2009年世界トラック選手権自転車競技大会
ポーランド・プルシュクフ発(現地3月25日)
 
第2報 【3月25日】  

 From Beijin To London 。
 北京五輪直後の世界選手権。次のロンドンを目指す強豪が集結して2009トラック世界選手権競技大会が25日、ポーランドの首都ワルシャワ郊外のBGZアリーナで開幕した。初日は、女子個人追抜き予選からスタート。華やかな開会式に続いて、女子500メートルTT、そして日本期待のチームスプリントが行われ予選8位、他の日本勢ではポイントレースに盛一大(26=愛三工業レーシングチーム)が出場したが11位に終わった。また500メートルTTではシモナ・クルペクカイテ(リトアニア)が33秒296の世界新記録で優勝した。
 と真面目に始まったが、ふだんは、車券命の自称〝破滅型ギャンブル記者〟がポーランドまで行って何をしているんだと思われる競輪ファンもおられるだろう。確かにバチが当たって出発日は成田空港の貨物機炎上の影響で欠航に見舞われた。それでも何とかへろへろになりながら初日に間に合った。16時間を超えるフライト移動の時差ボケで疲労困ぱいでも、大都会のワルシャワ市内から雪化粧に染まった閑静な住宅街を抜ける風景に目を奪われながら徐々に高まる期待。そして、そこはギャンブル記者。昨年の同じ時期に完成したばかりのピカピカの丸いバンクを見たとたん勇気百倍。モチベーションが一気に上がってきた。そして何よりも記者席がすごい! の一言。バンク内に設けられているが、板張りの超急角度(42度)のバンクが目の前に迫る絶景のロケーションなのだ。競輪でもこのロケーションに記者席があれば、そのド迫力に興奮して死ぬほど買ってしまうのだろうなといらん妄想をしてしまうほどなのだ。やっぱり世界選はすごい。
 というわけでギャンブル記者が見た自転車競技の世界大会なのだから、ポーランドが生んだ偉大な天文学者にちなんでコペルニクス的な視点で世界選を語りたい。そしてスポーツ記者としても、同じくポーランドが生んだ偉大な音楽家ショパンが作ったパッションにあふれたピアノ曲のように熱く、詩情豊かに競技も語りたい。
  さて、そのチームスプリントである。どう見ても近年のスプリント界を席捲してきた◎フランス○イギリスの本命・対抗は動かしがたい。そのイギリスも世界王者クリス・ホイの負傷欠場による○評価だ。2車単なら1・5倍を切ってしまう、昔で言えば吉岡(稔真)オッズである。裏目の4倍(あくまでも推定です)を買えるか否かである。マニエ監督が「最低でもベスト8を狙う」と話していた日本代表は△止まりだが、どこまでスプリント王国2強に迫れるのか。と期待を胸に膨らませていたら、何と予選は優勝候補ナンバーワンのフランスとの対戦。これは日本にとって吉と出たのか凶と出るのか。さて結果はいかに…。
  【男子チームスプリント予選】 
 優勝候補フランスと同じ組で最後に登場した日本は、昨年11月に行われたW杯メルボルン大会で久々にメダル(銀)に届いた成田和也(30=福島)-渡辺一成(25=福島)-新田祐大(23=福島)の花の福島トリオでの布陣。優勝候補と走ることに関してはフレデリック・マニエ監督は「相手は見えないし、競走にはまったく影響はない」と話していたが力の差はいかんともし難かった。フランスが誇る世界のスタート王・グレゴリー・ボージュに脅威の17秒343のタイムでリードを許すと、2走、3走と離されてのゴール。タイムは45秒139とマニエ監督の公約だった8位は確保したものの、平凡なタイムで予選敗退となった。
JAPAN男子チームスプリント  
JAPAN男子チームスプリント
 しかし1走目の成田和也は17秒865と「狙っていた」17秒をたたき出し、全体でも5位と健闘した。「直前のオーストラリア・バースでスタートの練習ばかりを繰り返し、相当な手応えを感じていた。マニエ監督の指示も素晴らしかったし、僕の現状の力では100%出せたと思う」とチームの成績とは別に手応えをつかんだようだ。ただスタートの練習以外はしていないという状況でのスプリントに関しては「不安いっぱい」と顔を曇らせた。
 2走目の渡辺は終わった後のローラー練習でも終始うつむいたまま。「せっかく成田さんがいいレースをしてくれたのに、巧くつなげなかった僕の力不足です」と出るのは反省ばかりだった。13秒400で2走者だけなら9位の成績に「北京五輪で一度切れた状態の中から、この日に照準を合わせて状態を戻すには、まだ無理があったし、同じ状態に戻せてもこのままでは世界相手には通用しないこともわかった。チーム全体が進化しないといけないのに現状の環境や状況では無理ですね。そこが辛い」と競輪との両立の難しさも吐露した。
 3走目の新田は「僕のスタートの失敗がすべてです。同じタイミングで3人が並走しなければいけないのにタイミングを間違えて僕が内に差し込んでしまいました。そのズレが最後のスタミナをなくしてしまった。でも初めての世界選で世界相手に戦って何が足りないのかを実感できたし、大きな収穫はあった。すべてをレベルアップさせて、ロンドンを狙いたい」とポジティブな新田らしく前を向いた。
 マニエ監督はチームスプリントを総括して「8位以内は最低のノルマ。満足はしてないけど、今の日本の力ではあんなものじゃないかな。成田がスタートを決めたが、後の2人は流れに乗れなかった感じだね。今のところは今のメンバーが最強だと思っているし、このメンバーを底上げして、さらに上位を狙いたい。それにしてもフランスは強い。間違いなく優勝するだろう」と母国を絶賛することも忘れなかった。
 
