北京五輪の出場枠をかけた2008年世界トラック選手権自転車競技大会4日目はイギリス・マンチェスター(ベロ・ドローム)で30日(現地時間29日)、男女4種目が行われた。
男子ケイリンはアテネ五輪チームスプリント銀メダリストの伏見俊昭(32=福島)が予選2着、2回戦3着と大健闘して初の決勝進出を果たし、決勝5位で出場枠をものにした。男子マディソン決勝の飯島誠(37=チームブリヂストン・アンカー)、盛一大(25=愛三工業レーシングチーム)は12位となり、ポイントレースの出場枠をつかんだ。
これで男子チームスプリント、スプリント、ケイリン、ポイントレース、女子スプリントの男女5種目の出場枠を確実とした。4月14日にUCI(国際自転車競技連合)から正式発表が行われ、5月7日に日本自転車競技連盟が選手選考委員会を開催して、出場選手が決定する。
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【男子ケイリン予選、2回戦、決勝】 |
伏見俊昭が予選2着と好発進した。スタートでいつも通り、前を取った地元クリス・ホイの3番手につけて周回を重ねた。ペーサー離脱後はホイの後位争いが激化。伏見は大外を踏み上げつつ、最終バック手前でホイの後位を奪い、そのままゴールした。
今季のW杯初戦シドニー大会での総合10位が最高の伏見だったが、2回戦では3着と大健闘し、自身初の決勝進出を果たした。再スタートから5番手をキープした伏見は、レースが大きく動いた残り1周半から3番手にポジションを上げて、果敢にキープ。最後まで譲らず、見事にファイナリストとなった。
日本勢の決勝進出は03年ドイツ・シュツットガルト大会の山田裕仁(6位)以来、5年ぶり。87年オーストリア・ウィーン大会の本田晴美以来、2度目の優勝の夢も膨らんできた。注目のファイナルは2回戦に続く、スターターの空砲で、まさかの再スタート。「あまり気にはならなかったが、集中力だけは切らさないように」と伏見は、即座に気持ちを入れ直した。
リスタートで5番手に付けた。作戦は「ホイとトュルナンをマーク」(マニエ監督)だったが「思ったよりトュルナンが動かなかった。2人で先行争いをしてほしかった」と伏見にとっては誤算。ペーサー退避から前の位置を狙いにいくが世界のダッシュ力とトップスピードの前に最後まで後方から抜け出せなかった。
優勝は圧倒的に強さで勝ち上がったホイが押し切って、2年連続のケイリン王者となった。伏見は5位に終わったが、北京五輪へは大きな収穫を得た。W杯ケイリンは予選から1着権利で、4戦いずれも敗者復活戦へ回った。それが今回は一発で2回戦進出し、決勝も経験した。
「大きな自信になった。五輪でもメンバーは変わらないだろうし、マニエ監督の手動計測でもトップとハロンでコンマ1秒ほどしか違わない。ホイは強かったが、それ以外は格段の差はない」。世界のトップレベルと、決勝の舞台で戦い、五輪への手応えを一気に言い放った。マニエ監督も「金メダルは取れなかったかもしれないが2、3着はあった。残念だ」と伏見がつかんだと同じ感触を得た。 静岡ダービー最終日の翌日に、計16時間以上をかけてマンチェスター入りした。「疲れがないわけはないが、集中力でカバーするしかない。去年は2回戦で何もできなったので、今年は気持ちよく走れた」。表彰台の中央で勝ち誇るホイの姿が大型スクリーンに映し出されると、伏見は直立不動で画面を見上げた。両肩には昨年、2度目のGPを制した時に自ら発注した優勝記念の特製バスタオル。日本の競輪GP王者が、真夏の北京で世界のケイリンに挑む。
マニエ監督と伏見選手 |
ケイリン2回戦の伏見俊昭 |
ケイリン決勝戦の伏見 |
ケイリン決勝ゴール |
ケイリン表彰式 |
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【男子マディソン決勝】 |
