デュッセルドルフ通信 2008年3月4日
オリンピック枠、他国は続々確定。残るは世界選。
最後の意地を日本は見せられるか
 
人魚像。北の海を見つめる姿が悲しげ
人魚像。北の海を見つめる姿が悲しげ
 制覇してきましたぁ!世界3大ガッカリ!コペンハーゲンの人魚像で完了です。「世界3大ガッカリ名所」ってご存知ですか?いろんな説があるらしいんですが、誰が言うのを聞いても入っているのがシンガポールの「マーライオン」、そしてコペンハーゲンの「人魚の像」。3番目がいろいろ変わるんですが、ベルギー・ブリュッセルの小便小僧だったり、ドイツ・ライン川のローレライだったり、シドニーのオペラハウスだったり・・・
 個人的感覚でいうと、シドニーのオペラハウスは素晴らしい気がするんですけどね。ブリュッセルの小便小僧君もなかなかですよ。いつ見ても違う服を着ているし、相当なおしゃれさんです。ブリュッセルが包囲され、城壁を爆破しようと敵が火をつけた導火線におしっこをかけて消し、ブリュッセルを守った英雄に由来するものですから、このヒーローをガッカリなんて呼んじゃかわいそうです。でも、導火線に火がついたときにちょうど尿意をもよおしてよかったですよね。これ、おしっこに行った直後のタイミングだったりしたら、今頃ブリュッセルの歴史が変わっているかもしれませんよね。スポーツの大会ならドーピングテストも、スポーツドリンクなどを飲ませたりして出るまで待ってくれますが、導火線は待ってくれませんからね。なかなか出なくって、頑張っているときに敵から取り押さえられでもしたら、すごく不名誉な姿で捕まることになりそうですよね。そのリスクをかえりみなかった、ジュリアン君こと小便小僧はやはり、私的にはナイスだと思うんですね。
 「マーライオン」についで、かなりしっかりとガッカリに食い込んでいる「人魚」ですが、実際見た感想は「彫刻自体は悪くない」です。ただ、その置かれている場所がなんとも寒々しく、バックには工場の煙突なんかが見えたりして、確かに興ざめな雰囲気は否めませんね。しかし、この人魚も何者かの手によって過去2回にわたり首を落とされたり、さらには腕をもがれたり、挙句の果てに数年前には爆破されて粉々になったりしたそうですから、残酷なことをする人もいるもんですね。アンデルセンの人魚姫も悲しいお話ですが、この人魚像の過去も涙ぐましいです。そのような目にあっても必ず復活してくる不屈の精神も見上げたもの。こう考えるとガッカリではなくなります。
 私にとっては、この人魚を見たことで、3番目に「ローレライ」が入ろうと「オペラハウス」が入ろうと「小便小僧」が入ろうと、なんでも来いの3大ガッカリ名所制覇をなしとげたということで、なんかすごい達成感あります!やったどぉぉ!
 「オレも、居酒屋のトイレでマーライオンの背中さすったことあるよ」って言っている人!それ、マーライオンじゃないですよ。よく似てますけどね。どちらかというと大トラです(うまいっ!)
デンマークは女王が治める王国
デンマークは女王が治める王国

