~Road to GP 第58回競輪祭直前展望~
グランプリ出場を賭けた最後の戦いが始まる!

配信日:2016年11月18日
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 新たなタイトルホルダー4人が誕生し、語り継がれるドラマをファンの目に焼きつけてきた今年のG1シリーズも、残すところあとひとつ。平成28年熊本地震被災地支援「第58回朝日新聞社杯競輪祭(G1)」が、11月24日に4日間シリーズの幕を開ける。舞台は今年も屋内の北九州メディアドーム・小倉競輪場。年末の大一番「KEIRINグランプリ2016(GP)」への出場権をかけた争いも、この競輪祭でピリオドが打たれる。残る3つの椅子を巡り、V戦線と同時進行の獲得賞金争いも熾烈を極める。高速バンクがつくり出すスリリングなバトルは、初日から目が離せない。

 16年度のG1開催日程が大幅に変更され、ダービーが2回行われた異例の今年。例年であれば6つのG1優勝者にGPの出場権が与えられるが、今年に限ってはG1が7つ。さらに全日本選抜(渡邉一成)、ダービー(3月は村上義弘、5月は中川誠一郎)、高松宮記念杯(新田祐大)、オールスター(岩津裕介)、寬仁親王牌(稲垣裕之)と、すべて異なる選手が優勝者に名を連ねていて、競輪祭の覇者を含めて残されたGP出場の枠はあと3つ。かりにすでにGP出場権を持っている6人以外の選手から優勝者が出た場合は、獲得賞金でGP出場権を得られるのはわずかに2人だけ。昨年はG1優勝者を除いた獲得賞金ランク上位の選手が5人もGPに出場しているだけに、今年は狭き門と言わざるを得ない。それだけに例年にも増して、ラストバトルの賞金争い激化は避けられない。
 
 昨年、単騎でGPを制した浅井康太は、賞金ランク6位。今年のG1優勝者を除いた獲得賞金ランクでは、最上位に位置している。G1優勝こそ11年のオールスター以降ないが、連覇のかかる6年連続6度目のGP出場へ向けて視界は良好だ。今年も安定して高いパフォーマンスを発揮し、記念を6V、サマーナイトフェスティバル優勝と賞金を積み重ねた。ビッグでの優出には前半こそ手間取った感もあったが、6月の高松宮記念杯での表彰台から、サマーナイトフェスティバル、共同通信社杯、寬仁親王牌とファイナルに着実に身を置いた。単騎でも類まれなセンスからレースの流れに順応できるが、ラインでの戦いでは与えられた役割をしっかりとこなせることも大きな強み。福井記念では松岡篤哉をギリギリまでかばいながら追い込みV。番手まくりで優勝をもぎ取ったサマーナイトフェスティバル。そして弥彦記念では逃げ切りで優勝を飾ってるように、メンバーとレースの展開に応じて変幻自在な走りができる。直近の武雄記念で当面のライバル平原康多との直接対決を制して優勝。賞金を加算して、平原との差を1600万円以上に広げた。競輪祭決勝での2着賞金が1480万円(副賞含む)ということを考えれば、かりにGP出場権を持たない選手が優勝して、準Vが平原か吉田敏洋だったとしても2人が浅井の賞金を上回ることは難しそうだ。また、平原、吉田のどちらかに賞金を逆転されても、最後の9人目には滑り込める公算が大きい。浅井のGP出場はほぼ安泰とみていいだろう。
 前述したように浅井を追いかけるのは賞金ランク7位の平原康多。4年連続7度目のGP出場へ気の抜けない戦いが続くが、「グランプリがどうこうじゃない。ただ、G1を獲りたい」と、GP出場への焦りはない。今年は落車禍に悩まされ、なかなか自転車と身体がかみ合わず、そのなかで苦しい戦いを強いられた。優勝も7月の小松島記念だけとさみしい数字だが、5度のビッグ優出とレースの格を問わず一戦入魂の走りで地道に賞金ランクを押し上げてきた。9月の共同通信社杯決勝では、浅井と絡んで落車のアクシデント。傷が完全に癒えないまま臨んだ寬仁親王牌だったが、鬼気迫る走りで初戴冠の稲垣裕之を追い詰めた。そこから京王閣記念、武雄記念とレースを消化するなかで、競輪祭に向けて上昇カーブを描いている。09年での競輪祭初制覇のあとも一昨年は武田豊樹とのワンツーで2度目の大会V。昨年は武田の優勝に貢献するまくりでワンツーと大会との相性も抜群だ。賞金ランクで有利なポジションにいるのは間違いない。G1制覇というブレない強い思いから、今年もGPのチケットをしっかりとつかみ取る。
 その平原と獲得賞金でほぼ肩を並べている吉田敏洋は、02年に初めてS級のレーサーパンツに足を通してからおよそ15年。酸いも甘いも噛み分けて、ようやくGPが手に届くところまでたどり着いた。13年のオールスター以来のG1ファイナルとなった静岡ダービーでは、準Vでビッグ初の表彰台。名古屋の高松宮記念杯では3連勝で無傷の決勝進出と、37歳にして進化しているところを地元のファンにアピールした。同じ中部地区の浅井との前後は互いの気持ちを確認しながら、そのシチュエーションにあった並びを選択してきた。5月平塚記念、7月サマーナイトフェスティバルでは主導権を握って、番手の浅井の優勝に大きく貢献した。それだけに今シリーズでGP出場が確実視される浅井との連係が実現されれば、浅井が吉田にとって絶好の展開をメイクすることも十分だろう。特選からの平原に比べて、一次予選スタートとなる吉田は初日から落とすことが許されない。「きれいになんて思ってない。いままで通り、打ち合っていく」と、“肉を切らせて骨を断つ”信念で、まだ見ぬGPへの階段をのぼる。
 平原、吉田の2人がGP出場圏内にいるが、今年のG1覇者6人に浅井を加えた7人以外の選手が競輪祭を獲れば、さらに椅子はひとつ減る。厳しい条件なのは言うまでもない。それでも平原、吉田をおよそ500万円差で追いかける竹内雄作、同様に700万円以上の差がある深谷知広にもまだチャンスはある。決勝で2着ならもちろんだが、3着で964万円(副賞含む)、4着680万円、5着560万円の賞金を考慮すれば、平原、吉田の競輪祭の成績次第ではとくに竹内が賞金を上回る可能性を十分に持っている。ビッグ初Vの共同通信社杯が逃げ切りと、先行力は輪界でも指折り。優出が最低条件にはなってくるものの、ケレン味のない先行で別線を翻ろうすることができればGP初出場のシーンも。躍動感のある走りが戻ってきた深谷は、近況のレースぶりから軽視はできない。武雄記念決勝で中川誠一郎を叩き切った迫力満点のカマシは、深谷ならではのもの。一昨年の寬仁親王牌以来、3度目のタイトル奪取で一気にGPの舞台に返り咲きたい。
 賞金ランク11位の川村晃司は落車の影響が尾を引いているのか、直近の武雄記念が乱調ムード。器用さがないだけに、持ち前のパワーが回復しないと厳しい戦いになるだろう。それならば2度の優勝に2回の準Vと競輪祭で無類の強さを発揮している武田豊樹が侮れない。賞金ランク12位で平原、吉田には1000万円以上の開きがあるものの、数々の修羅場を潜り抜けてきた武田なら逆境を乗り越える術は知っている。園田匠は、SS班として初めて迎えるホームのG1に気持ちを込める。賞金でのGP出場は厳しく優勝が条件となるが、ツボを知るホームバンクなら一発があっていい。
 
