デュッセルドルフ通信 2009年4月15日

08-09シーズン終了。
絶え間なく動くトラック競技の歴史を日本は彩り続けられるのか?

 

 「ちわっす!」
 ドイツはいい季節になりました。これから6月ぐらいまでが一番いい季節です。やっばーい!今のうちにエンジョイしないとぉ。ぼやぼやしてると8月には秋風がふいてくるんですよね。今の時期はサイクリングにも最適!花粉症も関係ない私(「旧式人間だ」と後ろ指を指されていますが違います。私はシールド内蔵のニュータイプです)は、気持ちよく走っています。でも、最近後ろから抜かれることが多いんですよね。疲れてるからかなぁ・・・ドイツ人も暖かくなって、トレーニングをはじめたってことですね。腕も脚もハムみたいなドイツ人おばちゃんには勝っても、セミプロみたいなローディーがいっぱいいますからね、こっちは。買い物おばちゃんに産毛がはえたぐらいの私では太刀打ちできません。さらにこの陽気で闘争心も限りなくゼロに近く、ドロンジョさまに「やっておしまい!」といわれたとしても「アラホラサッサ!」とはならない雰囲気なんですよねー。まぁ、ドイツ人アマチュアライダーに無謀に挑戦するのが、私の仕事ではないんですけどね。
力走する盛選手
力走する盛選手
ゴールの直前周回まで「メダル獲れるゾ」と思わせた
ゴールの直前周回まで
「メダル獲れるゾ」と思わせた
「いやぁー勝てねッス。でも、このまんまじゃ済ませませんから」
「いやぁー勝てねッス。
でも、このまんまじゃ済ませませんから」
 さてさて、世界選手権が終わって随分たってしまいました(そうそう、それを皆さんに伝えるのがアンタの仕事よ)。今頃振り返るのもどうなの?って感じがするくらい時間がたっちゃったわけですが、結果はご存知のとおりです。
 盛一大選手がスクラッチ種目、あと少しのところでメダルというところまで行っていたんですが、最終的には5位ということで残念でしたネェ。ケイリンでは、ワールドカップ北京大会で初めての世界挑戦ながらよい競走をして、この種目への可能性を大きくアピールした佐藤友和選手が、今回は世界の洗礼を浴びた形で敗退。世界選には脚や勝負勘、度胸と同時に「経験」が必要であることを見せつけられました。本人は「競輪ではじめてS級に上がったときと同じ気持ちですね。“ウワッ!勝てねーっ!”みたいな」なんて言ってました。でも、同時に「負けて終わるのは好きじゃないんで、このままじゃ済ませませんよ」と、力強くコメント。その通りですね。日本の競輪でもS級で洗礼を浴びてから、数年で完全にトップライダーに上りつめたのですから、世界のケイリンでもやって欲しいです。「このままじゃ済ませない」というあの発言は、来シーズンの世界大会への出場表明と受け取りました。楽しみです。
好材料はある。だが・・・
好材料はある。だが・・・
世界選はやはり「何か」がワールドカップと違う
世界選はやはり「何か」がワールドカップと違う
 今回の日本チームは、チームスプリントで成田和也選手が第一走者として念願の17秒台を叩き出したり、新田祐大選手が1キロTTで自己ベストを更新したり、渡邉一成選手、前述の盛選手ともに年を経るごとに上位への到達期待値というか、到達点のアベレージが上がってきているなど、断片的に見ればうれしい材料は見つかるわけですが、総体として見るとやはり笑ってはいられない状況です。特にマレーシアの躍進や中国の着実な実力アップを見ると、頭をよぎるのは「これからアジア選手権がヤバい」ということです。数年前から感じていたことですが、状況はいよいよ切羽つまってきました。5月終わりに行われるACCトラックカップもしかり。
 これまで、多少取りこぼすことはあっても少なくともスプリント種目では「アジア王者」と呼んで差し支えなかった日本。これを他の国に譲るような事態が起きないとは、言いきれません。ここで、「そんなことわかっている」と言われそうですが、私やファンの皆さんの気持ちも込めて敢えて言っておきたいと思います。「奮起せよ!日本チーム!!やぁ~っておしまいっ!!!」
この状態から、持ち直すんですから、すごいバランス感覚!
