『いわき平競輪開設65周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:1月26日
 いわき平競輪場を舞台に開催された東日本大震災復興競輪・開設65周年記念「いわき金杯争奪戦(G3)」は、26日に最終日が行われた。熾烈なシリーズを勝ち抜いた9選手による決勝は、スーパールーキーの吉田拓矢が突っ張り先行で主導権。好位を確保した稲垣裕之が、最終2コーナーから自らまくりを打って優勝。一昨年12月の松戸以来、通算5度目の記念制覇を遂げた。
決勝戦 レース経過
 内枠の3車でスタート直後はけん制になったが、近藤隆司が誘導員を追って、近藤―山賀雅仁―松岡健介―稲垣裕之―吉本卓仁―坂本健太郎―大塚健一郎―吉田拓矢―諸橋愛の並びで周回を重ねる。
 吉田の上昇を制して、青板4コーナーから吉本が始動。ホーム過ぎで誘導員を下ろすと、吉田を受けて3番手を確保する。吉田の動きに続いた松岡がすかさず叩きに行ったが、吉田も出させず打鐘から主導権争い。松岡は合わされ、併走を嫌った吉本が下げると、稲垣は3番手、その後ろに松岡が収まる。8番手になった近藤は、まだ浮いていた松岡を目掛けてホーム手前から巻き返し。好回転で前団に迫るが、察知した稲垣も2コーナーから合わせてまくって出る。真後ろからまくられた諸橋は対応できず、バック線ではやや前に出ていた近藤を内から稲垣が合わせ切る。2センターで近藤が失速すると、稲垣がそのまま押し切って優勝。近藤マークの山賀が直線で稲垣に切り替えたが、脚をためた吉本が大外を2着に強襲した。


稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
 武田豊樹に地元の山崎芳仁。SS班の赤いレーサーパンツを幾度も経験してきた2人が準決で脱落していくなかで、昨年のグランプリで初めてSSのパンツに足を通した稲垣裕之(写真)が今期2場所目で結果を残した。
 「(前回の)和歌山もプレッシャーを感じて走っていた。結果を残せてホッとしています」と、満ち足りた顔で優勝の味をかみ締めた。
 8番手から動き出した吉田拓矢の上昇に合わせて、吉本卓仁が出る。吉本が関東コンビを受ける作戦を取った時点で、松岡健介は腹をくくって吉田との主導権争いを演じたが松岡は外に浮いて万事休す。稲垣は関東コンビの後ろに割り込んで、3番手でチャンスをうかがった。
 「松岡が攻めてくれたおかげで、あの位置が取れた。そこからは(まくって来た)近藤(隆司)君のスピードが良かったし、自分も目いっぱい踏み込みました。あそこは(近藤に)行かれたらダメだし、せっかく松岡が頑張ってくれたんで」
 猛然とまくりで迫る近藤を合わせて、稲垣が渾身のまくり。準決で風を切った中井俊亮、そして松岡ら近畿勢の想いを背負い、先頭でゴールを駆け抜けた。
 「昨日の(中井の)走りで体にも気持ちにもスイッチが入った。昨日も今日も近畿の後輩が頑張ってくれた。近畿が一番大事にしているラインの競輪が見せられたと思います。本当にこのSSのユニフォームっていうのが力をくれるし、今のところプレッシャーをモチベーションに変えていけている」
 初のグランプリ出場を果たした昨年だったが、悲願のG1タイトルを手にすることはかなわなかった。その思いを胸に今年一発目のG1全日本選抜(2月11日~)を迎える。
 「去年は近畿勢から(G1の)優勝が出てないんで、今年こそ…。そして僕もその中でのひとりになれるように」
 16年、SS班としての稲垣はまだ始まったばかり。初々しさを残しながらも、その重圧を力へと変換させる姿が頼もしい。

 稲垣に続いて最終ホームでは松岡にまで入られた吉本卓仁は、千葉コンビを追いかけながらまくり追い込みで強襲。稲垣を交わすまでには至らず2着。
 「俺が稲垣さんに付いていけなかった。あそこを付いていけばなんてことはなかった。(松岡が)降りてくると思わなかったし…。ただ、(脚で)負ける感じはしなかったんで自信がついた。久留米(全日本選抜)はやれそうですね。あとは俺の勇気だけ」

 付けた近藤の勢いを借りて中割りを試みた山賀雅仁が3着。思いのほか伸びず、悔しがることしきり。
 「敗因は力みですね。近藤は絶対に流れ込むことをしないと思っていたし、近藤が踏んだ時のイメージはできていた。それなのに…」

 松岡との踏み合いで脚を使わされた吉田拓矢は、稲垣らのまくりにつかまってシンガリに沈んだ。
 「昨日ああいうレースをしちゃったんで、今日は出させる気はなかった。(諸橋愛には)行かせてもいいって言われたけど、これからのことを考えてああなりました。これで足りないところもわかったんで、またそこを補えるように頑張るだけです」



ゴール
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