『取手競輪開設74周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:6月30日

 取手競輪場で開催された令和6年能登半島地震復興支援競輪・大阪・関西万博協賛・開設74周年記念「水戸黄門賞(GIII)」は、6月30日に最終日が行われた。決勝は大方の予想通り、5車の関東勢が主導権。ライン3番手を回った吉田拓矢が、早めの追い込みで優勝。一昨年9月の青森以来、通算6回目のGIII制覇を遂げた。また、一発勝負で行われた「レインボーカップチャレンジファイナル」は、単騎の佐藤壮志が好位キープから追い込んで制した。佐藤、小榑佑弥、吉田晏生の上位3選手が、A級2班に特別昇班を果たした。

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると芦澤辰弘が勢い良く飛び出して誘導員を追う。小林泰正-坂井洋-吉田拓矢-吉澤純平-芦澤の長い関東勢が前を固め、単騎の守澤太志、松本貴治はこの後ろ。脇本雄太-山口拳矢は後攻め。
 小林が赤板手前から誘導員との車間を空けて後方の動きを警戒し、赤板で突っ張り先行を敢行。小林はハイペースに上げていくと隊列は一本棒となり、脇本は車間が空いた8番手に置かれる。打鐘2センターで坂井が後ろを確認しながら最終ホーム付近から番手まくりを放つが、芦澤の内を掬って守澤が上昇する。1コーナー過ぎには守澤が捌き切って吉澤の後ろを確保するが、芦澤、松本が接触し、まくりかけていた脇本はそのあおりを受けて後退する。バックでは守澤が更に吉澤を内から掬って3番手を奪う。また、脇本マークからまくりに転じた山口がすさまじい勢いで上がってくるが、2センターでそのスピードは鈍る。坂井の番手まくりに乗った吉田は、2センターすぎに車を外に出して後続の追撃を振り切って地元記念初制覇。芦澤、吉澤を捌いて吉田後位を確保した守澤が2着。自らまくり上げた山口が3着。


吉田拓矢選手
吉田拓矢選手

 ゴールを先頭で駆け抜けた吉田拓矢(写真)が、右の拳をいまにも雨が降り出しそうな鉛色の空を突き破るように上げた。
 「去年、眞杉(匠)のために頑張って、あっ旋が止まったけど。決してマイナスではなかったと思います。また、この舞台に戻りたい気持ちで、ダービー(日本選手権)も決勝に乗れたし、地元記念も優勝できた」
 昨年8月のオールスター決勝では、吉田がラインの先頭を務めて眞杉の初戴冠に貢献した。が、暴走失格の憂き目をみて、結果、およそ4カ月を棒に振った。仲間のために戦線離脱を余儀なくされた吉田を救ったのも仲間だった。
 「ここまで来られたのは先輩、後輩、仲間のおかげ。感謝の心を忘れずにこれからも精進していきたい」
 決勝に大挙5人が勝ち上がってきた関東は、一枚岩で結束。準決では上がりタイムでバンクレコードタイを叩き出した脇本雄太に山口拳矢が付くSSコンビに“絆”で対抗した。レースは8番手の脇本の仕掛けを待たずに、小林泰正が赤板1コーナーから加速。反撃の隙を与えることなく駆けて、最終ホームから坂井洋が番手発進。守澤太志がインをついて、そのあおりで大きく外に振られた脇本は万事休す。しかしながら、守澤が吉田の後ろの吉澤純平をさばいて奪取。さらに不発の脇本から切り替えてまくった山口拳矢も襲い掛かった。
 「タツさん(芦澤辰弘)がスタートを取ってくれて、(小林)泰正さんがどのラインも出させない気持ちで駆けてくれて、ああやって展開ができた。ビジョンを見たら守澤さんが内に来て、(坂井)洋さんが踏んだ時に入ってきていた。(吉澤)純平さん、タツさんに勝負権がなくて申し訳なかった」
 慌てることなく間合いを取った吉田が、番手まくりの坂井を2センターから追い込んでV。デビューイヤーの15年8月チャレンジ以来なかった地元優勝を記念で飾った。
 「感無量ですね。(地元記念を獲る)チャンスは何度かあったけど、優勝に届かなかった。地元記念を優勝することを目標にしてきたのでうれしい。(ビッグでは)良かったり、悪かったり、その差をなくしていきたい。自分自身、まだ力が及ばないところがあるので頑張っていきたい」
 地元記念は通過点。8月のオールスターで昨年のリベンジを果たして、21年以来のタイトル奪取。それこそが、自身の青写真であり、関東の仲間たちの願いでもある。

