェイソン・ケニーの大活躍を別にしても今回はやけにユニオンジャックの目立つ大会でした。イギリス本国でなくても、オーストラリア、ニュージーランドなど揚がる国旗にユニオンジャックの使われているものの多いこと。「あれ?これコモンウェルスゲーム(英連邦加盟国が参加し行われるスポーツの祭典。英連邦のなかではオリンピックに負けないくらい人気のある大会)だっけ?」と勘違いしそうなくらい。女王陛下もさぞお喜びのことでしょう。

今回、ジャパンジュニアチームが使用したブリヂストンアンカーのバイク
ところで前述したヨーロッパ選手権ではジェイソンの3つの金メダルに加えてブリティッシュサイクリングチームはU23でさらに3つの金メダルを獲得しています。エリートのカテゴリーでも、まだまだ強いイギリスですがクレイグ・マクリーン36歳、ジェイミー・スタッフ33歳、クリス・ホイ30歳。ロス・エドガー、マシュー・クランプトンなど期待の若手はいるものの、黄金30代トリオの後の世代が少し手薄な気がしていたイギリスでした。しかし、バックグラウンドでは着々と若手育成計画が進んでいるようです。「タレントチームプロジェクト」という若い才能発掘および育成プログラムが数年前から始動していて、ジェイソン・ケニーもこのプログラムの産物だということです。また、最近はドイツからスプリント種目で実績があり、日本の国際競輪にも参加したことのあるヤン・ファンアイデンをアドバイサリースタッフに迎えトレーニングをしているとのこと。数年先を見据えた戦いは既に始まっています。

さて、トラック競技の大会は夜10時過ぎまで続くことはザラですが、最後まで競技を見てホテルに戻ったある日のこと、私の部屋のカードキーがなぜか使えなくなりました。フロントに言うと新しいキーをくれたのですが、それも使えない。ホテルのスタッフがマスターキーを持って来てカチャカチャやっても、ドアはだんまりを決め込んだままです。

「こりゃ無理ですね。今、技術者を呼びますが、家に帰ってしまっているので、1時間近くかかると思います。どうぞ、そこのバーでワインでも飲んでいてください。お代は結構ですから」「ん?どこかで聞いたようなセリフだなぁ。ま、いっか。あー、ちょっとバーテンさん、ワインちょうだい!一番高いヤツ!」

 
 
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