『取手競輪開設74周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:6月27日

 取手競輪場で令和6年能登半島地震復興支援競輪・大阪・関西万博協賛・開設74周年記念「水戸黄門賞(GIII)」が、6月27日に幕を開けた。初日のメイン、特選は栃木ワンツー。眞杉匠のまくりを坂井洋が差し切った。また、一次予選では、吉澤純平、武田豊樹、吉田有希が地元で白星発進。シリーズに弾みをつけた。シリーズ2日目の6月28日には、初日特選組も加わり二次予選で勝ち上がりが争われる。
 記念シリーズは開催中の毎日、200人様に「茨城のお菓子」の先着ファンサービス、茨城の特産品が当たる未確定車券抽選会、専門解説者によるレース予想会などが行われます。また、6月28日の2日目には、選手会茨城支部によるトークショーなども予定されています。取手競輪場では、みなさまのご来場をお待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

 柿本大貴、清水剛志の順番で切ったところを、松岡辰泰は田口勇介にフタをしてタイミングをとって赤板2コーナーから踏み出す。打鐘3コーナーで松岡が主導権を握るが、田口もすかさず巻き返す。最終ホームで北日本コンビがカマし切って、松岡は飛び付いて3番手を確保する。逃げる田口がスピードに乗り、松岡はバックでも空いた車間が詰まらない。番手の尾形鉄馬が間合いを取り直線で追い込む。詰める松岡を退けた尾形が1着。
 「(田口は)練習通りの強さが出てた。(出切ってからは)後ろと車間が空いているのは確認できたし、(松岡は)いっぱいになっているのかなと。最後は(田口が)ここまでいってくれたし、1着を取らないとと思って踏んだ。けど、田口君が残ってくれて良かった」
 3番手で北日本勢との車間がなかなか詰まらなかった松岡辰泰は、追い込み勝負で2着。
 「北日本が前を取ったので、その後ろがいいかなと。初手の位置は取れた。切ってからは自分のペースで回していたけど、モニターで見て田口君に気づいた時にはもう来ていた。思ったより車間が空いたし、(最終)2コーナーで行ければ良かったしカッコ悪いレースだった」


<2R>

渡部哲男選手
渡部哲男選手
 打鐘で南関勢がペースを握ると、中団では林慶次郎と末木浩二が併走になり、4番手の取り合い。最終ホームを過ぎても中団の決着はつかず、染谷幸喜がそのまま駆ける。渡部哲男(写真)のけん制もあり、新山将史が遅れる。末木の後ろにできたスペースを、林が2コーナーから踏み上げる。林が4コーナー手前でまくり切り、渡部がゴール前で交わした。
  「(林と末木浩二が併走になって)いままでは前のカタがつくまで待ってたんだけど、(外の新山将史に)内に放り込まれると重くなるんで(今日は)先にと思ってました。ジャンの4コーナーで脚を使って、車間が空いて詰めたところで脚を使った。それで正直、(最終)バックは余裕がなかった。新山君の動きもあったんで、(林に)付いていけて良かった。(落車の影響で)まだしびれが続いているので(状態は)変わらないですね」
 中団取りでもつれたが林慶次郎だったが、判断良く末木の後ろからまくって渡部とワンツー。
 「染谷さんが来るのが遅くて、突っ張るか迷った。作戦では出させて中団と思ってたんで、(末木との併走の)そこは引けなかった。末木さんがちょっと遅れたけど、末木さんも脚があるんで(また追い上げられた)。ただ、自分も脚には余裕があったんで、空いていたところを無理やり行った。久々のレースだったんでちょっとフワフワした。イマイチ、アタリがついていない。ただ逃げるとかではなく、無理やり(位置を)取って仕掛けるレースができた。感触は悪くない」


