北京五輪の出場枠をかけた2008年世界トラック選手権自転車競技大会3日目はイギリス・マンチェスター(ベロ・ドローム)で29日(現地時間28日)、男女4種目が行われた。男子ポイントレース決勝で飯島誠(37=チームブリヂストン・アンカー)は15位に終わったが、今日4日目に出場するマディソン決勝の成績次第ではポイントレースの出場枠獲得の可能性も出てきた。女子スプリントは佃咲江(22=北海商大)が、28選手中、上位24選手がクリアする予選200メートルタイムトライアルで27位(12秒268)。昨年6月の世界選手権B(南アフリカ)スプリントを制し、すでに五輪切符は獲得しているが、ケタ違いの世界レベルを前に大きな課題を突きつけられた。
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【男子ポイントレース決勝】 |
250mバンクを160周で40km…。気の遠くなるような距離を走るマラソンのようなレース。しかし10周ごとにポイントが加算されるため、加算される周回直前は熾烈な踏み合いになる。決勝の発走予定時間になっても姿を見せなかったワシリ・キリエンカ(ベラルーシ共和国)。遅刻して会場に入り、照れ隠しをするようにファンの声援にこたえレースに挑んだが、序盤からポイントを着実に加算していく。いったんはポイントで並ばれるも、後半さらにポイントを積み重ね、猛烈な2位の追い上げを1ポイント差で振り切り、初の世界選手権ポイントレースのチャンピオンになった。「発走に遅れたのは自転車が軽くて交換したからだよ」と最初は厳しい表情で話したキリエンカだが「次の北京五輪に出ることはもちろん、1歳半の娘のためにもがんばりたかった。名前? ユリアって言うんだ」と子供の話には表情を崩して喜びを表現した。また日本期待の飯島は3ポイントを獲得するも15位でフィニッシュ。「全体的に少し早いペースで、脚を休めることができなかった」とレースを反省するが「でも、まだマディソンがある。年齢的にもラストチャンスだと思うし、盛君と頑張って五輪の出場枠を手に入れたい」と気力みなぎる表情で語る。4日目マディソンの結果次第では、マディソンはもちろんポイントレースでの枠獲得も可能。自身3度目の五輪出場へ、37歳ベテランの挑戦はまだまだ続く。
優勝したベラルーシのキリエンカ |
男子ポイントレース 飯島誠 |
男子ポイントレース表彰式 |
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【女子スプリント予選】 |
スピードスケートから転向4年目の佃が、大舞台で苦く、大きな経験を積んだ。6番目に登場した佃は12秒268と、世界選手権Bでマークした自己ベスト(11秒8)の更新ならず、27位に終わった。
初の世界選手権で体調も万全ではなかったが「国際大会で板張りバンクを走るのは、これが3回目」という経験不足を露呈した。レース直前にマニエ監督から「リラックスして(走路の)黒いラインに沿って走れ」の指示を受けた。それでも走りを入念にチェックした同監督は「ポテンシャルは確かにあるが、とても難しい。何よりも経験が足りない」と課題は山積みであることを言い切った。
予選で10秒904のトップタイムをたたき出し、2年連続3度目Vへ好発進した女王ペンドルトンらトップクラスとの差は歴然だ。それでも世界の舞台で着実に世界のスピード、技術を吸収し、8月の北京へスパートするしかない。
小学校2年から星園学園高3年までスピードスケートで活躍した。だが、高校ラストイヤーのインターハイ500メートルで16位に終わり「限界を感じた」とリンクからバンクへ新たな可能性を求めて転向した。
大学1年のインカレで500メートルタイムトライアル2位、スプリント3位と頭角を現し、2年時のインカレでは500メートルタイムトライアル、スプリント、ポイントで3冠に輝いた。一昨年はアジア大会スプリント7位、昨年は世界選手権B、全日本選手権のスプリントを制して、日本女子短距離陣の第一人者となった。
現在は母校の研究生を務めながら、五輪をにらむがトレーニング環境は決して恵まれてはいない。地元北海道には屋内はもちろん、バンクがない。トラック選手でありながら、街道で車誘導や、ダッシュ系練習がメーンだ。路面が凍結する冬場には街道練習もままならない。その環境の中でも経験不足をハートと脚力で補いながら、アジアのトップクラスに到達した。
初の五輪本番まで残された時間は半年を切った。マニエ監督も認める基礎体力、潜在能力の高さをどこまで発揮、最大の課題である経験不足を埋めるかが、佃の夏のカギを握る。
予選を走る佃咲江 |
大きな経験を積んだ佃 |
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【男子スプリント決勝】 |
昨年のケイリン、1キロタイムトライアル世界王者の地元クリス・ホイが、初のスプリント世界一の座に就いた。ケビン・シロー(フランス)に決勝1回戦で先勝したホイは、2回戦でもスタートけん制からシローを大外追走。残り2周の2センターから山おろしをかけて、加速してゴール前でシローをとらえて、ストレート勝ち。これでチームスプリント世界王座を加え、世界選手権4種目制覇を成し遂げた。
会場を埋めた大応援団に何度も両手を突き上げ、大歓声を浴びながら、ユニオンジャックをなびかせてウイニングラン。愛車から降りると、ゴール前のスタンド最前列の両親、恋人サラと抱き合った。この日がサラの誕生日。最高のパフォーマンスで世界一をプレゼントした。「とても信じられない。スプリント王者になることは、とても意義がある」。今日4日目に行われるケイリンで2年連続Vへ最高の弾みをつけた。32歳とベテランの領域に達したが「やる気があれば、何でもできる。この歳になってもチームの仲間と練習を楽しんでいる」と意欲に衰えはない。8月の五輪本番へは「勝つことは簡単ではない」と決して楽観視はしない。ケイリン王座も獲得し、一気に夏へスパートする。
決勝 ホイ対シロー |
地元英国で見事優勝を飾ったホイ |
男子スプリント表彰式 |
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【女子団体追い抜き】 |
英国が男子に続いて金メダル獲得!今年から正式種目に採用された女子団体追い抜きは、男子と異なり3000メートルを3人で行う。決勝は予選トップの英国とワールドカップ・ロサンゼルス大会で3分27秒438の好タイムを出しているウクライナとの対戦。地元の英国は、レース序盤こそウクライナにリードを許したが、1500メートル付近で逆転すると、個人追い抜きの金メダリスト・レベッカ・ロメロを中心に力強い走りとコンビネーションで差を広げて、最終的には7秒以上の大差をつける3分22秒415で圧勝。2冠を達成したロメロは「金メダルを獲った直後だったが、すぐに気持ちを切り替えた。昨夜はよく眠れたし、起きたときは新しいチャレンジのことだけを考えました。(19歳の)ジョアンナ・ローセルのような若手と一緒に優勝できて、ベストタイムを出せたことにも驚いている。もちろん、今回に備えてしっかりと準備をしてきたけどね」
優勝したイギリスチーム |
女子団体追い抜き表彰式 |
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