デュッセルドルフ通信 2006年11月24日

始まったワールドカップシリーズ。
今シーズンも頑張れニッポン、トラック競技!


掲示板を見てワールドカップシリーズがまた始まることを実感する

 はじまりましたー!トラック競技の本格シーズンが!今シーズンはシドニーが皮切り。
この季節、シドニーは夏。いよいよトラックのシーズンだ!というワクワク。こっちは木枯らしが吹いてるけど、向こうは夏だ!というウキウキ。でも、ヨーロッパからシドニーは乗り継ぎ時間を含めるとほぼ1日がかりだ・・というユウウツの入り混じった気持ちでドイツ・デュッセルドルフ空港を出発。

 最近、ヨーロッパにおける機内持ち込み荷物の規制が変わって、ゲートは大混雑。具体的に言うと100ml以上の液体を機内に持ち込むことができないわけですが、まだ規制がはじまったばかりということもあってゲートで引っかかって取り上げられる人が続出。しかも「主張する民族」ヨーロッパ人ですから「聞いてないよ~」とゴネる人だらけ。「チェックインカウンターにも、ゲートの前にもデカい看板に書いてあったがな!あれが目に入らないアンタが悪い」と言いたくなるのですが、一歩も引かないで別室に連行される人やら、「取り上げられるぐらいなら」とジュースのラッパ飲みをはじめる人やら大騒ぎです。
私の前の前にいたオジサンなんか完全逆切れでウイスキーのビンを腰に手をあててグビグビ。「ここ銭湯じゃありませんからぁ!しかも、それフルーツ牛乳じゃなくってウイスキーだしぃ!!!」きっとあのオジサンは離陸後の気圧差の影響を受け、ヘベレケになったことは間違いありません。(ちょっとその後を見てみたかった気もする)

 飛行機に乗ったら乗ったで、予想していたこととはいえ、飛行時間が長いんだこれが。私はデュッセルドルフからフランクフルト、フランクフルトからタイのバンコク、バンコクからシドニーという経路だったのですが、とにかく着かない。ヨーロッパの選手たちはみんなこのぐらいの時間をかけてシドニーに向かうことになります。

 はじめのほうはいいんですよ、まだ。機内サービスの映画とかを見てれば。「パイレーツ・オブ・カリビアン2」を見て「ハ~。ジョニー・デップかっちょいー!やっぱ男は“ちょいワル”よりも、“かなりワル”のほうがいけてるな」なんて思ったり、「プラダを着た悪魔」を見て「アン・ハサウェイ、か~わいい(目がハ~ト)。自転車業界も大変だけど、ファッション業界って大変。でも、エンディングにはホッとさせられるものがあってGOODな映画。仕事に疲れてもまた明日から頑張る気になる。特にバリバリ働く女性には見て欲しい映画よねぇ」とおすぎみたいなコメントを勝手に頭のなかで描いたりして。

 「ん~。まだ着かない。しょうがない、一度見たけどダ・ビンチ・コードでも見るか・・・」そのあと、インドの、みんなで踊りながら歌う、よくストーリーのわからない映画見て、エコノミー症候群にならないためのセルフマッサージのビデオ見て、それでもつかないから「白雪姫」とか見ちゃいましたよ。「やっぱり7人のこびとのなかでは、“オトボケ”が一番キャラがたってんな」なんて。
バンコクの乗り継ぎのロビーではひたすらレッド・ツェッペリンの「天国への階段」が流れているし・・・エンドレステープか?いや、大意はないと思うんですけどね。飛行機に乗る前に「天国への階段」ってシュールなセンスだな・・と。

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シドニーの町並み。
この近くで今年も大会が

こんなキレイな海が街のスグ近くに

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女性読者もいらっしゃるようですので・・・サービスカット。ビーチのライフセーバー達。ええ身体してマス
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全く関係ないんですが、シドニーの街中の雑貨やさんで見つけた包丁置き。なんか無性に欲しくなりました
 こうして、「天国への階段」をのぼることもなく、無事シドニーに着いたわけです。ダンク・グレイ競技場はもうおなじみですね。似たような写真を見せてもつまらないので、今回は違うアプローチを。ここをクリック!
 見れました?真ん中にある白いドーム。これが今回の戦場です。でも便利な時代です。住所入れるだけでそこの航空写真が見れるんですから。私の友達なんかこれで元カノの家とか見てますよ。(おいおいストーカーだよ!)

 会場に着くと、いますいます。見慣れた顔から、ニューカマーまで。日本チームも元気に練習していました。大会レポートのほうにも書いたのですが、今回は中国、韓国、イラン、マレーシア等アジアの国が大勢の選手を連れてきました。12月に行われるアジア大会(オリンピックのアジア版)そしてその先の北京オリンピックを見据えているのでしょう。

 ところで、既に自転車競技の北京オリンピックにおける選手選抜ルールが決定しています。詳しいことはまた改めてお伝えしますが、トラック競技において前回のアテネオリンピックでは世界選手権の着位が大きな要素だったのに対して北京の選抜ルールは、UCIポイントの獲得ランキングが大きな要素になることが変更点です。UCIポイントというのはUCI公認大会におけるレースの着に対して与えられるポイントなのですが、これはあらかじめ、「どの大会で何着をとると何点」と決められています。当然、世界選手権やワールドカップなどのグレードの高い大会には高い得点が設定されています。例えばワールドカップのケイリンで1位になると300点です。競輪の競走得点にちょっと似ていますね。違うのは平均しないで単純に加算していくことです。

