2008年世界トラック選手権自転車競技大会 (現地3月26日)
イギリス・マンチェスター発 - 第2報 -
 
<Photo Y.Sunada>
第2報(現地 3月26日発)  


 男子チームスプリントで3大会連続の五輪出場が確実となった。北京五輪の出場枠をかけた2008年世界トラック選手権自転車競技大会はイギリス・マンチェスター(ベロ・ドローム)で27日(現地時間26日)開幕した。初日発表で世界37カ国から293選手(女子87選手)が出場。初日は男女4種目が行われた。
 チームスプリント予選は北津留翼(22=福岡)、渡辺一成(24=福島)、永井清史(24=岐阜)が8位となり、五輪切符を手中にした。銀メダルを獲得したアテネ五輪に続く、メダル奪取の夢が膨らんできた。男子スクラッチ決勝は盛一大(25=愛三工業レーシングチーム)は6位と大健闘した。

  【男子チームスプリント予選】 
 マニエ・ジャパンが大会初日、最大の関門を見事に突破した。「目標は6~8位」。前日の最終練習後にマニエ監督が明らかにした公約通りの8位。UCIの正式発表は4月14日だが、成績を含む累計ポイントで五輪出場枠は確実となった。
 厳しい戦いだった。第5ヒートに登場した北津留、渡辺、永井の日本チームは、急成長中の中国チームと激突した。国家を挙げて地元五輪へ選手強化を図る中国は各競技種目で台頭しているがバンクでも例外ではない。日本チームを相手に、その実力を示した。
 注目のレースはアクシデントで始まった。スタート寸前に中国チーム・第1走者が発走機のトラブルでスタートが切れず、再発走となった。「その影響は、ほんの少しだけ」とマニエ監督は否定的だが、緊張がピークに達する中で平均年齢23・3歳と若いチームのコンセントレーションに小さな問題ではなかったはずだ。
 リスタートで第1走者・北津留はラップタイム18秒109と自己ベスト18秒011に及ばず、第1走者中、10位に終わった。中国チームの同走者は17秒974をマークしており、早くもシビアな展開に突入した。続く第2走・渡辺は13秒448と第2走中、11位と苦闘した。
 まさかの悪い流れを一気に盛り返したのが、第3走者の永井だった。「体調も良かったし、いい感じで踏めた。アテネ五輪の井上(昌己)さんと同じタイムだった」。13秒474は第3走中、堂々の3位。2位にコンマ056秒に迫る好タイムをたたき出した。大会前のオーストラリア合宿(パース、1日~19日)で目標タイムをクリアした好調そのままに、大舞台で大きな仕事をやってのけた。
チームスプリント(予選)日本チームスタート チームスプリント(予選)日本チーム
チームスプリント(予選)
日本チームスタート
チームスプリント(予選)
日本チーム
 中国チームには、コンマ027秒差で敗れた。走りやタイム的にも北津留、渡辺は明らかに本来の調子を欠いていた。この日、直前の練習中に北津留は、急きょ、ギアを変更して賭けに出たほどだ。45秒031は、今季のW杯全4戦のタイムを上回る。だが、優勝したフランスチームが43秒271。3位のオランダチームまでが43秒台をマーク。連続のメダル獲得へのハードルは極めて高い。「ここまで5カ月間、すごいストレスの中で頑張ってきた。チーム一丸となって、いい仕事をした」。マニエ監督は選手をねぎらう一方で「世界との差を縮めるのは難しい」と険しい道のりを口にした。
 日本チームは男子スクラッチで、残り1周までトップキープで6位と大活躍した盛の快走劇に大きく沸いた。しかし、マニエ監督の口元が緩むことはなかった。チームスプリント3選手の取材について「スプリントを明日に控えているので競技終了まで待ってほしい」とシャットアウトした。今夏の北京、さらに4年後のロンドン五輪を見据えたマニエ・ジャパンの戦いは続く。
 
