デュッセルドルフ通信 2007年9月19日
アジア選手権。横綱相撲をとりたかったが・・・
 
 うぅ~。あ゛ー。ふーむ(ウロウロ)ハァ~・・・(ゴロリ)ん?(ハッと座り込む)ハァァァ・・・(またゴロリ)納得いかねぇ。なーんか面白くねぇ。もう、どーしよーもないけど、釈然としねー。
 なんのことかって?トラック競技アジア選手権ですよ。特にチームスプリント。結果速報見た人はご存知かもしれませんが、アジアで8位ですよ!世界で1位とか2位を狙っていかなきゃいけないのに、アジアで8位ってありえないでしょう!!実はこれ、結果として見ると8位なんですが、タイムが8位というわけではないんです。予選のタイムは中国に次いで2位。もっと詳しく言いましょう。日本/第1ラップ22″94、第2ラップ42″07、最終タイム1′02″21、中国/第1ラップ23″38、第2ラップ43″33、最終タイム1′01″94。ね、セカンドラップまでは完全に勝ってた!これで、決勝に行っていたらきっと逆転して金メダルを獲っていたに違いないから、く~っハラたつ!
 アジア選手権2日目の夕方、スタジアムが暗くなってきたころにはじまったチームスプリント予選。日本チームは久しぶりにナショナルチームに戻ってきたロケットスタート長塚智広選手を1走に2走永井清史選手、3走大森慶一選手という布陣でアジアを制する気マンマンでした。その走りは、ブランクを感じさせない長塚選手の急発進に、永井、大森選手がやや離れながらもバックで連結。そのあとは、きれいにつないで、予選終了時のチームの空気は「決勝に行けないことはないから、決勝ではコンビネーションにもう少し気を遣って、金を獲りに行きますか」という感じ。選手たちの表情からも「まぁ、こんなもんでしょ。相手はアジアじゃなくて世界だから、これから上げていかなくちゃネ」という雰囲気が感じられました。
 と、そのとき、なにやら審判からマニエ監督が呼ばれています。「な~んかイヤな雰囲気だなぁ」大会本部で日本チームの競走のビデオを何度もリプレイしながら審判と激論している様子です。(部屋の窓ごしなので声が聞こえない)明らかに怒っている様子で地面を蹴るポーズをしながら出てきた監督におそるおそる「何かあったんですか?」と聞くと「審判がナガツカの退避のタイミングが早すぎると言っている。日本のチームスプリントは、今日でフィニッシュだ」と。

