ワールドカップ第4戦マンチェスター大会レポート
 
配信日:2月27日
 
 
2月23日(初日) 天候 雨のち晴れ 気温10℃ 観客2000人

 初日の今日は、成田和也のケイリンからはじまった。世界選手権の権利が確定している選手を持つチームが新人を試したり、インターナショナルケイリンイベントのために出走を控えたりするなどして、若干は軽めのメンバーのように思えるが、クレイグ・マクリーン、テアン・ムルダーなどの顔も見られ、決して楽勝ムードでもない。

音楽を聴いて集中する成田
<音楽を聴いて集中する成田>


 
 成田は第4ヒートの出走。同じ組に目立つ選手は、オーストラリアのシェーン・パーキンスぐらい。昨日、チーム全員の前で「成田からはじまるワールドカップなので、成田の初めの成績がチームの雰囲気を左右する」とマニエ監督からハッパをかけられた成田にも気合が入る。号砲後、成田は監督から与えられた作戦どおり、シェーン・パーキンスの後ろをとりに行く。デンマークのキャスパー・イェッセンもパーキンスの後ろをとろうとしばらく並走するが、取りきれず後退。ポーランドのパウエル・コシエカ、パーキンス、成田、ベラルーシのユリー・カルツェネウスキー、ドイツのロバート・フォスターマン、イェッセンで周回。

 残り3周、後ろを何度も見ながらしかけのタイミングをはかるパーキンス。ペーサー退避に合わせて、最後尾につけていたイェセンが上昇し、さらにその外からフォスターマンも上がって、成田は前にパーキンス、外にフォスターマンを追走した選手たちと、包まれた形となる。

 しかし、その後最終バックで5番手から前にいる4人を一気にごぼう抜きにして先頭に立ちそのまま1着。幸先のよいスタートを切った。

出走をまつ成田
<出走をまつ成田>

ケイリン1回戦
<ケイリン1回戦>


 続くスクラッチ予選。現段階では世界選出場は不可能なスクラッチに最後の望みをかけてマニエ監督が起用したのは飯島誠。
「まずは12着までに入ればいいんだ。とにかく後ろに7人以上残せ。ダッシュは一度きり。チャンスを逃すな」と言われた飯島は、大集団で冷静に位置をキープ。

 残り9周回にアルゼンチンのウォルター・ペレスをはじめとする集団が飯島のいる大集団をラップ。残り6周回、飯島が前に出る。残り5周回で、1人の落車をきっかけに大量落車が発生。飯島は前に出ていたため、落車にまきこまれることはなく、そのままゴール。ラップされたライダーのなかでは、3番目の10位で予選通過。与えられた作戦どおり、冷静に1度のスパートで、効率よく決勝進出をものにした。

スクラッチ、飯島
<スクラッチ、飯島>


 さて、夕方になり行われたケイリンの2回戦、成田が監督から与えられた作戦は「要注意なのはクレイグ・マクリーンとアンドレイ・ビノクロフのみ。マクリーンは先行するので、マクリーンを意識しろ。後方に置かれたらスピードが緩んだ隙に前に出ろ。前に出た後、自分で少しスピードを落とせば必ず、マクリーンが来る。来たら、その後ろを狙え」というもの。外枠だった成田は号砲後、ペーサーの後ろがとれず6番手。マクリーン、オーストラリアのジョエル・レオナード、スペインのホデイ・マルキアラン、中国のキ・タン、ビノクロフ、成田で周回する。

 ペーサー退避前から成田が前に上がってくる。その成田にあわせるように、ペーサーの後ろにいたマクリーンも少し踏むが、退避には少しだけ早く、双方一度スローダウンを余儀なくされる。退避とともに成田が先頭を奪取。そこで、作戦通りスピードを落とし後ろを見ていたが、外からタンが踏みあげてくる。成田はタンを行かせ、その後ろを走ってくるマクリーンの後ろに入ろうとするが、そこをレオナードにつめられ、ふたをされた形となってしまった。行き場のなくなった成田は下がるしかなく、そこから再び前に出ようと試みるも、既にスピードはマックスになっており、そのまま6着、惜しくもファイナル進出を逃した。

 7-12位決定戦、同じ組から決勝に進めなかったマクリーン、ビノクロフ、もうひとつの組から負け下がってきたテアン・ムルダーなど、どちらかといえばこちらのほうが決勝のようなメンバー。成田は号砲とともにスタートダッシュを活かしてペーサーの後ろをとりに行く。ビノクロフが続き、その後ろにマクリーン、イェッセン、ロシアのデニス・ドミトリエフ、ムルダーと並んでいる。

 残り2周半、ペーサー退避とほぼ同時に多くのライダーが動き始める。まず前に出たのはドミトリエフ。成田はドミトリエフは行かせ、少し間を空けて次に誰が来るかをうかがっている。続いて、ムルダーがやって来る。ムルダーの後ろにはマクリーン。その後ろにビノクロフが来ていて、ふたをされそうな形になるも、内で粘りながら首尾よくマクリーンの後ろをゲット。マクリーンは加速し前に出て行く。

 最終コーナー、成田は外に流れてさらに上位を狙うが、マクリーンを差すことはできず2着。総合で、8位となった。このメンバーの中で2着がとれたことは、成田の自信にもつながったに違いない。ちなみに優勝したのはオーストラリアのシェーン・パーキンス。



スクラッチ決勝

 1周のローリング周回の後、飯島は後方につけ、全体の動きを観察しているように見える。残り49周、飯島は大集団のなかで、少しずつ前方に上がってくる。残り47周、数名が先頭集団を形成し逃げ体制。少しずつ大集団を離していく。残り43周になって数名を連れて前の集団を追い先頭集団に合体。しかし、その先頭集団は吸収されてしまう。前方をキープした飯島を含む5人の集団が再度、大集団を離しはじめる。

 大集団との差は1/4周。しかし、残り26周、それも吸収される。大集団が先頭を吸収した勢いに乗ってさらに逃げを打とうとする選手で前方はめまぐるしく動いている。その後、6人の先頭集団ができ、勢いよく大集団を離しはじめる。残り21周。その動きを見て先頭を追い始める第2集団に飯島の姿があった。

 大集団との距離は1/4周。そうしているうちに先頭集団が大集団をラップ。さらに飯島の集団が大集団をラップしようと近づいてくる。程なくラップ成功。



 残り13周、大集団の中で飯島は積極的に前に出はじめる。ラストラップでは、集団でのゴールスプリントにも果敢に加わり、堂々の5位。土壇場で、世界選枠のなかったスクラッチ種目に枠をもたらした。

 「最初は期待にこたえられるか不安だったが、もらったチャンスを活かせてよかった」と安堵の表情。「冷静だったところもよかったし、いい脚をもっている」と「エクセレント」を連発するマニエに、日本ロード、トラック中長距離界のカリスマは「そんなに褒めてもなにも出ませんよ」と、ジョークで答えた。

世界選出場権を獲得し、安堵の表情を浮かべる飯島
<世界選出場権を獲得し、安堵の表情を浮かべる飯島>
   



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