WEB月刊競輪世界選レポート(2日目)
 
第3報 【3月25日】  

 日本チームにとっては何ともほろ苦い1日になってしまった。今季好調の北津留翼(25=福岡)にメダル獲得の期待がかかった男子スプリントは、4選手全員が準々決勝進出を果たせず敗退。CLUB SPIRITSの中川諒子と加瀬加奈子が臨んだ女子チームスプリントも最下位と、世界の高い壁を実感させられる結果となった。
  【男子スプリント予選】

 北津留、渡辺一成(27=福島)、新田祐大(25=福島)、雨谷一樹(21=栃木)が出場し、200メートルタイムトライアルに挑んだ。
 先陣を切った雨谷は2つのコーナーでどちらもわずかに膨らみ、10秒580で28位に終わった。「駆け出しの練習をしていなかった割にはよかったかな。でも座ってからのトップスピードやパワーはまだ足りないですね」と課題を口にした。これで今大会の出場種目がすべて終了。「今季はいろいろ勉強させてもらった。意気込み、やる気も昨年とは全然違うし、オフの過ごし方も全然違ってくると思います」と早くも来季を見据えて意気込みを語った。
 続く出走は渡辺。「フィニッシュラインに向かって上っている感じがする」という独特の形状のバンクをものともせず、しっかり走って10秒441。19位で1/16決勝へと駒を進めた。
新田は今ひとつ調子に乗れず、10秒710で37位に沈んだ。「だめでしたね。予選通過の10秒3ぐらいが目標だったんですけど。しっかり体を休めて、最終日の1キロタイムトライアル、頑張ります」と気持ちを切り替えていた。
 そして50選手中43番目にこの種目の日本のエース、北津留が登場した。10秒353で予選通過は決めたものの、13位と微妙な順位での通過になった。

雨谷一樹選手
雨谷一樹選手
渡辺一成選手
渡辺一成選手
新田祐大選手
新田祐大選手
北津留翼選手
北津留翼選手
 
  【男子スプリント 1/16決勝】

  渡辺は予選6位のシェーン・パーキンス(オーストラリア)と、北津留は予選12位のサム・ウェブスター(ニュージーランド)と対戦した。
 渡辺は先行。様子を見ながら仕掛け所を探り、残り1周半で踏み始めたが、残り1周で並ばれる。「作戦を変更して、スリップに入ってからもう一度仕掛けよう」とバックで並びかけるがそこまでだった。「展開は狙った通りだけど、やっぱりパワーがないですね。抜きに行く時に足を使ってしまったから、最後の伸びがなかった。スタンディングからスピードに乗り切れないのが課題とわかっているけど、なかなか改善できない。来年に向けての課題です」と話した。残す種目は期待のかかるケイリン。「レースを作って押し切れるタイプじゃないので、集中して、やれることを確実に、完ぺきにやりたい」と2日後の出番を見据えた。
 北津留も先行でスタート。残り2周を過ぎたところでウェブスターが前に出たが、しっかりついていき、最後の直線で差し切った。「危ないです。ひやひやした。アップをローラーだけで行ったのはまずかった。失敗」と苦笑い。次の相手は予選トップタイムのミカエル・ブルガン(フランス)に決まった。

男子スプリント 渡辺選手 男子スプリント 北津留選手
男子スプリント 渡辺選手
男子スプリント 北津留選手
 
  【男子スプリント 1/8決勝】

 北津留はブルガン相手に、得意の先行に持ち込んだ。残り1周半から「ゴールまで加速するイメージで行った」と徐々にスピードを上げて逃げ切りを図ったが、相手もさすがに好調。最終バックまでリードを保ったが、最後の直線できっちり差し切られた。

