デュッセルドルフ通信 2007年6月16日
本格到来、ピストブーム。競技者も増えるか?
 
 こんにちは!お久しぶりです。日本は南から次々と梅雨入りしていっているみたいですね。こちらは、気持ちのよい気候が続いていると思ったら突然雷雨になったりして、ちょっと変な天気です。デュッセルドルフはそんなに雨の多い場所ではないのですが、降るときには風を伴って、とんでもない降り方をします。風が強く吹くので傘をさしても、ムダなことをわかっているのか、こっちの人、傘ささないんですよねー。どしゃ降りのなかをおばあさんが、まっすぐ前を向いてずぶぬれになりながら早足で歩いていく様子は、ブルーハーツの「トレイントレイン」かなにかをバックミュージックで流してあげたくなります。
 でも、この時期の天気がよい日は最高ですよ!天気がよくても湿度が低いので、さわやかで、まさにサイクリング日和です。その気候のよさと無関係ではないのですが、私、自転車を新調しました。命名「製造ナンバーMS-06S 赤い彗星with ドラゴン号(なんか、パクリ臭プンプン)」略して「ドラゴン号」です。そして、なにを隠そう、トラックレーサーです!
赤い彗星って、自転車ブルーじゃん!
赤い彗星って、自転車ブルーじゃん!
ちがうちがう!よく見て(って、赤い星のシール貼っただけかよ!)
ちがうちがう!よく見て(って、赤い星のシール貼っただけかよ!)
  なんでそんな名前?私、名前に「竜」の字がつくので、外国人に自分のことを紹介するときに「“タツ”はドラゴンの意味だから“ドラゴン”って覚えてね!」って言うんです。こうすると、なかなか覚えてもらえない日本人も一回で覚えてもらえるんですね。それで、味をしめてしょっちゅう使っていると、日本人まで「ドラゴン」って呼んでくれる人が出てきて(欧米か!)、後輩のなかには「さん」づけで「ドラゴンさん」(香港マフィアか!)と呼ぶ人間までいて、不思議なことになってきました。渋谷の交差点で道の反対側から「ドラゴンさぁ~ん!」と呼ばれたときには、周りにいた人たちが「それ誰?」とキョロキョロしてましたよ。
 と、いうことで「ドラゴンの名前にふさわしく、強気にかっこよく乗りたい」という願いも込めて、「ドラゴン号」です。へ?赤い彗星ですか?それは・・・単なる憧れで、アニメ機動戦士ガンダムに出てくるシャアのキャッチフレーズなんですが(世代によってわからなかったら 悲)私、このキャラクターが好きだったので(というよりセイラさんが)、出来たらシャアと友達になりたかったので(というよりセイラさんと)・・・セイラさぁ~ん!大好きでありまぁぁ~す!!!(お前はケロロ軍曹か!・・・というより、アニメオタク?2次元の女性に恋すんなよ!)
 ・・・コホン。さて、トラックレーサー。ちまたでは単に「ピスト」(ピストはフランス語)と呼ぶほうがクールなようですので、ピストとしましょう。最近、かなりのブームですよね。カリスマDJ&裏原宿のファッションリーダー藤原ヒロシさんや、これまたカリスマスノーボーダーの吉村成史選手なんかもハマッているということで、横ノリ系、オシャレ系の人にも必須アイテムとなりつつあります(言いすぎ?)。スノーボードの吉村選手は中野浩一さんモデルなんて手に入れて乗ってる(どこで手に入れたの?)という噂もあります。
 街乗りの人も増えて来ました。きっちりとピストの特性を理解して乗りこなしている人はカッコいいですねぇ。女の人も見かけたことがありますが、ホレボレします。「ここまでの盛り上がりを見せているのに、自称日本トラック競技応援団長の私がピストの街乗りを経験したことがなくてどーすんだ(競技場も数えるほどしか走ったことないんですが・・・)」ということで、入手したのがナンバーMS-06S赤い彗・・・(しつこい!)