成田和也選手  
成田和也選手
新田祐大選手 渡邉一成選手
新田祐大選手
渡邉一成選手
 
  【チームスプリント決勝】 
 マニエが予想したとおり(僕の予想も…)フランスが着差以上の圧倒劇で世界選4連覇を飾った。予選を43秒614の好タイムで通過したフランスは、おなじみのイギリスと対戦。2走目をミカエル・ダルメイダを同じミカエルでも長年フランスを引っ張ってきたブルガンにスイッチする万全の体制でさらにタイムを43秒510の脅威的なタイムで優勝に華を添えた。ボージュ―ブルガン―シロの布陣は、多分史上最強のチームではないだろうか。ブルガンも「予選でダルメイダがつないでくれたから今がある。チームがしっかり協力し合ったこその結果です」と満開の笑顔を浮かべた。世界王者クリス・ホイをケガでかくイギリスでは王者フランスの牙城を破ることはかなわなかった。
フランスチームスプリント チームスプリント表彰式
フランスチームスプリント
チームスプリント表彰式
 
 【男子ポイントレース】 
 1周250メートルのバンクを160周。気が遠くなるような4万メートルの長丁場を24選手が争った。10周ごとに訪れるポイント獲得の機会を見据え、ペダルをぐっと踏んだり、抑えたり…。熾烈な駆け引きに観衆も大いに沸いた。
 日本勢の盛一大(愛三工業)は中盤あたりで気を吐き、ポイントを奪っていく。だが、得点を挙げられなかった終盤が響いて11位。トップテンに届かなかった。盛は「しょうがない。やっぱり速い。平均速度はそうでもないが、スピードの上がり下がりが大きい」と苦笑しながら上位選手の力量に脱帽した。
 北京五輪のポイントレースで8位に入った飯島誠(ブリヂストンアンカー)がロード種目へ重心を置くことになり、日本の中長距離系の顔は盛にバトンタッチした。本人も意識は高く「代表としての走りをしなきゃ。責任感じゃないけど、日の丸を背負うんだから」と成長を誓う。
 盛は残り1種目に懸ける。2月中旬に行われた今季のワールドカップ(W杯)最終戦、コペンハーゲン大会は記憶に新しい。スクラッチをまんまと制し、W杯の中長距離種目で日本選手初の金メダルに輝いた。今大会もやる気十分だ。
 ポイントレースの勝者はキャメロン・マイアー(オーストラリア)。終盤に高得点を連ねて24点まで伸ばした。2位と2点差、3位とは1点差。胸のすくような逆転優勝だった。
キャメロン・マイアー選手
キャメロン・マイアー選手
男子ポイントレース盛一大選手
男子ポイントレース盛一大選手
男子ポイントレース表彰式
男子ポイントレース表彰式
 
 【女子500メートルTT】 
 大観戦に包まれて流した感激の涙が、レース後には愛らしい26歳の笑顔に変わった。「信じられない。夢を見ている見たいです」と33秒296の驚異的なワールドレコードで世界選手権初優勝を飾ったのはリトアニアの新星シモーヌ・クルペクカイテだった。誰もが5人目に走った07年のチャンピオンでワールドレコード保持者(33秒588)のアナ・ミアーズの復活優勝だと思ったが、シモーヌだけが別だった。「昨年の世界選の2着が自信になっていました。我慢してベストを尽くせば必ずチャンスがあると信じていました」とミアーズの出した33秒796を遙かに上回るタイムで隣国リトアニアを応援する地元ファンの心を完全につかんでしまった。後半250メートルで出した14秒455は、まさに女版〝鬼足〟とあえて銘々しよう。
 そして何よりもシモーヌも含めての500メートルTTにエントリ選手の美人の多さに驚嘆た。均整の取れた体格はもちろん、アップで映し出される容姿の可憐さはどうなんだ。防備用に付けているゴーグルが顔を隠してしようがないが本当にもったいない状態だ。うーん、前から関西ローカルのコラムには書いているが、外国人選手をいれた女子競輪の復活やガールズ競輪を切に願うのみだ。
女子500メートルTT 女子500メートルTT表彰式
女子500メートルTT
女子500メートルTT表彰式
 