男子スプリント 1/8決勝 北津留選手
男子スプリント 1/8決勝 北津留選手
 
  【男子スプリント 1/8決勝敗者復活戦】

 北津留は予選7位のケヴィン・シロー(フランス)、9位のロベルト・フォルストマン(ドイツ)と準々決勝進出をかけ、1着だけを狙って臨んだ。ここでも先行するが、相手はバンクの傾斜を利用して加速する北津留の必勝パターンを警戒して、北津留をインに封じ込めるようなコース取り。残り1周半でシローとフォルストマンが一気にダッシュすると一気に差を開かれ、懸命に追いすがったが3着でのフィニッシュ。12位が確定した。「やっぱり予選の失敗が痛かった。真ん中の順位だったから、勝っても次が1位の選手になる。もう少し上の順位なら…。1/8決勝の展開は自分に優勢だったけど、取られた。これが世界選手権なんですかね」と表情には悔しさがにじんだ。「先行するのは作戦通りだったけど、相手も自分の攻め方を研究して、読まれてきている。もう一つ、新しいパターンを考えないといけないですね」と課題も見つかった。しかしそれは、北津留が世界の強豪に認められた証拠でもある。レース後は世界選手権のスプリントV10を達成した中野浩一さんと熱心に話し込み、アドバイスを求める姿も。成長したが故の壁を乗り越え、ステップアップしようとする姿勢が見えた。

男子スプリント 1/8決勝敗者復活戦 北津留選手
男子スプリント 1/8決勝敗者復活戦 北津留選手
 
  【男子スプリント 1/4決勝】

 1/4決勝は4組行われ2本先取した選手がセミファイナルに、進出が決まる。 一組目はミカエル・ブルガン対ミカエル・ダルメイダのフランス対決となった。しかし圧勝したのはブルガンだった。二組目は、ロベルト・フォルストマン対クリス・ホイの対決となった。勝ち上がったのホイ。危なげなく二本獲得し、準決勝へ。三組目シェーン・パーキンス対ジェイソン・ケニーとなった。こちらは一対一となり3本目にもつれ込んだがジェイソン・ケニーが勝ち、準決勝進出となった。四組目グレゴリー・ボジェ対スコット・サンダーランドとなった。しかしながら、ボジェが貫禄のストレート勝ちとなった。

 
  【男子スプリント5-8位決定戦】

 ミカエル・ダルメイダ、シェーン・パーキンス、ロベルト・フォルストマン、スコット・サンダーランドの対戦となった。結果はダルメイダが先行し押し切って5位となった。以下は6位シェーン・パーキンス、7位スコット・サンダーランド。フォルストマンは反則を犯し、失格となってしまった。

 
  【女子団体追抜決勝】

 今季のワールドカップから好調なのがイギリス。ここの世界選手権でも好調を維持し、予選から一番時計を出したイギリスが、決勝戦でも3分23秒419のタイムを出して優勝を決めた。その中のリーダー格でもあるウェンディ・ホウベナゲルに優勝の感想を聞いた。
 「若い2人(ローラ・トロット、ダニエル・キング)と一緒に6ヶ月間一緒に頑張ってきました。2人と上手くチームが馴染んでいったし、こうして若い世代も育ってきたし、この2人と一緒にこれからも頑張っていきたいと思います。今回は楽しかったし、昨年に続いての優勝なので、来年もまた優勝出来るように頑張っていきたいですね」と応えてくれた。

イギリスチーム 女子団体追抜表彰台
イギリスチーム
女子団体追抜表彰台
 
  【女子チームスプリント予選】

 日本は第1走者が中川、第2走者は加瀬で、ポーランドと同組になった。中川は「スタートはうまく出られた」というがタイムが伸びず、20秒989と出遅れる。加瀬も流れに乗りきれず、第2走者では最下位の15秒807。トータル36秒796と、2人がマークした日本記録にもわずかに及ばず、最下位に沈んだ。
 中川はウェイトリフティングから、加瀬はトライアスロンから転向して、まだ競技歴は1年足らず。技術、経験を含めて、世界との差を実感した。 中川は「もっと練習しないと、この舞台では戦えない。レベルの高さを感じて、いろいろ勉強できた。日本に帰ってからもっと頑張ろうという気持ちになれたし、強くなりたい」と刺激をうけた様子。加瀬は「最悪ですね。仕方ないと言われるけど、イメージ通りできないもどかしさがある」と悔しさをあらわにする。「男子に比べて、期待もされていないだろうし、肩身が狭い。次のチャンスがあるなら、もっと戦えるレベルになって見返したい。悔しい思いをして、強くなるしかないです」とこみ上げる涙を必死にこらえ、さらなる成長を誓っていた。