 このピストレーサーの街乗りブームの火付け役は、アメリカ・ニューヨークやシアトルのメッセンジャーたちではないかと言われています。まず、作りがシンプルであり故障がとても少ないこと、シングルギアで変速機がないため、余計な音がせず、非常にスムースな乗り心地であることなどが受け、そしてフリーホィールではない=走っている限りペダルが回り続ける=減速のためにはペダルを逆にまわさなくてはならない(バックを踏むといわれる行為)=ブレーキをつけていない場合、急には止まれない=デンジャラス=素人には簡単には乗りこなせないという図式がプロフェッショナル自転車乗りのプライドをくすぐり、さらにエキサイティング&デンジャラス大好きな横ノリ系の人たちを巻き込み、さらにさらに、これを乗りこなした時の征服感が、ムリ目な女子を攻略したときの達成感と似ている(そっちに行ったか!)こともあり、難敵に立ち向かうことを恐れない人々の心をつかんだのではないかというのが私の勝手な分析です。
 さて、実はピストの街乗りには、様々なところで議論があります。最も問題にされるのが、「ピストには、基本的にはペダルを逆方向に回す以外には制動手段がないため危険だ」ということです。競輪選手や、外国のトラック競技選手も街道練習にはロードレーサーを使う人が多いです。
 ピストにブレーキはカッコわるいという見方やどこまでが道交法に引っかかるか引っかからないかという話もありますが、「事故が起きれば、いろんな人が不幸になる」ということと「人に迷惑をかけるのはかっこよくない」というのは、事実だと思います。
 一方で「ピストレーサーに乗ってみたいなー」と思っても初心者が競技場まで行って乗るのはかなりの決心とパワーのいることだ、というのも悲しいかな現実ですよね。
 ですから、比較的簡単にピストに乗れるという点において、誤解を恐れずに言えば、ある意味、街乗りはすばらしいと私は思うわけです。観るほう専門で競技者としては、ど素人レベルの私がピスト街乗り経験をとおして、シンプルだけどダイレクトに反応し、なかなか思い通りになってくれないけど、慣れてくると身体と一体になってくれる究極の自転車「ピスト」のすごさを再認識したわけですから、街乗りも捨てたものではないでしょう?
私のサイクリングコース、街乗りといってもかなり安全です
私のサイクリングコース、街乗りといってもかなり安全です
ビュンビュン飛ばすとスッゴク気持ちよさそうでしょ?
ビュンビュン飛ばすとスッゴク気持ちよさそうでしょ?
  あくまで私なりの結論ですが、公道を走るそれなりの装備をして、さらに子供がはじめて自転車に乗るときのように、安全な場所でしっかりと練習をして、きちんと止まれることを確認した上での街乗りは、「ありなのかなぁ」と思ったりします。でもトラック競技を応援している身として、ピストレーサーが原因の事故が多発したりして、ブームに水を差すことは決してしたくはありません。乗る人がしっかりと、リスクを考え、それを回避する手段を持ちながら乗ることが大切だと思います。
 もちろん街乗りを推奨するというより、場所はどこであれ「ピストに乗ってみたら?」というのが主眼で一番は競技場に行って乗ってもらうことがオススメであるには違いないのですが、なにかのとっかかりとして「近くでできる」というのも重要なファクターだなと思うわけで、ピストの街乗りもきちんとしたマナーで乗れば、きっと安全に乗れるはずと思ったわけです。なんか、言い訳がましく、堅苦しくなっちゃいましたね。
 さて、私は実際、ヨーロッパでピストを購入して街乗りを含めて乗り始めたわけですが、まだ乗ったことのない方には、「もー、乗って欲しい!」この一言です。そこで興味のある方に対して、こんな私でも伝えられる参考情報なにかないかな、と考え思いついたのはこんな感じです。
 まず、その1.ピストレーサーは日本でもヨーロッパでも、フラッと近所の自転車屋さんに行っても「ハイヨ」と出てくるところはなかなか少ないです。まず、完全に組んだ形で売られていることはあまりありません。
 これは、初心者にとってはかなり敷居が高いと言わざるを得ません。逆にいうとフレーム、フォーク、ホィールといった具合にひとつひとつ選んでいくのが楽しみだともいえますが、とっかかりがこれだと、それこそバックを踏んじゃいますよね。
 私の場合、ヨーロッパでしたし、しっかりとしたピスト部品を扱っているショップが近くにあるか不安でしたので、日本が誇る自転車企業、シマノさんのネットワーク力をお借りして、よいものが手に入ったわけですが、日本であれば頼れるショップが結構あると思いますので、そこに行くのが一番の早道だと思います。サーチエンジンで「ピスト ショップ」と検索すれば完成車を売っているショップを含め、ネットショップがゴロゴロ出てきますが、完成車を買ってもメンテナンスは必ず必要になってくるので、ネットショップであってもそのあたりの相談に乗ってもらえるショップを選ぶのがよいのではないかと思います。
