2011年の世界トラック選手権が23日、オランダ・アペルドールンで開幕した。日本勢では女子で初出場の上野みなみ(鹿屋体育大学)がポイントレースで4位に入る大健闘。日本の女子としては過去最高位をマークし、メダル獲得へあと一歩に迫った。 |
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【男子チームスプリント予選】 |
日本は第5組でポーランドとともに登場。第1走者から雨谷一樹(21=栃木)、渡邉一成(27=福島)、新田祐大(25=福島)のオーダーで臨んだが、各国ともタイムが伸び悩む中、日本も歩調を合わせるように失速した。雨谷が18秒000と勢いに乗せきれず、渡邉、新田もタイムを伸ばせない。45秒462で10位に終わり、一様に厳しい表情でピットに戻った。新田は「いろいろあって力が入りすぎた。何としても日本の意地を見せようと話し合っていたけど、それが空回りしてしまったかな」と悔しがる。東日本大震災の被災者のために、という思いが力みにつながったようだ。
第1組からフライングが多発し、渡邉が「スタート時にホルダーがナーバスになっていて離してくれず、雨谷と距離が離れてしまった」と話したように運も味方しなかった。さらにバンクの特性によるものなのか「スタートはうまくいって、手応えがあったけどタイムが出なかった」(雨谷)と、ペダルから伝わる感覚と実際のタイムとの間にずれがあったようだ。ただ、リーダー格の渡邉は「重いというか、力が必要なトラックなんだと思った。(ワールドカップで戦った)メルボルンやマンチェスターみたいな高速トラックで好タイムが出るけど、こういう自力の必要なトラックでタイムが落ちるのが、日本の課題」と指摘した。
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日本チーム |
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【男子チームスプリント決勝】 |
北京オリンピックでは圧倒的に強かったイギリスも、ここのところ、上手く立ち回れず、苦戦が続き、今回もどのような成績になるのか微妙なところだったのだが、やはり負け、3位に。勝ったのは、フランスチーム。昨年、他を圧倒したドイツチームに競り勝ち勝利を手中にした。優勝したフランスのグレゴリー・ボジェは「昨年の世界選で優勝することが出来なかったので、この1年、優勝を目指して頑張ってきました。昨年はてとも悔しかったので・・・。今年はいい調子でこれたし、いいコンディションです。目標は、もっと強く、もっと早く走ること! 後ろのことは考えず、とにかく自分のベストを尽くすことだけを集中していました。これでフランス3つめのメダルを獲りました。これは喜ばしいことですし、ロンドンオリンピックに向けてますます頑張ります。そして、スプリントでもメダルを獲れるように全力を尽くします」と語り喜びをあらわに。 また初めて世界選手権で優勝したミカエル・ダルメイダは「とても嬉しいです! ここまでハードな練習をしてきたから、この結果は驚くよりも当然の結果だと思っています。初めてのアルカンシェルジャージだけど、自分には似合うと思うし、とても着心地がいいです(笑)」
チームメイトのグレゴリー・ボジェとスプリントの覇権を争うケヴィン・シローは「今回また金メダルを首にかけることができ、とても嬉しいです。今シーズンはまたトレーニングを頑張ってきました。スプリントでも頑張りたいと思います。チームスプリントの時は仲間ですけど、スプリントの対決の時は朝ごはんまでは一緒で、それ以降はライバルですね(笑)」半分以上、本気モードでボジェをライバル視するシローの更なるメダルの期待がかかる。
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フランスチーム |
男子チームスプリント表彰台 |
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【男子団体追抜決勝】 |
タイム的には世界記録に少し遠い結果となったが、タイムは出ずとも、やはり強かったのがオーストラリアだ。昨年のこの種目の優勝メンバーであるキャメロン・メイヤー、リー・ハワードは出場しなかったが、実力を見せつけ、ここのところこの種目の注目株であったロシアを破り3分57秒832で優勝を飾った。
優勝後のインタビューでオーストラリアのジャック・ボブリッジは「来年の世界選がメルボルンで行われるので、それに向けて今から頑張っています。ハードなトレーニングを頑張ってきている結果が出ましたね。確かにプレッシャーはあったけど、結果を出せて良かったです。ここのバンクはあまりタイムが出ないですね。オーストラリアより寒いけど、マンチェスターのワールドカップはもっと寒かったので、コンディションは問題ないです」とすでに目標は来年の世界選手権に合わせている。
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オーストラリアチーム |
男子団体追抜表彰台 |
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【女子500mTT決勝】 |
この種目の大御所的な、オールトラリアのアンナ・メアーズ、リトアニアのシモーナ・クルペシカイテ、イギリスのビクトリア・ペンデルトンは出場せずで、いま一つの感があったが、しかしここのところ急速に力を付けてきているオルガ・パナリナが33秒386の好タイムを叩き出し優勝を飾った。オルガ・パナリナ(ベラルーシ)は「優勝できてとても嬉しいです! サンディ・クレア(フランス)に勝てると思っていなかったので、自分でも驚いているし、これが大きな自信になります!」と素直に喜んでいた。 |
