デュッセルドルフ通信 2006年9月28日
ロードレース世界選。日本もステップアップの予感。

ザルツブルク郊外。自然豊かな、時間がゆっくり流れている場所です
 まだいくつかのプロツアーが残っていますが、「トラック競技本格シーズンを前にしてロードレースシーズンの締めくくりに」とロードレース世界選手権を見に行ってきました。場所はオーストリアのザルツブルクです。皆さん、間違わないように。オーストラリアではなくオーストリアです。”No kangaroo in Austria(カンガルーはいません)”ってステッカーがお土産屋さんに売られていることが、限りない数の誤解が過去にあったことを物語っています。ま、本当に間違ってカンガルー見に来た人がいたら、相当オトボケですけどね。きっと一人ぐらいはいたと思います。

 音楽の天才モーツァルトを生んだザルツブルクは、首都ウィーンの南西およそ250kmに位置する緑豊かな町です。ドイツ、イタリア、スイスなどにも近く、隣国から多くの自転車ファンが詰めかけました。


ベッティーニ、ツァベル、バルベルデの表彰台。さすが世界選、ゴージャスメンバーです
 レースの結果からいうとイタリア人でベルギーのプロチーム、クイックステップで活躍するパオロ・ベッティーニがドイツのエリック・ツァベルとの壮絶なゴールスプリントを制し、アルカンシェル(世界選手権チャンピオンジャージ)をまとうことになりました。200km以上走った後に、あのスプリントをやる力がまだ残っているとは・・・超人とはこのこと。ベッティーニはアテネオリンピックのゴールドメダリストでもあり、世界選を獲ったことでまさに「世界一」の称号をものにしたといえます。3位には現在プロツアーポイントランキング1位のスペイン、アレハンドロ・バルベルデが入りました。

君たちにも、あの興奮を味わって欲しかったよ。モゥ~ッ!
 イタリアからそう遠くないこともあり、会場にはイタリア人サポーターが大量に応援に来ており、ベッティーニの優勝が決まるとそれはもう大騒ぎ。表彰式後の、各連盟の偉い人たちの挨拶そっちのけで「パ~オ~ロ~、パ~オロ~、ベーッティーニ~」とパオロ・ベッティーニの唄(そんなんあるんか?)を歌っていました。なんか、日本の野球ファン(特に外野に陣取っている人たち)の姿とすごくダブって見えました。よし、そうなればトラック競技も「カネコ・タカシの唄」とか作って歌いたいですね!カ~ネ~コ~、カ~ネコ~(単なるパクリ)・・・「打鐘が聞こえない!」って怒られたりして・・・

 イタリアに話を戻すと、この会場、イタリアのトレーニングウェアがあふれていました。はじめは「イタリアのナショナルチーム、スタッフ含め何人いるんだ?メチャメチャ連れて来たなぁ」「あんな若いイタリア~ンなオネェタンがチームスタッフにいるんだ。さすがでやんすな」などと思っていたのですが、それにしても多い。「フィニッシュラインから少し離れたところでイタリアのチームウェアを売っている」ということを耳にしたのはもう最終日。ミーハー根性がムクムクと湧き上がり、早速駆けつけましたが、欲しかったトレーニングウェア上下はすでに完売。Tシャツなども飛ぶように売れており、大人気。この売り上げはどこに行くのかわかりませんが、もしイタリア車連に入るなら世界選遠征費用があっさり捻出できたこと間違いナシ!


日本チームの宿泊地。空気もいいしトレーニングには最高の場所でした
 さて、イタリアの話ばかりになってしまいました。気になる日本人選手の成績ですが、エリート男子では別府史之選手の124位が最高位。野寺秀徳選手と福島晋一選手は完走間近のところまでこぎつけながら、惜しくもフィニッシュすることはできませんでした。女子エリートは萩原麻由子選手が30位。期待の沖美穂選手は喘息に悩まされて本来の力を発揮できず、途中棄権となってしまいました。

あっぱれ14位。でも、まだ上を狙えるぞ!
 そんななか、アンダー23では新城幸也(あらしろゆきや)選手が14位と大健闘。三瀧光誠選手が130位、畑中勇介選手、村山規英選手はともにリタイヤとなりましたが、チームメイトの金星に決意を新たにしているでしょう。レース前日に22歳になった日本のホープ新城選手は「きっついレースが好きです。昨年の世界選はついて行っただけでしたけど、明日は見せ場をつくりたい」と語っていました。レース後、「上出来だ」という周りの評価とは裏腹に本人は全く満足できずに「くやしい」を連発していたとのこと。次からはエリートカテゴリーの厳しさが待ち受けていますが、そのまだまだ上を目指す気持ちが好結果を生むことでしょう。日本の次世代のリーダーとして注目を集めていますが、スレていないというか、常に礼儀正しく、周りに気を配ることのできる選手ですね。そしてなによりも、さわやかな笑顔がとても印象的でした。もっともっと強くなれるゾ!新城選手がんばれ!

日本代表ライダーの方ですか?いえ、日本代表監督です。右は別府史之選手
 さて、今回ナショナルチームの監督はロード好きな人はもちろん、トラック、マウンテンの世界の人もきっと名前を知っているでしょう、三浦恭資さんでした。お話をしていると、ついこの前まで現役選手だったこともあり、目線がとても選手に近いですね。練習も選手と一緒に自転車で走りますし、コース試走ももちろん自転車です。

新城選手。燃えるウチナンチュ(沖縄人)
 「別府や幸也(新城)が走るのを見てると昔の自分を見ているようで人が走っている気がしないんですよ。完全に自分が乗りうつってます。監督っていい仕事ですねぇ」こんな風にしみじみと語ってくれました。その中で興味深い話がありました。「今のロードの子はトラックで走らない。だから基礎がしっかりしてないんですよ」トラック競技はすべての自転車競技のベースにある。こんなことをロードレースの監督、しかも日本ロード選手ヨーロッパ進出のパイオニアの一人である三浦さんに言ってもらったことはトラック大好き人間としてはとてもうれしかったですね。三浦監督のおかげでロードとトラック、もっと言えば他の自転車競技との交流がさらに深まればいいなぁと思います。

 世界選の会場、面白いのは自転車でやってくる人がとても多いことです。さらに、その人たち、みんな一流ライダーの走りを見て、生で「最高のイメトレ」やってますからこわいですよ。ジャッキーチェンの映画館から出てきた人が、自分が強くなった気になってるのと同じ現象が起きてます。

 車の後ろにピッタリつけてスリップストリーム利用する人やら(ちぎろうとするとメチャ、ダンシングもがきで追いかけてくる)、腕を水平にビシッと伸ばしたかと思うと(たぶん、彼的には「これから左折するから気をつけてね」って言いたいんだと思うけど)いきなり車の前を横切って自転車倒しこんでコーナーリングしていく人やら・・・「危ないって!ここコースじゃないからー!規制かかってないバリバリの一般道だしー!!!」と背中に向かって叫びたくなること数回。

 統計取ってみたら、絶対世界選の会場付近では自転車事故が多いはず。彼ら、完全に自分の世界に入っちゃってます。頭の中では自分がチャンピオンジャージ着てますからね。道端でボトル状のものでジュースなんか飲んでた日にゃ補給ポイントだと思って持っていかれちゃいます・・・絶対。みなさん気をつけましょう!

 さあ、いよいよトラック競技ですよ。ワールドカップ第1戦は11月のシドニー大会。その前に何を取材しようかと今からワクワクしています。では、近いうちに、また!!

 
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