デュッセルドルフ通信 2008年7月29日

オリンピック秒読み。全力で戦うのみ。

 
  夏ですねぇ!日本は猛暑みたいですね。こちらデュッセルドルフはついこの間まで、寒い日が続いて、気温12℃なんて日もあり、「もう夏おわりですか?」と、聞きたくなりましたが、ようやく少し夏らしくなってきました。
 しっかし夏といえば、夏フェス(夏に行われる野外音楽フェスティバルのこと)ですね。あれ?その反応は・・・ちょっと、強引すぎましたか?日本だと先週終わったフジロックフェスティバルや、サマーソニックなどナイスな夏の音楽祭りがたくさんありますね。しかも、ロックに勢いがありますよね。ドイツにもいくつか夏フェスがあるみたいなんですが、なんか日本のほうが盛り上がっている気がします。
  そういえば、ドイツって、あんまりROCKって感じじゃないなぁと、ドイツ出身のロックアーティストを思い浮かべていたら、いました!MSG!マディソン・スクエア・ガーデンじゃないですよ。マイケル・シェンカー・グループ。ちょっと古いので、ご存知ない方もいらっしゃると思うんですが80年代にハードロックで一世を風靡したギターの神様、マイケル・シェンカー率いるバンドです。思い出したら、なんか懐かしくなって、i-podにダウンロードしちゃいました!いや~、家に帰ってエアギター弾きまくりましたね(相当異様な雰囲気だったと思います)もう、ギターがわりのほうきをV字型にカットしちゃおうかと思いましたもんね(注 マイケル・シェンカーは“フライングV”と呼ばれるV字型のギターを使っていた。今だとレニー・クラヴィッツとかがつかっているヤツ)。
「空気を弾くな、ギターを弾け」とおっしゃっているエアギター撲滅委員会委員長、野村義男先生すみません。でも、私的には「空気だろうが、ギターだろうが、楽しいものは何でも弾け。風邪はひくな」(なんか別れ際の親戚のおじさんの言葉みたいになっちゃったけど)こう思うわけです。もうーエアサイクリングとか、やっちゃいます!(こらこら、そこは空気をこぐな!自転車をこげ!)
 さてさて、すみません。完全に趣味の世界に走りましたね。なんで、ROCK、ROCK言ったかというと、自転車競技、特にトラックサイクリングにはロックが最も合うと思ったからなんです。あの疾走感とスピードに満ちた展開、どこかアドレナリンのでるようなワクワク感や、ちょっとデンジャラスな香り。これ、ロックですよねぇ。
  前回のお約束どおり、ロックな日本のトラック侍たちが、フランスはボルドーでオリンピックの直前合宿をおこなっていましたので、お邪魔してきました。すでに終わりにさしかかっていましたが、体調不良者が続出したと聞いた前半に比べ、みんな調子が上がってきていて、いい感じに見えました。
エンデュランスチーム。練習周回数も多く、追い込んでいた
エンデュランスチーム。練習周回数も多く、追い込んでいた

