デュッセルドルフ通信 2007年8月21日
世界といい勝負になってきたゾ。日本ジュニア!
 
 最近~ちょっとばっかしの忙しさに負けてコラムを書くのをサボってたのわぁ~ドコのどいつだぁ~い?アタシだよ!
 ほんっとすみませーん。「アイツなにやってんだ?」って思ってました?国際競輪の関係で日本に帰り、ドイツに戻ったと思ったら3日ほどで、ジュニアの世界選のためにメキシコに出ちゃってバタバタだったもんですから、つい・・・
 日本に帰ったときにいろんな方から「ブログ、読んでるよ!」「ハイ、ありがとうございます。一応、コラムですけど」選手からも「読んでますよ。ブログ。面白いっすね」「あ、どうもどうも。おかげさまで」と、こんな感じで言ってもらったんですが、ブログといわれるほど更新してないし、まぁ自転車競技論評のつもりで書いていたんですけど、私の身の回りに起きたくだらない話も一緒に書いているので、ブログに見えますよね。やっぱり。読んでくれている人のこういう反応ってもしかして、自転車競技評の部分は、あまり読まれてないってこと???
 ちょっと複雑ですが、いずれにしても、読んでもらってなんぼですからね。毎回、楽しんで読んで下さっている方、ありがとうございます。この場をかりてお礼申し上げます。はい、ブログでいいです。読んでもらえさえすれば・・・
 さーて、短期間にいろいろなところに行ったので、今回は何を書こうか迷うんですが、国際競輪は舞台が日本ですからご覧になった方も多いことでしょう。やっぱりジュニアの世界選の話を中心にしましょうね。
 その話の前に、久しぶりに日本に帰って思ったことをひとつだけ。「東京、人多すぎー!」もうね、2メートルとまっすぐ歩けないですよ(酔ってないですよ)。ちょっと、はなれている間に大都会の歩き方忘れちゃいました。(地球の歩き方「大都会編」が出たら買います)
 通勤ラッシュの電車に乗って気持ち悪くなり、ハァハァ言ったのはじめてですよ。変な人と間違われるかと思いました。欲しくなったのはSuicaですね。ラッシュのなかをヒーヒー言いながら切符を買って、小銭をジャラーッと落として、アワワってなっている横を、LANケーブルのことを「ヒモ」と言ったり、カーソルのことを「カールソン」と呼んでたりしそうなおじさん(あくまで想像)が“ピッ”と通り過ぎるのには、モーレツなジェラシーを感じました。日本に住んでいたときにはなんとも思わなかったのに、Suicaとかオサイフケータイとかフェリカ系のものがメッチャ欲しい今日この頃です。
アグアスカリエンテスのダウンタウン
アグアスカリエンテスのダウンタウン
アウトドアのバンクも晴れなら気持ちがいい
アウトドアのバンクも晴れなら気持ちがいい
 そうそう、メキシコの話ですよね。今年、ジュニアの世界選手権が開かれたのはメキシコ・アグアスカリエンテスという町です。アグアグカラアゲテンカス?ひょっとしておなかすいてます?アグアスカリエンテス。
 アグアはスペイン語で「水」、カリエンテスは「温かい」つまり温水という名前です。温水洋一さんじゃないですよ。そんなイメージの町ではありません。でも、州の75%は不毛の土地だと聞いたから、そんなにはずれてないか?(めっちゃ失礼)
 直近ここで行われた国際大会は2004年のワールドカップ。長塚・伏見・井上のアテネ銀メダルトリオがここでもチームスプリントで銀メダルを獲っています。それまでは比較的コンスタントにワールドカップを開催しており、2003年にも矢口啓一郎選手がケイリンで金メダル獲得と日本にとってはゲンのいいトラックかも知れません。
 周長は333.3m、コンクリートの屋外型トラックです。国際大会を行う競技場のスタンダードを250m、板張りの屋内型にあわせていこうとするUCI(国際自転車競技連合)のポリシーからは外れるのですが、燦々と太陽がふりそそぐなか、たまにはこういうのもいいですね。選手にとっては暑さと標高(1800m)からくる空気の薄さで、なかなか過酷なトラックであると言えるでしょう。
 この世界選手権、トラック競技には44カ国から男女あわせて190人のライダーが参加しました。オリンピックではトラック競技は18歳以上となっていますから、この大会に出場するライダーたちが北京オリンピックに出場する最低年齢選手ということになりますね。つまり、このなかからひょっとするとオリンピックに出場する選手が出るかもしれないということです。
 まず感想から先に言うと、「日本チームになかなか楽しませてもらった」です。いつもなら、ジュニアの世界選では私の視点は来るシーズンのワールドカップなどに出てきそうな超ジュニア級選手に目をつけることに中心がおかれるのですが、今回は日本人選手の走りをじっくり見たくなりました。特に短距離。
 競輪学校在校中の坂本貴史選手、脇本雄太選手、そして高校生の雨貝一樹選手、深谷知宏選手。競輪学校が在校生を世界大会に出すのは98年、現在競輪選手でS級1班(福島)の佐々木雄一選手以来これが2回目とのことですが、同期の代表で派遣された選手が外の世界で経験してきたことをクラスメートたちに話したりして、それが学校生徒全体の意識アップにつながって欲しいものです。 坂本選手は同期からもらった寄せ書きの日の丸をお守りのように大事にピットに飾っていました。同期の気持ちも背負って走ったんですね。
