デュッセルドルフ通信 2008年12月18日

ワールドカップ・カリ大会。
これまでノーマークだったライダーにスポット当たる

 
クリスマスが近づいたカリは、街中イッツアスモールワールド状態
クリスマスが近づいたカリは、
街中イッツアスモールワールド状態
  みなさぁ~ん、メリー・栗スマーッシュ!(シャラポワがイガグリを思い切りスマッシュする姿)or メリー・クリスマうぃっしゅ!(DAIGOの決めポーズ姿)どっちか好きなほうを選んでくださいね。(どっちも選ばんわ!)※DAIGOはすでに「クリスマうぃっしゅ」なんてテレビで言っていることが容易に想像できるので二番煎じの可能性がありますが、こちらはドイツなんで、そこまで把握できなうぃっしゅ!
人口200万人。真ん中に見えるふたつの白い屋根。上に見えるほうがベロドローム
人口200万人。真ん中に見えるふたつの白い屋根。上に見えるほうがベロドローム

ベロドロームの屋根は隙間があり、今宵はお月様もトラック競技観戦
ベロドロームの屋根は隙間があり、
今宵はお月様もトラック競技観戦
 コロンビア・カリに行ってきました!コロンビア・・・なんか治安の悪い印象がありました。「いい時計をしていくなよ!腕ごと持っていかれるゾ」なんて脅す人までいました。スポーツの大会では通常、関係者は「アクレディテーション」といって大会IDの申請をします。そうすると大会の開催委員会から身分証明みたいなものを与えられます。取材する人は取材用ID、ライダーやチームスタッフはチーム用のIDがもらえて「このID、ここは入れるけど、こっちは入っちゃダメ」みたいに管理されるわけですね。
 普通、アクレディテーションに盛り込まれる情報は、名前、国籍、所属団体、属性(例えば「TVディレクター」とか「雑誌記者」とか「選手」とか)などですが、今回のIDには加えて血液型、保険会社名などが付記されていました。
 血液型→輸血のとき必要→流血する→大怪我をする→テロもしくは強盗にあう・・・さらに病院に運び込まれたときに保険があるってことがわからないと医者が手当てしてくれないから保険会社記入・・・この連想ゲームがつながったときに、血だらけになってグッタリしている私の首から下がっているIDを救急隊員が覗き込んでいる図が鮮明に想像できて、すっごく恐れおののきました。
 さらにさらに、着いて早々、日本から来たテレビクルーたちが食事をしていたレストランのすぐ近くで爆弾が爆発するという事件が起こり、めっちゃビビリました。泊まっていたホテルなんて現場から数ブロックのところなんですから。
コロンビアの情報なんてほとんど知らないじゃないですか、知っているのはサッカーのワールドカップでオウンゴールをしてしまった選手が射殺されたことぐらいですからね。やべー、遺言書いとくべきかな?「死んだら、灰は大好きなハワイかカリフォルニアの海に撒いてください」「遺産は・・・あ、そんなもんないからいーや」こんなことまで考えましたよ。
 しかし、実際は、コロンビアいい国でした(すごい話並べたあとに説得力ゼロですが・・・)人もみんな親切で明るいし、会場はおいしいコーヒーただで飲めるし、食べ物はおいしいし。バナナなんてヤバウマですよ(なんで食べ物の代表がバナナやねん)。もちろん、行ってはいけない地域もあるみたいですが、そこをはずせば、それほど怖い目にあう確率は高いとはいえなさそうですから大丈夫(えらい、まわりくどい言い方)。
歯が立たないとわかったことが、収穫と思いたい
歯が立たないとわかったことが、
収穫と思いたい
 さて、大会レポートでもお伝えしたとおり今回、日本チームは学生ライダー4人の編成。結果としては世界のレベルを思い知らされることになってしまったわけですが、4人にとっては、そのレベルを、身を持って知ったということは大変な糧だと思います。ヨーロッパなら大陸選手権に出場すれば、スゴい競走を目の当たりにすることも多いわけですが、アジアではそうはいきません。もちろん全日本トラックやアジア選手権などにでれば、北京を走ったオリンピックチームのメンバーなど日本屈指のライダーや強いアジアンライダーと対戦する機会はあります。でも、このレベルがゾロゾロいる大会というのは、日本のライダーにとっては世界大会しかないわけです。
 この状況におかれて、「雲の上の世界」がはじめて現実になるのです。「雲の上」に自分が上がろうとするのか、現状に甘んじるのかは彼ら次第ですが、実際に見なければ、まさにそこを目指すのは雲をつかむような話しになるので、参加できたことは大きい。4人にはこれをきっかけにリアリティを持って上のステージを目指して欲しいですね。
