『前橋競輪ドームスーパーナイトレース(GIII)レポート』 初日編

配信日:10月15日

 前橋競輪場でナイター4日制で行われる「ドームスーパーナイトレース(GIII)」が、10月14日に開幕した。ガールズの1レースから波乱となったが、以後はドームの短走路ならでは早めから展開が動き出すレースが続く中、実力者が比較的順当に実力を発揮。男子のレースでは地元関東勢の活躍が目立ち、メインの特選も宿口陽一が快速まくりで快勝して高松宮記念杯覇者の貫禄を示した。
 なお、前橋競輪場では、「競輪・オートレースにおける新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」に沿った開催となります。検温、手指の消毒、マスク着用などのご協力とご理解をお願いいたします。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

太田瑛美選手
太田瑛美選手
 シリーズ開幕戦からいきなりの波乱。初手で3番手にいた西島叶子だったが、森内愛香に併せ込まれて打鐘を過ぎても内に詰まったまま。誘導が退避すると、2番手に位置した久米詩、さらに先頭に立つ太田瑛美(写真)の内まで3コーナーですくった西島はそのまま先行勝負に出る。これで後方になった山原さくらも最終ホーム入り口から巻き返しにいくが、3番手の外まで上がった2コーナーで太田が2番手まくりにいくと外に浮かされて不発に。ゴール前で久米も懸命に詰め寄ろうとするが、振り切った太田が快勝。
 「7番車だったのでできる限り前々にいようと思ったんですけど、出た時にたまたま前に入れたのが良かったです。後ろが来るのが見えたら踏もうと思っていたんですけど、内から来て焦りました。番手に入ってからは後ろを見ると踏み遅れるので、そうならないように踏みました。ゴールを目指して踏むだけで必死でした。このメンバーで1着は自信になりますね」
 久米詩は西島の動きに反応して2番手に追い上げかけるも、ホーム手前で踏み止めて太田の後位に入り直す。山原との併走をしのぎ、内で逃げ粘る西島を乗り越えて太田に続いたが、差し切るには至らなかった。
 「33ですし自力の選手も多かったので前々にいたかった。本当は太田さんより前にいたかったんですけど、最初の周回で前にいかれて想定外でした。最後は着に入れたし脚の状態は悪くないと思います。新車を3場所前から使っているんですけど、今日(14日)が一番しっくりきました」


<2R>

鈴木美教選手
鈴木美教選手
 人気を集めた主力陣は細田愛未が前受けし、3番手に鈴木美教(写真)、その直後に奈良岡彩子という周回。後方から川嶋百香が上がってくるが、前との車間を切って備えていた鈴木は惑わされることなく2コーナーから一気にカマす。打鐘過ぎに細田を叩いた鈴木の先行で、その後位は飛び付いた細田と奈良岡で併走に。他に仕掛けてくる選手はいなくて、マイペースで駆けた鈴木が1周半を逃げ切った。
 「他の自力選手を見ながらどの位置が良いかなって思っていました。積極的に動けたのは良かったです。しっかり踏むところを踏んで、軽く感じたので調子は良いかな。前回と使っているフレームが違うので、流れる感じがします。1日1日を大事に走りたいです」
 鈴木後位の併走は最後まで続いたが、外の奈良岡彩子が細田に踏み勝って2着に続いた。
 「併走したところは楽に走れています。踏むところと休むところを意識して走れています。最近自転車を換えたけど、状態としては引き続き良いです。33だと細かい所までスピードがあがる。セッティングを変えたいとかはないです」


