デュッセルドルフ通信 2008年8月25日

燃えた!感動した!北京オリンピック

 
老山競技場への道にあったオブジェ。
老山競技場への道にあったオブジェ。

こちらもオブジェ。スピード感あります。
こちらもオブジェ。スピード感あります。
 いやぁ、いささか燃え尽き症候群気味です。終わりましたね、オリンピック。
 はじめに永井選手銅メダル、本当に素晴らしかったです。特に決勝での積極果敢な走り。私はビデオを撮りながら観戦してたんですが、後で決勝のビデオ見返してみると私(私のひとりごとも一緒に入っているんですが)、冷静さのかけらもないですね。
 私のひとりごとリプレイ-永井選手がスタート後の位置取りで6番手まで下がってきたときから-
「あ~、そーなっちゃいましたか。ウ~ン。それで、どーせエドガーが(そのときペーサーの後ろはイギリス、ロス・エドガー)クリス・ホイを入れるんでしょ・・・ほぉら来た・・・まぁーったく、強いのは認めるけど、ほんっと、どーしょーもねーなー!(酔ったおっさん口調)」
熱戦の舞台となった老山自転車競技場。すごい存在感です。
熱戦の舞台となった老山自転車競技場。すごい存在感です。
-残り3周、ペーサーのスピードが上がってきて、ホイの後ろにいたエドガーが車間をあけてサポート体制-
 「おい!やっぱそーかよ。やりすぎだぞお前ら!オリンピックだちゅーの!永井くん、もう前出ちゃえ!あ、来た!そうそう、いーよ!積極的だよ!ちゃんと後ろ注意ね!お、ホイさん来た。取れ!後ろ取れ!おし、取りきった!ざまみろ!(ここで残り1周。永井選手はクリス・ホイ選手を2番手で追う形)踏め踏め!うん、大丈夫、お、おぉぉぉぉ!ねばれぇ!たれるなぁぁぁ!@#$*&%!+=*@!!&&んがぁぁ!うおっしゃー3着ぅう!とったメダルぅ!と・・・った?永井くん獲った・・・・あぁぁ、す・・・すごい。獲った(すでに涙声)あ、おぉ、おっ・・おめっ・・・おめでとぉぉぉ!ナガイサイコー!ケイリンサイコー!!あ゛ぁ゛あ゛ぁぁぁぁ・・・(そのあと放心状態でビデオを消すのも忘れているため、無意味にあたりをうろうろしているのが映り、電池切れで終了)」
 笑わないでくださいよ、このリアクション。皆さんのなかにも似たような方、いらっしゃるんじゃないですか?テレビ解説をしていた中野浩一さんも(中継ご覧になった方も多いですよね)「興奮して、何言ったか覚えてない。ありゃ、解説じゃないね。放送、自分で見たくないよ」と言ってました。
 当の永井選手は、いつもはあまりやらないガッツポーズを繰り返し、これまでに見たことのないような笑顔で笑っていました。本当にいいものを見せてもらいました。
一方で、成績はメダルには届かなかったけれど、ここまで頑張ってきた他の選手たちにもお疲れ様を言いたいです。