コロンビアライダーのワールドカップ優勝が今後コロンビアチームにどう作用するのか楽しみ
コロンビアライダーのワールドカップ優勝が
今後コロンビアチームに
どう作用するのか楽しみ
ケイリンを優勝したナルバエス。差し脚の鋭いライダーだった。ホイやムルダーなどと一緒に走るとどうなるか見たい
ケイリンを優勝したナルバエス。
差し脚の鋭いライダーだった。
ホイやムルダーなどと一緒に
走るとどうなるか見たい
 今回は地元コロンビアのライダーが非常に活躍しました。これまで世界大会にあまり出てくることのなかったライダーたちです。彼らのなかには非常にハングリーな環境のなかで戦っている選手が多くいます。やはり中南米という地域を見た場合にサッカーなどでは特にそうですが、小さいころは新聞紙を丸めてストリートサッカーをやっていた選手が大スターになったりするような話がありますよね。しかし、だんだんスポーツの商業化が進むにつれ、貧しい境遇に置かれた選手が夢をつかむことが少なくなってきています。自転車は特に他と比べてもお金のかかるスポーツですから、大変です。
 お金のないなかで頑張っている選手を応援したくなるのは人情ですよね。そういった意味でコロンビア人のレオナルド・デューケのポイントレース優勝やレオナルド・ナルバエスのケイリン優勝はあっぱれと言いたいですし、コロンビアの若い選手たちは勇気が出たことでしょう。
 コロンビア車連のスタッフの話によると、ヨーロッパの大会に出てこないのは遠征費がないからだそうです。そうすると「大会に出てこないような選手で才能を持ったまま、埋もれている選手がいるのかも知れない」なんて思いますよね。今回、勢いに乗ったコロンビアは、北京大会にもまた別のスプリンターを投入してくるとのことですので、楽しみですね。
ホイVSハミルトンの広告。実現の機会を心待ちにしたい
ホイVSハミルトンの広告。
実現の機会を心待ちにしたい
 さて、ヨーロッパの話題に移ります。前回ちょこっとご紹介したクリス・ホイVSルイス・ハミルトンの対決。12月14日に予定されていましたが、悪天候で路面の状態が悪かったためキャンセルになってしまったとのこと。メッチャ楽しみにしていただけに、チョーがっかり!コロンビアからインターネットでチェックしていたんですけどね。この企画、とても面白いので是非どこかで実現させて欲しいですね。
このイベント「どっちがどれだけの差で勝つか」を携帯で応募する懸賞もついていました。見事当てた人はスポンサーのタグホイヤーからハミルトンモデルの時計がプレゼントされるというもの。こういった部分もうまく作ってあったんですけどね。まぁ、これで落車なんかしてこのあとのワールドカップなんかでクリス・ホイが見られなくなるよりはマシなんですが、それにしても残念。
その代わりと言ってはなんですが、このたびクリス・ホイはイギリスのスポーツジャーナリストが選ぶ賞でハミルトンを押しのけ「スポーツマン・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。さらに一般投票で決まる「BBCスポーツパーソナリティ・オブ・ザ・イヤー」も1位クリス・ホイ28万票、2位ルイス・ハミルトン16万票ということで二冠達成!
北京オリンピックで金3つという実績も大きな要因だと思いますが、やはり人気を集めるのは彼の人柄におうところが大きいでしょう。特にジャーナリストたちが選ぶということは取材をしたときの印象なども関ってくるわけで、いつもにこやかに応対するあの気さくさは(もちろんハミルトンと話したことはないですけど)私でも、「クリスに1票!」となったと思います。スポーツ・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー受賞の瞬間がインターネットで見られるので、こちらからご覧ください。さらにこの授賞式では、「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」にブリティッシュサイクリングチーム、「ベスト・コーチ・オブ・ザ・イヤー」にブリティッシュチーム総監督、デビッド・ブレイルスフォードとなんとブリティッシュサイクリングは三冠!他の国のこととはいえ自転車競技がスポーツ界でこれだけ大活躍してスポットライトを浴びるなんて、素晴らしい!