  【男子チームスプリント決勝】 
 予選を43秒514の好タイムで1位通過したフランスが、ファイナルでも地元イギリスにコンマ506秒をつけて快勝した。昨年のスペイン大会決勝でも激突した両チーム。決勝ではブルガンに代わってトゥルナンが第3走を務め、昨年同様にイギリスを撃破した。「プロフェッショナルとしてだれも(自分には)近づけないという思いと誇りを持っている」と1㌔タイムトライアルの世界記録保持者は言い切った。4月5日に30歳を迎える王者は、北京五輪で現役生活に別れを告げる。王者の花道へフランスが好発進した。
チームスプリント(決勝)フランスチーム 男子チームスプリント表彰式
チームスプリント(決勝)
フランスチーム
男子チームスプリント表彰式
 
 【男子スクラッチ決勝】 
 日本の盛一大(25歳・愛三工業)が去年のスペイン・マジョルカで落車に終わったスクラッチで見せ場たっぷりの走りで世界選手権では日本人最高の6着。優勝したベラルーシ共和国のアレキサンドル・リソースキー以上の喝采を浴びた。スクラッチは定められた距離を走り、その順位を競う。中、長距離の種目でトラックで行われるロードレースといった趣だ。男子決勝は250メートルバンクを60周(15㎞)走りチャンピオンを決めるが、距離が長いだけに駆け引きがものを言う。この大一番でレースをつくったのが盛。「残り14周あたりで、ここだと思って」とロングスパートをかける。残り7周を過ぎても牽制する集団をよそに加速を続け、最終4角までメダル圏内に入る大健闘を見せた。盛は「展開の中で前へと踏んでいい流れになりましたね。怖くて後ろを見ることはできなかったけど、最初は監督の声しか聞こえなかったのに最後はスタッフや選手が僕を応援する姿まで見えたから…。抜群のタイミングだったしメダル獲得できると思っちゃいました」と屈託のない笑顔を見せた。しかしすぐに「最後に他の選手に抜かれたし、これが今の脚力。ヨーロッパの選手なら逃げ切れている。僕の力ではああいった(奇襲)戦法しかとれない」と現在の状況を淡々と語る。「ただこの後はまだマディソンもあるし、今日で流れをつけて次もがんばりたい」。自身も、スタッフも、そして大観衆も納得の攻撃的な走りで、勢いに乗りそうだ。 スクラッチ 盛一大.
スクラッチ 盛一大
男子スクラッチ表彰式
男子スクラッチ表彰式
スクラッチ 優勝したアレキサンドル・リソースキー
スクラッチ 優勝した
アレキサンドル・リソースキー
 
 【男子個人追抜き】 
 開幕式の前に行われた予選は25名がエントリー。連覇を狙うブラッドリー・ウィギンス(英国)が最終組に登場すると、早くも会場のボルテージが上がる。3周目からトップタイムに入り快走を続けるも、最後の1000mでやや失速して同組のイェニング・ハジンガー(オランダ)に逆転されて2位。王者・ウィギンスの金メダルに暗雲が立ち込めた。
 しかし、心配は全くの杞憂だった。決勝は1000m地点でハジンガーにリードを奪うと、着実に差を広げていき、3000mで3秒、ゴールでは5秒弱の大差をつける圧勝劇。母国に金メダル第1号をもたらした。「予選はファイナルの権利を取ることが大事。ハジンガーの走り方もわかったしね」と力を温存したようなニュアンス。続けて、「僕はやるべきことをやったし、地元ファンの声援も力を与えてくれた。家族も来ていたしね。まだ、二日目は団体追い抜きがあるから、気持ちを切らさずに集中したい」と19歳から世界のトップと戦う男は、喜びに浸ることなく表情を引き締めた。
男子個人追抜表彰式 男子チームスプリント表彰式
男子個人追抜表彰式
個人追抜 優勝した
ブラッドリー・ウィギンス
 