 まず伏見選手。日本競輪の期待を背負って注目を一手に引き受け、そのプレッシャーたるや、すさまじかったと思います。ケガもありました。永井選手が、今回、チャレンジャーとして大胆な競走が出来たのも伏見選手がいたからこそだと思います。結果はどうあれ、日本競輪界が送り出した最強選手だったことに変わりはありません。
 長塚選手。直前の起用による短い期間での準備。そして「長塚がなんとかしてくれるに違いない」という周囲の勝手な期待。そのキャラクターから、マスコミの注目も集めましたが、競輪そして日本自転車競技の宣伝マンとして大活躍してくれました。これまで、周囲の期待をパワーに変えてきた長塚選手。普通に考えれば決して遅いタイムではありませんでしたが、「長塚選手なら」と、皆が考えてしまいました。もちろん「自分なら、もっといいタイムが出せたはず」と本人が一番悔しかったことでしょう。
 渡邉選手。この4年間、スプリント系チームで最も多く世界の場に出て戦いました。世界に対する思いは人一倍。まだ身体も線が細く、少し頼りなかった4年前。体力もスーパー級だったわけではなく、そのまっすぐな性格から、オーバーワークになってしまったり、連続出場や、スプリントが激闘になって多数回走りになると、身体を壊したりしていました。それが、今では世界の列強と比べても、全く見劣りしないまでに頼もしく成長しました。永井選手とともに次世代の中核という役割を担うことになるでしょう。
 北津留選手。練習方法や自転車のセッティングなど自分なりの考えを強く持っている北津留選手は、チームのなかで悩むことも多かったでしょう。ジュニア世界選2冠。WCC出身。才能を期待されながら、はじめて参加したオリンピックの味は、苦かったでしょうね。しかし、これは通過点だと思います。この経験が次の成功の味を2倍にすることを願っています。闘魂の翼を眠らせないで、羽ばたきましょう。
 飯島選手。トラック中長距離でオリンピック8位。数年前なら考えもしなかったことです。そのデフォルト期待値を押し上げてしまいましたね。今年のワールドカップLA大会でのケガには私も目の前が真っ暗になりました。でも、そこからしっかりとオリンピック出場枠を取り、8位です。しかも、走るたびに見せ場をつくり、どんな展開になろうとも最後まであきらめない。最も走りで語る選手であり、見るものを勇気づける競走をする選手は飯島選手でした。
 あ、なんか気がつけば、卒業式のホームルームでの先生の言葉みたいになってますね。勝手に盛り上がっちゃいました。でも、ここまできたので最後まで続けさせてください。 
 女子の佃選手と和田見選手にとってもオリンピックは大変ハードなものだったでしょう。海外の超一流選手と一緒に走った経験が、あまりなかった2人にとって、あのレベルは刺激というより、恐怖さえ感じさせるものだったと思います。2人ともまだ若いですから、今回の経験を今後にどう活かすのかが試されます。がんばって欲しいですね。
 もうね、ひとりひとり選手のこと思い出しながら書いてるとね、ウルウルして来ちゃうんですよね。ほんとにすみません。なんか笑える話に切り替えますね・・・
 オリンピック参加選手はだいたいみんな選手村に入っているんですが、うまく時間を合わせてもらって、何人かの選手が個別に会って話をしてくれました。そのときの話でもしましょう。
 まず渡邉選手と会えました。他の選手の様子や選手村の様子を聞くと「走り終わった選手も皆それほど、変わってないですよ。あ、翼がひとり、はしゃぎまくってます。今日、選手村でビッグマック5個食ってました」それは、すごい!はしゃぐことと、ビッグマック5個は必ずしもリンクしませんが、重圧から開放された開放感でハイになったのでしょうか。
 「あとクリス・ホイがIOC(国際オリンピック委員会)のアスリート委員会の委員に立候補してます。室伏(広治)さんも立候補してますよ。えーと、あと韓国のテコンドーの選手。その3人には投票しようと思ってます(競技が違えば4人まで投票可能)。そのテコンドーの選手はすごいんですよ。毎朝、食堂で選挙運動してますもん。いろんな国の挨拶覚えて、みんなに挨拶してるんですよ」ちなみに、投票はすでに終了しており、渡邉選手の言っていたテコンドーのムーン・ダエ・サンはダントツのトップ当選。他にロシア・水泳のアレクサンダー・ポポフ、ドイツ・フェンシングのクラウディア・ボーゲル、キューバ・バレーボールのユミルカ・ルイズ・ルアセズが選ばれています。
 この委員会はIOC理事会に対してアスリートとしての立場から意見を述べるもので、日本の代表としての室伏選手や自転車競技代表としてのクリス・ホイ選手にポストが回ってこなかったのはちょっと残念ですね。
 さて、渡邉選手の目はすでに4年後のロンドン大会に向いており、それに向けてのプランがすでに頭のなかにある様子でした。期待大ですね。
 次に伏見選手・永井選手・北津留選手が一緒に来てくれましたが、そのときの会話。
私「選手村では他競技の選手間で交流ってあるんですか?」
伏「うーん、そんなにはないかな。でもせっかくのチャンスですからなるべく交流できるようにしてます」
私「女子の選手とか?女子バレーなんかどうですか?」
伏「みんな、きれいですよ。スタイルがいいです」
私「水泳の種田選手とかすごくかわいいじゃないですか」
永「一緒に写真撮りましたぁ(銅メダルを獲ったときと同じぐらいの笑顔)」
私「おぉぉ!いーなー!」
北「・・・・(-_-;)」←既婚者
私「種田選手って、今地元どこでしたっけ?」
永「神奈川みたいです」
北「神奈川って何県ですか?」←やっと会話に入ってきた
伏・永「神奈川県だよ!!」
北「あ、あぁ、そうですね。いや~、もうダメです。脳が何も考えるなって言ってます」

伏見、永井、北津留選手。お店の店長さんとパチリ。
伏見、永井、北津留選手。お店の店長さんとパチリ。
 そうですよね。これまで、相当のプレッシャーや苦しい練習に耐えてきたんですもんね。ハイになったり、思考が停止するのもうなづける話です。でも、「考えるな」と考えているのは脳のはずで、この表現、なかなか哲学的ですね(笑)
 このあと、お店の人(店長さん?)からのリクエストで写真を一緒に撮ったり、サインを書いたり・・・
若い女性店員(中国人)「ドウメダル、トッタデスカ?」
永「あ、ハイ。まぁ」
店「カッコイイデス」
永「あ、ありがとうございます」
店「シャシン、ワタシモ、トッテイイデスカ?」
永「あぁ、ハイ」
も~、永井選手ったら!なんてシンプルな受け答え!
 「いや~、もう取材に疲れました。このあとも、いろいろあると思うと気が重いです」と、言っていました。必要最小限のことしかしゃべらない永井選手。でも、それでいいんです。だからこそ、出てきた言葉には信憑性がある。ロンドンへの決意。銅を獲ったときのあの笑顔。それで十分!
 そして、最後に長塚選手。開口一番「ホント、すみませんでした。もう少し(いいタイムが)出ると思ったんですけど」
 私なんかに謝る必要全くないんですけど、この辺の義理がたさが長塚選手のもうひとつのキャラですね。これは応援してくれていた人すべてに対するコメントと受け取りました。
  話しているうちに、自転車競技の話から、私の髪の毛の話に。最近、抜け毛が多くて、そのうちなくなるのではないかと思うなんて話をすると「それ、シャンプーです。合成界面活性剤が悪いんじゃないかと思います。いいシャンプーやリンスには、逆に頭皮によくないものが入っていることも多いみたいですよ。僕なんか100円せっけんで洗ってます。髪の毛、バサバサになりますけど(笑)」
私「へぇ~(妙に納得。翌日から、髪の毛バサバサになったのは言うまでもない)」
さらに・・・
私「最近、疲れがとれなくて」
長「これ、飲んでみてください。天然アミノ酸のサプリメントですけど、かなり効きますよ」