  クリス・ホイが涙を浮かべる映像を見て私もジーンとしちゃって、何度も見ちゃいました。いつか日本でも自転車競技がスポーツの賞を総ナメするような日が来たらいいなと思います。
  それからテオ・ボス情報のフォローです。ラボバンクチームに所属となったボスですが、決まる前に08年ツール・ド・フランス総合優勝のカルロス・サストレがこのたび移籍したコンチネンタルプロチーム「サーベロ・テストチーム(仮称)」からもお誘いがあったみたいです。これまでの義理もあったのかやっぱりラボバンクを選んだんですね。個人的にはサーベロチームのほうが面白かったと思うんですが・・・(←トラック以外のことはすごく無責任。あ、トラックのことも無責任か)
 本人の言によれば、トラックに戻る可能性は大ありだそうです。「別にどちらと決める必要はない。そのときどきで自分に一番あっていると思うものを選んでいるだけで、ロンドンオリンピックまでにまたトラックがよいと思えば戻ることもある」とは、フランスのスポーツ紙「レキップ」の取材にこたえたもの。ちっくしょー!そんな大口たたいてみてぇ!!もし日本だったら、マクドナルドのクォーターパウンダーのコマーシャルに抜擢決定です!でも、そんなボスもジュニア時代にはラボバンクの入団テストに落ちちゃってるわけですから、見方を変えれば、これは「初志貫徹・悲願達成」と言えるのかな、なんて思います。
  北京オリンピックに燃えた今年ももうすぐ終わり。私の記事を読んでコメントを下さる読者の皆さんに励まされ、選手たちの頑張りを見て「自分も頑張らねば」と勇気をもらい、同じ環境で取材をする仲間たちに助けられ、この一年も元気にトラック競技事情をご紹介することができました。本当にありがとうございました。
 2009年は明けてからすぐワールドカップ第4戦の北京大会。まだ大会委員会からビザ発給の連絡もないし、取材用IDが取れたという連絡もありません。毎度本当に取材が出来るのかヒヤヒヤするんですよね北京は。血液型を聞かれようが、保険を聞かれようが、もらえないよりはマシですよね。
オープニングセレモニーの官能的な<br>サルサダンスを撮る滝澤先生。それも教材に使うのですか?
オープニングセレモニーの
官能的なサルサダンスを撮る滝澤先生。
それも教材に使うのですか?
  あ、そうそう、日本競輪学校名誉教官の滝澤正光先生は血液B型です。IDを見てB型であることを知り「なるほど!」と思いました。(いい意味でですよ!)先生はワールドカップシリーズに取材および競輪学校の生徒への講義のための素材をつくるためにいらしていますが、もうほとんど自転車競技ファンの少年のようです。
 クリス・ホイと握手するためにダッシュし、ケビン・シローにサインをもらい、ビッキー・ペンドルトンに話しかけ、シモーナ・クルペカイテと写真を撮る。テレビのスタッフが自転車を買おうとインターネットを見ていると身を乗り出して「うそぉ!これ買うの?カッコいいなぁ。オレも欲しいなぁ。買っちゃおっかなー」と本気でうらやましがる。日本競輪のレジェンドのこのお茶目な姿を見ていると、「この方は本当に自転車が好きで、あの輝かしい実績はやはり自転車や自転車競技への愛から生まれたものなのだな」と実感できました。私がその行動を記事にするにはおそれ多い滝澤先生ですが、面白いので(コラコラ)今後のワールドカップでも滝澤先生情報をお伝えしていこうと思います。
 あらためまして、皆様、今年一年ありがとうございました。2009年丑年もよろしくお願いし“モォォー”っす!「オヤジギャグって女の子からしたら、下ネタと同等らしいからヤメたほうがイイヨ(滝澤先生語る)」・・・先生、さっきオヤジギャグを炸裂させたばかりのその口で、それ言いますか・・・・(泣)
 
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