バイク誘導でスピード練習をする伏見選手
バイク誘導でスピード練習をする伏見選手
  トレーニングは午前と午後の2部制で行われていて、午前がウェイトかロードトレーニング、午後がトラックでのトレーニングの形で行ってきたようです。トレーニングキャンプなので、当たり前といえば当たり前なのですが、かなりきっちりとスケジュールが組んであって自由時間はあまりない雰囲気でした。合宿も終盤に入り、ハードに1ヶ月近くトレーニングを続けてきたため、身体にも負担がかかっていたことでしょう。
 渡邉一成選手は(これは自転車乗りの宿命ではありますが)“男の子のデリケートな部分”がすれてかなり痛い思いをしているようでした。その部分を他の選手が覗き込みながら、「あのクリームがいい」だの、「インナーパンツをはけばかなりサポートしてくれる」だの、ああでもないこうでもないと股間を前に議論しているのが(あえて写真は公開しません。ご想像ください・・・こらーっ!想像しすぎ!)すごい光景ですが、自転車ならではのシーンでしたね。
気合は入っているが、あくまで練習はなごやか
気合は入っているが、あくまで練習はなごやか
 トラック競技オリンピックチームのうち、北津留翼選手はカゼの回復が思わしくなかったため、佃咲江選手はボルドーでの練習中の事故によるケガのため先に日本に帰って別メニューでの調整となっていたので、最後までボルドーにいたのは、スプリント系、伏見俊昭選手、長塚智広選手、渡邉一成選手、永井清史選手。エンデュランス系、飯島誠選手、和田見里美選手の6人でした。
 私としたことが、前回「みんな集中しているだろうから、星飛雄馬のお姉さんのように見守ってきます」といったのに、選手たちの姿を見たらうれしくて、そんなことはコロっと忘れ「みんな元気ぃ~?」とチョーシよく入って行っちゃいました。選手たちもあたたかく迎えてくれたので、よかったのですが、あやうく“空気を読まない人”の烙印を押されるところでした・・・みんな気合は入っていたものの練習はなごやかな雰囲気のなか行われていました。
 私がおじゃましたときは、ボルドーの子供たちが、オリンピック選手の姿を見ようとやってきていて、もがき練習のブレイクに入った選手たちを見てぞろぞろ近づいてきました。そして、伏見選手の前に行列が・・・一番前の子がノートの切れ端みたいなものを持っています。「あ、なに?サイン?ハイハイ」と伏見選手。「おぉ!やっぱりグランプリを2回も獲ってる人はフランスでも人気あるねぇ~!」ほかの選手が冷やかします。しかし、最初の子のサインが終わった途端、後ろに並んでいた子達もサーッといなくなり、子供たちの背中に声をかける伏見選手「あ、あれ?ひとり?」その場にいた私も「なんでやねん!」とウケました。
 その後、他の子たちもまた伏見選手や他の全員の選手にサインをもらいにきたのですが、最初に伏見選手の前にできた行列はなんだったのでしょう?でも、自然に雰囲気を読んだのなら、伏見選手は日本チームの大将ですから子供たちも鋭いですね(笑)
チームスプリント合わせ練習
チームスプリント合わせ練習

