『被災地支援競輪函館競輪開設66周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:7月23日
 函館競輪場で平成28年熊本地震被災地支援・開設66周年記念「五稜郭杯争奪戦(G3)」が、7月23日に開幕した。初日は一次予選から見ごたえのあるバトルが展開されたが、人気の新山響平が4着に敗れる波乱もあった。メーンの特選3個レースでは、北津留翼、稲垣裕之、川村晃司がそれぞれ白星を飾った。24日の2日目には初日特選を勝ち上がった9選手によって、優秀「巴賞」が行われる。
 本場では開催中の毎日、元競輪選手の山口幸二氏によるレース展望、函館市内の寿司店が出店、オリジナルの寿司セットを限定50食で販売する「函館競輪寿司」、ファミリーで楽しめるレジャーグッズが当たる「未確定抽選会(未確定車券またはレシート提示)」など、様々なファンサービスとイベントでお客様をお待ちしています。また、24日の2日目には、松竹芸能売り出し中の若手芸人4組による「函館競輪お笑いライブ」、オフィス北野の鉄道アイドル「ゆゆ385木村裕子」によるお笑いライブ、メインPRキャラクター「りんりん」によるステージなども予定されています。ぜひ、函館競輪場へ足をお運びください。
<1R>
荻原尚人選手
荻原尚人選手
 後方から押えて出た武藤龍生は、戸田康平の仕掛けに合わせて踏み込んで番手に飛び付く。前団の隊列が縮まった打鐘の3コーナー、須永優太がドンピシャのタイミングで叩きに出て最終ホームで主導権を奪取。番手の荻原尚人(写真)は車間を空けて3番手に入った戸田をけん制して、直線できっちり抜け出した。
 「(須永は)タイミングがバッチリでした。(武藤が)粘る可能性も高いから、あれですかさず行けば(番手に)はまることもあるんで。(戸田は)強いんで、ペースに入れられたらヤバかったですね」
 先行策で2着に粘った須永優太は、完全燃焼で満足そうに汗をぬぐう。
 「ちょっと踏みすぎたんで、最後はいっぱいでした。(戸田が3番手に入っているのも)確認できたし、あれで流して行かれちゃうよりはと思って踏んでいました」
 須永に叩かれた戸田康平は、3番手で立て直すも流れ込みまで。
 「(武藤が)一瞬、引いたのかと思って…。そしたらもういっぺん来た。そのあとは(須永に)気づくのが遅れました。石丸(寛之)さんと藤田(昌宏)さんが付いていたのにレース内容が悪すぎです。反省しかないですね」

<2R>
 スタート直後に小原太樹が落車。小原の身体と自転車をチェックし、レースに支障がないと判断されて再発走となった。レースは打鐘前に先頭に立った加藤寛治に対し、中団を巡り小原と菅田和宏で取り合う展開に。後続のモツれをしり目に展開有利に運んだ加藤の番手から最後は渡邊健が抜け出した。渡邊は検車場に引き揚げて来ると「(加藤)寛治のおかげ」と、まず同県の後輩への感謝を口にした。
 「作戦とは違ったけど、恵まれましたね。寛治が本当に落ち着いて行ってくれました。今日は寛治の頑張りに尽きます。僕も脚の感じは悪くないですね」
 1回目のスタート直後に落車した小原太樹は、直線の真ん中を伸びて2着に突っ込んだ。
 「右のクリップがすっぽ抜けて、はずれちゃいました。それでコケたときに右手をついたんでちょっと痛いですね。最後は本当に必死でした。でもなんとか2着なんで、ケアして頑張ります」
 菅田和宏は小原との中団併走から、鈴木幸紀をすくい3番手へ。最終バックからまくるも、車は進まず不発の8着。
 「探したらあそこしかなかった。タイミングなかったけど、無理やり行ったが…。難しかったですね」

