デュッセルドルフ通信 2009年10月16日
トラック5種目の行方-寒さに負けるなケイリン-
 
 
 気がつけば10月、今年も残り3カ月、ひょえー、早すぎる・・・4月開始の年度で考えてみても半年が経過、私もヨーロッパでの生活を開始して半年が過ぎてしまったんだなあーと、自分の進歩の無さを恥じながらも時の過ぎ去るスピードに感心してしまいます。このままあっという間に今年も終わってしまうんだろうなあ・・・
 さて、こちらに来て、とてもとても、しょっちゅうというか会う人会う人に言われたのが、「いやー4月にこっちにこれたのはラッキーだよねー。これからは良い季節だよー。どんどんあったかくさわやかになってくし、日もどんどん伸びてくし。」確かにありがたいことに日本の夏とは違い、湿気の少ないさわやかな夏の日々でした・・・確かに日も長かった・・・夜10時過ぎてもまだ明るい、なんて日があったほどです。それと同時にいつも言われていたのが「でもその代りに冬はつまんないよー。すぐ暗くなっちゃうし、天気悪いし。」というお言葉・・・春は花粉症が終わるまではサイアク、終わってすぐに梅雨の気配で、暑い夏は苦手・・・な私にとって10月くらいの秋の感じ、だんだんと暑さを衰えさせながら去っていく苦手な夏に対し、嫌いながらも少し淋しさを感じたりもしましたが、また、だんだん風の冷たさを感じてはくるものの、収穫の時期、食べ物はおいしく、外で活動するにも絶好、つまりは食欲の秋、スポーツの秋なわけで1年でも一番良いくらいの時期だよなあ・・・などと思いながら、やっぱり夏が去ってくれるのっていいなあ・・・などといつも思っておりました。 その夏が今年は忽然と私のもとから・・・今までになかったこの感じ・・・少しさびしいどころかすごく淋しいんですが・・・
  9月末、UCIのロード世界選手権が、スイスはメンドリジオで開催されました。雰囲気的にはこの世界選手権でロードのシーズンは終了かなあ・・・という感じなのですが、まあ人々の熱気と合わせて天気も暑い暑い。メンドリジオはスイス南部にあり、車で少し走ればイタリア、という国境に近い町で、正直、片田舎感はぬぐえないのですが、観光地として人気のあるルガーノという町から20分ほどのところにあります。車で走っていると道路の表示はイタリア語。つまり、このエリアの公用語はイタリア語なんですね。聞こえてくるのもイタリア語、レストランもイタリアン・レストランばかり、お水はサン・ペレグリノ。まあ近いから当たり前かもしれませんがスイスにいる、という感じは全くしない、というかイタリアにいるような錯覚というかまるでイタリア。
 スイスというのは変な国、他人の国を変だとあやしい私が言うのも失礼千万ですが、先ほどの高速道路の出口の標識なんて、このメンドリジオあたりのイタリア語圏では「USCITA」(ウッシータ)なのがドイツ語圏に入るといつの間にか「AUSFAHRT」(アウスファールト)に無断で勝手に変わり、フランス語圏では「SORTIE」(ソルティー)ですから、まあ、その土地その土地の言葉を大事にしていると言えばそうなのかもしれませんが、なんだか良く分かりません。全部書けばいーじゃん、などと思ってしまったりします。また良く分からないのが、お店で買い物をしたりしているとレジの人がドイツ語らしき言葉をしゃべっているので「ふふーん、このへんはドイツ語圏かい。」などと思っていると帰り際に「メルシー」なんて・・・「ん、フランス語圏なのか???んーわっからーん!」となるのですが、どうせドイツ語もハナから捨てている私がフランス語やイタリア語に手を出している筈もなく、ま、何語圏なのか分かったところで、私の行動には変化も進歩も何も見られないので、そう、ご指摘のとおり、「お前には関係ないだろ。」そのとおりでございます・・・でも少し気になったので・・・調べてみたら、ドイツ語圏でフランス語のメルシーってまさにこういう買い物客に対して「どうも!」みたいなときに使うみたいですね。まあ、確かにドイツ人も別れ際にみな「チャオ!」って言いますし、なんかそーんな感じなのかな、と思いましたが・・・私にはやはり関係ありませんでしたがそんなのが分かって少し嬉しかったり・・・
 でも食事まで変わってしまうのも面白いですよね。探せばあるんでしょうけど、まあその辺のレストランに入ればイタリアンのメニューばかり。紛れてチーズ・フォンデュなんて(それしか思い浮かばないんだろ、のご指摘、そのとおり。)あったり・・・とか、パスタでチーズ・フォンデュみたいにするメニューなんて・・・とか思っても、そんなこともなく、ま、ペンネのゴルゴンゾーラ和えが良いとこですか・・・