 


選考用賞金獲得額ランキング(11月17日現在)
賞金順位 氏名 賞金
1 村上義弘 124,041,000円
2 新田祐大 118,361,000円
3 稲垣裕之 85,383,000円
4 中川誠一郎 83,034,000円
5 岩津裕介 81,490,000円
6 浅井康太 79,335,000円
7 平原康多 63,124,000円
8 吉田敏洋 62,787,000円
9 竹内雄作 58,083,000円
10 深谷知広 55,712,000円
11 川村晃司 52,668,400円
12 武田豊樹 51,589,800円
13 園田匠 46,209,000円
14 渡邉晴智 44,882,200円
15 郡司浩平 44,591,400円
16 渡邉一成 41,984,000円
17 中村浩士 40,703,500円
18 神山雄一郎 40,312,000円
19 原田研太朗 40,151,600円
20 佐藤慎太郎 39,584,200円
KEIRIN.JP賞金ランキング(11月17日現在)
賞金順位 氏名 賞金
1 村上義弘 124,086,000円
2 新田祐大 118,406,000円
3 稲垣裕之 85,407,000円
4 中川誠一郎 83,055,000円
5 岩津裕介 81,541,000円
6 浅井康太 79,368,000円
7 平原康多 63,157,000円
8 吉田敏洋 62,826,000円
9 竹内雄作 58,116,000円
10 深谷知広 55,751,000円
11 川村晃司 53,011,400円
12 武田豊樹 51,628,800円
13 園田匠 46,257,000円
14 渡邉晴智 44,933,200円
15 郡司浩平 44,630,400円
16 渡邉一成 42,008,000円
17 中村浩士 40,533,000円
18 神山雄一郎 40,345,000円
19 原田研太朗 40,208,600円
20 佐藤慎太郎 39,650,200円

《選考用賞金獲得額とは》
 KEIRIN.JPで発表されている賞金とは異なり、以下の賞金は含まれません。
 ・先頭誘導選手として出走したことによる各種手当
 ・予備選手への各種手当
 ・雨天時等における出走時の特別出場手当等