WEB月刊競輪世界選レポート(3日目)
 
第4報 【3月26日】  

  
 トラック競技世界選手権も3日目を迎え、ロンドン五輪から採用される新種目のオムニアムに盛一大(愛三工業レーシングチーム)が登場した。オムニアムは陸上で言えば十種競技のような混成競技。250メートルタイムトライアル、ポイントレース、エリミネーション、個人追抜、スクラッチ、1キロタイムトライアルの順に、2日間にわたって6種目を行い、その総ポイント数で競う。この日は前半の3種目が行われた。
 トラック競技の華、男子スプリントはいよいよ4強が激突。グレゴリー・ボジェ(フランス)の3連覇達成か、クリス・ホイ(英国)の覇権奪回か、はたまた新王者の誕生となるのか…。最速男の座をかけた争いは、息詰まる熱戦となった。
  【男子オムニアム】

 盛は本番を前に「他の選手もオムニアムの経験に関しては変わらない。ただ、選手のレベルは高いと思う」と印象を語っていた。昨年は最下位に終わり、難しさは身をもって感じている。「6種目とも優勝なしでも、上位にいることが大事になる競技。自分はタイムトライアルを克服して、いかに順位を上げるかが大事になる。現時点で意識するのは順位よりも、対自分。厳しいけど、しっかり走って、オリンピックのポイントを少しでも多く取れれば」と目標を掲げて臨んだ。

①250メートルタイムトライアル
2周目最終バンクから一気に駆け降り、全力でクランクを回した。コーナーをきれいに回ったが、タイムは22選手中20位の14秒173。「自己ベストは14秒フラット。練習でもそれぐらいのタイムは出しているし、もう少し行けるかなと思う」。自転車を降りると、少し苦笑いが漏れた。

② 30キロポイントレース
 120周の長丁場。本職の選手ばかりでないところから、盛は「普段のポイントレースと、オムニアムのポイントレースは違う。読み切れないところがある」と口にしていた。
 そんな中、盛は集団の中団から後方で足をためつつ、上位に飛び出す機会をうかがう展開となった。最初のポイントは40周目。3選手が大きく抜け出した後、集団の先頭で1ポイントを挙げた。その後は激しい駆け引きが繰り広げられ、なかなか仕掛けるタイミングをつかめなかったが、80周目には主集団の先頭でスプリントを制して1ポイントを追加した。
 しかし吉井功治監督代行が「五輪種目になったことで、選手のレベルが高くなっている。オムニアムのポイントレースの方がペースは速かった」と分析したように、全体的にハイペースの展開。上位では7人が主集団をラップし、20ポイントを奪った。盛も懸命に上位進出を狙って、終盤に敢然と動いた。97周目、4人で集団を抜け出し、ラップを狙ったがこれは不発。さらに103周目、3人で先頭集団の5人を追って大集団を抜け出したが、ポイント獲得には一歩及ばず。結局2ポイントの13位でレースを終えた。総合順位は1つ上がって19位となったが、盛は「(成績が)悪いだろうとは思ったけど…やっぱり悪かったですね。ポイントレースはもう少し上位に行きたかった。上位がラップするような展開になるとは思わなかったので、ギアが足りなかったですね」と誤算も響いた。

③ エリミネーション(250m×42周)
 今季から新しくオムニアムに加わった種目。2周ごとに最後尾の選手が脱落していき、最後は1対1のスプリント勝負となる。
盛は集団の前方5番手前後で最内の経済コースを周回する、頭脳的なレース運びで戦線に残った。前にスペースが開くと、スッとそこに入っていく。集団での位置取りが巧みな理由は、意外なところにあった。「その辺は競輪選手の師匠達が教えてくれるので。足の差は歴然だけど、他の国の選手はないアドバンテージがある」と種明かしをしてくれた。
 体力と脚力を温存した盛は12人が脱落した残り20周で、温めていた秘策を繰り出す。最後尾が脱落することから、集団の意識はどうしても後ろに向かう。スプリントが終わり、一瞬ペースが緩んだ隙をつき、単独で集団から抜け出したのだ。これが見事に決まり、半周近くのリードを築くことに成功。「これは決まっただろうと。ダッシュ力の差で優勝はできないにしても、そのまま10周ぐらい頑張ればひと桁前半の順位には入れる」と振り返った会心の逃げで、上位進出への希望が膨らんだ。
 しかしその直後、まさかのアクシデントが襲う。後続の英国選手とベルギー選手が絡んで落車し、レースは中断。大きなリードは消えてしまい、脚力を使っただけになってしまった。さらに審判の不手際が追い打ちをかける。規則では5周の中断後に再開することになっているが審判もそれを正確に把握しなかった模様で、再開したのかどうか、はっきりとした合図を出さないままレースが進行。盛は集団の先頭で8周ほど無駄な周回を重ね、脚力をさらに使ってしまった。結局再開後、4周は粘ったが15人目で脱落した。この種目は8位で、総合順位は16位に上がったが、何とも不運な結果となった。「落車でニュートラルになるのは知っていたし、仕方ないかな。初の落車だったらしいですし、百歩譲って、今後しっかりやってくれれば」と大人の対応だったが、「あの場面で脚を出し切るつもりだったので、ああいう結果になるとは。思わず『おいっ』て言っちゃいました」と本音も漏れた。