<3R>
 合わせて動いた佐藤清之が、関東3車を受けて柿沼信也の主導権。人気の中部勢を後方に置いて、一本棒の展開から柿沼は落ち着いてペースアップ。後続との間合いを図った番手の阿久津修が、直線の入り口から踏み込んでチャンスをモノにした。
 「もう柿沼君サマサマです。柿沼君が主導権でも西村(光太)君が来るだろうし、そこを止めてからと思ってました。ふだんはもっと引きつけるんですけど、後ろが師匠(須田雄一)だったんで、自分のところまで引きつけると、師匠がかぶってしまう。それでシビアに踏みました。結果が良かったけど、自分の調子は確認する余裕はなかったです」
 中団確保の南関ライン。佐藤、川崎健次が外を踏んで、空いた中のコースを深澤伸介が伸びて2着に強襲。
 「もうあれで外はないなって感じでした。(佐藤)清之が降りてきたらヤバかったですね。自分の感じは最近のなかじゃ一番良かった」
 4番手の佐藤清之は、西村のまくりに合わせて踏んで3着。ソツない立ち回りでラインの3車を勝ち上がりに導いた。
 「あとは2コーナーから仕掛けて行ければ良かったです、そこだけですね。でも、(柿沼が)掛かってました。無理やり行った感じです」

<4R>
 後攻めから西本直大が先制するも、最終ホーム手前で7番手から佐藤博紀が鋭いダッシュで巻き返す。追走の竹内智彦は踏み出しこそ遅れ気味だったが、追いついて立て直しを図ると最後はしっかりと差し切った。
 「佐藤君はすごいね。先行した西本君も普通に駆けていたのに、その上を強引に仕掛けたから。新田(祐大)みたいだったよ(笑)。アイツは仕掛けられれば、だいたい良い結果になる。逆にちゅうちょすると全然ダメだから。久しぶりにシビれるようなダッシュに付いたよ」
 今期から初のS級1班となった佐藤博紀が、持ち味を存分に発揮するカマシ逃げで2着。
 「1班になってもやることは変わらないけど、今回はレース間隔が空いて練習ができたので、しっかりと仕掛けようと。西本さんが思った以上に踏んで(7番手に置かれ)焦ったけど巻き返せて良かった。でも、まだ一次予選が終わっただけなのでここからです!」

<5R>
大竹歩選手
大竹歩選手
 大竹歩(写真)が力強い走りで白星発進。前受けから7番手まで引き切った大竹が打鐘2センターから一気にカマすと、3番手の松尾淳は離れ、番手の三谷将太はやや車間が空きながらも懸命に続く。3番手以下は大きく置かれた。最後までスピードが落ちなかった大竹が、圧巻の逃げ切り勝ちを収めた。
 「一番カマしやすい展開になりました。詰まったところで行くっていうのは決めていましたし、カマした時点で初日は通過できるなと思いました。前回(7月大宮F1を)欠場して久々のレースだったんで、昨日は緊張して眠れなかったんですけど、1着なんでうれしいですね。明日以降も楽しみです」
 2着には三谷将太が続くも、検車場に引き揚げて来て「離れた」と、悔しそうに発した。
 「スタートは誰も出んかったから。ホームは向かってたけど、バックはすごい追い風だった」
 2着から大きく離れた3着には鈴木良太が入った。
 「あんなに離れちゃうとは思わなかった。(田中)孝彦も頑張ってくれたし、脚的には悪くないけど、目の前でバイクみたいなスピードで行かれては」と、大竹のスピードにお手上げといった様子だった。

<6R>
古屋琢晶選手
古屋琢晶選手
 打鐘手前で押えた元砂勇雪が先行態勢を取るが、徳永哲人がその上を叩いて最終ホームから逃げる。古屋琢晶(写真)は九州コンビの仕掛けに素早く反応して、ロングまくり。競った齊藤努と宗景祐樹は両者ともに遅れて、古屋が後続をちぎってゴール板を駆け抜けた。
 「今日はカマシかまくりと思ってました。徳永さんが行ったんで、僕は行きやすくなりました。(決勝に乗った)川崎以来の記念だったし、1着スタートでよかった。(地元の)弥彦記念は呼ばれてないんで、そのぶんもここに力を入れて頑張りたい。状態もいいし、また決勝に乗りたい」
 古屋のまくりには屈したものの、徳永哲人が内容の濃い走りで2着に逃げ粘った。
 「ちょっと距離も長いし、あのままビューンって行っちゃうと元砂君の目標になっちゃうかなと思って駆けました。うまく作戦がはまった。やらないで負けるレースが多くて、その後悔の繰り返しなんで今日はよかったです。練習もしてきたし、今回は良さそうですね」
 最終ホームで中村良二と重なった元砂勇雪だったが、結局は1車下げて3番手からの立て直し。3コーナー過ぎから外を踏むも3着がやっと。
 「自分が切ってからのスピードが遅かったんだと思う。想定はしていたけど、(徳永に)楽に来られてしまった。9番(中村)の内で粘れば良かったですけど、引いてからと思って…。上で戦っていくには、あそこを引いていてはダメですね」