 【女子500メートルタイムトライアル】 
 2年前は銅メダル、昨年は銀メダルだったリサンドラ・ゲラ(キューバ)がこの種目のキューバ人として初の優勝を飾った。前半の250㍍では鋭いダッシュを生かし、出場16人中、トップとなる18秒954のを好タイムを記録。後半も15秒067にまとめた。褐色の肌を持つゲラは「4年間、この瞬間のために頑張ってきたのでうれしい」と感激の涙を浮かべた。2位は後半の追い込みにさえを見せたリトアニアの新鋭、シモーナ・クルペツカイテ。3位は層のフランスのサンディ・クレアだった。アテネ五輪銅メダリストで、世界選手権で8個の金メダルを獲得した名手ナタリア・ツイリンスカヤ(ベラルーシ)は振るわず、8位だった。
女子500mTT表彰式 女子500mTT 優勝したリサンドラ・ゲラ
女子500mTT表彰式
女子500mTT 優勝した
リサンドラ・ゲラ
 
~マンチェスターから~

会場の記者席はこんな感じ

リアホイールを丹念に調整する日本チームのメカニックさん
会場の記者席はこんな感じ
リアホイールを丹念に調整する
日本チームのメカニックさん
 
刻一刻とスタート時間が迫る
本当に、本当に惜しかった盛選手。
刻一刻とスタート時間が迫る
本当に、本当に惜しかった盛選手。
しかし表情は晴れやか
 
 遂に開幕の火蓋が切られた2008トラック世界選。日本人選手が出場した男子チームスプリント、男子スクラッチレースはとても見応えのあるものでした。初めにチームスプリント。結果は8位。目標であった五輪枠の獲得を果たすことができました!これで3大会連続五輪出場ということになります。日本はこの種目、五輪の常連になってきましたね。チームスプリント予選が終わってしばらくすると、今度は盛選手のスクラッチ。マニエ監督も直ぐに盛選手のサポートに回っていました。その男子スクラッチ、本当にアツかったです。コンスタントに周回を重ねている集団の中から、サムライ・盛選手が“スッ”と抜け出し、そのまま一人旅。満員のギャラリーは盛選手に大喝采。集団はしばらくお見合い状態となり、またとないチャンス。優勝候補が大集団に残っているということもあって牽制状態が続きましたが、ラスト1周で集団から抜け出したベラルーシの選手が盛選手をキャッチしてそのまま逃げ切り。盛選手はゴール直前で数人の選手に差されましたが、結果は自身最高位の6位。盛選手にとって、あの終盤で逃げられたことは結果以上に大きな自信となったことでしょう。私も観ていて、本当に感動したレースでした。「逃げて勝つ」というのは一番かっこよく、美しい勝ち方。競輪でも同じことが言えると思います。そしてギャラリーの大声援。観ている間、ずっと鳥肌が立ったままでした。まだ初日が終わったばかり。今日走った選手は、自身が出場する次の種目にまた照準を合わせて、最高の結果を出して欲しいですね!

 
ブリティッシュ・ブレークファスト!
テオ・ボスのバイク。ビンディングペダルをストラップ仕様に改造している
ブリティッシュ・ブレークファスト!
テオ・ボスのバイク。ビンディングペダル
をストラップ仕様に改造している
   
 写真は宿泊先のホテルの朝食。「全然野菜類ないやん!」と思われるでしょうが、ないんです。全く。基本、全て火が通った食べ物しかありません。「トマトがある!」と思ったら炒めちゃってたり(笑)ただ、パン系はうまいです。日本で言う「米はうまい!」みたいな(笑)特にマフィン。甘すぎず、小さめなのでサクッと食べられます。でも、マフィンて…お菓子ですよね。まー食べ放題だからといってあまり食べすぎないように注意しながら、これからもしっかりレポートしていきたいと思います!
 
 
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