<3R>

小林優香選手
小林優香選手
 土屋珠里が正攻法の位置で構え、圧倒的な人気を集めた小林優香(写真)は3番手に構える。赤板を過ぎて6番手から中村美那が上昇を始め、一旦小林の外で併走してから打鐘とともにさらに踏み込んで前団を叩きに行くが、土屋は突っ張って出させない。モガき合いから土屋が最終1センターあたりで踏み勝つが、そこを小林のまくりが襲う。2コーナーを過ぎて小林が土屋をまくり切り、初手から小林の後位を確保していた荒川ひかりが続く。そのまま荒川を従えた小林が余裕の先頭ゴール。 
 「前々にいこうと思っていました。正直、戦ったことのない選手が半数だったので動きを見ながらでしたね。中村選手がいって、(土屋)珠里が合わせて踏んだのが見えたのでいきました。残り1周の組み立ては悪いものがありましたけど、出切ってからはスピードももらえたので。状態は悪くないと思います」
 狙い通り小林後位を取った荒川ひかりがしっかり続いて2着に。
 「小林選手が一番強いと思ったので、後ろを取れればと思っていた。出脚に千切れないようにだけ集中していました。(小林は)すごいスピードでコーナーで口が空いてしまった。付いていくので一杯一杯でしたね。前橋は風もなくて走りやすい」


<4R>

 成松春樹が青板3コーナーで前受けの中部勢を押さえると、すぐさま追い上げた梁田一輝が中団位置に。5番手まで下げた山田諒は赤板1コーナーから一気に巻き返す。打鐘過ぎから山田の主導権に変わり、宮越孝司がぴったりと追走。3番手には大庭正紀をさばいた成松が続く。梁田のまくりは4番手の桑原亮の外までで不発に終わって直線へ。快調に飛ばした山田が押し切るかに、宮越がゴール寸前で逆転。
 「予定通り(スタートで)前が取れて良かった。最終ホームは良い感じでスピードに乗ってました。あとは車間を切って対応していた。(お客さんが入って)声援があると気持ち良いですね。正直、疲れが残ったまま今開催にきたけど、走った感じは良い。日に日に良くなっていくと思います」
 3番手から成松も外を伸びるが、これを押さえて山田諒が2着に残る。
 「スタートで前を取って行ける所から仕掛けていこうと思っていた。宮越さんとワンツーが決まって良かったけど、ワンツースリーを決めたかった。ちょっと(成松に)抵抗されたけど、外を踏めば何とか出切れるかなって。ちょっときつかったけど、意外とスッと出られたので、助走をすれば出切れるのが分かった。明日(二次予選)もそれを使えたらなって思います」


<5R>

 青板3コーナーで前団を切った樋口開土を叩いて赤板1コーナーから佐藤幸治が主導権を握る。佐藤が掛かっていて打鐘で仕掛けた樋口は車が出ないが、6番手から仕掛けた佐々木豪がその外を豪快にまくっていく。激しい踏み合いからバック手前で佐々木が出切るが、マークの木村隆弘は山口貴嗣のブロックを受けて続けない。番手に入る形からゴール前で詰め寄った佐藤を振り切った佐々木が1着。
 「自分が行ける所から仕掛けようと思っていた。樋口君がワンテンポ遅らせて押さえにきて、佐藤さんもズラしてきたので、仕掛け所がキツくなりました。レースのペースが上がっていたので、少しでも早く仕掛けないと後方になるので。レースは見えていたし、悪くはなかったと思います」
 山口の好アシストもあって、まくられた佐々木を追う形になった佐藤幸治が2着に。
 「中団からいこうと思っていた。自分が先頭に立てば何とかなると思っていたし、樋口が見えたので出させないように踏みました。(佐々木は)やっぱり来たかという感じでしたけど、1人で来てくれたので恵まれました。ある程度最後は詰められたし、体の感じはいいですね」


<6R>

阿部大樹選手
阿部大樹選手
 内をすくって前に出た月森亮輔を、赤板で押さえて蒔田英彦が先制。すくわれた阿部大樹(写真)は7番手まで下げて戦況を窺うと、打鐘前2コーナーから巻き返した月森と蒔田で激しくモガき合う前団に最終ホームからまくりで襲い掛う。最終2コーナーでの友定祐己のけん制を乗り越えた阿部は、蒔田をねじ伏せた月森を3コーナーで捕らえて快勝した。
 「できるだけ自力で仕掛けて良いレースをしようと思った。すかさず行きたかったけど、タイミングが遅くなってしまった。本当はもっと長い距離を踏みたかった。ワンツーを決められたのは凄い嬉しい。体と心のケアをして、明日(二次予選)に向けて調整したい」
 阿部の仕掛けに口が空いたときは厳しいかと思われた稲村成浩だったが、自らの脚でリカバー。最終2コーナーで阿部に追い付き、関東ワンツーを決めてみせた。
 「阿部君に任せていたので、しっかり付いていくことだけを考えました。落ち着いていましたね。阿部君のおかげです。脚は特に変わりないと思います。一戦一戦、車券に貢献できるように頑張りたい」