合わせ練習の映像をチェックする選手たち
合わせ練習の映像をチェックする選手たち
  チームスプリントは3人による合わせ練習もしっかり行われていました。
1走 長塚選手「う~ん。ちょっと調子出てきた!なかなか速いっしょ」
3走 永井選手「速いっすね。こっちはもう必死ですよ」
長塚選手「でも、なんか2コーナーの立ち上がりがスベるんだよね。なんでだろ?内に踏みすぎ?」
2走 渡邉選手「どこも角度は一緒だから関係なさそうですけどねぇ」
会話を聞いていた飯島選手「面白い話しながら行ったら、すべらないんじゃないの?」 注:(C)人志松本
長塚選手「ちょっとマコトさん、あと100周走ってきてもらっていいですか?」
こんな感じで練習は進んでいっています。(どんな感じだ?)
 もう直前なので、調子のよしあしを聞くのも、野暮な話です。ですから各選手にこの合宿を振り返って、よかったこととつらかったことについてコメントしてもらいました。
伏見選手「この合宿ですか?長塚君がまじめすぎてビックリです(笑)カゼの状態でスタートして、練習で落車と波乱続きの序盤でした。でもだんだん良くなって終わってみればあっという間ですね。やっぱりみんな追い込んでいるんで疲れがたまっていないと言えばうそになります。これから、最終合宿が前橋でありますが、まずいいタイムを出していい気分で北京に入れるように北京を頂点に逆算しながら調整していくつもりです」
長塚選手「やっぱり250mのバンクで集中的に練習できたのがよかったと思います。チャレンジ・ザ・オリンピックは別として、250mは本気で走るのは4年ぶりですから。感覚を取り戻すのに大きく役立ちました。つらかったこと・・・うーん、特にないですね。最初にカゼをひいたのはきつかったですけど。いまだに少し咳がでます。長引きますねぇ。結核かなぁ。死なないようにしないといけませんね(笑)」
スプリントチーム
スプリントチーム
渡邉選手「安定して体調を壊さずにこれたことがよかったです。トレーニングについてはもっとハードになると覚悟していたので、ちょっとものたりないぐらいでした。そうそう、ウェイトで大幅にMAX(最大負荷値)を更新しました。これもうれしかったです。長塚さんのダッシュにもなんとかくらいついていけるようになってきたし、いい感じです。つらかったのは練習で2回も落車して、ちょっと心理的にどこか恐怖感のようなものが生まれたことですね。もうけっこう時間がたちますがバンクの上のほうを走るとまだしっくりしない感じです。あと、フランス語を覚える気マンマンで来たんですが、思った以上に覚えられなかったです。ちょっと悔しいなぁ」
マニエ監督にアドバイスを受ける永井選手
マニエ監督にアドバイスを受ける永井選手
永井選手「前回のパースでの合宿に比べて練習量が多かったのできつかったですね。でもスクワットで、鎖骨を折って以来の最高をあげられたのはうれしかったです。180キロ。折る前は220とか上がってたんですけどね。スクワットの値が上がっているのにそれがすぐにタイムにつながって来てないのが残念なんですけど。(3走を走ったとして本番のチームスプリント目標ラップは?と聞くと)13秒2です!」(永井選手が今年の世界選で出したラップが13秒474でラップとしては3位。1位の選手が13秒345)
飯島選手「マタが痛いし、ケツが痛いです。まぁ、これは自転車に乗る以上仕方のないことなんで・・・。よかったことは、調子が上がってきていることですね。なかなか手ごたえを感じます。オリンピックでは集中しながらも気負いすぎないように。スタートラインに立ったときには、それまでやってきたことで、ある程度勝負は決まっていると思うんで、“俺はこれだけやってきたんだ”と、胸をはってスタートラインに立てるようにしたいと思います。2日目がポイントレースとケイリン。もちろん、初日のチームスプリントは頑張ってもらうとして、伏見と一緒にベテラン2人がいい流れをつくれるように頑張ります」
合宿の紅一点、和田見選手。がんばれ!
合宿の紅一点、和田見選手。がんばれ!
和田見選手「こちらへ来て、暑すぎないし、気候がいいおかげもあり、練習に集中出来ました。取材などもなく、練習をするには本当にいい環境だったと思います。佃選手が(ケガのため)帰ってしまって、さびしくなりました。はじめからひとりなら、まだ覚悟ができたと思うんですけど、部屋も一緒で仲良くやっていたので、残念でした」
さぁ、このあとのトラックオリンピックチームのスケジュールを紹介しておきましょう。
すでにほとんどの選手はボルドーから日本に帰り日本オリンピック委員会の結団式や各壮行会に出席しているころでしょう。その後7月29日~8月8日までの間にそれぞれの選手のスケジュールにあわせて順次前橋での最終合宿に参加。8月10日に北京に向けて旅立ちます。飯島選手は今、ボルドーからブルターニュに移り、ロードのステージレースに参加後、前橋の合宿に合流です。すごいスケジュールですよね。
オリンピック本番は、
8月15日男子チームスプリント(予選・決勝)
8月16日男子ケイリン・男子ポイントレース(予選・決勝)
8月17日女子スプリント・男子スプリント(予選)
8月18日女子スプリント・男子スプリント(準々決勝)、女子ポイントレース(決勝)
8月19日女子スプリント・男子スプリント(準決勝・決勝)
という日程です。
マニエ監督の背中。JUST DO IT そう、もうやるしかない
マニエ監督の背中。
JUST DO IT そう、もうやるしかない
 ロードレースの話をするとツール・ド・フランスでは、平坦ステージの多かった前半、区間優勝の山を築いたマーク・キャベンディッシュ(チームコロンビア・イギリス)が絶好調のさなかツールを途中で切り上げました。つい数ヶ月前、マンチェスターの世界選手権で彼がブラッドリー・ウィギンスとともにマディソンを優勝したのは記憶に新しいですよね。ツールを途中棄権したのはオリンピックのトラック競技に備えるためだとか。ツール・ド・フランスを途中でやめて来ちゃうんですから、アスリートたちにとってどれぐらいオリンピックが大切かわかりますよね。あたり前だけど、本気なのは日本だけじゃない。
 スーパーアスリートたちが全身全霊をこめて戦う夢の祭典!ついに秒読み段階です!あー、そわそわする~っ!!とりあえず、帰ってスクワットします。なんの役にも立たないけど、とりあえずします!みなさん、日本チームを一緒に応援しましょう!
 
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