この状態から、持ち直すんですから、
すごいバランス感覚!
「xxxxx!」これまで獲れそうで獲れなかった世界選。うれしさ爆発
「xxxxx!」
これまで獲れそうで獲れなかった世界選。
うれしさ爆発
ボジェも強かったが、ボジェを最後まで苦しめたアワンも見事
ボジェも強かったが、ボジェを最後まで苦しめたアワンも見事
 日本チームから目を他に移すと、今回の世界選で目立った選手は、無敵の黒豹復活!グレゴリー・ボジェ。「黒豹」は漢字でお願いします。「黒ひょう」ってやると、なぜかだいぶ前に流行った動物占いを思い出して、カッコイイはずなのに、なーんかカワイイイメージが先行してしまうので(私だけ?)。さて、ボジェですがこれまで、強いことは間違いないのだけれど、「思わぬところで取りこぼし、緊張の糸が途切れると後はガタガタ」というような印象がありました。しかし、今回は素晴らしかった。1/8決勝でマレーシアのアジズ・アワンに負けるも敗者復活で勝ち上がり、準決勝は同じフランスのケビン・シローとの壮絶なもがき合い。並走していたシローの落車に巻き込まれそうになりつつも、あわや転倒という状態からバランスを立て直し勝利。決勝は再びアワン。レース巧者のトリッキーなライディングにも 動じず、堂々と個人種目では自身初の世界選金メダルを獲得しました。
優勝したときのボジェのよろこびようといったらなかったですね。雄叫びをなんども上げて、客席にナンバーワンをアピールしていました。雄叫びの内容は決してお行儀のよいものではなかったようですが、本当にうれしかったのでしょう。行儀悪いって、どういう風にって?えーっと、ちょっとフランス語なので実際のところ私ではニュアンスを伝えかねるのですが、英語でいうところの「fxxkin’ bxxch」(そんなに伏字したらなんやらわからんやないか!)みたいな言葉だそうです。日本記者団通訳の円山さんによれば、スポーツ選手はこれぐらい言っても、フランスでは普通だそうです。うまい訳は見つかりませんが、「やったぜ、クソッタレ、コンチクショーめ!!」ってとこでしょうか。感情を爆発させるのは、これまでのストイックなトレーニングの反動でもあるのかも知れません。
 さて、このスプリント種目が終わったあと、ケガで出場できなかったクリス・ホイからメールが来て、「テレビで世界選を見ていたよ。やっぱり、ボクも出たかった。あそこに出ていないボクは自分のことを、檻のなかの動物のように感じたよ」と書いてありました。やっぱりライダーは走ってなんぼ。しかも、素晴らしい競走が続きましたから、それに出ていない自分が歯がゆかったのでしょうね。来シーズンはホイもまた大暴れしてくれると思います。
1キロ、1分1秒台?恐るべし・・・
1キロ、1分1秒台?恐るべし・・・
話題に事欠かないフィニー。ロードでも末はクラッシックハンターか?
話題に事欠かないフィニー。
ロードでも末はクラッシックハンターか?