<7R>

 赤板でカマした青柳靖起が合わせて踏み上げる荻原尚人を叩いて2コーナーで先手を奪う。叩かれた荻原だが3番手を確保し、巻き返しにいきかけて止めた小畑勝広は5番手に構える。最終1センターで小畑が仕掛けると、荻原は2コーナーまくりで応戦。3コーナーでまくり切った荻原は、小酒大勇の献身的なアシストも受けて詰め寄る小畑を退けた。
 「何も考えず流れで、経験値を信じていきました。あとは流れで対応していこうと。中団がけん制し合っていたので、ある程度見越して踏まないと遅れるので。(青柳の)番手が自力のある選手だったので、番手から出ないと分かってから踏んだ。自分からまくる感じでいけばパーフェクトでしたね」
 届かなかったが、外々を付け回って2着の小畑勝広も強さを感じさせた。
 「初手であの位置なら青柳君が来る前に先に出ていこうと思ったが、戻ったので自分も1回戻ってしまった。ためらった部分があったのでそこが課題ですね。外で頑張ってへばりつけたので足は悪くない感じがしました」


<8R>

 伊藤成紀を突っ張った平尾一晃が青板3コーナーから先行態勢に入る。伊藤は一旦下げかけた後、中団追い上げ策に出るが、内の選手をキメられない。しかし、天田裕輝が4番手の金子哲大との連結を外したのを見逃さず5番手に割り込む。最終ホームで金子がまくりにいくと、田中誠がけん制。モツれる前団へ、自力に転じた天田が2コーナー7番手まくりで襲う。スピードに乗った天田は、3コーナーで平尾を捕らえた金子の外を一気に通過し、2番手以下を突き放してゴールした。 「(金子に)付いていきたかったですね。立て直してからは、いつ仕掛けようかなって。周りは見えていました。ヤベって思ったけど、案外落ち着いていけました。最後は大外を踏んで、金子君を残せたらと思って。自分の感触も分かったし、状態は日に日に良くなるんじゃないかな。良くなって欲しいです」
 後続の2人が連結を外して単騎でまくりにいった金子哲大。自力に転じた天田に屈したが、3着に粘って結果的に東ラインでワンツースリー。
 「突っ張られたら中団は取ろうと思っていた。後ろの様子は分からなかったです。最後は誰も来る自力型はいないって思っていたのに、凄いスピードできたので、誰だって思ったら天田さんだった。それなりには走れているけど、脚にはガツンとした感じがきていないです」


<9R>

 前団を切った多田晃紀を叩いて坂本周作が赤板から先制。これを青野将大が巻き返しにいって最終ホームで主導権を奪い取るが、南関勢の動きに乗った松本秀之助が2コーナーからまくる。スピードに乗った松本は直線半ばで青野を捕らえて勝利。単騎戦の不利を乗り切った。
 「単騎だったのでしっかり流れに乗っていこうかなと思っていた。初手は前を取って楽に位置を取れて、流れの中で脚を使わず回れたのが大きいですね。青野さんがいった所を追いかけながら、1センターで3番手が離れているのが見えたので。踏んだ感覚は悪くなかったですね」
 松本と、その後位に切り替えた久米良には捕まったが、いいタイミングで出切った青野将大が3着に粘り込む。
 「初手は中団とか後ろからで、長い距離を踏もうと思っていたが出なかったので。新人だし若手なのでけん制が入れば前からでもいいかなと。突っ張りも考えたが臨機応変に対応した感じです。ダッシュが課題なんですけど、流れでいった感じです」