 そんなメンドリジオ・スイスなのですが(何が・・・)、ツール・ド・フランスで話題になった別府・新城の両選手の出場もあって、映像をご覧になったり気にかけていらっしゃった方も多かったのではないかと思うのですが、後半、やや天気が崩れたりもしたのですが、概ね天気に恵まれ、というか暑い!少しは長袖も着たりするかな(夏でも朝晩はドイツでも着たりするので)などと思ったのですが、朝晩にほんの少し利用したくらいで、半そでどころか、暑くて上半身裸で声援を送っているお客さん、結構いましたねえ・・・帰りの空港なんかも暑いなあ・・・眩しいなあ・・・なんて思っていたのですが・・・これがデュッセルドルフに来たら・・・一面雲に覆われた空は低く、冷たい風とともに、枯葉が・・・秋・・・完全に秋になっている・・・気づけば朝起きてもまだ薄暗いぞ・・・窓には結露が・・・気温も10度を下回り、暖房ON!、みんなコートにマフラー、秋ではない、こ、これは冬だー。何!15時現在6度だ??!ということで、まだまだ寒く、日もどんどん短くなるようなのですが、もう冬になってしまいました。まだ、始まりだから良いのですが、ほんと、日照時間もどんどん減っていって、晴れる日も少なく、やっぱり人間の体は光合成をして地球環境にやさしくはできませんが、太陽の光にあたらないと少し調子悪くなるらしく、冬場には鬱っぽくなったり、体調を崩す人が多いようです。日本人であればそんな人がちょっと日本に戻ると調子の悪さがあっさり戻っちゃったりするみたいなのです。調子が悪い、と医者に行けば変な蛍光灯みたいなのにあたるようなマシーン(どんなのかあんま想像できない・・・)の購入を勧められたりするそうです。そうそう、その為かどうかはしりませんが、日サロ、結構ありますよ。そもそもあのカプセルは欝病対策として北欧で開発されたなんて話も聞いたりしますし・・・(嘘でも責めないでください・・・真偽はさだかでは・・・)私も調子悪くなったら日サロデビューでもしてみようかとも思いますが、なんせメラニン色素が人より元気で活発なメラニン君なもので、人より素質が高いもので、もはやこれ以上あやしくなり何人だか分らなくなるのも何かと・・・
 そう、あやしいんでしょうか?日本人はよく狙われる、といいますが、こっちに来て、空港、税関で荷物検査、すごくされるんですよ・・・1度目はターンテーブルから荷物を広い上げて、「申告なし」から出ようとしたら、だーれも止められてないのに、「ちょーっと荷物あけてもらっていいですか?」などと。2回目は飛行機が到着し、機内から出てゲートを通過する際に、いつもはいない税関の人が待ち受けており、これまただーれも止められていないのに私が出てきた瞬間に3人でさーっと寄ってきて「なんか申告するものない?ねえねえ、君、ない?なに、ない。ちょーっとそのかばん、みせてもらっていい?こっちきて。これカメラ?うーん確かに使ってるねえ、他にも、うーん・・・ないか、ないな、よし、行ってよし!」3回目はこのメンドリジオの近くのど田舎空港。タラップなんかない、乗る時も降りるときも地上からだ!ゲートは一応2つ用意してみました!という空港なので飛行機も小さく乗客も20人程度。なーのに、また私だけですか!はい荷物を開けて、手袋して、一個一個・・・「なにこれ?」「薬でございます。」「この目薬さして?」「かしこまりました。」「で、これは?」「耳かきでございます。(耳かきなんていうのか分かんなかった・・・)」非常時のためにスーツケースに入れていたプリングルスの缶?箱?にも興味をしめし、蓋をとって開けていないの確認したのに、おー、プリングルスだけまたX線、通してるよー。X線あびまくったポテトチップってどうなんだろ、とか思いながら、さすがにプリングルス検査で満足、納得で終了し、やっと解放です。ほぼ1カ月くらいでこんなですから、残り少ない今年3か月の私の使命は「印象度アップで好感度抜群作戦イン欧州」となろうかと思いますので、少しくらいは進歩できるよう頑張りたいと思っております。はい。
  で、なんでそのメンドリジオに行ったのか、というと、ロードの世界選手権も勿論のこと、この時期に併せて開催されるUCI(国際自転車競技連合)の総会での内容を聞いておきたかったからなのです。年に1回の総会。総会ですので各国の自転車競技連盟が集まるのですが、今年はとりわけ4年に1回の会長選挙。この4年間UCI会長として自転車界を引っ張ってきたのはアイルランドのパット・マックエイド氏。ASOをはじめとするグラン・ツールの主催者との対立で矢面に立ち、ドーピング問題に積極的に立ち向かい、さぞや大変だったのではと思うのですが、元はロード・レーサーでお昼休みにはバイクを取り出して軽快にサイクリングする姿をお見かけしたりもします。結局この会長選挙に立候補したのはマックエイド氏のみ、ということで晴れて再選となりました。再選後には引き続き、次の4年間ではまだまだスキャンダルがおさまらないドーピング問題について更なる取り組みを行っていくことを明言、とりわけジュニア層に対する教育、啓蒙を重点的に強化し、ドーピングに対する意識を若い世代から高めていくことが重要となっていくだろうとおっしゃっておりました。