 なんか、最後のほうはオリンピック後の意見交換というよりは、私のお悩み相談室のようになってしまいました。しかし、どんな質問に対しても、長塚選手からは常になんらかのソリューションが、すぐに出てくるんですね。アスリートとビジネスマンのマルチタスクが成功しているわけを再確認しました。

とにかくイギリスは強かった。北京でこれですから4年後、ロンドン大会はおそろしいです。
とにかくイギリスは強かった。北京でこれですから4年後、ロンドン大会はおそろしいです。
世界記録続出の今大会。その多くをイギリスが持っていきました。
世界記録続出の今大会。その多くをイギリスが持っていきました。
ヨーロッパ人の観客が多いのも。自転車競技の特徴ですね。こちらはオランダの応援団。
ヨーロッパ人の観客が多いのも。自転車競技の特徴ですね。こちらはオランダの応援団。
 ところで今回自転車競技で、とてつもない大勝利をおさめたイギリス。イギリスの獲った19個の金メダルのうち、実に8個が自転車競技。彼らは「選手強化における徹底した科学の導入の勝利」だと言っています。この裏には国をあげた自転車競技へのサポート体制があります。トラック競技の会場にはクリス・ホイと同じエディンバラ出身のトニー・ブレア元首相が満足げに観戦する姿がありました。
 このような状況をみるにつけ、いくら日本人選手のポテンシャル高かったとしても、数ヶ月という短期間の仕上げで、こういう国と勝負するのは、そろそろ限界にきていると感じられます。日本自転車競技界、スポーツ界が真剣に取り組まなくてはならない課題です。
 日本自転車競技トラック種目の北京オリンピックは永井清史選手のケイリン銅メダル獲得といううれしいニュースもあり、終了しました。今回、自転車競技ファンのみなさんが、この結果をどれほど喜んでくれたことか。今回もすべての選手たちがみなさんの応援に支えられてここまでやってきました。選手になりかわり、お礼を言いたいです。本当にありがとうございました。
 そして、監督、チームスタッフ、サポートスタッフ、全選手を含む日本自転車競技チームへ。感動をありがとう!日本チーム、愛してます!
 ・・・って、自分的にかなり盛り上がったところで終わろうと思ったんですけど、9月にはロードの世界選もあるし、10月からは次のトラック・ワールドカップが始まるんですよね。みなさん、またよろしくお願いします!
 全然、関係ない話なんですけど、私の泊まったホテルの並びに中国式マッサージのお店があって、一度、夜遅くに行ってみました・・・あっ、あのー、あやしいマッサージじゃないですよ。純然たる・・・(何も聞いていないのに、狼狽して説明しようとするのがあやしい)
 90分みっちりマッサージしてもらったわけですが、どうやら中国語で「痛い」というのを「トン」というみたいです。で、想像するに「マ」というのは疑問をあらわしています。(中国語を勉強された方、これ、あってます?)
 中国式マッサージって、わりとグイグイやるので、やるたびに「トンマ?トンマ?」と聞かれます。マッサージをしてくれている彼女は「痛いですか?」と聞いているだけで、何の悪気もないのですが、こちらは背中に乗られて、痛めつけられながら、ばかにされているような屈辱的な気持ちで、うなずきます。
 「トンマ?」「ハイ、私はトンマでございます。ひぃぃ!気持ちいい!もっとしてぇぇ!」
私のなかで「Mの花」がパッと開いたかも知れません。
北京オリンピックのシンボル、鳥の巣。9万人以上収容。歓声があがると地鳴りのようでした。
北京オリンピックのシンボル、鳥の巣。9万人以上収容。歓声があがると地鳴りのようでした。
 ん?あ、あれぇ??いまごろ気づいたけど、北京のホテルのクローゼットにスーツ掛けっぱなしだ!う、うわぁ!忘れてきたぁっ!!なんかスーツケースがスカスカだなぁと思ってたんだよなぁ。あうぅぅ。
 な、ながつかせんしゅ、最近モノ忘れも激しいんですけど、なんか効くやつ紹介してください!!・・・トンマ???
 
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