 【女子個人追抜き】 
 北京五輪金メダリストで昨年の世界選手権王者のレベッカ・ロメロ(イギリス)の欠場で混戦が予想されたが、予選は、逆にイギリスが層の厚さを見せつける形となった。新王者は同じイギリスのウェンディ・ホベナール。北京五輪でロメロに後塵(こうじん)を拝したとはいえ銀メダリストの意地を見せ付けたのだ。予選を3分29秒491の1着で突破して楽々決勝に進出した。
  イギリスのシェーン・サットン監督は「ロメロは、世界選手権、五輪と一度頂点に立って1年は休んでいるんだ。また次の頂点を目指して猶予期間を明けているんだろう」とボートでも頂点を目指し会場には現れたのロメロを評した。そして「ホベナールも強いが次のチャンピオンは、もうそこにいる。3年後には誰もかなわなくなるだろう」と若干20歳ながら4位に入ったジョアンナ・ロズウェルをイギリス王国の伝統を担う将来の王者として指名した。
 しかし、その決勝はホベナールには34歳という年齢から来る疲れという思わぬ罠が待っていた。ホベナールを破ったのはアリソン・シャンクス(ニュージーランド)という26歳の伏兵だった。「ヨーロッパが断然だったこの競技で私が勝てたのはニュージーランドチームにとって誇りになります。我慢して一生懸命やってきて本当によかった」と顔をくちゃくちゃにして喜びを表現した。
女子個人追抜き 女子個人追抜き
女子個人追抜き
 
~プルシュクフから~
 いよいよ2009トラック世界選がプルシュクフのBGZアリーナで始まりました!大会第1日目日本人選手は、男子チームスプリント、男子ポイントレース40kmに出場。チームスプリントは、成田和也、渡邉一成、新田祐大選手がマニエ監督の故郷、強豪フランスチームと走りタイム45”139で8位でした。
 チームスプリント予選が終わった後は、ポイントレース盛一大選手の登場です。40kmの長丁場!160周も周回を重ねる上にその間に駆け引きしなくてはならないなんて・・・大変なレースですね。結果は、5ポイント稼いで11位となりました。
 
日本選手団ピットの様子
ベストの状態にむけて集中!
日本選手団ピットの様子
ベストの状態にむけて集中!
 
 明日は、男子ケイリンに渡邉一成、佐藤友和の両選手そして男子スクラッチ15kmには、盛一大選手が出場します。ワールドカップ第5戦のコペンハーゲン大会で金メダルに輝いた盛選手、ここでも期待してしまいますね。

 
男子チームスプリント表彰式
男子ポイントレース表彰式
男子チームスプリント表彰式
男子ポイントレース表彰式
 
 今回の開会式は、ダンスが好きなお国柄らしく可愛らしい子供たちによるダンスパフォーマンスで始まりました。その後、大会関係者の挨拶続き次から次へとパフォーマンスがありました。そんな中、選手達は、ウォーミングアップに余念がありません。すぐそばでダンスや演奏があっても目もくれないでローラーに乗っていました。すごい集中力ですね!
 
開会式でかわいいダンスを披露
開会式でかわいいダンスを披露
空中パフォーマンス
パフォーマンス練習風景
空中パフォーマンス
パフォーマンス練習風景
   
 会場のBGZアリーナは、昨年できたばかりでグリーンの天井にピンクの壁や柱が可愛らしい内装です。今日は、会場で売っていたハンバーガーを買ってみました。ボリュームもあり肉の焼き具合も絶妙でピクルスも美味しくなかなかのものでした。その他、会場ではビール、ソフトドリンク、ホットドックなどがあり、ホットドックは人気が高いようで結構人がならんでいました。明日、時間が空いたらホットドックにも挑戦したいと思います。
 
かなりいけるハンバーガー
かなりいけるハンバーガー
会場風景
雪が積もる会場そばの風景
会場風景
雪が積もる会場そばの風景
 
 ここで、少しだけポーランドについて、いま、世界選手権が行われている国ポーランドは、ロシア、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ、スロバキア、チェコ、ドイツの7つの国に囲まれています。そう聞くと海がない内陸の国のように思われるかもしれませんが、北はバルト海に面しているので北欧からは、海路でポーランドに来ることもできるそうです。
 日本では、既に桜の開花が発表されている場所も多くなってきていますが、ポーランドは緯度が日本より北に位置しているので3月下旬といってもまだまだ厳しい寒さです。実際、今日も朝方は雪が降っていて屋根などを白くしていました。
 
 
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