<3R>

吉田有希選手
吉田有希選手
 赤板過ぎに渡口勝成が、栗本尚宗を突っ張る。そのあと渡口がペースを落としたタイミングで吉田有希(写真)が仕掛けて、2コーナー過ぎに主導権を握る。関東の3車が出切り、単騎の高橋陽介が4番手に続いて、栗本は5番手。渡口は7番手まで引いて最終ホームを通過。吉田が落ち着いてペースを握って駆ける。2コーナー手前からまくった渡口は4番手まで。番手から追い込む芦澤辰弘を吉田が半車輪差で振り切ったところがゴール。
 「渡口さんが前なら、その後ろからという作戦だった。突っ張ったら一度緩む感じがあったので、そこを目がけて行こうと落ち着いていけました。ある程度スピードを上げれば、自分のペースに入れながら最終ホームでスピードが乗る。(風は)バックが向かいだったけど気にならなかった。後ろが(芦澤)辰弘さんだったので信頼というか、絶対止めてくれると思って出し切れるレースができる。高松宮記念杯が終わってから、体が楽になってモガけるようになった。練習でスピードも出て、疲れもなく自信をもって走れた」
 絶好の展開が訪れた芦澤辰弘だったが、吉田に踏み直されて2着での地元ワンツー。
 「(吉田)有希が勇気ある行動、ポジションからレースを進めてくれて打鐘目がけていってくれた。あとは見ての通り完封でした。ペースにハマっちゃうので車間を切った。掛かりのいいペースだったし、あれで(別線に)来られたら相手があっぱれ。最後は僕も合わされました。この時期の取手は先行が掛かるし、もつなら先行がいいですね」


<4R>

 吉田昌司にフタをした坂本周輝は、赤板2コーナー手前から再度踏み込んで打鐘手前で出る。吉田は3コーナーから反撃に出て、坂本と吉田で叩き合い。吉田が最終ホーム手前で出切り、遅れた池田勇人が追いつく。短くなった前団の隊列が完全に解ける前に、松本貴治がまくる。吉田の掛かりも悪くないが、松本が2センターでとらえる。松本に付けた大川龍二が、余裕をもって追い込んだ。
 「赤板のところで(別線が)来なかったんで、あとは突っ張るなりも松本君の感性に任せていました。僕が遅れたりイレギュラーなことをしないように、前がしっかりしてるんで集中していました。(松本のまくりは)自分もこうできたらいいなって、うらやましいところがあった。(松本が)しっかりと行ってくれて、僕も交わす練習はしてきている。(交わせた)そこはいいかなと」
 流れが向いた松本貴治は、ラインでのワンツー決着も手ごたえはいまひとつだった様子。
 「(坂本)周輝さんも出させるかと思ったけど、踏み合ってくれたんで展開が向きました。ただ、周回中から重い感じがして、あんまり良くない。チェーンを新品に換えたんで、そのせいかと。元に戻すか考えます」


<5R>

 後方から踏み上げた野口裕史に合わせて、中団の川口聖二が赤板1センターで先に切って出る。野口は打鐘を目がけて踏み込んで、3車のラインで出切り主導権。野口の先行でレースは流れて、隊列は一本棒で最終ホームを通過する。7番手の森山智徳が2コーナー手前からまくるも、前団を脅かすまでにはいかない。川口が3コーナーから踏み込んで、外の森山を張ってから追い込んだ神田龍が突き抜けた。
 「(最終)バックで森山さんが来ていたけど、ちゃんと(川口に)付いていければと思っていた。スピードあってキツかったが、ギリギリ待って外を踏みました。伸びはいいと思う」
 逃げた野口を利した新田康仁は、神田の強襲に2着。
 「作戦通りに野口君がやってくれたし、いつも通りに踏んでくれた。川口君の動きに対応して踏んでくれたが、いつものような緩急がなかったけどいいペースで相手が来れそうになかった。(来ても)止める準備はしていた。(野口と)ワンツーが良かったけど、最後に大外をカンちゃん(神田)が来ちゃったね」


<6R>

飯野祐太選手
飯野祐太選手
 赤板1コーナーで太田龍希が先頭に出ると、前受けから下げた晝田宗一郎と飯野祐太(写真)で中団が重なる。太田が絶妙なペースで先行態勢を取り、打鐘を迎える。中団の併走をしり目に、太田は最終ホームから徐々にペースを上げる。外併走の飯野が、2コーナー手前からまくりを打つ。太田をとらえて1着も、飯野は反省まじりに振り返る。
 「迷いながらの走りだったので、そこは反省したい。太田が切ったところを(ペースが)緩かったら、すぐに切った方が良かった。ちょっと迷いました。(最終)1コーナーで詰まったところもすぐに行ければ、ラインで決まったと思う。(そこで仕掛けずに)もう1回、自分で立ち上げる形になったんで、スピードの乗りは全然でした。1着が取れるかわからなかったけど、取れたんで悪くない」
 最終2コーナー付近で晝田の動きを待った井上昌己が、そこから切り替えて追い込んだ。
 「あの展開で飯野が叩いてくれたら、(晝田は)先行だったと思う。ああなったら前(太田)も駆けないし、飯野もうまかった。(飯野がまくって晝田は)すかさず3番手に飛び付く感じだったら、自分も付いていったけど。ワンテンポ待った感じがあったんで、自分は後ろに(阪本)和也もいるんでね。体が勝手に反応した。本当に調子が良かったら、突き抜けていたと思います。まだ伸びしろがあると思って頑張ります」