日本チーム
日本チーム
 
  【女子チームスプリント決勝】

 この種目は、500mのタイムトライアルが早い選手がいるチームが勝つとかつて思われていたが、ここ最近では、チームコンビネーションが男子のように問われる種目になってきた。そのコンビネーションを見せつけて優勝したのが、オーストラリア。33秒237の好タイムでオーストラリアがイギリスを下し、これで3連覇を達成した。そのオーストラリアの代表選手のアンナ・メアーズにインタビューした。
 「これで世界選チームスプリント3つ目のタイトルが獲ることができて非常に良かったです。カール(・マックロック)もすごく頑張ったし、これは大きなチャレンジでした。(ビクトリア・)ペンデルトンが対戦相手だったけど、彼女はいくつも優勝してきたし、すごく手ごわい相手で決して楽な相手ではなかったけど、カールと力を合わせて頑張りました。今回、今までの中で一番ここに向けて準備してきたと思います。カールにはもっと伸びていって欲しいと願います。大切なのは一つ一つを大切に走っていくことだと思っています。私は次はスプリントに出るので、そこ向けて頑張りたいと思います」

オーストラリアチーム 女子チームスプリント表彰台
オーストラリアチーム
女子チームスプリント表彰台
 
  【男子個人追抜決勝】

 予選に3選手が出場したオーストラリアは、全員が好タイムを出し、優勝争いはあわやオーストラリア対決になるかと思われたが、ジェシー・サージェント(ニュージーランド)が、後半に粘りを見せ、タイムを上げてきて、予選2位に。金メダル争いはジャック・ボブリッジ対ジェシー・サージェントの対決になった。しかし、決勝はボブリッジがパワーを見せつけ、圧勝(タイム4分21秒141)。昨日の団抜に続き、2つ目の金メダル獲得となった。優勝を飾ったジャック・ボブリッジは、「2月に世界記録を出しましたが今回それを破るつもりで、ベストを尽くすことを考えて走りました。ここからオーストラリアはロンドンオリンピックに向けて一歩一歩頑張っていきたいと思います。北京オリンピックでも示した通り、自分たちが出来るのだということを示したいと思います」

ジャック・ボブリッジ選手 男子個人追抜表彰台
ジャック・ボブリッジ選手
男子個人追抜表彰台
 
 
 
 
~アペルドールンから~

2011年UCIトラックサイクリング世界選手権も2日目が終了しました。
始まってしまうと終わりに向かって急速に時間の流れが速くなる気がします。


本日は、男子個人追抜き、女子チームスプリント、女子団体追抜き、男子スプリントでは予選、1/16決勝、1/8決勝、1/8決勝敗者復活戦、1/4決勝、5‐8位戦と行われ、かなりハードでした(自分達の肉体が…)。


明日は、男子オムニアム、男子スプリント決勝、女子スプリント、女子個人追抜き、準決勝がおこなわれます。


応援が力になっています。・ぜひ皆様のご声援をおねがいします。
UCIでも作っていただきました。「CYCLING SUPPORTS JAPAN」
バンクのホーム側の出入口のところに貼られています。

CYCLING SUPPORTS JAPAN
CYCLING SUPPORTS JAPAN

今回はバンクの上で撮った写真のご紹介。バンクの上からだと、スプリントなどのスタート順を決めるところを撮れたりします。

スタート順を決める選手たち
スタート順を決める選手たち

また、基本的に、低い姿勢から撮ることが多いのでちょっと煽り気味の写真が多くなります。でもこれは、カメラマンの考え方、ポリシーであるので一概には言えませんけど。


   
 
 
 
 

競技の写真は二日目のものです。
明日も頑張りましょう!

 
 
 
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