『弥彦競輪開設59周年記念(GIII)レポート』 最終日編
 
配信日:7月15日


 弥彦競輪場開設59周年記念「ふるさとカップ」(GIII)も今日が最終日。決勝戦には渡邉晴智や稲垣裕之、加藤慎平といった豪華メンバーが名を連ねハイレベルな戦いとなったが、大激戦を制したのは加藤慎平だった。まくった金子貴志の番手から直線で鋭く抜け出し、05年富山記念以来4年ぶりの記念Vを決めた。

決勝戦 レース経過
 号砲が鳴ると加藤慎平が勢い良く飛び出して誘導の後位を占めた。一周回を過ぎると金子貴志を迎え入れて、中川誠一郎が三番手に続く。中団に岡村潤―渡邉晴智―細川洋、後方に稲垣裕之―村上博幸―阿部康雄の隊列で周回が進んだ。
 赤板で上昇した稲垣が一旦岡村を牽制しながら、打鐘で誘導を交わして前に出る。稲垣ラインを追った岡村が三角から叩きに出るが、合わせて稲垣も四角からスパートする。岡村は叩けず外に浮くと、渡邉はホームで阿部をキメて村上の後位へ切り替えた。主導権を握った稲垣を立て直した金子が二角から好回転でまくると、三角では稲垣を捕らえ2センターでは中川までが完全に出切る。そのまま直線勝負に持ち越されたが、粘る金子を加藤がG前で鋭く差し切って完全Vを飾った。

加藤慎平選手
加藤慎平選手
 手応えを掴みながら臨んだ寛仁親王牌で初日惨敗。不甲斐ない結果でわずか一日での帰郷を余儀なくされた加藤にとって、今開催はただの記念競輪ではなかった。『ここでダメなら、俺の選手生活は終わり』。悲壮なまでの覚悟を持って乗り込んだ大会で飾った完全Vという結果に、検車場に戻るや否や喜びを爆発させる。
 勿論、十分に戦えるコンディションではあったけれど、親王牌の事もあったから半信半疑な部分もあった。今回は期すものがあったし、気持ちの入り方が違った。やっぱり僕は気持ちで走るタイプなんですね。自分が『加藤慎平』であることを再確認出来ました」

 レースは打鐘から押え先行に入った稲垣裕之と、すかさず叩きに行った岡村潤が壮絶にモガき合う展開に。絶好のまくり頃となった金子貴志が最終バックで前団を一気に飲み込むと、金子のダッシュに付け切った加藤慎平が直線で鮮やかに抜け出した。
 「良い感じで前がもつれてくれたし、作戦通りの展開となりましたね。今日はとにかく風が強く金子さんもかなりキツそうだったけれど、それでもまくり切れる辺り、金子さんは物が違いますね。僕と金子さんの信頼関係の勝利です。GII、GI、GPは獲っているけれど、記念は05年富山以来4年ぶり。そこで完全Vを飾れるなんて格別です。どうしても自分自身の脚を信じきれない部分があったけれど、これで確信に変わりましたね」

 強風に怯まず最後までモガキ切った金子貴志も粘りに粘って2着。中部ワンツーという最高の結果に満面の笑みで応える。
 「今日は『前受けから流れを見て』と最初から決めていた。とにかく風が強くって厳しいレースになったけれど、ラインで決められた事は嬉しい。最高です!」

 果敢な先行策に出るも岡村とのもがき合いの末、8着に沈んだ稲垣裕之は淡々とレースを振り返る。
 「僕はいつも通り、自分のレースをしたまで。ただ、岡村君が来るのが思っていたよりも遅かった。もう少し早ければ引いて4番手もあったけれどあそこからでは引けませんよね。結果、中部に流れが向いてしまったけれど、今日はとにかく金子さんが強かった。自分は力を出し切っての結果だから仕方ありませんね」

 一方、稲垣に叩き合いを挑むも、出切れず終いで力尽きた岡村潤は「僕が押さえて先行したところで絶対に稲垣さんにその上を行かれてしまうから、とにかく一発ぶちカマす作戦だった。あのタイミングで行って出切れないのは、ただただ、僕の力不足。今日は完敗です。もう少し晴智さんのためにも頑張りたかったですけどね…」とがっくりうなだれる。

 中部3番手追走を選択した中川誠一郎だったが、好位置をまわりながら前を交わせなかった結果に悔しさを滲ませる。
 「凄く風が強くって、打鐘から踏みっぱなしって感じだったしきつかった。最後2Cで踏み出せるタイミングがあったけれど、後ろを引き出してしまうのが怖くて躊躇してしまった。あそこで踏んどけば(Vまで)行けたかもしれないですね」

 ただ一人の地元として期待を一身に背負った阿部康雄だったが、この日は見せ場なく9着。決勝の舞台で鬼脚を炸裂させることは出来なかった。
 「今日は前が併走になったときに渡邉君に上手くキメられてしまいました。その後も必死に追いかけたけど風に煽られて僕一人だけ完全にレースから取り残されてしまいました。脚が無いですね」

ゴール





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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
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