 周回中は関東勢の後ろの6番手から運んだ守澤太志は、たまらず打鐘4コーナーで切り込んで芦澤をさばく。坂井が番手まくりに出て、今度は吉澤から吉田後位を奪って2着に入った。
 「本当は外から行く予定だった。前(芦澤)がフワフワしていて、ずっと(内が)空いていた。地元だから(内から追い上げに)行きたくなかったけど、もう(最終)ホームだったし。そのあとは何車すくっても一緒。純平さんには申し訳なかったけど、(吉澤を弾いたあとに)ヨシタク(吉田)がそのまま出ていった。最後は脚がなかったけど、感触は悪くなかった。今年一番良かった」

 後方からようやく反撃に出た脇本だったが、最終1センターのあおりで大きく外に膨らむ。山口拳矢は脇本の内に進路を取って、2コーナーから山降ろしで強襲。好スピードで3着に届いた。
 「(脇本は)単騎よりは前で進めたいっていう感じだった。自分はもう脇本さんの後輪だけを見ていたんですけど、あそこまで上にいくと思わなかった。それで切り込む形になった。結果的にはそれが良かったかのかもしれない。(最終)3コーナーに入るまでは(優勝が)あるかもって思ったけど、乗り越える力がなかった。(脇本の後ろで)過去イチくらいピリッとした。顔見せから緊張しました。でも、踏めていたし伸びていた」







レインボーカップチャレンジファイナル

佐藤壮志選手
佐藤壮志選手

 望月湧世が赤板で切って、追い上げた吉田晏生が2番手に続く。前受けの佐藤壮志(写真)は3番手のポジションで、後ろには唯一ラインができた小榑佑弥、坂口卓士。櫻木雄太は8番手で打鐘を通過する。そのまま望月が4コーナーからペースを上げて駆ける。2番手の吉田、3番手の小榑がそれぞれ車間を空けてタイミングを取る。最終1センター過ぎに後方からまくった櫻木は進まない。2コーナーで吉田がまくりを打って、逃げる望月をバックでとらえる。冷静に吉田を追った佐藤が、4コーナーから追い込んで小榑を退けた。
 「細切れだし(作戦を)しっかり考えても仕方ないと、前取りに行ってそこから考えようと。吉田さんがどう動くかで決めようと思っていたら、(吉田が最終)2コーナーでは踏み込む姿勢を見せたので付いていこうと。周りは見えていましたね。今日(最終日)は勝ちを狙いにいっての競走だし、上ではあれじゃダメ。内容より結果重視でいった。もっと自力を出していかないと上にいけない。熊本のS級の先輩たちはカッコいいし近づいていきたい」
 結果的には単調な流れで2、3、4番手の選手の決着。佐藤の流れ込む形で小榑佑弥が2着。
 「もうちょっと早く踏めていれば…。最後はタイミングをミスった。中団より前にいられたらと思っていて、ペースも上がったし誰も来ないなと思って踏んだけど伸び切らなかった。(A級2班に上がって)不安だけど、初戦が地元の弥彦(7月7日から)なのは良かった」
 赤板1コーナーで俊敏に2番手に追い上げた吉田晏生が、後続の仕掛けを待つことなくまくりを打つ。が、ラインがないだけに、真後ろの佐藤につかまった。
 「(周回中は)前から4番手以内にと思っていた。(赤板の)誘導を切るところでは2、3番手をキープしてと。(後ろから誰かが来て)飛び付く感じかと思ったら、(望月が)思ったより早く駆けてくれた。楽に(2番手を)回れた。思い切りまくってスピードは出たけど、(後ろの)2人に抜かれてしまった」





次回のグレードレースは、大阪・関西万博協賛 小松島競輪開設74周年記念「阿波おどり杯争覇戦」が、7月4日~7日の日程で開催されます。
今シリーズは清水裕友、深谷知広、佐藤慎太郎のSS班3名をはじめとして、新田祐大、岩本俊介、小林泰正、嘉永泰斗など全国各地から健脚が集結。
地元勢はスピードスター犬伏湧也を筆頭に、小倉竜二、阿竹智史らが一丸となって強豪を迎え撃ちます。ファン必見の4日間です。

6月20日時点の出場予定選手データを分析した、小松島競輪「阿波おどり杯争覇戦」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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