 前半戦を終えた感想はどんなものか。「やっぱりタイムもいいし、ポイントレースもレベルが高い。力の差は感じる」という。それでも「脚の調子は悪くない。個人追抜は厳しいけど、得意なところで頑張りたい」と大会4日目の後半3種目を力強く見据えた。


男子オムニアム 盛一大選手
男子オムニアム 盛一大選手
 
  【男子ポイントレース】

優勝:アヴィラ・ヴェネガス・エドウィン・アルシビアデス(コロンビア)

 皆が昨年の覇者・キャメロン・マイヤー(オーストラリア)をマークするレースになった。そんな中、一人アタックを仕掛けたアヴィラ・ヴェネガス・エドウィン・アルシビアデスが残り90周を過ぎたところでアタック開始、単独で逃げ、残り87周でラップに成功。一気に20ポイントを取った。マイヤーも必死にポイントを取っていったが、14回目のポイント周回でエドウィンが5ポイントを取り合計33ポイントで優勝を決めた。エドウィンは喜びをかみしめながら「とても嬉しいです。この優勝は僕だけでなく南アメリカ大陸にとっても大きいと思い、喜びを噛みしめています。残り30周くらいでチリの選手がアシストしてくれたのも大きかったです」と応えてくれた。
 優勝候補のキャメロン・マイヤーは25ポイント獲得で2位となった。しかしながら、各選手からのマークが厳しく、本人の思ったようなレースは出来なかった。
「金メダルを狙って来たんですけれど、とても展開的に難しかったです。後半は脚がなくなってしまいました。来年に向けて万全にしていきたいし、また最終日のマディソンに懸けていきたいと思います。優勝した彼は正しい作戦だったし、素晴らしい走りだったので、金メダルは当然だと思います」悔しさを噛みしめながら、大人の答えをしてくれた。

男子ポイントレース アヴィラ・ヴェネガス・エドウィン・アルシビアデス選手 男子ポイントレース表彰台
男子ポイントレース
アヴィラ・ヴェネガス・エドウィン・アルシビアデス
選手
男子ポイントレース表彰台
 
  【女子個人追抜】

優勝:サラ・ハマー

 予選から他の選手たちに5秒近く差をつけ、段違いに速かったハマーとアリソン・シャンクス(ニュージーランド)の2人。決勝戦も接戦になったが、最後はハマーが逆転をして優勝を決めた。
 レース後、ハマーは「非常に接戦でどちらが勝ったかわからなかったが、観客の声援で自分が優勝したと分かりました。でも、来年はロンドンオリンピックがありますし、オリンピック種目から外れた個人追抜をやるかどうかわからないですね」と、1-2位決定戦を盛り上げたにもかかわらずちょっと冷静な答えが返ってきた。

女子個人追抜 サラ・ハマー選手 女子個人追抜表彰台
女子個人追抜
サラ・ハマー選手
女子個人追抜表彰台
 
  【男子スプリント】

優勝:グレゴリー・ボジェ

 昨日の結果で、セミファイナルは、イギリスとフランスの同国同士の対決になった。第1ヒートのミカエル・ブルガンとグレゴリー・ボジェの対戦はストレートでボジェに軍配が上がり、第2ヒート、クリス・ホイとジェイソン・ケニーの新旧対決は2本目まででは決着がつかず、3本目にケニーが勝ち決勝進出を決めた。
 決勝戦はボジェ対ケニー。ボジェは2本とも逃げてストレート勝ちし、これでボジェがオールストレートで勝ち上がり、この種目3連覇を決めた。その直後から、表彰までの間のボジェの喜びようは、観客、メディアを巻き込んで大騒ぎの展開となった。そのボジェは「これで3連覇出来たし、今年のシーズンは上手くいったと思います。自分は2011年のチャンピオンになったというだけなので、また1年1年、一つ一つを頑張っていくだけです。次の目標はオリンピックで金メダルを取ることです。家族に喜んでもらえるのが一番嬉しいですね」
 ボジェを育てたルソー監督は「これ以上の名誉はないです」と感動に声を震わせていた。