日本の飯島、盛は何とも惜しい12位。今回のマディソンでの五輪枠獲得はならなかった。2人で1チームとなりポイントレースと同じようなルールで行われるマディソン。交代の時には巧みな技術やコンビネーションが必要になる。今大会、圧倒的な強さを見せている英国がトップ通過の5点を2回獲得するなど19点のポイントを稼ぎ、05年以来となる世界戦での優勝を果たした。
一方、日本勢も6回目のポイント計測で5点を取り奮戦したが、12着。この結果、UCIの五輪獲得へのランキングは14位となり、出場可能な13位に後一歩及ばずマディソンの枠獲得はならなかった。飯島は「今回は5ポイントも取れたし悪くはなかったんだけど…。ポイントレースは五輪に出場できると思うが、マディソンも結果を残して長距離は2人一緒に出たかった」と残念そう。もし、1月のワールドカップ第3戦(米国・ロサンゼルス)ポイントレース予選落車でのケガがなければ、確実にその後の出走レースで得点を加算し、2人での五輪参加が有望だったが…。対する盛は「残り20周くらいで実はなにげに落車しちゃいました。でも擦過傷程度だし、もうへとへとだったからレースに影響はなかったですよ」と、こちらはさばさばとした表情で話していた。
マディソン 日本チーム |
マディソンで優勝した英国チーム |
マディソン 表彰式 |
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【女子スプリント】 |
決勝は昨年の覇者で予選で唯一の10秒台を出したビクトリア・ペンドルトン(英国)と1/2決勝でUCIランキング2位のジェニー・リード(アメリカ)を下したシモナ・クルペクカイテ(リトアニア)が対戦。
1本目は、終始前でレースを進めた女王ペンドルトンが、2コーナー過ぎにスパートしたクルペクカイテを難なく併せて快勝した。2本目は、脚力差を感じたクルペクカイテの先行でラスト1周では車間が開いたものの、ペンドルトンは動じることなく落ち着いて追い込みストレートで連覇を達成した。全盛期を思わせる強さのペンドルトンは「自分の力は自分が一番分かっている。現在は世界一だと思う。性格的には、自分を疑ってしまうタイプだけど、もしも金メダルが獲れていなかったら相当にガッカリしたでしょう。コーチの指導も素晴らしかったと思います。明日はケイリンに出場するけど、今すぐに走りたいくらい。これからの目標は北京五輪だけど、現在の状態を維持していくことが大事だと思う。最大のライバルは郭爽(中国・第4位)になる」
マニエ監督によると、ペンドルトンと郭爽はWCC時代の教え子。特に、郭爽は家族ぐるみでバックアップするなど、娘のように接していたとのこと。同じアジア人を世界のトップに育て上げたマニエの手腕は間違いないようだ。
女子スプリント決勝 |
女子スプリント 表彰式 |
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【女子ポイントレース】 |
合計100周回、25キロメートルを走り、規定ポイントの獲得数で順位が決まる。昨年の覇者であるキャサリンベイツ(オーストラリア)、UCIランキングトップの李燕(中国)などの強豪がそろったが、過酷なサバイバルレースを制したのは21歳の新鋭・マリアンヌ・フォス(オランダ)だった。
レースは、24週目でトリーネ・シュミット(デンマーク)がラップに成功してトップに立つが、中盤にフォスも果敢に仕掛けてラップに成功。さらに、第8スプリントで3ポイントを獲得すると、第10スプリントでは、残り6周から飛び出して後続を寄せ付けず、ガッツポーズでゴールした。イギリスの金メダルラッシュに一矢を報いたニューヒーローは「ロード、シクロクロスで優勝したが、トラックでも勝てると信じてやってきた。北京五輪ではロード、ポイントレースの両方に出場するつもり。オランダは(【VOS】以外)まだ銅メダルしか取っていないので、他の仲間にも続いて欲しい」
ポイントレースで優勝したフォス |
女子ポイントレース 表彰式 |
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