 もう1人は個人追い抜きで金メダルのテイラー・フィニー。1kmTTは銀メダル。基本的には中距離の選手だと思うんですが、そんな選手に1キロを1分1秒で走られちゃたまりません。連日走っていたこともあり、オムニウムは6位だったようですが、ここまでのオールラウンダーはなかなかいませんよね。フライングスタートの200mTTこそ10″9ですが、1キロTTは1′1″811、個人追い抜きの2000mラップタイムが2′10″ですから、日本の競輪を走ったら今のままでも、結構いいとこいくんじゃないかなんて考えちゃいます。実はこの選手、お父さんがツールドフランスのステージ優勝もしたことのあるロードレーサー、デービス・フィニー、お母さんがロード、トラックの世界選で合計4つのメダル、ロサンゼルスオリンピックでは、ロードレース金メダルのコニー・カーペンター・フィニーという完璧なサラブレッド。ジュニアから上がってきたばかりなのに、この実績というのもうなづけます。現在はあのランス・アームストロングが作ったロードのコンチネンタルチームTREK-LIVESTRONGに所属するという話題性いっぱいの18歳、これからも目が離せませんね。
 ここで、ちょっと唐突ですがお知らせがあります。私、これまで4年にわたり、ヨーロッパ特派員として皆様に自転車競技情報をお伝えしてきましたが、今回で特派員を卒業することになりました。今まで、私の書いたデュッセルドルフ通信やレースリポートを愛読していただきありがとうございました。いろんな方々に対して感謝の気持ちでいっぱいです。
 成績のよいときも悪いときも、私の問いかけにいやな顔ひとつせず、答えてくれた選手たち。当たり前のことですが、私は日本チームには大変思い入れがあり、取材を忘れて大声で応援したことや、結果を出した選手に感動して取材を忘れたこと(って、取材を忘れたことばっかりやないかーい!)もありました。チームスタッフも含めて、日本チームには本当に感謝です。
 一緒に取材を続けた仲間たち。「どうやったら日本チームは強くなるかのか」と、報道の枠を超えて、熱く論じあいましたね。みんな自転車競技が大大大好きなクルーでした。助けてもらったことのほうが圧倒的に多かったけど、ひとつのチームのように思っていました。
 そして、なによりいろんな方から「デュッセル通信、読んでるよ!」と言っていただけることが、私の元気の源であり、取材に対するモチベーションでした。誓って、取材のやる気はカワイイ女子選手だったり、表彰ガールだったりしたことは、ありません・・・ありません。ん?・・・・ありません。
 優勝した女子選手にぃ~、「おめでとう」といってぇぇぇ、ニッコリ笑い返されたらぁぁ、なんだか今日いけそうな気がする~。あると思います(あるんかい!)。
 話を元に戻しますが、楽しみに読んでくださる読者がいらっしゃるからこそ、「やらなくては」という気になったものです。本当に本当にありがとうございました。
 しかし、私が去った後も、「デュッセルドルフ通信」は終わるわけではなく、私の後任が、しっかりやると思いますのでどうぞ引き続きご愛顧ください。もちろん、私もヨーロッパは離れますが、自転車競技にはずっと関っていきたいと思っていますので、またどこかで皆さんにお会いできたらいいなと思います。
 私が世界選の会場で私の後任を各関係者に紹介していたとき、強く心に残った言葉があります。現在最強のイギリスチームをこの人が作ったと言っても過言ではないでしょう。ブリティッシュサイクリングチーム総指揮官デビッド・ブレイルスフォードが私の後任にかけた言葉ですが「He was doin’ very well so it must be very hard to follow. Anyway, Welcome on board!」船や飛行機など、乗り物に乗ったときに「本船にようこそ」「よく乗ってきたね」みたいな意味で使う言葉ですが、我々自転車競技関係者はファンも含めて、同じ「サイクリング号」という船に乗っているようなもの。このスポーツの将来はその乗員ひとりひとりが作っていくものなんですよね。船を前に進めるためには、それぞれの利益はありながらもお互いが船全体のことを考えていかなくてはなりません。サイクリング号の乗員のひとりとして、これから何をしていくべきか、まだ私には明確な答えは出ませんが、今後もしっかりと考えて続けていきたいと思います。
