WEB月刊競輪世界選レポート(2日目)
 
 
第3報【4月5日】
 
【女子スプリント予選・1/16決勝】
 予選で行われた200mタイムトライアルでは石井寛子(26=茨城)が自己ベストの11秒800を出したが、上位24選手による1回戦に残れず、予選落ち。世界の分厚い壁を感じたようで、終了後はタオルで涙をふきながら、悔しさをあらわにしていた。12番目で出た前田佳代乃(21=鹿屋体育大学)は11秒402を出し、自身の日本記録を更新。スタート前にバランスを崩して転倒するアクシデントがあった1回戦ではドイツのヴェルテの前に出ることができず「自分の下手さが分かった。日本でやっているやり方では、ここでは勝てない。もっと経験を積んでやるしかない」と現状を見据えた。
 この種目でライバルだったマレーシアのムスタパが予選落ちし、この時点で日本が18カ国・地域に与えられるロンドン五輪の出場枠を獲得。五輪出場が濃厚と見られる前田は「(フライングスタートの)200メートルで11秒2台までは出せると思う。シーズンの締めくくりでいい走りが出来た。一山を越えた感があります」と笑顔で語った。

 予選では昨年の世界選手権でケイリン、スプリント、チームスプリントで3冠を達成した地元オーストラリアのアンナ・メアーズが10秒782の世界記録を出し、貫禄を見せつけた。


女子スプリント石井寛子選手

女子スプリント前田佳代乃選手
 
【女子団体追い抜き予選】
 田畑真紀(37=ダイチ)加瀬加奈子(31=新潟)上野みなみ(20=鹿屋体育大学)で臨んだ日本は予選を3分31秒165で走り、昨年11月のワールドカップ(W杯)の際に同じメンバーでマークした日本記録を3秒以上更新した。この種目が新しく採用されるロンドン五輪の出場はかなわなかったが、短期間の練習で成果を上げた選手たちの表情は一様に明るかった。
 レースは持久力のある田畑が最初の2周半を引っ張る展開で、若い上野が半周で先頭を交代するなど、選手の力量に応じて負担を変えた。上野は「私よりも他の2人が走る力が強くてこうなったが、選手の交代も今までで一番うまくいったし、いいレースだった」と笑顔で振り返った。加瀬も「自分たちはまだ数カ月のチーム。まだまだこれから」と先を見据えると、スピードスケートから転向した最年長の田畑も「(日本新の)自信はあった。3人でやってきたことを冷静に出せたと思う」と胸を張った。


女子団体追抜日本チーム
 
【男子オムニアム:第1種目フライング・ラップ】
 ワールドカップでは出場枠以上のライダーがエントリーし、予選のポイント・レースから始まることの多いオムニアムも、この世界選手権では出場枠が24人にしか与えられないことから、予選なしの本選第1種目、フライング・ラップ(250m)からのスタート。出場権がなかったものの、繰り上がりで出場可能となった西谷泰治(愛三工業レーシング・チーム)はこの種目24人中3番目のスタートとなったが、13秒912のタイムで22位という結果。厳しい幕開けとなってしまった。この種目、トップ・タイムは実力者でスプリント系種目で強さが際立つイギリスのクランシーで12秒881、ニュージーランドのアーチボルドが13秒086、昨年の世界選手権者のフライバーグを押しのけて出場となったオーストラリアのオチョアが13秒137と続いた。


オムニアム1種目目(フライングラップ)西谷選手
 
【女子団体追い抜き決勝】
 世界記録が設定されてからの歴史が浅い女子団体追い抜きは世界記録ラッシュとなった。予選でオーストラリアがイギリスの持つ記録を1秒近く上回る3分17秒053をマークすると、最終組のイギリスがすぐさま記録を取り戻す3分16秒850とした。大勢の観客が詰め掛けたハイセンスアリーナは「NEW WORLD RECORD」のアナウンスが出るたびに波を打つような歓声をあげた。
 金メダルを懸けた決勝はその両国の対戦。オーストラリアは先行逃げ切り策を狙って、序盤から勢い良く飛び出した。1250メートル地点で1秒483の大差。そこからがイギリスの見せ場を作った。ロスを少なく先頭の選手を交代し、じりじりと差を詰めると、残り500メートルで逆転。その後もペースを落とすことなく1周15秒台のハイペースを刻み続け、3分15秒720と同一種目でこの日3度目の世界新記録が飛び出した。
 女子団体追い抜きでは最近5年で4度イギリスが金メダルを獲得している。
 昨年の優勝メンバーであるフーヴェナゲルがチームから離れたが、今季のチームには2008、09年の優勝メンバーである23歳のロウセルが復帰。他のメンバーは21歳、19歳と若いが、「チームに戻ってくることが出来て幸せ。またこうして世界選手権に勝つことができるなんて夢のようだわ」と歓喜に浸った。
 この種目が初めて導入される地元のロンドン五輪に向けて、死角はなさそうだ。