<7R>
 赤板過ぎに飛び出した本多哲也が果敢に逃げて打鐘、最終ホームは一本棒。関東勢を制して中団をキープした中本匠栄が1センター過ぎからまくるも、成清貴之が冷静に合わせて番手まくり。同期の齊藤竜也が続いて73期ワンツーが決まった。
 「後輩(本多)が頑張ってくれた。別線が積極タイプではなかったのに2周近く駆けたよね。中本君に勢いがあったので危なかったけど、なんとか合わせられた。だた、前回がすべて人に任せる競走だったためか、初日の感じでは少し脚が落ちている感じ。自分で動いていないと脚力は自然と落ちるんですよね」
 藤原憲征に前を任せた石川雅望は、落車後(前場所の前橋)だったものの3着に突っ込んだ。
 「藤原さんのおかげ。恵まれました。落車後は治療に専念して自転車にほとんど乗れなかったので、藤原さんが前でやるよと言ってくれた。まくってくれたので惰性をもらうことができました」
 中本匠栄は中団キープに成功するも、まくりを成清に合わされ万事休す。
 「中団を取れたし(同期の本多)哲也も早くから踏んでくれたのに…。まくり切れるかなと思ったけど、やっぱり成清さんは強いですね…。仕方がないです」

<8R>
 ラインが目まぐるしく入れ替わり、成松春樹が最終的に主導権。3番手に佐野梅一で人気の矢野昌彦は6番手。成松が軽快に駆けていくなかで、矢野が最終2センターからまくり気味に追い込む。佐野も踏んでゴール前は成松に付けた山口貴嗣を含めた3車による大接戦となったが、矢野が直線大外を突き抜けた。「ジャン前で油断しました」と、反省の矢野が続ける。
 「まだちょっと思ったより早いと思って、どれくらい上げようか判断迷いました。6番手になってからは佐野さんも結構脚を使っていると思ったし、成松も良い感じで駆けてたんで、ギリギリまで待って。車が出たし悪くないけど、やっぱりもっと踏んで、先行しておけば明日にもつながったと思う」
 佐野梅一は矢野に交わされ2着も、レース後は笑みを交え話した。
 「3番手に飛び付くのにめちゃくちゃ脚を使いました。だからホームではヤバいと(笑)。バックは踏んでいけば前には追いつくと思ったけど、後ろの矢野のこともあるし。ゴール前で追いつく感じで踏んでいきました」
 3着になった山口貴嗣は、先行した成松に感謝。
 「2車なのに成松が果敢にいってくれた。すべて成松のおかげ。良い感じで踏んでたけど、残せなかったのは悔しいね」
 成松春樹は直線タレて失速5着。二次予選進出を逃がし、悔しそうに振り返る。
 「いい展開だったんですけど…、ちょっと距離が長かったですね。ホームで向かい風がキツくて、バック追い風で踏み直したけど4コーナーでいっぱいでした。もったいなかったです」

<9R>
森山智徳選手
森山智徳選手
 赤板で出た水谷将司ラインに森山智徳が続き、前受けの新山響平はちゅうちょすることなく7番手まで下げて一本棒。打鐘の4コーナーから新山が強引に仕掛けると、4番手を手に入れた森山も最終ホームから発進。森山が新山を合わせたが、安東宏高は山田敦也に割り込まれる。中村敏之輔を弾いて懸命に前を追った安東に乗った坂本晃輝は、外を追い込んで横一線のゴール勝負を制した。
 「(安東が)遅れたのも、自分にとってはいいクッションになった。森山が(新山を)合わせたのが金星ですね。まさか突き抜けるとは思ってなかったし、1着はオマケみたいなものですよ。ラインの3人で決まったことが一番です」
 最後まで新山を出させなかった森山智徳(写真)が2着に入って、九州3車での上位独占を演出した。
 「あれしかなかったし、あの展開しか思い浮かばなかった。(新山に)合わせてというより、1周くらいはと思って踏みました。もうホームでは行こうと思ってたんで。それで上を行かれたら仕方ないと。横に新山君がいたから焦った。でも、気合です、気合(笑)」
 人気を背負いながら4着での二次予選進出に、新山響平は言葉少なに振り返る。
 「もっと思い切って行けば良かったです。自分が全然ダメですね…」