UCIルールのチームスプリントの項にある記述はこうです。

-下記の違反を犯したチームは最下位に降格されるものとする。

  1. ライダーが、そのライダーが先頭である周回が終わる15m以上前に退避した場合。
  2. ライダーが、そのライダーが先頭である周回が終わって15m以上退避しない場合。
  3. ライダーが他のライダーを押した場合。
ビデオを見せてもらうと、確かに微妙ではあります。でも、明らかに退避していると見えるのはそのあとのことで、これを違反としてしまうと、他のチームも引っかかるところがあるでしょう?と思えてきます。
 翌日、再度、他のチームのビデオも見せて「これは、どうなんだ?」などと異議を申し立てたりもしたのですが、「退避が故意であるか、故意でないかの違いがある」というなんとも曖昧な理由で受け入れられなかったようです。
「じゃぁよぉ、長塚選手が15m前で故意に退避したってどーやってわかるんだぉ?アアン?」と言いたくもなるわけなんですが、審判の裁定がくつがえるのは、どのスポーツでもなかなか難しいことですよね。それやっちゃうとキリがないですからね。それにしても後味が悪い。でも、腐っていてもひとつもいいことはないので、気持ちを入れかえて、「次は目にものを見せてやる」と決意するしかないですね。
伏見、井上の中を割って、マレーシアのアワンが突き抜けた
伏見、井上の中を割って、マレーシアのアワンが突き抜けた
銀メダルの伏見選手に笑顔なし
銀メダルの伏見選手に笑顔なし
 いやー、しかし、このアジア選手権、獲れると思っているものがなかなか獲れない。短距離種目で金ラッシュを期待するのは、当然のような気がしますが、そうはいかなかったですね。エリートクラスはチームスプリントをはじめとして、ケイリンも金が獲れませんでした。1キロTTもメダルなし。女子のケイリンでは佃咲江選手が銀メダルを獲ったものの、これも金が欲しかったところです。男子ケイリンの決勝は、見ていた私も4コーナー、いやゴール直前まで「伏見俊昭選手が優勝」と思っていたので、ゴール前にマレーシアの若手、19歳のアジズルハスニ・アワンが中割気味の急襲で差したときには開いた口がふさがりませんでした。
 伏見選手は自分を引っ張ってくれた「井上昌己選手とワンツーで」という気持ちが強く、自分の内側にいる井上選手を守ろうと外を気にしていたので、逆に内が甘くなってしまい井上選手との中を割られてしまいました。世界のケイリンで「競輪道」がわざわいしてしまった形です。スプリント系の種目では日本はアジア王者ですから、当然マークはされるわけですが、他の国は死に物狂いでとりに来ているということの証明ですね。もちろん、一番悔しかったのは伏見選手だったことは、試合後の表情からもわかりました。
ジュニアのチームスプリント3人。3位のタイペイチームから一緒に記念撮影を申し込まれパチリ
ジュニアのチームスプリント3人。3位のタイペイチームから一緒に記念撮影を申し込まれパチリ
北津留選手。最近、表情も頼もしくなってきた
北津留選手。最近、表情も頼もしくなってきた
 短距離で期待通りの活躍をしてくれたのは、北津留翼選手、渡邉一成選手のスプリントワンツーぐらいでしょうか。一方、ジュニアはよく期待にこたえました。ケイリンは深谷知広選手、雨谷一樹選手が金銀、チームスプリントは雨谷、深谷、山下一輝選手で金、スプリントは雨谷選手が銀、深谷選手が銅、1kmも深谷選手が銅、スクラッチも吉田隼人選手が銅。彼らにはいい意味で「慣れ」がありませんから、がむしゃらです。「この大会のレベルはこれぐらい」と知りすぎているエリート組とはまさに対照的だったかも知れませんね。
 この大会、日本チームが思ったとおりの成績を残せなかった腹いせで言うわけではありませんが、運営がかなりガタガタでした。特に我々報道に対しては、事前に申し込んだはずのIDが用意されていなかったり、リザルトやスタートリストといった書類(コミュニケと呼びます)が、報道には提供されなかったり(おいおいアジア選手権は仲良しグループのゴルフコンペじゃないゾ。外向きに結果を出さなくてどうする!)、提供されたはいいが、内容が間違っていたり、同じナンバーで違うものが出たり・・・このコミュニケ、競技者にとってもメディア関係者にとってもオフィシャル資料として、最も信頼できるもので、とても重要。コミュニケの提供スピードや正確さは大会運営の円滑さを図るひとつのものさしになるものですが、あるべき場所にないので、大会本部へ行って、「○○のリザルトをくれ」と言っても、出てこない出てこない。それを待っている間に次の競走が始まりそうになったりして、「ちょ、ちょっと競走がはじまる!後でまた来るから見つけといて!」とバタバタしなくてはならない始末。
本当は、こういうシーンばっかりでなくては・・・
本当は、こういうシーンばっかりでなくては・・・
 競技場には、2メートル近い大トカゲが出現して走路を縦横無尽に走り回り、大捕り物劇が演じられるし、あのトカゲ、もしマディソンなんかの競技中に現れたら、大量落車間違いなしです。(まぁ、これは大会運営の不手際とは言えない部分もありますが・・・※大トカゲは捕らえられたあと、料理にされたという噂あり)
 同じアジアの国の悪口をあまり言いたくはないですが、アジアで最も権威のある大会がこういう運営をしていては、アジア全体の自転車競技のレベルを疑われてしまいます。夕方、照明がつくのも遅いし・・・チームスプリントの結果もそのせいじゃ・・・(相当、未練がましい)
正直に言うと、この表彰台が救いだった
正直に言うと、この表彰台が救いだった
「僕たち仲悪いですよぉ」仲悪く見えます?
「僕たち仲悪いですよぉ」仲悪く見えます?
 話を戻しましょう。伏見選手から金メダルをもぎとってしまったのは、マレーシアのアワン19歳。ジョサイア・ヌグの弟分ですが、最終直線での差し脚はとても滑らかで、あいたコースを探す冷静さがありました。マレーシアといえば、これまでヌグしかマークしてこなかった我々ですが、前日の競走でも同じレースに乗った井上選手が差されて2着になっており、もっと注意深く見ておかなくてはならなかった選手でした。