 その2.ショップに行ったら、フレームを選ぶことになると思いますが、既製品を買う場合と、オーダーする場合があると思います。オーダーするのであれば、採寸のとき見栄をはって脚を目いっぱい伸ばさないで普通にやりましょう。ピストレーサーは走っている限りペダルが止まらない作りですから、走路で車体を倒しても、ペダルが走路に引っかからないようにハンガー下がり(前輪と後輪の車軸を結ぶ線からボトムブラケット格納部=ペダルを回すとき中心となる軸が納まる部分がどれだけ下がっているか)が小さく設定されています。つまり、ただでさえ、地面より高い位置で乗るようになっています。そこで中学校の身体測定でビミョーにかかとを浮かせたり、表情が硬直するぐらい首を伸ばしたりした時のようなことをやると、あとで乗り降りするとき、かえってかっこ悪いことになりますから、あくまで自然に。
 その3.「カッコ悪い」という人がいるかも知れませんが、もし少しでも街で乗ることを考えるのなら、やはりブレーキはつけましょう。私の場合、街乗りすることを意識して、フォーク(前輪を支える軸受け。ハンドルと連動)をロードレーサーのものにして、ブレーキをつけました。これで、完全なピストではないハイブリッドタイプになってしまうのですが、きちんとしたブレーキがつけられることで、安心感が増します。
 その4.ペダルはビンディングペダル(それ用のシューズを履けば、足がペダルに固定される)がよいのではないかと思います。ロードレーサーですでに経験済みの方は「引き足」の威力はもちろんご存知ですよね。ママチャリなどでは自転車はペダルを踏むことで推進力を得るわけですが、競技用の自転車はペダルに足を固定し、前の足を踏むと同時に後ろの足を引き上げることで爆発的な推進力を生みます。上級者は「引くというよりは回す感じ」といいますが、まずは引けるだけでも十分!ピストレーサーときたら、ギアを変えることができませんから、ゼロからのスタートは、かなり重いわけです。これが引き足をつかうと結構スムースにスピードに乗れます。登り坂にも有効、当然バックを踏んで止まるときにも使えます。
トウクリップ&ダブルバンド。ここまでやったらビクともしません。
トウクリップ&ダブルバンド。ここまでやったらビクともしません。
  一方、なぜ競輪選手が使っているようなトウクリップ&クリップバンド方式がおすすめできないかというと、彼らはプロ中のプロであり、とにかくしっかり足がペダルに固定されることを好みます。これを街乗りでやろうとすると、止まるたびにバンドを手ではずすことになり、止まろうと思ってクリップバンドに気をとられている間に優雅にお散歩をしていた人に激突、なんてことになりかねません。
 ドーン!「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」「え、えぇ大丈夫だと思います・・・」「あ、血が出てる。こ、これを使ってください。うわっ!きったないハンカチでした・・・すみません・・ハハハ」「面白い方ですね。ウフフ」これで、恋が芽生えればハッピーエンドですが、その確率は0.1%以下だと思われますので、99.9%のリスクを背負って、限りなく可能性の低い恋にかけるのはオススメできません。はじめからクリップバンドをつけるのは「いままで生きてきて一番得意なことはスタンディング(自転車に乗ったまま静止すること)です」という人でない限り、難しいのではないかと思います。よって、引き足が使えて、着脱が比較的簡単なビンディングペダルが私のオススメです。
 ビンディングペダルなら、踏み面の大きいものを選べば、なれないうちは普通の靴で乗ることも可能です。私はビンディングペダルでさえ、乗りはじめのころ、ロードレーサーの感覚で、止まるとき片足だけはずしたら、はずしていない方の足がまわりつづけ、近くを歩いているドイツ人のオジサンに抱きしめられるように支えられ、危うく恋が芽生えるところでした。ビンディングペダルであったとしても、しっかりと公園や河川敷などの交通量&人の少ないところで、練習してから乗りましょう。
 その5.下り坂に注意。下りはヤバいです。スピードが出るからといって調子に乗るとひどいことになります。下りはアアァレエェェェェェェェェェェ・・・・となります。自分の限界を試したくなったら、そのときこそ公道ではなく競技場に行くときです。
 思いついたのは、こんなところなんですが、ちょっとは参考になりますか?