<10R>

矢口啓一郎選手
矢口啓一郎選手
 金澤竜二が切った上を叩いて大石崇晴が赤板から先制。前受けから7番手に下げた佐々木悠葵だったが、どっぷりまくりに構えることはなく、追って1センターから巻き返す。川口公太朗のけん制を乗り越えた佐々木悠は最終ホーム手前で大石をねじ伏せる。そのままケレン味なく駆けた佐々木悠を最後は矢口啓一郎(写真)が差し切り。初の師弟連係が決まった。
 「(弟子との連係で)緊張しましたね。その一言に尽きます。展開的には予想通りで、躊躇せずに仕掛けろってことは話しました。彼の距離としては長かったと思うけど、ラインを生かすレースをして欲しかったので。4コーナーからスピードが落ちていたので、そこでもっと踏めるようになればグレードレースでももっと戦えると思う。地元の選手が活躍すれば、お客さんに喜んでもらえるし、気持ちを高ぶらせて頑張ります」
 感無量の師匠を目の前に、大役を果たした佐々木悠葵もホッとした表情を見せた。
 「師匠が付いていたので緊張しました。流れていないところで仕掛けていったので、自分で踏み上げていく感じでした。きつかったです。脚の感じはもっとタレていると思ったけど、ワンツーできて嬉しい。初日(14日)は体が少し重たかったので、しっかり修正して頑張りたい」


<11R>

神山拓弥選手
神山拓弥選手
 青板3コーナーで根本哲吏が切って出るが、追って赤板手前から仕掛けた武田亮が1センターで根本を叩いてあっさり先手を奪う。神山拓弥(写真)、櫻井学と関東3人で出切り、引いた根本が4番手、村上が6番手、8番手に竹澤浩司となって一本棒。レースは完全に武田が支配し、村上の2コーナーまくりも不発に終わる。逃げ切り態勢の武田だったが、神山がゴール前で図ったように差し切った。
 「武田君とは初連係だったんですけど、しっかり行くべき所で仕掛けてくれた。仕事もしやすい感じでいってくれましたね。自分と(櫻井)学さんの要望通りの走りをしてくれました。自分の感じは良かったが初日(14日)で緊張もあって体が少し固かった。ワンツースリーまで決まって良かったです」
 今期が初のS級とは信じられないほどのパワーを各地で発揮している武田亮。ここも持ち味を存分に発揮してラインでの上位独占へと導いた。
 「積極的にいきたいと思っていたし、前に詰めて行ける所から仕掛けられた。前橋は相性も良くて走りやすいし、前回の松戸よりも良かったですね。練習の感じも出せたと思う」


<12R>

宿口陽一選手
宿口陽一選手
 柴崎淳が当日欠場で、初日特選は8人でのレースとなった。吉沢純平が青板2コーナーで上がりかけたのを制して宿口陽一(写真)が先に動いて前団を切る。そこを吉澤が一気に叩いて赤板前から主導権を奪う。4番手に宿口、7番手に坂本健太郎の一本棒になって、徐々に吉澤がペースを上げて駆け出していく。最終2コーナーに入ったところで宿口が反撃を開始。武田豊樹のけん制が届かない大外を加速した宿口は2センターで吉澤をまくり切ると、武藤龍生の追撃も全く許さず押し切った。
 「ちゃんと切るところは切るって感じで組み立てました。僕に展開が向きましたね。それなりに余裕もありました。前の様子も見れたし、後ろの状況も確認できたので脚の状態は良いと思う」
 2着に武藤龍生、目標を失って初手から埼玉コンビに続いていた齋藤登志信が前とやや引き離されながらも3着と、別線は宿口の前に完敗。武藤も宿口との1車身差を詰められなかった。
 「後方にならないように作戦を考えていて、あとは陽一さんに全て任せていた。正直きつかったです。陽一さんが前よりパワーアップしている印象。陽一さんが踏み込んでくれて、自分は気持ちで付いていきました」