2007年トラック世界選手権自転車競技大会レポート(3月30日)
【スペイン・マジョルカ発】 - 第2報 -
 
<Photo Y.Sunada>

第2報(現地 3月29日発)

 


 世界トラック選手権自転車競技大会が29日、スペイン・マジョルカ島のパルマ自転車競技場で36カ国・地域から男女合わせて282人(男子198名・女子84名)が参加して開幕した。
 日本期待の男子チームスプリントは成田和也(28歳、福島)、渡辺一成(23歳、福島)、井上昌己(27歳、長崎)が組んで出場したが、競輪の日本選手権を終えたばかりということで調整不足もあり、45秒451で7位に終わった。決勝はボージュ、ブルガン、トゥルナンをそろえたフランスが昨年に引きいて決勝で英国を退け、大会2連覇を達成した。

スタンバイする日本チーム チームスプリント表彰式
<スタンバイする日本チーム>
<チームスプリント表彰式>
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 1日で5種目を行って争われるタフな新競技、男子オムニアムはどの種目でもまんべんなく好成績を収めたアロイシュ・カンコフスキ(チェコ)が初代王者に輝いた。
同四千メートル個人追い抜きは、ブラッドリー・ウィギンズ(英国)が決勝で強豪のロベルト・バルトコ(ドイツ)を追い抜く圧勝で制した。
 こちらも今年から世界選手権で実施されることになった2人1組の女子チームスプリントは、英国が今季のワールドカップ(W杯)ランキング1位のオランダを逆転で破って優勝した。
 
  【チームスプリント予選】 
 今シーズンのW杯の最高成績は5位と少し物足りないが、それでも日本で最もメダル獲得の期待が大きいのは、このチームスプリントだろう。
  日本チームは予選7組中、3組目に登場。成田和也、渡邉一成、井上昌己と2月に行われたW杯第4戦のマンチェスター大会と同じメンバーで臨んだ。対戦相手はウクライナ。序盤からリードを保ち、45秒451のタイムでゴール。この時点ではトップに立ったが、その後に出てきた強豪国に次々と追い抜かれ、結局14チーム中7位という結果に終わった。

GO!!
<GO!!>

 
  第1走者の成田は「最悪でした。練習の時から滑っていたので、注意していたんですが、2歩目でスリップしてしまった。悔いが残りますね」と反省しきり。しかし、第2走者の渡邉は「今の自分たちの置かれている現状の中ではいい走りができたと思います。成田さんのスリップは確かに痛かったけど、ベストを尽くした結果だから仕方がない。ダービー直後の大会で疲れもありましたからね。ベストの状態で走れれば、世界が相手でも互角以上の勝負ができるはず」と手応えをつかんだ様子だった。

スピードに乗せる成田
<スピードに乗せる成田>

 
  第3走者の井上は「今回は体調がかなり悪かったんですよ。成田君のスリップがなければ、あと0秒2ぐらいは縮められたかもしれないが、チーム全体をもっと底上げしていかないといけませんね」と課題を口にした。

3走目井上
<3走目井上>

 
 今日の結果についてマニエ監督は「厳しい結果だったね。もっと練習しないとやはり世界で勝ち上がっていくのは難しい。でも彼らは歳も若いし、やる気もある。これからもっと伸びていく可能性がある」と前向きにとらえていた。やはりダービー直後の大会ということもあり、選手の疲労も大きく影響したようだ。来年は北京でオリンピックが開催される。マニエ監督の下、ひと回り成長した日本チームの活躍に期待したい。
 
  【チームスプリント決勝】 
 イギリスとフランスチームの対戦となった決勝戦。ほぼ満員の大観衆の中、手に汗握る熱戦が繰り広げられ、会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。大接戦の末、フランスがイギリスを0秒02差で下し、大会連覇を飾った。
 ルソー監督は「このチームはすごいし、誇りに思っている。イギリスは強かったし、最後は際どい勝負になったけど、トゥルナンは勝ち方を知っているね。ダイナミックな勝ち方ができたし、上々の滑り出しだ」と満足そうな表情で語った。第2走者のブルガンは「本当に嬉しい。厳しいトレーニングをこなした後にはこういう結果が待っているんだね」と笑顔が絶えない。2人が作ったリードをきっちり守り切ったトゥルナンは「フランスは昔からチームスプリントを得意にしていますからね。3人で力を合わせて優勝することができて最高の幸せ。他の国も強いけど、フランスは大きな可能性を持っていると思う。来年の北京がオリンピックに出場できる最後の機会だと思うので、そこに向けてとにかく頑張っていきたい」。
フランスチーム 優勝したフランスチーム
<フランスチーム
<優勝したフランスチーム>
 