男子スプリント グレゴリー・ボジェ選手 男子スプリント表彰台
男子スプリント
グレゴリー・ボジェ選手
男子スプリント表彰台
 
  【女子スプリント】

 オリンピック種目となると、俄然メジャー選手の出場が増える。本日は1/4決勝、また5-8位戦まで行われた。
 まず200mタイムトライアル予選を見てみるとタイム的にはやはりあまり芳しくない。他の種目でも軒並みタイムは出ておらず、バンクの特性をちらっと解析したくなってしまった。
 200mタイムトライアル予選の一番時計はベラルーシのオルガ・パナリナ。11秒120と好タイム。2位以下はアンナ・メアーズ(オーストラリア)、リュボフ・シュリカ(ウクライナ)、グオ・シュアン(中国)、シモーナ・クルペシカイテ(リトアニア)、ヴィクトリア・ペンドルトン(イギリス)と続いた。
 特筆すべきところは、若手の台頭だろう。特にウクライナのシュリカは今シーズン、ポンと出てきた感がある。1/8決勝も難なく勝ち上がり、1/4決勝に進出した。
 1/4決勝はオルガ・パナリナ対サンディー・クレア、アンナ・メアーズ対クリスティーナ・フォーゲル、ヴィクトリア・ぺンドルトン対リュボフ・シュリカ、シモーナ・クルペシカイテ対グオ・シュアンの対戦となった。結果はオルガ・パナリナ、アンナ・メアーズ、ヴィクトリア・ペンドルトン、接戦となったがシモーナ・クルペシカイテが1/2決勝への進出を決めた。
 1/2決勝以降は明日行われることとなる。

 
 
 
~アペルドールンから~

2011年世界選手権も3日目が終了しました。


本日も良いレースが続いていました。
インパクトがあったのは、男子ポイントレースでしょうか。
徹底的にマークされたキャメロン・メイヤーがちょっとかわいそうになりました。
逃げても先頭を誰も引かないし、マークに来るはで、それだけやられたら勝てません!って感じでした。2位という結果は素晴らしいと思います。


男子ポイントレース
男子ポイントレース

そして、今日、決勝だった男子スプリントを優勝したグレゴリー・ボジェは、その喜びようが凄かったですね。普通は、クールダウン兼ウニングランでバンク内を3周ぐらいして、コーチと抱き合ったりして、勝利を喜びあいますが、ボジェは違いました。
コーチと抱き合ったかと思ったら、バンク上段に登って、そこに来ていた自分のご家族とハグ、そこから、バンクの外縁を歩いて、知り合いの方々にハグ、やっと終わったかと思ったら、コーチとハグ、知り合いにハグ、とハグの連発。
更に表彰台でも、大騒ぎ。体を使って喜びを爆発させていました。


男子スプリント優勝 グレゴリー・ボジェ選手
男子スプリント優勝 グレゴリー・ボジェ選手

また本日、ポイントレースの表彰式が始まる前に、UCI会長のパトリック・マックエイド氏が壇上に立ち、日本で起きた大震災について語り、「今回、サイクリングは日本を応援しますと書かれたものを、バンク内に貼り付けました。我々は、日本自転車受競技連盟とJKAはファミリーだと思っています。是非、募金をお願いします!」と言っていただきました。


UCI会長 パトリック・マックエイド氏
UCI会長 パトリック・マックエイド氏
 
 

女子の個人追抜きも面白かったですね。
サラ・ハマーとアリソン・シャンクス決勝対決は、一旦はアリソン・シャンクスは巻き返し、逆転まで行きましたが、終盤たれて、逆転。アリソン・シャンクスは表彰台の悔しそうな表情が印象深かったです。

 
女子個人追抜き アリソン・シャンクス選手
女子個人追抜き アリソン・シャンクス選手
 
 

明日はいよいよケイリンです。日本から応援よろしくお願いします!


 
 
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