中川誠一郎が単騎ガマシで制した2月全日本選抜からはじまった今年のGI戦線。中川は6月高松宮記念杯も制して、今年のGI戦を2V。脇本雄太、新田祐大のナショナルチームメンバーが5月日本選手権競輪、8月オールスターでそれぞれ優勝すると、10月に開催された寬仁親王牌では村上博幸が5年8カ月ぶりにGIを制した。そして残されたタイトルは北九州メディアドーム・小倉競輪場を舞台に11月19日から開催される「第61回朝日新聞社杯 競輪祭」だ。昨年から6日制トーナメントのナイター開催へ変ぼうを遂げ、グランプリ争いに新たなドラマを生んだ。今年最後のGI戦はどのような結末を迎えるのか、注目の6日間がいよいよ幕を開ける。

 すでにグランプリ出場を確定させているのは今年のGIを制した前記の4名だ。そして全日本選抜、オールスターで2度のGI決勝2着に入るなど、1年をとおしてハイレベルな活躍を見せ、賞金ランク3位につける佐藤慎太郎。さらに寬仁親王牌で決勝3着に食い込み、続く11月防府記念を制すなど今年も後半戦でヒットを飛ばした清水裕友も賞金ランク4位でグランプリ出場をほぼ確実なものにしている。佐藤は出場なら2006年以来、実に13年ぶりのグランプリ出場。清水は大逆転で初出場を決めた昨年から1年でたくましく成長した。

 寬仁親王牌を制して賞金ランク5位の村上博幸までが獲得賞金7000万円オーバーだが、6000万円台にはすでにオールスターを制して出場を決めている新田を含めて4選手がひしめいている。6位の郡司浩平(写真)と7位の平原康多(写真)の差は約140万円。競輪祭、最終日の特別優秀の2着が151万円だから、単純計算すれば決勝に乗れなくてもひっくり返せる差だ。郡司は高松宮記念杯の落車で鎖骨を骨折し、2カ月の離脱があったにもかかわらずこの位置につけている。焦らず、しっかりと体調を戻した成果が9月共同通信社杯の優勝など復帰後の快進撃につながったことは言うまでもない。一昨年はランキング11位で競輪祭を迎えたが、グランプリには手が届かなかった。2年越しの悲願へ、最後の一戦まで悔いなく走り切る。平原は3年ぶりにビッグ優勝のないまま競輪祭を迎えた。試行錯誤を続けるなかでも、安定した成績を残しているのが平原の強さ。3年前は武田豊樹と決勝戦ワンツー(優勝は平原)で、そろって劇的なグランプリ出場を決めた。競輪祭は過去3度優勝と相性のいい大会なら、賞金ではなくタイトルを獲って出場を決めるか。現時点での賞金ボーダーは6362万円で9位の松浦悠士(写真)で、7位の平原を約280万円差で追いかけている。今年は2月全日本選抜の優出を皮切りにビッグレースで4度の優出と大活躍。地元、広島で昨年12月に記念初優勝を飾ったときに、次の目標と話していたグランプリ出場は手の届くところまできている。

郡司浩平選手

平原康多選手

松浦悠士選手

 今年の最大の特徴は9位の松浦と10位の諸橋愛(写真)の間に大きな開きがあることだ。その差は約1522万円。決勝2着(1710万円)に入らなければ逆転できない計算だ。とはいえ直前の11月四日市記念で諸橋が決勝2着に入らなければ、優勝しなければ逆転できないほどの開きがあった。7月弥彦記念を制してからオールスターの決勝3着、共同通信社杯の優出など、諸橋が見せる後半戦の集中力はグランプリ初出場を決めた一昨年に通じるものがある。

諸橋愛選手

 昨年は19位で本番を迎えた清水が競輪祭の決勝3着でグランプリ出場に滑り込んだが、今年は11位の太田竜馬から下の選手は優勝しなければグランプリに出られないという厳しい状況だ。太田は競輪祭初出場だった一昨年はシリーズ3連対、昨年大会ではGI初優出を決めるなど小倉ドームとの相性がいい。14位の浅井康太は全日本選抜の落車、失格など前半戦はアクシデントが続いたが、後半戦に入り立て直してきた。9年連続のグランプリ出場へは大会連覇をするしか道はない。昨年、最高年間賞金獲得額を更新した三谷竜生や過去に11回のグランプリ出場を誇る村上義弘も条件は同じ。今年の競輪祭は賞金争いはもちろんだが、優勝争いも例年以上に激しいものとなりそうだ。


『KEIRINグランプリ2019』出場見込み選手について(11月18日現在)
氏名 府県 現在満たしている選考要件 2019選考用賞金獲得額 GP出場回数
(出場した場合)
賞金順位
中川 誠一郎 熊本 第34回読売新聞社杯全日本選抜競輪 優勝
第70回高松宮記念杯競輪 優勝
94,041,000円 2016年以来2回目 2位
脇本 雄太 福井 第73回日本選手権競輪 優勝 102,589,000円 2年連続2回目 1位
新田 祐大 福島 第62回オールスター競輪 優勝 66,320,000円 5年連続6回目 8位
村上 博幸 京都 第28回寬仁親王牌・世界選手権トーナメント 優勝 76,958,400円 2年連続4回目 5位
佐藤 慎太郎 福島   84,386,400円 2006年以来5回目 3位
清水 裕友 山口   77,572,000円 2年連続2回目 4位
郡司 浩平 神奈川   67,819,200円 初出場 6位
平原 康多 埼玉   66,420,600円 7年連続10回目 7位
松浦 悠士 広島   63,623,000円 初出場 9位
諸橋 愛 新潟   48,395,700円 2017年以来2回目 10位
太田 竜馬 徳島   45,839,200円 初出場 11位
古性 優作 大阪   43,833,000円 初出場 12位
渡邉 雄太 静岡   43,258,700円 初出場 13位
浅井 康太 三重   42,714,400円 9年連続9回目 14位
菅田 壱道 宮城   42,211,000円 ※初出場 15位
木暮 安由 群馬   41,636,900円 初出場 16位
三谷 竜生 奈良   40,734,000円 3年連続3回目 17位
中村 浩士 千葉   40,509,500円 初出場 18位
原田 研太朗 徳島   40,205,600円 初出場 19位
小倉 竜二 山口   38,242,100円 2006年以来3回目 20位

『GP・GI・GII等の出場選手を選考する際に使用する賞金獲得額。』
KEIRIN.JP等で発表されている賞金と異なり、以下の賞金が含まれません。
(1)先頭誘導選手として出走したことによる各種手当
(2)予備選手への各種手当
(3)雨天時等における出走時の特別出場手当等
第61回朝日新聞社杯競輪祭 決勝レース終了後(11月24日)に発表される、『KEIRINグランプリ2019出場選手選考』及び『S級S班選手の選出』は、この選考用賞金獲得額を使用します。
平成20年度の各特別競輪等の選考から導入されました。
※印は競輪祭不出走の選手です。