 一方の脇本選手はオムニウムレースに出場。オムニウムレースはご存じない方も多いかも知れませんね。今年のパルマ・デ・マヨルカの世界選から導入された種目で、フライングスタートの200mTT、スクラッチ、個人追い抜き、ポイントレース、1kmTTの総合成績を競う陸上の4種競技のような種目で短距離から中距離までどれだけバランスよく強いかが試される種目です。
 脇本選手は200m1位、スクラッチ1位、個人追い抜きは10位になりましたが、ポイントレースと1kmの結果次第ではメダルも?と期待させました。ポイントレースでも着実にポイントを積み上げていたのですが、前を行く選手の後輪に前輪が接触し、激しく落車。そのまま棄権となってしまいました。メダルが射程圏に入っていただけにとても残念。
スタートダッシュが得意な雨貝選手、ケイリンでもペーサーの後ろを積極的にとりに行っていた
スタートダッシュが得意な雨貝選手、ケイリンでもペーサーの後ろを積極的にとりに行っていた
坂本選手の力強い走りは、メキシコ人もファンにした
坂本選手の力強い走りは、メキシコ人もファンにした
 ケイリンには坂本・雨貝両選手が出場。2人ともあっさりと予選を通過。セミファイナルでは坂本選手がペーサー退避後、全体のスピードが一瞬ゆるんだスキをついて一気に前に出て、そのまま後続を千切り1着。見るからに強い勝ち方に場内から「ハポン!ハポン!(Japon、Japon)」と歓声が上がっていました。雨貝選手のほうはは展開に泣かされ、4着入線。決勝に進みたい執念からかやや斜行気味にゴールし、降格をとられました。そのあとの7-12位決定戦も5着で総合11位となりましたが、しっかり回りの動きを見ながら考えて走っていること、さらに相手の動きに対する反応が速いこと、負けん気の強さなど、私の心には非常に好印象が残りました。
 ファイナルへ進んだ坂本選手は5位。過去の成績からみても日本ジュニアとしては、金星といってよいのではないでしょうか。いつもお父さんの坂本勉選手と較べられることに複雑な気持ちでいる坂本選手ですが、早く“坂本勉の息子”ではなく、勉選手の方が“坂本貴史の父”と呼ばれるようになってほしいですね。
金網に張り付いて見るのは、どこも同じ?
金網に張り付いて見るのは、どこも同じ?
  スプリントでは坂本・雨貝・深谷の3選手が全員予選をクリア。そのあと1/8決勝で全滅してしまいましたが、雨貝選手とあたったのはケイリン優勝、スプリント2位、イギリスのエリートジュニア、クリスティアン・ライト。彼を相手にあわやというところまで追い詰めましたから、手ごたえをつかんだ敗退といえるはずです。
 深谷選手は1kmTTにも出場しました。1′05″238というタイムで14位ながら自己記録はもちろん、日本ジュニアのレコードも塗りかえ、ロングスプリンターの意地を見せつけました。新記録が出てうれしい反面、この種目の1位は1′02″前半ですから、日本としてこの部分は重要強化ポイントといえそうですね。
ポイントレースでは見せ場を作った嶌田選手
ポイントレースでは見せ場を作った嶌田選手
 中距離ではブリヂストンアンカーの嶌田義明選手がスクラッチ、ポイントレースと出場しました。スクラッチで集団追走に終わり終始アタックすることのなかった嶌田選手にめずらしくマニエ監督が怒りを爆発させました。「シマダ!やる気がないなら帰れ!何もしないで、普通に歩いて帰ってこられるとは、どういうことだ?本物のサイクリストなら一戦一戦、自転車の上で死ね!死ぬほどもがいてバイクから降りたら倒れ込め!」大変な剣幕で怒る監督を前に無言で下を向いていた嶌田選手でしたが、翌日のポイントレースでは序盤から前に出て、積極的にポイントをとりに行き見せ場を作りました。後半には、やはり前半に飛ばしたのが影響し、徐々に後退。ラップもされてしまったものの、その後はしっかりと集団に食らいつき完走。自転車を降りると、かがみこむような格好でしばらく動くことが出来ず、監督の言ったベストを尽くした本物のサイクリストの姿を見せました。これを見てマニエ監督も「結果はどうあれ、シマダは男を見せたな」とうれしそうでした。
 今回、マニエ監督の口から多く聞かれた言葉は「ファイティングスピリット」。本来なら、日本人のほうが得意なはずの根性論でした。スプリントで落車して、激しい擦過傷を作りながらも、5分後にはしっかりとレースに再出場して勝ってしまうイギリスのクリスティアン・ライトを見ては「あいつを見ろ!戦う気持ちがあれば、少しぐらいの落車なんかどうってことないんだ!ワキモト、わかるか?(初日の落車で少々メゲ気味の脇本選手に対して)」
 “折れない心”そして“ここぞというときの根性”。「真のサイクリストとは自転車の上で死ぬまで戦うものと見つけたり」。青い目のフランス人監督の腰に刀がさしてあるように一瞬見えました。
クリスティアン・ライト。なんか、見るからに速そうでしょ?