 最近いろんなところへピストレーサーで出かけまくっている私ですが、デュッセルドルフはまだ街乗りする人は少ないらしく、すごく注目されます。サドルバッグを買いに入った自転車専門店でも、「日本では、ピストに乗っている人がたくさんいるのか?メーカーは多いのか?」など質問攻め。走っていても、視線を感じますし(ヨーロッパ人、自転車好きな人多いから相当ジロジロ見ます)「ランボルギーニに乗っている人はこんな気持ちなのか」と全然レベルは違いますが、納得したりして・・・なめらかなペダリング、踏めば踏んだだけ無駄なく地面に伝わっている感触、バックを踏んだときにコーン、コーンとお尻が持ち上がる感覚など、やはり他の自転車にない乗り味があって、病みつきになります。
無敵のお守り
無敵のお守り
   さらに、秘密兵器。以前に長塚智広選手からもらった千社札をお守りがわりに貼ったせいか、今のところスプリント勝負に負けたことがありません(ピストで走行音がしないのをいいことにサイクリングロードをのんびり走っているロードレーサーに忍び寄って抜き去り、自己満足する。相手が本気になって追いかけてきたら、コースを変えたあと、「フッ、ビビッてついてこなかったぜ」と自分に言い聞かせる。 ※チームで走っているレーサーや、もともと巡航スピードが速いレーサーには、絶対しかけない。このやり方で、今のところ無敵の天狗状態です)。
 誰ですか?「それ、そもそもスプリント勝負に勝ったっていうの?」とか「そのうち、本格レーサーにやられるぞ」なんて言ってる人は。いいもぉ~ん。もし負けたら、今度は闘心会(競輪の加藤慎平選手を中心に活動するツワモノ選手集団)シール貼っちゃうもーん!(結局、お守り頼みか!練習しなさい、練習を!)待てよ、ロング用に飯島誠選手のステッカーとかないかな?(そのうち、自転車が耳なし芳一みたいにお守りステッカーだらけになります)
 さて、これを読んでいよいよピストに乗ってみようと思ってきた方、私のシロート談義ではわからないことだらけでしょうから、こちらのサイトをご紹介します。「ピストな自転車」ピストのイロハから奥深いところまでが凝縮された秀逸なサイトです。初心者にもとてもわかりやすいので、是非ごらんになってみてください。ただ、こちらのサイトの管理人様は、しっかりとした考えをお持ちで「ピストは本来競技場で乗るものですよ」ということをはっきりおっしゃってます。私の書いてきたコラムと混同され、ご批判などがこちらに行くことのないよう、お願いします。
もちろん、ローラーの上でも足は回り続けます
もちろん、ローラーの上でも足は回り続けます
グレゴリー・ボジェによる自転車を使ったトレーニングで極上ボディに!名案だと思うんですけど
グレゴリー・ボジェによる自転車を使ったトレーニングで極上ボディに!名案だと思うんですけど
  ところで、私、ピストに乗り始めると、面白くてついに3本ローラーまで買いました。たいして練習したつもりはありませんが、心なしか、身体がしまってきたような・・・それはそうだ。走っている限りペダルが回るんだもん、カロリー消費も自然と多くなりますよね。このまま行けば、「ビリーさんのブートキャンプ」よりもいい体が手にはいるかも?・・・ん?見た目のインパクトとそのボディの完成度ではビリーさんに負けない“自転車競技のビリーさん”「グレゴリー・ボジェのトラックキャンプ ボジェバンドつき」(ボジェバンドって何や?)これ、売れる!ねぇ、グレゴリー、一緒に商売しない~?カモン!ザッツイット!ザッツイット!グーッ、ジョーブ。ネッ!!
 
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