 さて、先ほど期待通りの結果だったと言ったエリートクラスのスプリント。決勝の日本人選手一騎打ちでは、2本続けて北津留選手に軍配があがりました。渡邉選手は「北津留は強いですよ。しかも、アイツ普段マウンテンバイクなんかにも乗ってるじゃないですか。このデコボコバンクは北津留用ですよ!」と走路の状態があまりよくないことにもひっかけて冗談めかして言っていました。一方、北津留選手は「今日はなんとか勝てましたけど、渡邉さんのスピードにはかなわないし、まだまだ頑張んないとですね」と謙虚です。「僕たち仲悪いですよー(笑)」といいながら、自分たちの競技が終わった後、2人仲良く並んでスタンドから他の競技を観戦する姿はほほえましくもありました。パワーとスピード、お互い持ち味が違うだけに、2人が切磋琢磨できれば揃って、さらに上を狙っていけそうです。
飯島、盛のマディソンチーム。タッチの姿も様になってきてカッコイイ
飯島、盛のマディソンチーム。タッチの姿も様になってきてカッコイイ
 中長距離種目。こちらは、スプリント系種目と違って、アジアにもライバル国が結構ありますから金は獲れなかったものの健闘したといえるのではないでしょうか。マディソンでは飯島誠・盛一大選手チームが銀、ポイントレースは盛選手が銀、飯島選手が銅、スクラッチでは角令央奈選手が銀、女子ポイントレースで和田見里美選手が銅。内容的にもよいレースが多く、今後に期待がふくらみます。なかでも角選手のスクラッチは、前に出るタイミングといい、積極的にレースの主導権をとりに行く姿勢といい「魅せるレースだった」と評価したいと思います。
 オリンピック出場権獲得に向けてアジア選手権では、獲れるところをしっかりとって、ポイントにゲタを履き、本番とも言えるワールドカップ以降、心に余裕を持って戦おうというつもりが、正直、楽ではなくなってきました。
スクラッチ銀メダルの角。積極果敢な走りに応援側もうれしくなった
スクラッチ銀メダルの角。積極果敢な走りに応援側もうれしくなった
 日本トラック競技チームに対して、もし私の要望を伝えさせてもらえるなら(「そんなことは、もうやっている」とも言われそうですが)オリンピックの選抜要領の“具体的”確認をチーム全体でやってほしいです。なんとなく、「この大会は落としてはいけない大会だ」ということはわかっていても、取りこぼすとどれぐらいのダメージになるのかが、数値的に見えていない気がします。数値的に見えないとチーム内に温度差が生まれます。
 昨年のポイントランキングを見ながら、ライバル国ではどういったメンツがどれぐらいのポイントを獲ってくるのか、選抜されるレベルに達するにはあとどのくらい必要なのか、その点数をとるには、具体的にどの大会で何着をとらなくてはならないのか、このようなことをもっと具体的にシミュレーションすると、選手もスタッフも、もっとハッキリ見えるのではないでしょうか。もちろん、オリンピックに関係する今年と関係しない昨年の例では各チーム心構えがちがいますから、昨年より厳しく見積もっておかなくてはならないのはもちろんのことですね。
 なにか、ビジネスのスキームみたいですが、目標設定と達成度を数値できっちりと見ていくようなことが今は必要な気がします。
タクシーの天井にも仏教の影響が・・・交通安全のお守り??
タクシーの天井にも仏教の影響が・・・交通安全のお守り??
 今回、日本以外のアジアの国に久しぶりに行きましたが、また文化が違って本当に面白いですね。ホテルについて、一番に目に入った注意書きが「No Durian(ドリアン持ち込み禁止)」ですからね。どんだけぇ~?!ですよね。
 仏教国タイでは信心深い人が多く、街角のそこらじゅうにまっ金金の仏像があり、みんながお祈りしています。タクシーなどに乗っても、経文みたいな文字が天井に書いてあったり、お札が張ってあったりと、乗っているだけで苦しくなってくるんですよ。ううぅぅっ(お前は悪霊か!)
 さてタイといえばマッサージ、マッサージといえばタイですが(ホンマか?)もし、みなさんタイに行くようなことがあれば、絶対行くべきですよ。1時間160バーツ、およそ640円。2時間で1500円しないんですよ!信じられます?おばちゃんが(・・とは限らないか)満面の笑みでヒザ、ヒジ、足で踏むなど身体のいろんな部分を動員してマッサージしてくれます。気持ちよくて枕によだれがつきます(汚いなぁ、もう)ただ、タイ式マッサージって、ちょっと関節技チックなところがあって、「大丈夫、これはマッサージだ」ということがわかっていても、身体が自然に反応してガードの態勢をとっちゃうんですよね。
 最初は「ノーノー、リラックス、リラックス」と笑いながら言っていたおばちゃんも、あんまり何度もやるのでしまいには、ペシッ!と平手でたたかれるようになりました(もはや目が笑っていない)だぁーってぇ、身体が反応しちゃうんだもぉぉん。「いかん、いかん。おばちゃんのなすがままにならなくては・・・」この微妙な緊張感のなか、受けるマッサージもまたよかったです。
 日本チームの選手たちも受けたかしら?そうか、チームにはスゴ腕のマッサーの方たちが帯同しているから、そんな必要ないか・・・しかしスポーツに才能のない私のような一般ピーポーは2時間1280円でおばちゃんの関節技(だから違うって)を受けるのがベストということになりますよね!
団体追い抜きでの日本チーム。並んだニューデザインのユニフォームが美しい
団体追い抜きでの日本チーム。並んだニューデザインのユニフォームが美しい
 おぉぉ!そうそう!重大なニュースを忘れていました!この大会から日本ナショナルチームのジャージーがリニューアルしました!(これって、はじめのほうで報告すべきことじゃ・・・・?)これまでの青と白を基調としたものから、日の丸イメージの赤白系にフルモデルチェンジです!まだ、目が慣れていないので、集団走行の時など、つい青白を探してしまうのですが、今度のもウルトラマンみたいでチョーカッコイイですよ!特に走っているときに横から見ると絵になります。次の大会では、パフォーマンスもウルトラマン並みを期待です!
 うーん、アジア選手権については、もっと言いたいことがいっぱいあった気がしましたが、チームスプリントの裁定と大会運営への憤り、さらに暑さにやられてなんか忘れたぁ。脳みそにもマッサージが必要だったか!おばちゃ~ん、ボクの頭に関節技かけてぇ!!!
 
TrackMania
 
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