クリスティアン・ライト。なんか、見るからに速そうでしょ?
第2のボジェ、ティエリー・ジョレはボジェを追い越せるか?
第2のボジェ、ティエリー・ジョレはボジェを追い越せるか?
 さて、今大会注目の外国人選手をふたりほどあげておきましょう。まずは先ほども出てきたイギリスのクリスティアン・ライト。スラッと背の高い18歳。ケイリン優勝、スプリント2位。チームスプリント優勝(第2走)。イギリス、マンチェスターでエリート教育プログラムを適用されている、将来を約束された選手。
 もう1人はフランスのティエリー・ジョレ。身長はそれほど高くありませんが、こちらもファイティングスピリットあふれる17歳。フランスでは既に第2のボジェ登場と言われています。ケイリンは不出場だったもののスプリント優勝、チームスプリント2位(第2走)。
 2人に共通するのは“colored”(有色人種)だということ。(日本人である私も、ある意味coloredなので、こんな風に書いても誤解は受けないと思うのですが)やはり、ヨーロッパでは自転車は白人のスポーツというイメージが強いのです。選手も圧倒的に白人が多い。しかし、昨今のグレゴリー・ボジェといい、この2人といい、特にスプリント系で強い有色人種の選手が出てきたのは喜ばしいことです。彼らとともに日本も頑張って有色旋風巻き起こすぞ!ブラック&イエロー!(工事現場か!)
 ところで、このアグアスカリエンテスの競技場、大会をサポートするためにた~くさんのセニョリータたちがボランティアとして働いていたのですが、このコたちのスマイルがすごいんですよ。100万ペソのスマイルで(安い?)みんな微笑みかけてくるんで、「もしかして自分、メキシコ人の好みなのかなぁ~(*^。^*)、メキシコ移住すれば天国かもぉ~!」なんて、ふと考えましたが、あとで聞くと、「メキシコの女性は誰にでも人懐こく微笑むので、勘違いしてチューなんかしまくって一線を越えないように。お父さんや恋人が出てきて八つ裂きにされます」とのこと。あっぶねぇ~、ベサメムーチョしてカラムーチョにされちゃうところでしたヨ(意味不明)しかし、あの微笑みは反則だよなぁ。私もそのへんのファイティングスピリットはあるんですけどねぇ。
 さて、今回の日本ジュニアの戦いぶりを見るに将来への希望が少しわきました。輝き始めた原石がその光を失うことのないように我々はサポートしなくてはなりませんね。彼らの成長を楽しみに待ちましょう。では、今回はこのくらいで。また、近いうちにお目にかかりましょう(サボらないように頑張ります)。
 そうそう、最後にボーナストラック。行きたくても日程の都合でどうしても行くことが出来なかったヨーロッパ選手権をドイツ在住のスポーツフォトグラファー、カイ・サワベ氏に私の代わりに見てきてもらいました。簡単なリザルトですが、ケイリンは優勝フランスのケビン・シロー、2位イギリスのマシュー・クランプトン、3位フランス、グレゴリーボジェ。スプリントは優勝ボジェ、2位シロー、3位はイギリスのジェイソン・ケニーでした。フォトグラファーさんにお願いしたので、写真もたくさん撮ってきてもらいました。その写真をいくつか(本当は全部載せたいけど)ご紹介します。普段、仕事ではデジタルは使わない名カメラマンに無理を言ってデジタルカメラで撮影をお願いしました。でも、この写真を見るとデジタルでも十分プロの技が堪能できると思うのは私だけ?いや、生意気言ってすみません。このところ、あやまってばっかで、そのうち額に土下座ダコができるんじゃないかと心配です。それでは、ほんとにこの辺で!是非、また読んでくださいね、私のブログ!
 
 
 
 
 
 
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