デュッセルドルフ通信 2007年5月11日
日本の枠どりやいかに?
オリンピックプレシーズンスタート
 

 ヤッホー!(もはや死語?YAHOO!ならOK?)皆さん、お元気ですか?
ここデュッセルドルフは4月が30℃ぐらいまで気温が上がる日が続いたと思ったら、本来であれば一番気持ちいい季節であるはずの5月はのっけから、雨が降ってさむーい雰囲気です。
 日本はゴールデンウィークでしたよね。ヨーロッパでも「日本から来た旅行者の人たちだな」と、思わせる方々を目にしました。そのゴールデンウィークのはじめに、チャレンジ・ザ・オリンピックが行われ、その結果に基づいて強化指定選手が発表されました。いよいよ北京オリンピックに向けたナショナルチームの編成がはじまります。楽しみですね。
 私ごとですが、最近髪型を変えました。ちょっと長めの坊主頭にしてみたんですが、そういう髪型にした私を見た日本人の反応は・・・ほぼ100%「うわっ!なんか悪いことでもしちゃったんですか?」とか「アララ、ついに悔い改めですか?」とか・・・
 どーゆーことですか!昨年、テオ・ボスが坊主刈りにしたときには「おぉ!テオ・ボスも気合はいってんなぁ」なんて言っている人がいましたけど、私の場合はなんで「悔い改め」なんですか!!しかし、近所に住む日本人小学校に通う小学生の反応「オジちゃん、ヒデみたいになったね」そう!鋭い。キミがイチバン正しい!何を隠そう、私の髪を切ってくれているのは中田英寿元選手のヘア・アーティストさん(日本人)なのであります!
 この人の存在はデュッセルドルフでは有名な話で、根がミーハーなものですから、一度は行かずにはいられず、一度行ったら、上手なものですから通っちゃってるんですねぇ。そのカリスマの手による坊主刈りに対して「悔い改め」とは失礼千万!「オリンピックのプレシーズンに向け、取材もヤル気マンマンですね!」ぐらいのことを言って欲しいもんです!


 さて、国際競輪が間もなくに迫っていますが、外国人ライダー、いいメンバーですね。メンバーのせいなのか、競輪自体の注目度がヨーロッパで高まっているのか、最近ヨーロッパの自転車雑誌やテレビ局などから「日本の競輪について教えて欲しい」とか「国際競輪のリザルトはどうすればもらえるのか?」というような問い合わせが、すごく私のところに来るんですよね。どこで連絡先を聞きつけるのかと思いますが「誰から聞いたの?」と聞くのもなんだし・・・国際自転車ジャーナリスト協会の名簿あたりから、日本人を探して手当たり次第聞いてるんですかねぇ。

 さぁ、そろそろいきますか。前回予告したように今回は2008年、北京で行われるオリンピックの出場権獲得についてトラック競技の部分をご説明することにしましょう。
 まず、北京オリンピックで競われるトラック競技種目は男子7種目、女子3種目のあわせて10種目です。2年ほど前に男子1kmタイムトライアルと女子500mタイムトライアルが種目からはずされることになり、多くの議論を呼んだのは以前のデュッセル通信でもご紹介しました。
 10の種目を列挙すると男子は個人種目がスプリント、ケイリン、個人追い抜き、ポイントレース、チーム種目はチームスプリント、団体追い抜き、マディソンの合計7種目。女子は個人がスプリント、個人追い抜き、ポイントレース。チーム種目はゼロで3種目となります。


 はじめに大原則から行きましょう。1国における最大参加枠が決まっています。個人種目は男女ともにポイントレースは1人、それ以外の種目は2人、団体種目は男子にしかありませんが、どの種目も1国1チームです。さらに1国あたりの最多参加選手数は男子が11名、女子は3名となっています。ですからどんなに優秀なライダーが揃った国でも、ライダー総勢14人以上のナショナルチームはありえないことになります。この大原則はいかなる場合でも破られることはない決まりです。この原則を超えた場合には順次枠を次点の国に譲っていくことになります。