<7R>

皿屋豊選手
皿屋豊選手
 前受けの青野将大が赤板過ぎに突っ張るが、皿屋豊(写真)も踏みやめず両者の消耗戦。打鐘でもそのまま踏み合いが続き、福田知也は遅れる。皿屋が青野の1車を受けると、2センターで早坂秀悟がカマす。最終ホームで関東ライン3車が出切る。離れた4番手に青野。福田、田中孝彦が続いて、結果的に皿屋は7番手。詰めながらまくり追い込んだ青野を、三好恵一郎がけん制。4コーナーから大外を踏んだ皿屋が、ゴール前でごっそりのみ込んだ。
 「ゆっくり出ても最低中団は取れると思ったら、後方になってしまい失敗。青野君を切って早坂君を出そうとしたら切ることもできず、緩めたらたら追い上げられて最悪の形になった。後ろに申し訳なかった。踏めてはいるし、うまく走れればラインで決められる状態だと思います」
 カマした早坂が、最終4コーナー付近で失速。別線を大きく振った三好恵一郎が2着で一次予選をクリアした。
 「(早坂)秀悟さんがいつ行くかだったけど、あのタイミングだし(ライン)3人で出切れた。ただ、自分の仕事の悪さで、鈴木(謙二)さんが入ってきたし勉強不足ですね。ここまで佐々木悠葵や小林泰正ら若手と練習をみっちりやってきた。余裕をもてて走れている」


<8R>

 後方の山本奨がアクションを起こして、赤板1コーナー過ぎに原口昌平を押さえる。そこを高橋晋也が踏み込んで、打鐘ではラインで出切る。高橋は波をつくりながら、最終ホーム手前でペースアップ。原口は1車すくって6番手に押し上げて、さらに田中勇二、山本のインを進出。しかしながら、番手はすんなりだった武田豊樹が、楽に高橋を差し切った。 
 「久々にああいう先行の番手を回って緊張感がありました。前の方が位置を争いながら、高橋君が踏んだ感じでした。(感触は)悪くないけど地元戦だからなのかキツかったです。(地元記念は)1年に1回と思うと、失敗できないな、とか、勝ちたいとか、いろいろな気持ちをもっていました。長いキャリアでも毎年こういう気持ちになるし、地元記念は特別競輪と思って走ってきました。高橋君の先行はトルクがあって、付いていて見た目よりも楽ではなかったです」
 ネームバリューのある武田の地元で先行した高橋晋也が2着に粘った。
 「脚が整っていなかったけど、気持ちでカバーしました。(練習の)疲れが抜けきれなくて、アップの時から整っていなかったですね。体を使えていなくて心配だったけど、気持ちが入っていたし、そこだけは良かった。今日(初日)は積極的に行きたかったしバックを踏まないように踏んで、自分のタイミングで行きました。(高校の先輩の武田との連係は)いいプレッシャーだった。頑張りたい気持ちは強くなりますね」

<9R>

東口善朋選手
東口善朋選手
 大矢崇弘が先に切って、人気の中近ラインを受ける。4番手に大矢が入り、そのまま纐纈洸翔が駆けるかに思われたが、打鐘手前から木村佑来が6番手から反撃。最終ホームで木村が叩き切り、纐纈は3番手。後方から仕掛けた染谷幸喜は、東口善朋(写真)に止められ後退する。詰める勢いで踏み込んだ纐纈だったが、スピードは一息。東口が五日市誠を弾いて、北日本勢の間のコースをこじ開けて追い込んだ。
 「思いのほか木村君のピッチが良かった。(最終)1センター辺りでは格清君が来ていたのはわかったんで、止めにいきました。あとは(纐纈が)どう来るかを見ていて、3コーナーで仕掛けていった時に(纐纈の)出が良くなかったので、判断をミスらないようにと思っていた。ベストはラインで決めることですけど、(纐纈は)しんどかったのか進みが良くなかった」
 東口に中割りを許した五日市誠は、立て直して2着に踏ん張った。
 「(木村が)強いのは知っていたけど、ビックリした。あの位置からカマすのか半信半疑だった。そこは相手がどうこうよりも木村君は自分のレースがしたかったみたいなので、そこに関しては良かった。(木村と)ワンツーが決められればと思ったけど、東口さんはシビアに来るんじゃないかと。そこを耐えられなかった」


