デュッセルドルフ通信 2009年12月22日

男も女も信念




 いやあ気づいてみたら12月、もう年末か・・・早いものですね。と思っていたらあっという間に20日を過ぎて・・・まさに師走とは言い得て妙ですね。もう10日あまりで2009年も終わり、新しい1年のスタート、リセットして新年に改めて期待ですね。なんて、いつもこの時期、新年には勝手に期待ばかりして、その前にこの1年、悔い改めることが数多くあると思うのですが、それはどこかに置いといて期待することしかしない。しかもろくに初詣に行きもしないのにたまに行った初詣のお賽銭は、親に「ご縁があって縁起が良い」と子供のころに聞いたのを良いことに、頑なにその額を変えようとしない・・・これでは、まあ、期待するだけ無理ってことですかね・・・もうとっくにいい歳だし、お賽銭の額、変えてみましょうか・・・最近なんだか、このページで寒い寒い、としかのたまわっていない気がするのですが、いや、寒い。この寒い時期に自転車はトラック・シーズンに突入し、ワールド・カップで転戦という具合になるのですが、まあ、時間をかけていかなければならないところもあるんですが、正直、暖かいところに行かせてもらえる、というのはありがたいものです。ワールド・カップの第2戦はご報告したとおり、オーストラリアはメルボルン。ちょー、遠い。もう、うんざりしてやっと着く距離なのですが、途中の経由地、シンガポールで降機したときに感じる"もわっ"で、なんだか夏モードに突入。ただ空港にいるだけなのに、なんだか心に開放感が・・・そして到着のメルボルンの気温も30度超。街中のトラムはエアコンがない車両もあってあちーっ、という感じだし、はえさんが私の周りを何度も何度も・・・そんなに臭いですか?と思ったらみんな、んーっ、とか言って追い払ってるので私だけではなかったのですね。なんだか大量発生してるのか分かりませんが夏全開です。といいつつもこの夏の感じを感じながらプログラムを・・・というわけにはいかず、ワールド・カップは屋内ヴェロドロームでの開催。もちろん、暑すぎたり、雨が降ったりということを考えればありがたいのですが、外の感じが全く感じられないのは残念です。しかも空調が効いているのはありがたいのですが、これが効きすぎ!まあ、半袖の上にパーカーをはおるのは良いのですが、それでも寒くて、なんだか凍えているぞ・・・「外で日なたぼっこするとすっごくいいよ」との情報を得、種目の合間に外へ出て肌のことなど気にせず、気持ち良く日光浴しました。会場のハイセンス・アリーナはテニスのオーストラリア・オープンの会場のおとなり。練習コートや予選で使われるコートがすぐそこにあり、「いーよ、いーよ、グーッッド!」とほめ上手なコーチにのせられて次から次へとひたむきにストローク練習するお嬢さんをほけーっと見ながら、あ、なんか少しずつ体が溶けてきてる気がする・・・などと感じながらかれこれ30分以上、30度を超えた中で放電していたのでした。
夏は感じられませんがメルボルンの街並み
夏は感じられませんがメルボルンの街並み
お父さん、お母さんも素敵なアンナ・メアーズ
お父さん、お母さんも素敵なアンナ・メアーズ
 そんなオーストラリアのメルボルン大会では前回大活躍のイギリス勢がやや手薄な感じであったのにあわせ、ここにやはり照準を合わせて来たのでしょう。地元オーストラリア勢がしっかりとここでは好調さを見せつけていました。男子ではやはり日本でもおなじみのシェーン・パーキンス。ケイリンは残念ながら降着処分だったのですが、チーム・スプリントとスプリントで優勝。とりわけ一瞬のスキを突いて内に入り込み、コフィディスのケヴィン・シローを破ったのは印象的でした。今回のこの大会には会社から同僚が駆け付けており、外国人選手の短期免許制度で面倒を見た関係もあり、最終日終了後一緒に飲みに行くこととなったのですが、移動の車中でその件の話題になると、「コミッセール(審判団)の大きい人、いるでしょ。聞いたらあんまり良いジャッジじゃなかった、って謝ってたよ。」とシェーン。これには我々2人、「えーっ、謝ったーっ!・・・」まあ、ワールド・カップだからか、心が広いのか・・・謝ったってそれでいいんですか?世界選手権、ましてやオリンピックなんていったらどうするの?そう、謝ったの・・・競輪という業界で働いている我々にしてみれば、どう転んでもそこには行きつかない、謝る判定には行きつくことがないだけに、「それは絶対にありえんでしょう・・・」となんだか複雑だったのです。