すっごい真剣でしょ?・・・・「ダメだ・・・2がふたつある」なんていってます(^_^;)
すっごい真剣でしょ?・・・・
「ダメだ・・・2がふたつある」
なんていってます(^_^;)
でも、こういう場所にも必ずいる。強い選手って、頭の切り替えが早いんですね・・・
でも、こういう場所にも必ずいる。
強い選手って、頭の切り替えが早いんですね・・・
 今回は、滝澤先生に加えて中野浩一さんも一緒でした。こういった人たちと自転車競技の話をしていると、本当に勉強になるし、サイクリング号の乗員が何をすべきか、わかってくるような気がします。たまに失礼なことも言いながら、気軽に話していますが、よーく考えてみると日本自転車競技の重鎮。おそれ多いですよね。一緒にプレス席に座っているとサインをもらいに来る外国人記者もいてプレス席は日本自転車競技VIP席みたいになってましたね。中野さんって、存在自体がムーブメントをつくるっていうか、物事に一石を投じるきっかけとなる人なんですが、今回はSUDOKU。(なんで自転車じゃないんだ?)中野さんが持ってきたSUDOKUが今さらながらテレビクルーの間で大流行。
 みんな少しでも暇ができるとスッゴク真剣にやってました。私は夢中になりすぎて取材を忘れること多い前例から自主規制でやりませんでしたけど。不思議なことに中野さんも滝澤先生も重要な競走や場面になると必ずその場にいて、私みたいに逃すことがないんですよね。中野さんがSUDOKUに夢中になりすぎて、渡邉選手のケイリンとか見逃すとこ見てみたかったですよ。滝澤先生もさっきまで、「んぉぉぉ、この9が違うのかぁぁぁあ?」なんて頭をかきむしっていたかと思ったら、表彰の終わったボジェに「おめでとう!」とかしっかり声をかけて記念写真とか撮ってるし。ふたりともテレポーテーションとかしてないですよね?私が、それ出来たら、もっと女子選手のスナップショットとかたくさん押さえたんだけどなぁ。世界大会の場はいろんなものが同時進行なので移動が難しくて、二者択一だとどうしても競走優先になるんですよね。そうそうさっき女子選手がモチベーションだったわけではないと言いましたが、「女子選手で一番キレイなのは誰ですか?」なんてよく聞かれます。これは、好みの問題もあるので、なかなかなんとも言いがたいのですが、置き土産として(どんな置き土産だ!)私のお気に入りの選手を紹介しておきましょう。おきみやげならぬ、おきにやげ!(うわぁ、滝澤先生病、発病!!)
普段着を見てみたいです。トレーニングウェアかレーシングスーツ姿しか見たことありません。
普段着を見てみたいです。
トレーニングウェアか
レーシングスーツ姿しか見たことありません
ボクの子リスちゃん。(子リスはいいけど、「ボクの」はないだろ)
ボクの子リスちゃん。
(子リスはいいけど、「ボクの」はないだろ)
 美人系とカワイイ系でひとりずつ紹介しておきます。まず美人系はドイツのミリアム・ベルト。スプリンターなのにスラッとしたスタイルは目を引きます。すっごく強いわけでもないけど、うまくするとケイリンの決勝に乗るぐらいの力はあると思います。カワイイ系の代表はポーランドのアレクサンドラ・ドレイジエ。笑顔がカワイイ子リスちゃーん!って感じです。全然強くないけど、応援してました。まだ若いのできっともっと上を目指してくれると思います。日本のガールズケイリンにスカウトしたら盛り上がると思うんですけど・・・どうです?担当者さん、いかがでしょ?
 4年間の最後のデュッセル通信がなーんでどの女子選手が魅力的かって話で終わるのかなんて自分でも思いますが、まぁこれも自分らしくていいかなと。4年の間、このページを通じて読者の皆さんと、なんらかのものを共有できたことを本当にうれしく思います。あまりトラック競技をご存知でない皆さんには少しでも「自転車競技、トラック競技って面白そうだな」と思っていただけていれば、また、もうその魅力をご存知の皆さんには、現場の熱い空気を伝えることができていたら本当に幸せです。これからも、世界に挑戦する日本の選手たちを是非応援してください。どうぞよろしくお願いします。万感の思いを込めて・・・

「したっ!!!!!」(90°以上で深々と)
 
TrackMania
 
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