女子団体追抜(イギリスチーム)

女子団体追抜表彰式
 
【女子ポイント・レース】
 25km、100周で争われた女子ポイントレース。
 レース後半にウォン(香港)、ライアン(アイルランド)、チュルコヴァ(ロシア)、グレッサー(カナダ)の4名がラップに成功する。この時、チュルコヴァとグレッサーが同ポイントで1位。チュルコヴァはグレッサーを徹底的にマークした。そして、チュルコヴァが最後のゴールスプリントで2位に入り、合計31ポイントを取り、グレッサーに3ポイント差で優勝を決めた。レース後、チュルコヴァは嬉し涙に泣き崩れた。
またこの種目でロシアが優勝したのは8年前の世界選手権メルボルン大会でオルガ・スサレバが優勝して以来の事だった。
 日本からは田畑が出場。そのレースは、前記した通り4名にラップはされたものの6ポイントを取った田畑真紀だったが、残り3周で落車してしまいゴールはできなかったが、規定により、落車以前の順位でゴールとなった。
レースを終えて田畑真紀は
「挟まれて逃げ道がなくなりました。怪我は足の擦過傷なんですけど痛いですね。でも、大きい怪我じゃなかったのが不幸中の幸いです」
優勝したロシアのチュルコヴァバのコーチは「彼女のレースは本当に良かった。当初の作戦とは違うが完璧なレースでした」とコメントしていた。


女子ポイントレース田畑真紀選手

女子ポイントレース表彰式
 
【男子オムニアム】
〔第2種目:ポイントレース〕
 オムニアム第2種目のポイントレースは通常のポイントレースと変わりなく、走行距離30km、120周で10周毎にポイント周回で競い合う。
レース序盤は淡々としたペースで進んだが、ヴィヴィアーニ(イタリア)、オショア(オーストラリア)が積極的にポイントを取りに行っていた。
レースは終盤に入り、ラップに成功したヴィヴィアーニ(イタリア)、テルエル・ロヴィラ(スペイン)、ベル(カナダ)、チョ(韓国)の4名のトップ争いに絞られたが、ポイントを重ねていったヴィヴィアーニが首位。だがヴィヴィアーニは最後に落車に巻き込まれてしまった。落車はしたものの完走扱いとなり、この種目をトップで通過した。
 西谷泰治は第3スプリントの1位通過を狙いにいきましたが惜しくも取れず、また、最後のスプリント前に逃げていったが、追い込まれポイントを取ることはできなかった。

〔第3種目:エリミネーション〕
 2周毎に最後尾の1人が抜けていくエリミネーション。最後の2人まで残ったのは、オショア(オーストラリア)とコクァール(フランス)だった。そして、コクァールがアタックをかけ、そのまま押し切って1位を取った。
 西谷泰治は、奮闘するも12番目に下ろされ、13位となった。

3種目を終えた西谷泰治
「自分の中では納得のいく結果ではなく、走りも思うようにいかない部分も多いので、かなり苦戦している状態ではあるんですけれど、エリミネーションからギアを上げたり、新しいことに挑戦しながらやっているので、そこで感触も悪くなかったので、明日まだ3種目あるので希望を捨てずに頑張りたいと思います」


オムニアム2種目目(ポイントレース)
西谷選手

オムニアム3種目目(エリミネイション)
西谷選手
 
【男子1kmTT決勝】
レースは、1分2秒台の戦いになっていたが、20番目に登場したバンベルトホーベン(ニュージーランド)が1分00秒543を出し、タイムを大幅に縮めた。しかし、23番目のダルメイダ(フランス)が1分00秒509で抜く。その後に続くぺルビス(フランス)、ムルダー(オランダ)はダルメイダのタイムを抜くことができず。最後の登場したのはニムケ(ドイツ)。ダルメイダの金メダルに期待をかけるフランスチームはそれを祈るようにみつめていたのが印象的だった。しかし、ニムケは前半のタイムこそダルメイダに負けていたが、残り2周で加速し、ダルメイダの記録を上回り、結果、1分00秒082のタイムで1kmTT連覇を飾った。