そんなこんなでバーに行きついたのはもう深夜1時近く。そこにはなんだかワイワイと多くの人がいたのですが、ぱっと見て分かったのは、こちらは女子で大活躍、ご報告のとおり、スプリント、ケイリン、500mTTの3冠を奪取したアンナ・メアーズがいることくらい。あとはライダーっぽい子が一人いるくらいであとは知らんぞ、という感じですが、まあまあどうもどうも、とやっていると、ひげもじゃのおっちゃんが「何飲む?」ときてくれたので、ではではと飲み物を注文。おっちゃんがフットワーク良く動いてくれ、飲み物が来て乾杯。アンナ・メアーズがこちらにやってきて、自己紹介とこれまたどうもどうもと握手。「来てくれてありがとう、楽しんでいってね。」このあたりは要領がなんだか良く分かりません。隣にいた人に何やってる方か聞くと「アナウンスやってたのいただろ。あれ、俺。」そしたらその彼が色々とその場にいる人を教えてくれたのですが、なんと、注文おやじはアンナ・メアーズのお父様。そして同じくトラック・レーサーの妹さん。端っこでにこにこしながら無口なお母様。同僚いわく、普通の兄ちゃんの旦那さんと、なんてことはない、アンナ・メアーズの祝勝会にお邪魔させていただいていたのでした。我々は途中で退席させていただきましたが、あの後まだまだ宴席は続いたのでしょうか?しかし、お母さん、なんだかすごく良い感じでした。
 意外とこのワールド・カップ、始まってしまうとなんだか次から次へとあっという間に押し寄せてくる感じで、メルボルンの次は南米、コロンビアのカリ。このコロンビア、悪名高きというか、10万人あたりの殺人事件の発生率が1位とか2位とか、とにかくやばい、危ないといった言葉で修飾されてしまう国。外務省の渡外情報では「渡航の是非を検討してください」という地域。ひとつレベルが上がった「渡航延期のお勧め」になってしまうと私も出張が認められなくなってしまうところを何とかクリア。そんなこんなでコロンビア・カリへと向かったのです。初めて乗ったコロンビアの航空会社、アヴィアンカ航空。赤を基調にした機体でなんだかシートのカラーもトロピカルというか、予想を裏切って綺麗です。映画もオン・デマンド。いいじゃん。でも、なんだか人がわさわさ。どうやら帰省の時期みたいでみんな荷物もいっぱい。みんなべらべらべらべらしゃべり、自分の席じゃないのに勝手に座っていたみたいで、「あたしたち一緒だから隣同士に座りたいのよ。」「こっちもそうだからダメだよ・・・」ってあんたら片方だけじゃなくて、ふたりともここの席じゃないんかい、ということで2人とも別々の席へ去っていく、という感じ。スペイン語はもちろん分かりませんが。到着間近の機内では機内の免税品販売でテキーラを買った兄ちゃんが誰彼かまわずテキーラを振る舞い、というか一気飲みを強要?し、アハハハなムード。故郷への無事の生還に着陸とともに拍手が沸き起こる、といった到着になりました。
もやってますがカリの町と競技場
もやってますがカリの町と競技場
サルサの世界大会優勝チームの演技
サルサの世界大会優勝チームの演技
風が抜けるカリの競技場
風が抜けるカリの競技場
競技場で
競技場で
 そんなコロンビア・カリもメルボルンに続いてのオーバー30度。首都のボゴタは標高が2,000mと高く、朝晩はかなり冷え込むようですが、カリは1,000m程度でほぼ赤道直下も程よい暑さで、去ってしまった夏をまたも私に感じさせてくれました。いや、夏は嫌いだったけど、夏、いーねえ。のんびりしたいねえー。人はわさわさいて、バスはいー感じにすし詰め状態で、みんな一心不乱に目的地に向かっている感じですが、バイクもわらわら、なんだかアジアのどこかにきたような感じもなきにしもあらず、いー歳のおっさんですが、久しぶりになんかバックパックでもかついで、ふらふらどっかに行きたいなあ・・・なんて気分を感じさせてくれました。なんだかカリはサルサ、踊りのサルサが盛んな、世界ナンバー1のサルサの町のようで、このサルサが、すみません、全然知らなかったのですが結構アクロバティックで、3,4歳の頃から首の骨を折るのも覚悟で子供たちがばんばん、ぐるぐる練習しちゃったりしてるみたいで・・・これで一発有名になってやるんだ!というハングリーさとともに日夜がんばっているみたいなんです。それだけでなく、みんなサルサが大好きで、なんだか何千人だか集まっちゃって皆でサルサを踊ったり、いろんなことがあるようです。