かわいらしい建築物が並ぶ
かわいらしい建築物が並ぶ
オリンピック出場が決まったデンマーク、マディソンチーム
オリンピック出場が決まったデンマーク、マディソンチーム
とにかくみんな自転車。老若男女自転車
とにかくみんな自転車。老若男女自転車
自転車宅配便も多い
自転車宅配便も多い
 さて、コペンハーゲンに行ったのは、「ガッカリ達成」のためではありません。ご存知のとおり、07-08シーズンワールドカップ最終戦コペンハーゲン大会。コペンハーゲンのあるデンマークは高い山がなく、なだらかな地形で自転車に乗りやすい環境にあるためか大変自転車がさかんなお国柄です。この真冬の時期にも、自転車に乗る人がたくさん!整備された自転車道、無料の自転車貸し出しシステムなど、どこをとっても自転車に乗るのに最適な環境。だから国民は自転車に乗るのが大好き。だからなのか強い選手がたくさんいます。 
 昨年のツール・ド・フランスでリーダージャージーのマイヨ・ジョーヌをまとっていながら「ドーピング検査のがれ」の疑惑でレースから除外されたミカエル・ラスムッセンはデンマーク人ですし、ツール・ド・フランス優勝経験もあり、プロチームCSCの監督で、現役時代ドーピングを行っていたことを昨年カミングアウトしたビャルヌ・リースもデンマーク人・・・って、不名誉な紹介ばっかりになっちゃいましたね。では・・・このワールドカップではミカエル・モルコフとアレックス・ラスムッセン(ミカエル・ラスムッセンじゃないよ。まぎらわしいですけど)のコンビがマディソンを優勝しワールドカップ総合優勝でデンマークのオリンピック出場を確定!自転車の国の面目を躍如しました。どちらかというと、長距離に強い国ですよね。
 自転車に乗るのもそうですが、競技を見るのも好きな国民です。昨年スカンジナビア航空に乗ったときに、男性のキャビンアテンダントに「今日のツールの結果知ってる?」と聞くと「オレはスウェーデン人。(他の乗務員を指差して)アイツがデンマーク人だから、アイツに聞いてくれる?」といわれた経験があります。この会話からもデンマーク人の自転車好きは多くのヨーロッパ人が認めるところだということがわかりますよね。
 「国籍が自転車好きによく直結するなぁ」とそのときは思いましたが、その乗務員はツールの結果をよく知っていましたし、私が誰かにスーパーボウルの結果を聞かれたら、「アイツがアメリカ人だから、アイツが詳しいよ」と言うと思いますから、なんとなく納得。
 前置きが長くなりましたが、ワールドカップ最終戦は、自他共に認める自転車王国での開催。コペンハーゲンでのトラック競技の国際大会は2002年の世界選手権以来となりました。
 今回はまたまた日本チームに事件が。もうだいぶたって少し痛みも和らいできたころに再度傷を開くようなことをしたくはないのですが、伏見俊昭選手がコペンハーゲンのチーム用オフィシャルホテルへのチェックイン時に大事なものがたくさん入ったバッグを盗まれるという事件にあいました。そのバックには財布、パスポートの他、大切な思い出の品がたくさん入っていたらしく、伏見選手の落ち込みようといったら、ありませんでした。
 私も以前にパソコンやパスポートなどが入ったバックパックを盗まれたことがありますから、気持ちはよくわかります。「なぜそういう方法で儲けようとするんだ?」と、人間不信におちいりますよね。で、今頃その犯人が、大好きなガッキーの写真を私の財布から抜いて(中学生じゃないんだから、そんなの財布に入れとくな!)満足そうに眺めたりしていると思うと「あ゛~!テメー、このー首絞めてやるからこっち来い!ガッキーはオレのだぁぁ!」と・・・あ、すみません。つい感情移入して、自分のことになっちゃいました。盗まれたのは伏見選手でしたね。
 「お金は戻らなくてもいいから、思い出の品は返して欲しい」と、伏見選手は繰り返し言っていました。「盗まれた思い出、プライスレス」この事件があったことで、日本チームの間では「プライスレス」という言葉が流行語になっていました。決戦の地に到着してすぐにこのような目にあっては士気もガタ落ちですよね。他の国のチームも盗難にあったと聞いていますし、もしこれが自転車競技の大会があるということを知って、それに参加する選手を狙った計画的な犯行だったとしたら、本当に許せませんね。
 なんの慰めにもならないかもしれないけど、伏見選手にこう言いたい。「きっと犯人はどこかで、プライスレスな代償を払うことになりますよ」すでに、バッグをとった帰り道に犬のウンコを踏んで、そのまま車に乗り込み、アクセルやブレーキにもついちゃって、車がずっと臭いぐらいの目にはすでにあっているはず!(お金で解決できそうなんですけど?)うんにゃ、これから、もっと怖い目にあいますよー。「犯人に告ぐ!今のうちに盗んだもん、全部返しなさぁ~い!!(ゼーゼー、ハァハァ)」
真ん中がケビン・シロー20歳。オリンピック出場決定
真ん中がケビン・シロー20歳。オリンピック出場決定
 怒りはおさまりませんが、先へ行きましょう。ワールドカップ4戦がすべて終了しました。今シーズン、日本チームにメダルはひとつもなし・・・「私の現地での応援が足りないのだろうか」と申し訳ない気持ちにもなってきます。選手たちの頑張りはそばで見ていて良く知っているだけに、まだ結果に結びついていないのは残念としかいいようがないですね。一番がっかりしているのは選手たちでしょう。
 4戦が終わり、他国のチームではすでにオリンピック行きが確定した選手が出てきています。オリンピック出場者選考の条件の一つ、ワールドカップチャンピオン。ワールドカップが終わったことにより、新たに個人種目7、団体種目3のイスが確定です。例えばケイリンはイギリスのクリス・ホイ、スプリントはフランスのケビン・シロー、ポイントレースはイギリスのクリス・ニュートンなどです。
真ん中がトゥルナン、右がボジェ。表彰台はフランス人だらけ
真ん中がトゥルナン、右がボジェ。表彰台はフランス人だらけ