 参加したレースの数で得点を割らないということは、どんな着をとろうとも参加すればするだけ有利だということです。もう少し具体的に言うと、ワールドカップに4戦中1戦出場して1位だった人(300点)より、3戦出場して3戦とも7位だった人(120×3=360点)のほうがランクが上になるということです。また、このポイントは個人種目の場合、国ではなく個人に対して与えられます。

 これらのことが日本にとって何を意味するのかというと、多くのメンバーが競輪選手でスケジュールの調整が難しいということもあるため、これまでナショナルチーム、強化指定選手という大きな枠のなかから今回は誰、次は誰々と少しずつメンバーを変えながら派遣をしていくというやり方をしてきましたが、これが圧倒的に不利になるということです。

 もちろん、今シーズンはオリンピックの出場権に直接関わらないので、いろんな選手を試しながら出場させるということもよいのですが、来年の世界選手権(2007年3月29日~4月1日スペイン・マヨルカ)が終わると次のシーズンに入ります。次シーズンのなるべく早い段階で「どの種目には誰」ということをある程度決めて行かないと、コンスタントに同じメンバーで来ている国の選手からどんどんポイントを稼がれてしまうということになります。

 「オリンピックはまだ先のこと」と思いがちですが、今シーズンは誰がどの種目で最大のパフォーマンスを発揮できるかを見極める作業をほぼ終わらせなくてはならないシーズンになりそうです。とても重要なシーズンですね。

 金子選手が「国際競技のみに専念できる一定の期間が欲しい」としみじみ言っていましたが、実際にそういう環境をつくらないとオリンピック出場自体が危ぶまれるシステムであると言わなければなりません。


テオ・ボスの勢いは止められない

 さて、初戦を見た全般的な感想です。まず相変わらず超強いテオ・ボスが健在です。彼のトップスピードの記録はわからないのですが明らかにほかの選手より一段上です。ケイリンなどで捲くりにまわった時にそれがよくわかります。ボスがスパートしたとき、油断して踏み遅れればあっという間においていかれますし、注意をしていてうまくあわせたとしても、スピードの違いで結局前に出られてしまいます。他の選手も一流なのですから、抵抗されれば長いもがきが必要になるはずですが、ボスに限って言えばスピードが早すぎて時間をかけずに捲くりきってしまうので、ロングスプリントにならず、脚が残っている間に前に出てしまうため、手のつけようがありません。


一番左がエドガー。顔はそんなに強そうに見えないんだけど・・・

 それから、以前、日本に国際競輪で来たこともあるイギリスのロス・エドガーがかなり強くなりました。以前から弱い選手ではありませんでしたが、ロングスプリントができる印象はありませんでした。しかし、今大会では長いスプリントにも強くなり、スピードと持久力を使い分けるワンランク上の選手になりました。金子選手や渡邉選手が冗談めかして「あいつ、きっとなんか(ドーピング)やりましたよ」と言っていましたが、そう言わせるくらいドラスティックに強くなったということです。エドガーは身長170cmほどの小柄な選手ですが、こういう選手が強くなってくると「体格で劣っても十分勝負になるのだ」と、日本選手にとっても希望が持てる気がします。


成田選手。後ろのメンバーはエドガーにトゥルナン、ウォルフにキァッパ、ボス。あぁ神様!
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今シーズンもチームスプリントで是非メダルを!

 最後に日本チームですが、順位はともかくとしてケイリンに出場した成田選手にしろ、スプリントの渡邉選手にしろ、負けたときでも「いい競走だった」と言えるレースが増えてきたのはいい傾向だと思います。「いい記事になるような競走ができなくてすみません」と言いながら話をしてくれた渡邉選手ですが、なんのなんの、この走りなら、今後いい記事が書ける可能性大ですから期待しています。それから、以前に日本選手と海外選手のコミュニケーション不足について取り上げましたが、今大会では渡邉選手が勝った選手に握手を求めに行ったり、自分が負かした地元のライアン・ベイリーを称えるように会場にアピールしたりしている姿を目にしました。こういった小さな行為の積み重ねが今後の競走にいい影響を与えると私は確信しています。

 さて、次はモスクワ大会。極寒のロシアで、マクドナルドにスマイルが売られていないモスクワで、取材用IDをもらうのに1時間半もかかってしまうクリラツカヤ競技場で・・・(お前の恨みごとかヨ!)今年はどんなドラマが待ち受けているのか?
なんか、つっこみが、「さまぁ~ず」っぽくなってるのは。「ぶっコギ」(日本テレビ 毎週火曜24:26~、BS日テレ 毎週土曜9:00~)を見てるせい???(宣伝かヨ!)

 追伸(手紙かヨ!):自転車競技と同じぐらい陸上競技も好きな金子貴志選手ですが、北京の次のロンドンオリンピックは陸上で出場し、フランスのグレゴリー・ボジェと100mで対決するのが目標だそうです。※デュッセル通信バックナンバー2006年2月1日分参照(自分のコラムの宣伝かヨ!)

それではまたお会いしましょう(終わりかヨ!!)

 
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