 マックエイド氏のスピーチを含め、総会の中では触れられなかったのですが、総会翌日に行われた記者会見では、このドーピング問題以外にも話題が及びました。我らがトラック競技の種目についてです。UCI主催のトラック・ワールド・カップでは徐々に男女における種目数を増やしてきた結果、今ではスプリント系のスプリント、ケイリン、チームスプリント、タイム・トライアル、エンデュランス系の個人追抜き、団体追抜き、スクラッチ、ポイント・レースと8種目は男女同じように(距離の違いはありますが)開催されており、(世界選手権ですとこれにいろんな種目を行った総合成績で争うオムニアムが男女とも追加)唯一、男子だけで開催されているのがマディソンだけとなっています。エリートとジュニアの間も同様で、今年のジュニア世界選手権ではエリートの世界選手権と同様の種目で開催されました。男女の参画機会の均等を唱えるIOCに倣っての動きでもあるのかもしれません。一方、オリンピックにおけるトラックの種目は北京では10種目。男子:スプリント、ケイリン、チーム・スプリント、個人追抜き、団体追抜き、ポイント・レース、マディソンの7種目、女子:スプリント、個人追抜き、ポイント・レースの3種目と圧倒的に男子の数が多くなっていました。UCIでは、IOCのこの参画機会の均等の推進を受けて、女子の種目を増やすことを提唱してきており、8月くらいまでは、IOCとの話は順調に推移している、つまりは女子の種目数を増やせそうだ、という話であったのですが、ここにきて、話は軟調、結果としては種目数増は認められない、という結論に至ったようです。そこでそれではそのまま、とはならなかったようで、現行の10種目を男子5種目:女子5種目にしよう、との話が浮上してきたようです。総会後に行われた経営委員会でその案が俎上にのせられ、大方、賛同の意見がえられたようで、今後その話を詰めていく、ということで、記者会見でも「どの種目がオリンピック種目になるのか?」との質問がなされましたが、「何も決まっていない。ただ、男女5:5で話を進めていく、ということ。」とだけ話されました。
 しかし、その後の関連筋での話で、どうやらとりあえずの案として提出されたのが、スプリント、ケイリン、オリンピック・スプリント、団体追抜き、そしてオムニアムの5種目ずつであったことが判明しました。ひとまずの案ではケイリンが除外種目にあがっておらずにほっとしたのと同時に、意外だったオムニアムの採用案、これではエンデュランス系の個人追抜き、ポイント・レース、マディソンが一気に抜けてしまうことになり、歴史のある種目もあることから、簡単にそうしましょう、そうしましょう、となるようにも思えず・・・また、オムニアムはまだ歴史も浅く、これをオリンピック種目として支持する声が高いのかどうか・・・前回ポーランドでの世界選手権では、このオムニアム、200mのフライング・タイム・トライアル、個人追抜き、ポイント・レース、スクラッチの4種目で争われており、個々の種目としてなくなってしまう3種目のうち、2種目の個人追抜き、ポイント・レースがここで補えるからいいだろう、と一瞬はかんじなくもないとも言えなくもありませんが、やはり全然ちがいますよねえ・・・
 そう考えていくと、もちろん他の種目にも愛着がないわけではないですが、我らのケイリンも、考え方次第では・・・ということも、あってはならないですが・・・例えばじゃあインデュランス系で個人と団体で個人追抜き、団体追抜き、スプリント系では個人は歴史あるスプリント、団体でチーム・スプリント、あと1つ何にしようか・・・などという展開になって・・・いやいや、そんなことはありません。その迫力、分かりやすさで人気のあるケイリンがオリンピック種目から外れることなどあってはなりません。いずれにしても、5種目ずつで開催、ということは堅い話のよう・・・12月12日にIOCから開催種目の発表がある模様です。
 こうなったら、日本が生んだ世界のスポーツですから、その魅力でアピールしていくしかないですね。トラック・シーズンも間もなくマンチェスターで開幕!併せてインターナショナル・ケイリン・イベントも最終日に開催されますので、ここで魅力ある競走が展開され、オリンピック種目の第1候補として一般の支持を得ていくのが一番でしょう。チーム・ジャパンの編成も決まったようですしね。国際大会経験の豊富さ、SSとしての意地、若さあふれる思いきりで世界を魅惑する競走を日本選手にも期待します。皆さんもケイリンのオリンピック種目維持も含めたトラック競技の盛り上がり、自転車そして競輪の盛り上がりに向けて冬の寒さなど吹き飛ばしての応援、よろしくお願いいたします!

世界選手権が開催されたメンドリジオのフィニッシュ・ライン付近
世界選手権が開催された
メンドリジオのフィニッシュ・ライン付近
逃げる先行集団。新城選手の姿が!
逃げる先行集団。
新城選手の姿が!
通過する集団
通過する集団
メンドリジオ近郊ルガーノの風景
メンドリジオ近郊ルガーノの風景
 
 
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