 では、この大原則をとりあえず覚えておいて、本題に入りましょう。北京オリンピック選抜のキーワードは大きくわけてほぼ二つしかありません。①チャンピオン、②07-08シーズンUCI個人ポイントランキングです。
 「チャンピオン」については、2007年6月26~28日に南アフリカのケープタウンで行われるB世界選手権(その前の世界選手権に選抜されなかった国の参加により行われる世界選手権、読んで字のごとく世界選手権B面といったところです)における上記種目のチャンピオンがまず選ばれます。日本は、男子は世界選手権常連組ですが、女子は世界選に出ていないので出場できます。アテネオリンピックのときはスケートの大菅小百合選手がこの大会に出場し、500mタイムトライアルで優勝。早々とオリンピック出場を決めました。今回はその500mタイムトライアルは種目から除外されてしまっていますので、他の種目で狙っていかなくてはなりません。男子については、日本は出場することはできませんが、当然、出場できる国からスプリント、ケイリンなどの出場権を真っ先に手にする選手がでることになります。ただし、B世界選については個人種目のみの選抜となりますので、チームスプリントなど団体種目の最初の出場者が決まるのは次のタイミングになります。それは2007年11月30~12月2日シドニー、12月7~9日北京、2008年1月18~20日ロサンゼルス、2月15~17日コペンハーゲンで行われるワールドカップ4戦の総合チャンピオンです。ここで初めて団体種目の出場国第1号が決まります。そして最後が2008年3月26~30日(種目増加により来年度より世界選手権は5日制)、マンチェスターで行われる世界選手権のチャンピオンです。チャンピオンについては、個人種目はチャンピオンとなった本人、チーム種目については、チャンピオンとなったチームを有する国に資格が与えられ、誰が走るかについてはその国に決定権があります。選考基準の優先性はこの「チャンピオン」が一番、つまりもっとも強力な基準です。
 チャンピオンという基準で選抜される枠は種目数×(世界選+ワールドカップ)+B世界選選抜分となり、男子だと7×(1+1)+4=18となります。女子は3×(1+1)+3で9ですね。

 次なる基準は07-08シーズンUCI個人ポイントランキングです。UCIではUCIの定める一定の条件を満たした大会をすべてUCIカレンダーに登録します。そして、その規模や参加国数、参加選手数などによってクラス1-4までに階級わけします。
 世界選、ワールドカップ、大陸選手権はHor classといって別格扱いで、クラス1-4の上に位置します。そして、これらの大会に出走すると参加した大会のクラスと何着をとったかに従って、個人に点数が与えられます。(チーム種目は国に付与)例えばワールドカップの個人種目で優勝すれば300ポイント、クラス1の大会で優勝すれば100ポイント、クラス4の大会で優勝すれば10ポイントです。ですから、ワールドカップで1回優勝した人と同じ点数を稼ぎたかったらクラス1の大会に3回優勝しなくてはならない計算です。
 このポイントが種目ごとに累積されていき、合計点の高い順にランキングが決まっていきます。この点数の累積機関は世界選終了翌日から次の世界選終了までとなります。つまり、すでにオリンピック選考のための点数の積み上げがはじまっています。
http://www.uci.ch/ucinet/uci.asp?page=rankings&discipline=pis&ryear=2007&ridercategory=me
 まだ、07-08シーズン用に更新されていませんが、このページで今、誰がどれぐらいの点数を持っているのかを確認できます。昨年シーズン、ケイリンはクリス・ホイがコンスタントに強かったということになりますね。このランキングで行くと、昨シーズン伏見選手は世界で18番目、成田選手は20番目だったことがわかります。このポイント制は、日本の競輪の競走得点に少し似ていますが、平均しないので、大会に出れば出るだけ有利になります。選手に積極的にいろんな大会に出ることを促すシステムになっているわけですね。今年は、本格シーズンが始まる前に少しでも点数を積んでおきたいという選手がたくさんいるでしょうから、下のクラスの大会でも有名な選手が出るようなことがあるかも知れませんね。

 さあ、ではこのランキングを使ってどのように選考されていくのでしょう?この基準により選抜される枠の数は種目によって以下のようになります。

 

男  子

総枠数

女  子

総枠数

チームスプリント

10位まで

10

団体追抜き

8位まで

8

マディソン

13位まで

13

スプリント

5位まで

チームスプリントから1名

(10)+5

9位まで

9

ケイリン

9位まで

チームスプリントから1名

(10)+9

個人追抜き

5位まで

団体追抜きから1名

(8)+5

9位まで

9

ポイントレース

6位まで

マディソンから1名

(13)+6

8位まで

個人追い抜き全員

(9)+8

 ここで、ややこしいのは、団体種目の出場権を得たチームは、あらかじめ決められた個人種目に選抜される権利があることです。例えば、チームスプリントでランキング10位以内に入れば、その時点でケイリンとスプリントにひとつずつ枠が与えられるというものです。また、女子では個人追い抜きに出場を決めれば、自動的にポイントレースに出場できることになります。
 スプリント種目で具体的にシミュレーションしてみましょう。例えば日本がチームスプリントでランキング5位に入ったとします。そうすると、日本はすでにケイリンもスプリントも1枠獲得。さらにスプリントの4位、ケイリンの6位に誰かが入っていたとすると、これで日本はチームスプリント1、スプリント2、ケイリン2の枠を確保することになるわけです。常に団体種目で得た枠の条件が優先されることを頭に置いておいて下さい。