白いリーダージャージーがクリス・ホイ。先行逃げ切り。攻略きわめて難
白いリーダージャージーがクリス・ホイ。先行逃げ切り。攻略きわめて難
 個人種目に関しては、ワールドカップの総合優勝者の枠は国にもたらされた枠ではなく、個人にもたらされた枠なので、チームメートと枠を争うことなく、オリンピックに出場できることになります。チーム内に強い選手がゴロゴロいる国の選手にとっては、これによってオリンピック出場が早いうちから保証されるので、是非欲しかった枠だといえます。 
 その証拠に、はじめシローはスプリントと同じ日に行われるケイリン・イベントに出場を表明していましたが、出場者確定直前にキャンセルしています。これは「同じ日に何度も走ることを避け、スプリントに集中したい」という気持ちの表れで、賞金の高いケイリン・イベントを蹴っても、スプリントの総合優勝が欲しかったということですよね。
 ここで、優勝できていなかったらどうなるか。スプリントの出場枠をめぐって、パッと頭に思い浮かぶだけでも、トゥルナン、ブルガン、ボジェ、ペルヴィスなどと争うことになるのですから、早く安心したい気持ちはわかりますよね。少しずつ、漏れ聞こえてくる情報によると、トゥルナンは3月に行われる世界選手権のチームスプリントの走者には選ばれなかった(必ずしもそれが、オリンピックのチームスプリントに出られないことにはならない)らしく、大変がっかりしているそうです。オリンピックの枠を得ることにそれほど苦労しないような国は、逆に国内での出場権争いが激しいということで、やはりオリンピックとは本当に狭き門なのだなぁということを実感します。
 イギリスにしても同じです。今シーズンのホイは、神がかって強いので、オリンピック出場に口を挟む人もいないと思いますが、まだ出場が決まっていないメンバーがマクリーン、エドガー、クランプトン、ケニー、スタッフ、クアリーとゾロゾロいます。
 一方、オリンピックの権利と直接関係はないのですが、今シーズン、ワールドカップの総合優勝国はオランダでした。これは、ワールドカップ4大会において、その国のとった成績を総合した結果で決まります。国の総合優勝は男女、スプリント・エンデュランスを問わず強いということを意味しますから、トラック競技におけるオランダという国のバランスのよさを裏付けています。そのなかでもオランダの総合優勝に最も貢献したのは、女子スプリント系のウィリー・カニスでしょう。ケイリン、スプリント、チームスプリントの3種目で総合優勝を果たした彼女は、コンスタントに出場し、コンスタントに勝ちました。もちろん彼女も女子スプリントのオリンピック出場枠を総合優勝により手にしたひとりですね。世界選手権、さらにはオリンピックでも注目度大の女子選手です。
 カニスは2006年のBMXブラジル・サンパウロ大会での世界チャンピオンですが、以前にもふれたように、世界のトラック競技、特にスプリント系の有力選手のなかにはBMX出身の選手が非常に多いということが言えます。最近、力をつけてきたイギリスの女子選手シャネーズ・リードは、記憶も新しい2007年のBMX世界チャンピオンですし、今、「超」がつくほど強いクリス・ホイもBMXの競技経験を持っています。
 強いトラック競技選手を生むひとつの方法としてキッズクラスのBMXの育成を行うというのも、ひとつの方法なのかも知れませんね。
世界選も熾烈な争い必至。がんばれニッポン
世界選も熾烈な争い必至。がんばれニッポン
 
 
 
 さて世界選手権まであとわずか。これがオリンピック前の最後の戦いです。舞台はイギリス、マンチェスター。すでに男子ケイリン、男子マディソン、女子スプリントなどが行われる3月29日(土)のチケットはソールドアウトになっています。昨シーズンのワールドカップ終了後から、世界選に向けて板の張替えが行われた新しいトラックで、出場者にとっても、観客にとってもまさにプライスレスの戦いが繰り広げられることでしょう。3月26日(水)開幕。乞う注目!そして、是非、日本チームにも皆さんの念を送っていただけたらと思います。みんなの期待を背負って羽ばたけジャパン!!
 
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