<10R>
北津留翼選手
北津留翼選手
 打鐘で竹内雄作が北津留翼(写真)を叩いて先行態勢。北津留後位の山田英明が中部勢の後ろを選んだ山田幸司をさばいたことで、北津留が3番手をキープ。竹内が積極果敢に逃げるも、最終2センターから北津留がまくり追い込んで勝利をつかんだ。
 「勝てたけど小さい競走をしてしまった。位置は山田(英明)さんがさばいてくれたおかげだし、最終ホームで仕掛けられなかったことも情けない。バックは追い風で(竹内が)掛かると思ったのでホームがポイントだった。竹内君と力勝負をしたほうが、今後にはつながったと思います」
 北津留の番手で好援護した山田英明は、木暮安由のまくりにかぶり気味となり、最後は踏むタイミングを逸した。
 「(北津留)翼には後ろでアシストするから、絶対にあきらめないで踏み続けろと言っておいた。最終ホームもそうだけど、バックで前が詰まるタイミングであったのでそこは仕掛けて欲しかった」
 木暮安由は中団キープこそ成らなかったが、シャープなまくりで2着。
 「自分で前を切っても後方になる最悪の展開だったけど、それでも2着に届いたので脚は悪くないでしょう」
 木暮マークの朝倉佳弘は、直線で狭いコースを踏んでしぶとく3着。
 「あれで内の山田(英明)君を締め込んでいけたら良かったんですけど、脚がなかったです」

<11R>
稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
 近藤隆司が打鐘前で先頭に立つと、永澤剛を突っ張り主導権は譲らない。一方、前受けから7番手まで下げた稲垣裕之(写真)は打鐘4コーナーから仕掛けると、後ろで競っていた両者は離れた。稲垣は最終1コーナーで近藤を叩き切って逃げる。叩かれた近藤は懸命に追っていくが、なかなか差は詰まらず稲垣が逃走劇を完結させた。
 「追い込み選手がプライドをかけて競っているんで、そういう時はできるだけ先行してきた。流すところがなくて踏みっぱなしだったし、最後はタレましたね。まだちょっと重たく感じますけど、力はダイレクトに伝わっていると思います。もうちょっと踏み方とかセッティングを変えたらいいかなって思います。怪我してからのなかでは、今が一番状態は良いです」
 近藤隆司はゴール前、稲垣に詰め寄るも届かず2着。それでもレース内容には納得していた。
 「もっとバックで車間を詰めていって届きたかったです。自分も伸びた感じはしましたけど、稲垣さんも伸びていました。調子は練習の時から変わらないし、前々に攻めていけたので。明日も力を出し切りたいです」
 3着で近藤とそろって勝ち上がった和田健太郎だが、まだまだ反省するところもあったようだ。
 「優秀に乗るのは久しぶりなのでうれしいですね。自分たちは2車なんで、内だけは締めていた。自力選手が頑張ってくれているおかげで、いい着が取れてますね。道中まだ余裕がない。近藤に任せるだけじゃなくて、アシストできるようにしていきたいですね」

<12R>
川村晃司選手
川村晃司選手
 赤板で松谷秀幸が切って出ると、川村晃司(写真)は落ち着いて武田豊樹の動きを見ながら2コーナーでじわりと先頭に立つ。武田はインから4番手まで押し上げるも、松谷との併走を嫌って結局、最終ホームで下げる。中団の攻防をしり目に徐々に踏み上げていった川村が、武田、松谷を不発に追いやって二の足で逃げ切った。
 「僕の有利な展開になりました。展開だけで恵まれた。自分のペースで駆けられたし、ラインで決まってよかったです。前回からシューズを換えて、その前に(鎖骨の)プレートを抜いてスッキリした。良くなっていますね」
 「仕事もさせてくれん」と、目を細める筒井敦史は、直線で松谷をけん制しながら外に踏んでの2着。目立たないながらも、ラインでの上位独占に貢献した。
 「自分のやることをやったうえでと思ってました。思い切り抜きにいったけど、川村君が踏み直していた。川村君はうまいし、強い。自分はまだ(復帰)2戦目なんで、大きなことは言えないけど。気持ち良く踏めているし、余裕もありますね」
 川村と筒井の間を踏んだ三宅達也が、松谷との3着争いを制した。
 「川村さんが落ち着いていたし、すごく強かった。筒井さんも頑張ってたし、自分は内を空けて入られないようにだけ気をつけていた。今日は(武田が)前で受けてくれたらと思っていたし、内に詰まっていたのもあってラッキーでした」
↑ページTOPへ