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パナリナ選手 |
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また、日本人選手のCLUB SPIRITSの中川諒子が世界選手権デビューを果たした。夜の部の最初の競技で、しかも発走順が1番。観衆の視線を一身に浴び「正直、緊張した」という中でスタートを切った。記録は13人中12位となる37秒660。「(第1走を務める)チームスプリントの練習を重点的にやってきて、スタートは練習通り。ただ2周目に加速していく感じがなかった。もっと体を作って、量をこなせるようにならないといけないし、全般的に注意するところがある」と話した。レース後は同じCLUB SPIRITSの加瀬とスタート地点付近から世界の強豪の走りを研究。「スタート前30秒での集中の高め方が違う。同じ女子だと思うと悔しい」と向上心を刺激されていた。 |
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中川諒子選手 |
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【女子ポイントレース決勝】 |
女子ポイントレースは25km、100周で10周ごとにポイント周回があり、このポイント合計で競い合うレースだ。トラック競技の花形とも言える種目なのだが、オリンピック種目から外れてしまった。だが、初日に行われた事もあり、実力者が出場し、激戦となった。しかし初出場の上野みなみに、翻弄されたのか、オランダのマリアンヌ・フォス、キューバのヨナンカ・ゴンザレスが圏外に。優勝は残り30周近くでラップしたタツィアナ・シャラコバが30ポイント獲得で優勝を決めたタツィアナ・シャラコヴァは「25キロのレースは大変苦しかったけど、優勝出来てすごく嬉しいです。これは優勝を目指して、今まできつい練習を頑張ってきた成果だと思います」と素直に優勝を喜んでいた。 |
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女子ポイントレース表彰台 |
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この種目に出場した19歳の上野みなみが、100周の長丁場で世界を驚かせる走りを披露した。序盤の20周は集団の後方で様子をうかがっていたが、2度目のスプリントが終わった直後、チェコ選手マチャコヴァの逃げに反応して集団を抜け出し、2ポイント獲得。「彼女が逃げるのは聞いていたし、うまくマークできた。スプリントが苦手なので、長く逃げられればと思っていた」と作戦通りの展開に持ち込んだ。その後も主集団をラップして20ポイント獲得を目論むなど、積極的なレース運びで60周まで着々とポイントを重ね、一時は2位につけた。
63周目に集団に吸収され、80周目には2年前の覇者で昨年のロードの世界チャンピオンのブロンジーニ(イタリア)に逆転され4位に落ちたが「せっかくのチャンスをダメにしたらもったいない」と残り18周で単独の逃げを打つ。粘って3ポイントを獲得してブロンジーニと同点の3位に並び、最後のスプリントで先着すればメダル獲得という状況に持ち込んでみせた。
ただ、最後はスプリント力に上回るブロンジーニが抜け出し、上野の快挙達成はならなかった。「状況はわかっていなかったし、最後は競っても差せなかったと思う。悔しいですね。自分の足があったら、もっと上手く逃げられたのかな」。一歩及ばなかったが「初の世界選手権で、自分の思うように走れた」と大きな自信も得ていた。 |
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上野みなみ選手 |
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【男子スクラッチ決勝】 |
男子スクラッチは15kmをいち早くゴールに飛び込んだ選手が勝つ競技である。今回はトラック競技でもキャメロン・メイヤーが出場し、俄然盛り上がった。しかし、勝ったのは香港チャイナのコォ・ホーティンだった。駆け引きが勝負を分けるこの種目は、相手の出方を読みながら、スパートし勝たなくてはならない。優勝したコォは残り6周で、集団のスピードが緩んだところを、一気にスパートし、後続を引き離し、そのまま逃げ切った。
優勝したコォ・ホーテン(香港)は「作戦は特になかったけど、キャメロン・メイヤー(オーストラリア)が強かったので、彼をずっと気にしていました」と応えた。
昨年銅メダルを獲得した盛一大(愛三工業レーシングチーム)が2年連続の表彰台を目指したが、残り5周の時点で周回遅れにされそうになり、途中棄権を余儀なくされた。37周目には先頭に立って「誰がついてくるか見て、抜け出す展開を作ろうと思った。一度休んでもう一度出ようと思ったけど、下がっちゃいましたね」とレースを動かしにかかったが、功を奏さず。「去年は展開でいい思いをして、今年は逆になりましたね」と苦笑いした。それでも「レースを走ると、体にいい刺激が入る」と今大会の大目標とするオムニアムに向けた好材料ととらえ、気持ちを切り替えていた。 |
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盛一大選手 |
男子スクラッチ表彰台 |
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