外へ飛び出してしまったチェーチ選手
外へ飛び出してしまったチェーチ選手
その4コーナー・・・ここに落下・・・2mはあるか・・・
その4コーナー・・・ここに落下・・・
2mはあるか・・・
 さて、レポートでもお送りしたこのカリの競技場ですが、屋根がかかっていて、脇はあいているという、他の競技場とはちょっと違った造り。でもこれがカリの気候にあって、夜などは特に風が抜けて、これが自然の気持ち良さを感じさせてくれるのです。コーナーが立っていて直線が長いという造りもあってか、今回のケイリンでは落車事故が2件もありました。そのうちの2件目は、私も初めて見ました。トラックからライダーが飛び出しちゃったんです。普通ならそのまま客席へ、というところですが、このトラック、その先がなぜか開いていて、その下にそのまま飛び出しちゃう造りになっているんですね。この落差が約2m。落ちてしまったイタリアのチェーチ選手、両鎖骨を骨折か?という話も入っていますが、まあ、その程度で良かったというのか、とにかく、落車事故はトラック競技に限りませんが、やはり気をつけなければなりませんね。この2件あった落車事故、ケイリンの敗者復活戦、2回戦での出来事だったのですが、この2レースに出走し、ともにこの事故を避けて1着で通過した選手が。それが南アフリカのトムソン。競輪学校の滝澤先生に言わせると「いやートムソンはすごいな。決まり手は"よけ"だな!あはは・・・」ということ。誰も拾っていませんでした・・・2回戦でのさきほどのチェーチ選手の飛び出しのレースには日本の脇本選手も出走。いいスピードで捲りきって先行体制に入り、決勝進出か!というところで、先頭のスリップに巻き込まれてしまったのですが、痛さをこらえてすぐに再乗して決勝進出。"よけ"のトムソンを除いて誰よりも先に再乗、ゴールした筈なのですが、順位は3着。あきらかにその後に再乗し、ゴールしたダルメイダが2着。まあ、2着でも3着でもどちらでも決勝進出なので良いのですが、これで良いのか、コミッセール・・・と前出のケリーの件も含めて・・・3,4着だったらきっちり抗議しないとですね。その脇本選手、落車のアクシデントもありましたが、敗者復活戦の出走前、前のレースで落車事故があり、スタートを待たされている間になんと鼻血を出してしまうというアクシデントが・・・「なんか待ってたら突然出てきて・・・なんか興奮してたんすかね?」しかしこれが逆に良い結果を導き出したのか、幸運の鼻血となり決勝進出へと繋がった。もちろん、積極的な走りがもたらした決勝進出でした。
先生の彼、Women's Keirinの覇者ムッヘ
先生の彼、Women's Keirinの覇者ムッヘ
これはフォルステマンの男の足
これはフォルステマンの男の足
 "よけ"の滝澤先生、今回は何やらホテルでスタッフに質問。ジムがあるとの情報を得て、その視察へ。最上階にあるというジム、どんなものかと興味本位で一緒に私も見に行ったのですが、ちょっとしたスペースに頼りなさげなマシンが暗がりにチョコンと置かれているだけの、ちょっと淋しさを隠しきれない程度のもの。近くにジムがあると聞いた先生は、トレーニングにいそしむべく、そのジムへ。「いやー、色々揃っていて良かったよー。」値段も良い値段とのことでご満悦。あいた時間で少しでもトレーニングしたい先生は、「明日の朝はいけるんだよな。」「明日の朝7時だったら大丈夫なんだよな。」「もう明日の朝しかないんだよな。」と、天の神様へご報告。「じゃー明日行きましょうか?」に「しょうがねえなあ、付き合うか・・・」とお付き合いいただいたうえに、ジム代までお世話に・・・恐縮です・・・でも、そんな朝からジム、やってんのか?と思ったら6時からやってるんですねえ・・・しかもそれなり、結構いるんですよ。人。しかもここでトレーニングしていたお姉さんが、今回のコロンビアで出会った、というか勝手に見た中でナンバーワン。締まった体、素敵でございました。
 その滝澤先生、これはメルボルンでの話でしたが、ある選手に向かって一生懸命写真撮影。どうしたんですか?と聞くと、「見てよー、すごいよあの体、あの足。かーっ、違うな、体がこれじゃ勝てないよ。見てみなよ、彼のカラダ。すごいな、うわっ。」「確かにすごいっすけど、先生、あれ、男じゃないですよ・・・」「え、・・・おんな、か・・・」と先生に言わせしめた、ドイツのムッヘ。確かにすごい足です。ついでに今回好調だったドイツのチーム・スプリント1走で17秒前半をたたき出すフォルステマンの足も・・・この足はすごい・・・そんなムッヘ選手今回カリで、女子ケイリンで優勝し、今回の国別での優勝をドイツにもたらしました。