<10R>

成田和也選手
成田和也選手
 谷和也が切って出る。前受けの根田空史は、中四国ラインまで送り出して赤板2コーナーで7番手まで引き切る。一本棒に隊列から、根田がダッシュを利かせて打鐘手前からスパート。3番手の安部貴之が踏み出しで遅れて、根田、成田和也(写真)で出切る。懸命に追った安部だったが、3番手に飛び付いた谷との併走で力尽きる。谷は最終4コーナーで外に持ち出すが、根田の掛かりがいい。番手の成田が落ち着いて差し切った。
 「(根田の)スピードも良かったので、後ろはキツいかなと。確認したら(安部が)浮いてましたね。なんとか付いていけて、人気になっていたし緊張したけど(根田と)決まって良かった。重く感じたけど車が出ましたね」
 迷いなく後方まで下げてから巻き返した根田空史が、力の違いで人気の決着をメイク。
 「(最終)バックがキツかったけど、後ろが成田さんだったので信頼していった。(自転車を変えたが)このコンディションだと微妙。硬い方が踏み出しが楽だし、カマシ、まくりならこの方がいい」


<11R>

 先頭の山口多聞は薦田将伍を突っ張って出させず、薦田は元の位置の7番手に戻り打鐘。山口は別線を警戒しながらピッチを刻み、最終ホームも一本棒のまま。番手の吉澤純平が車間を空けるが、一度は外に持ち出した松岡篤哉も4番手に戻り仕掛けられない。詰めながら追い込んだ地元の吉澤が1着。
 「(小林が)前を取って、(山口が)突っ張りで(自分は)なにもやることがなかったです。練習の感覚も良かったですし、高松宮記念杯前に強めに練習をしていたので、取手も大丈夫かなと。(前回の最終日の落車は)軽傷だったので大丈夫です」
 関東勢で上位独占。2着には3番手の小林令が、中のコースを踏んで入った。
 「笠松(信幸)さんのスタートは早いのはわかっていたので、(S取りの)そこだけが仕事だった。あとはなにもやっていないですね。S取りで踏まされてキツかった。体調がそんなに良くなくて、いまもそんなに良くない。着はメンバー次第ですね」


<12R>

坂井洋選手
坂井洋選手
 周回中は単騎の3人が7、8、9番手。最後方の脇本雄太が動いて押さえる。そこを小林泰正が出るが、小林ラインを追った郡司浩平がすかさず仕掛けて打鐘3コーナーで叩き切る。郡司の先行策に、小林は3番手に飛び付く。5番手の眞杉匠は、外の山口拳矢を4コーナーでさばく。最終1コーナーでまくった小林は一息。その上を仕掛けた眞杉のスピードが断然。栃木コンビが逃げる郡司をとらえて直線へ。3番手以下は離れて、両者のゴール勝負は番手の坂井洋(写真)に軍配。
 「(眞杉の動きが)怖かった。アイツは自分でもっていっちゃうし、それでハウス(接触)もしてしまう。内も締めてなきゃいけないんで。(1着だけど)相当感触が悪い。ずっとキツかった。余裕がないですね。いつもだったらもうちょっと余裕があるけど、自分が弱いイメージです。みなさんのアドバイスをもらって、セッティングをいじるかもしれないです」
 さばきも披露して、最後はきっちりとまくり切った眞杉匠のパフォーマンスが光った。
 「(最初に単騎の)脇本さんが来たんで、そこで組み立てが乱れてしまった。そこを突っ張っても(小林)泰正のことをすんなり出させてしまうかなっていうのもあって、(対応が)ワンテンポ遅れた。結果的に(ラインで)ワンツーだったけど、組み立てが甘い。いままでよりも自転車がいいので、そこでカバーができたんだと思います」
 郡司が積極的に駆けて、付けた守澤太志が追い込んで3着。
 「郡司君は戸惑っている感じがあった。けど、そこからしっかりとレースを組み立てているのはすごいなと。流れのなかで叩いて、先行してくれた。郡司君のレースセンスを感じました。今日(初日)は自分のなかではある程度、踏めたのかなと思います」