 【男子個人追い抜き】 
 1対1でホームストレッチとバックストレッチに分かれてスタートし、相手を追い抜くと勝者になる種目。決められた距離(男子は4キロ)までに追い付かない場合はタイムで勝敗を決める。
21人が参加して行われた男子個人追い抜きの決勝は、圧倒的タイムで予選を1位通過したブラッドリー・ウィギンズ(英国)と、3連覇を狙うロベルト・バルトコ(ドイツ)の対決。終始リードしていたウィギンズが2000メートル過ぎで追い抜いて優勝に輝いた。
 ウィギンズは「シドニー五輪チャンピオンを倒せてとても感激。光栄なことです。予選のタイムが良かったので、決勝では自信を持って走ることができました。北京五輪ではアテネ優勝というタイトルを守り、タイムも更新したい」と気持ちは早くも来年へ向かっていた。
 
 【男子オムニアム】 
 世界的大会では初めて行われる種目。200メートルタイムトライアル、スクラッチ、個人追い抜き、ポイントレース、千メートルタイムトライアルの5種目を1日で行い、順位合計の一番少ない選手が優勝となる。すべてをこなす総合力を問われる。
初代王者に輝いたのはアロイシュ・カンコフスキ(チェコ)。種目1位こそないものの、安定した成績で4種目終わった時点で暫定1位に。最終種目の千メートルタイムトライアルでも2位に入り、栄冠を勝ち取った。
「すごくハッピー」と笑顔いっぱいのカンコフスキは「表彰式ではきれいな音楽(国歌)が聞こえ、チェコ選手みんなで合唱できてうれしかった。すごく厳しい練習をやってきたので、自信を持ってトップに立つことができた」と観客の声援にガッツポーズで応えていた。
 
 【女子チームスプリント】 
 実績のあるペンドルトンがリードと組んで参加した英国が最初の女王に就いた。予選からエンジン全開。唯一33秒台をたたき出して1位で突破した。決勝の相手は、W杯で3連勝するなど圧倒的な強さを誇ったオランダ。しかし全く臆することはなかった。第1走者のリードが0.002秒遅れたものの、ペンドルトンが見事に差して、0.3秒以上引き離す33秒631で制した。リードは「すごく緊張した。信じられない」と興奮気味。ペンドルトンは「リードが力強い走りで引っ張ってくれた。わたしは自分の走りに集中するだけだった」と喜びを口にした。
 
~マジョルカから~

競技場外観
競技場外観

切符売り場
切符売り場
 
 いよいよ大会が始まりました。雨も3日続いてしまっていますが、お客さんが一杯入って、各々精一杯の声援を送っていたのが印象的でした。心配していたチケットも指定席は完売の模様。車券を売っている訳ではありませんが、大会の成功を祈るばかりです。応援の甲斐あってか、特に地元スペインの選手はその応援と拍手に後押しされて、素晴らしい走りをしてくれました。タイムを競う種目は地元贔屓も何もなく残酷ではありますが、選手たちは自分の力を出し尽くし、さわやかな顔を見せてくれます。
   
開会セレモニーではマジョルカ島の祭りをイメージした演出がなされました
開会セレモニーではマジョルカ島の
祭りをイメージした演出がなされました
最後まで居残ったフランスチーム応援団
最後まで居残ったフランスチーム応援団
   

 新種目オムニアムは、どうも中距離系の選手が優勢のようです。短距離を得意とする選手たちは2つ目のスクラッチあたりから勝負圏外となってしまいました。同じく新しく始まった女子チームスプリントは、若い女性選手の参加が印象に残りました。女子選手の競技人口が増えているのでしょうか、これからも女性の種目は増えていくような気がします。

 大会初日29日では、唯一かつ最も有望な日本人選手出場種目である男子チームスプリント。出走メンバーは、夜のミーティングの最中に告げられたそうです。成田、渡邉、井上の3人で臨みましたが、結果はレポートのとおり及ばず7位。決して弱いという印象ではないのですが、43秒、44秒台の好タイムを次々と叩き出されてしまうと世界のチーム強化の進歩を感じてしまいます。マニエ監督の言葉ではありますが、次につながるレースを続けていって欲しいと思いました。

   
 街の様子を少し。ヨーロッパ屈指のリゾート地と言われるスペイン・マジョルカ島。ヨーロッパの人々を満足させる何か特別な場所なのだろうと勝手にイメージしていたのですが、やはり島。どこかのどかで素朴な感じがします。「オーラ(やあ!)」「アミーゴ(友達)」「グラシアス(ありがとう)」の声が行き交います。あまり外国は得意ではないのですが、どこへ行っても人間は人間なんだなあと妙な感心をしているところです。
   
パルマ郊外
パルマ郊外
パルマ市街
パルマ市街
   
 明日30日、大会2日目のメインは何といってもケイリン。伏見・成田選手が出走を予定しています。スクラッチには盛選手が同じく出走予定。ベストを尽くして頑張って欲しいです。日本の皆さんも応援して下さい!
 
 
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