 そんな30度超の国々で仕事をさせてもらって、ムッヘの祖国ドイツへ私も帰るのでした。そこで待ち受けていたのは・・・最高気温、氷点下・・・そして、雪・・・気温差30度以上はやっぱり少し、応えます・・・わがままは言いません、ただ言わせてください・・・さむい・・・
 そんなこんなでトラック・シーズンはワールド・カップも佳境をすぎ、残り1戦北京を残すのみとなりました。そして、前にもお伝えした、オリンピックでのトラック競技の種目の変更、UCIとIOCの協議、というよりUCIからIOCへ希望をだしたというところでしょう、これがついに発表となりました。このUCIの発表によれば、今まで、男子がスプリント、チーム・スプリント、ケイリン、個人追抜き、団体追抜き、ポイント・レース、マディソンの7種目、女子がスプリント、個人追抜き、ポイント・レースの3種目であったのが、男女ともに、(個人)スプリント、チーム・スプリント、ケイリン、団体追抜き、オムニアムと男女ともに同種目の5種目づつへと大きく変更となった。もちろんこれに至るにはとりわけ、個人追抜きやポイント・レース、マディソンに強い国、選手から抗議がなされ、嘆願書、署名の類も多く出されたようだが、結局またトラック種目は伝統的な、また興味深い種目をオリンピック種目から失ってしまった。男女同種目とするのはともかく、複数の競技の成績によるポイントで勝敗を争うオムニアムを新規導入するのはいかがなものか、という意見はあちらこちらで聞かれたものだが、結局UCIの当初案のとおり、このオムニアムが正式種目として導入されることとなった、しかも従来の5種目に1種目を加え6種目とし、1種目については今後協議していくとの話であったが、250m(従来は200m、つまり1周)のフライング・タイムトライアル、男子1,000、女子500mのタイムトライアル、個人追抜き(男子4,000m、女子3,000m)、ポイント・レース(男子30km、女子20km)、スクラッチ(男子15km、女子10km)に加え新たにエリミネイション(2周毎に、最下位の選手がレースから除外されていく)が追加され、エンデュランス系の選手にやや有利な種目設定で行われることで決定された。UCIもこの変化を自転車、とりわけトラック界での大きな変化と位置付け、この歴史的なターニング・ポイントで協力し、成功に、発展に向けて一致団結していくことが重要だ、と位置付けているが、どのように各チーム、選手が動いていくのか興味深い。どんな時も勝者と敗者がいるので・・・というのが今回のこの決定で見られる多くのコメント。しかし、ここで勝った、負けたでなく、次の戦略を考えてやれることをやるだけ、という強いチームの言葉がとりあえず、各チームがなさねばならないことなのだろう。色々な意見はあると思うがとりあえず今後のトラック界の動きに楽しみが増えたと考え、ロンドン・オリンピックまで、そしてその後にどうなって行くのかを今後も見ていきたいと思います。
帰ったら、雪が・・・
帰ったら、雪が・・・
すごい人気!ただの・・・いやいや、ディズニーランドのパレードが止まって・・・
すごい人気!ただの・・・いやいや、
ディズニーランドのパレードが止まって・・・
ドイツのクリスマスのマーケット。寒い・・・
ドイツのクリスマスのマーケット。寒い・・・
 ヨーロッパがクリスマスなら、南米もクリスマス。クリスマスだからこそのイルミネーションらしく、宿泊していたホテルの前を流れる川沿いにずーっと人形に施されたイルミネーションとライト・アップが続いていました。そしてこれを見ようとかけつけた人々で川の周囲は大混雑、そして渋滞。今日は平日ですよねえ・・・という混雑ぶり・・・この時期に盛り上がるのはどこの国も一緒か・・・でもさっむーいクリスマスにあっつーいクリスマス。なんだか、変な気分ですよね。それでは皆様、メリー・クリスマス、そしてハッピー・ニュー・イヤーそして嫌いだったおせちや雑煮もなんか羨ましいですが、健康に新年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。



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