 ここで、先ほどの大原則を思い出してみましょう。マディソンでポイントレースの枠を1つ得た国はポイントレースでは6位までに入っていても枠を追加することが出来ません。また、女子の個人追い抜きで枠を得たとして、ポイントレースで8位までに入っていてもさらに枠を追加することは出来ません。なぜなら、ポイントレースの最大枠は「1」と決まっているからです。このようになった場合は次点にいる国が繰り上がることになります。
 わかりづらいので、もうひとつ例を挙げましょう。イギリスがケイリンでワールドカップの総合チャンピオンを出したとします。そして、チームスプリントが3位だったとすると、頭の整理できている読者の皆さんならもうわかりますよね。そう、チームスプリントによる枠とあわせて2名がケイリンに出場決定です。さらに個人ランキングでケイリン6位の選手がいたとすると、ケイリンは9位まで選ばれるはずですが、大原則ではケイリンは2名まででした。ここで、この枠は9位までの枠の外にいる10位の選手のいる国に渡ることになります。

 オリンピックはスポーツ最高峰の競技大会でありながら、なるべく広く世界から参加を募るという精神に則り、このような制限をもうけることによって、少数の強国のみの競技会になることを避けているわけですね。精神はわかりますが、大変複雑な選抜になり、ファンにとってはわかりづらくなっています。まあ、よいほうにとれば、このシステムによって日本がオリンピックに出場できないという最悪の可能性は低くなっているとも言えるでしょう。
 このようにして、枠が決まるわけですが、実は、さらにもうひとつ選抜される方法があります。各国オリンピック委員会が構成する協会ANOCと国際オリンピック委員会IOC、そしてUCIで構成する3者委員会の招待枠というものです。しかし、これは出場権利のある国がその枠を使用しなかった場合の再配分のためにある枠で、非常に可能性の低い枠ですから、ここでは詳しく説明しません。


 ふぅぅ。どうでしょう?アウトラインは見えてきましたか?まずは、直近6月26~28日に行われるB世界選でトラック競技最初の出場者が決まる事になります。その後、UCIポイントによるランキングは刻々と入れかわり、来年2月17日にはワールドカップの総合チャンプが決定します。
 そして、残り枠の行方の大勢がわかってくるのが、世界選手権が終わる2008年3月30日。4月18日にはUCIから各国オリンピック委員会に対して、獲得枠の確認が行われることになっています。
 つまり、1年後には日本がトラック競技でどの種目に何人出場できるかがわかっているということですね。北京オリンピックはまだまだ先のことと思っていましたが、こうしてみると、もうあっという間という気がします。強化指定選手のなかからナショナルチームが再編成されれば、日本もいよいよオリンピックモードのスイッチオンです。
 やっぱり、私も気合を入れないと。オシャレな坊主なんて言っている場合じゃないゾ。北京だけにここは少林カットぐらいにはしないと!早速、行ってきます!今回はこれで!ヒデの美容師さぁ~ん(少林カットにカリスマ美容師、必要?)!!!

 あ、モシモシ?こんにちは。予約お願いできますか?ハイ、この前カッコイイ坊主にしてもらったんですけど・・・えー、えー、もー評判いいですよぉ~。坊主にしたからといって、なにかを反省してるのかなんて、人に思わせない坊主ですからぁ~。え?なんか悪いことしたんですかとか?言われてないですよぉ!も~やだなぁ。ハイ、それで・・・今度は違いがわかる少林カットにしてもらいたいんですけど。病院?いや、ビョーインじゃないです。ショーリン!少林サッカーのショーリンカットです。そう、それですそれです!僕の場合、少林自転車ですけど・・・ワハハ。ホィールからブワーッと炎とか出ちゃったりして?もー、面白いこといいますねー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(延々と続く)

 
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