 4番目に出走した新田祐大は、1分02秒623で自己ベストを更新! 日本新記録は、中国・昆明で伏見俊昭が出した1分02秒158。日本記録に及ばなかったが、高地ではないここで3秒を切ったの見事だった。
新田祐大
「やっと3年、4年越しの目標を達成できました。いつも悔しい思いだったんですけど、今回はオリンピック前の一番いい時に出ました。本当はもっとタイムを出せれば最高だったんですけど、でも、自分の自己新を1秒近く縮めるということはなかなか出来ないことなので、いいアピールもできましたし、明日につながるモチベーションをあげるいいレースができたと思います」


男子1kmTTニムケ選手(ドイツ)

男子1kmTT新田祐大選手

男子1kmTT表彰式
~メルボルンから~
 昨日開幕となったオリンピックに向けての大一番、UCIトラック競技世界選手権大会。
開催地は過去にも世界選手権を開催し、ワールド・カップも頻繁に行なわれているオーストラリアはメルボルン。メルボルンはシドニーに次いでオーストラリアで2番目の都市。ということで朝からオフィスへと向かう人などが大勢早足で歩いたり、信号待ちをしています。と同時に観光都市でもあり、町を流れるヤラ川沿いにはおしゃれなレストランやお店が立ち並び水族館なども併せて観光客が大勢いたりします。秋になろうというここメルボルンですが、幸い到着以降好天に恵まれて、昼間は半袖、というよりも少し動けば暑くて仕方が無いというような、朝晩はやや冷え込むものの恵まれた天候の中に身を置かせていただいてます。
 メルボルンの中心部はいわゆる碁盤の目となった分かりやすいつくり。この碁盤の目の外れから南東に向かって20分くらい歩く距離にあるのが今回の会場のハイセンス・アリーナ。オリンピック・パークと呼ばれるかつてオリンピック会場となったエリアに巨大なクリケット(ごめんなさい!私には何が楽しいのか理解できません・・・)場やらテニスの全豪オープンの会場やらが設置されたところの中にこの会場も位置します。我々リポート陣は街中の宿泊先から路面電車、トラムに乗って会場までの出勤・・・と思ったら乗るトラムを間違えてしまいました。次に来るトラムの表示が出ていてそこには次は70番、と出ていて信じ切ってのったそのトラムは75番・・・おじいさんに「このトラムは○○行きですか?」(○○は70番の行き先)と聞かれた私は「そうですよ!」と自信を持って答えたのですが、次の乗り場で降りていったおじいさん、見るからに私のことは信用できないと思ったのでしょうか・・・普段から国籍不明と言われるので仕方ないですね・・・



町のシンボルの一つヤラ川

ヤラ川のほとり町の中心駅、フリンダース駅

川沿いの樹々もやや黄色く・・・

街中には最近多いバイク・シェアリングも
 
 会場は、平日な事もあってお昼のセッションは空席もありますが、夜のセッションともなれば満席状態。これから迎える土日はチケットがソールド・アウトという話なので、いやあ羨ましい。ここハイセンス・アリーナは立派なトラックを有するにもかかわらず、そのほとんどが自転車競技などには使われず、コンサートや他のイベント、7月にはディズニー・オン・アイスなんて開催しちゃったりするようで、おそらく自転車関連は今年1年、この世界選手権以外には使われないのではないでしょうか。この会場、自転車競技時は4,500人、それ以外なら10,500人の集客能力を誇るとのこと。ロンドンのオリンピック会場なんかよりも人が入るんじゃないか、とも思えてしまうほどですので、その数字に偽りはないでしょう。
 そんなメルボルンでも実力のあるオーストラリア・チーム、そして初日から金メダルを獲得といったことから地元紙ではこの世界選手権でのオーストラリア・チームの活躍に記事がそこここに。1面には日本でもお馴染み、シェーン・パーキンス(チーム・スプリントで金メダル)が堂々と?掲載されていました。
 そんなこんなで注目を浴びる世界選手権、またかよ、みたいな感じで世界新記録のタイムが飛び交ってますが(さすがオリンピック前で各チーム仕上げてきてます。男子団体追抜で1回、女子チーム・スプリントで3回、女子団体追抜で3回更新、計7回の更新タイム)まだまだこの先盛りだくさんのここメルボルンの世界選手権、日本チームの奮闘にもご声援をお願いします。


これで会場へ、と思ったら会場に行かない
間違ったトラムです

夜のセッションは上までギッチリ

この白いの、自転車以外では降りてきて
トラックをまたいで観客席に

1面、息子エイダン君を抱いて
ウイニング・ランのパーキンス
 
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