『取手競輪開設64周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:6月29日
 取手競輪場を舞台に開催された開設64周年記念「水戸黄門賞」は6月29日に最終日を迎えた。注目の決勝戦は先行した脇本雄太を番手の伊藤保文がゴール前で捕らえて優勝。12年ぶりの記念制覇を果たした。また9レースのガールズケイリンコレクションは中村由香里が鋭いキメ脚を発揮して優勝を飾った。
決勝戦 レース経過
 金子貴志が前を取って吉田敏洋を迎え入れる。周回は吉田―金子―芦澤大輔―浦川尊明―野田源一―井上昌己―脇本雄太―伊藤保文―成清貴之の並び。
 脇本の上昇を待たずに、赤板前から野田が上昇。吉田が1車、車を下げて野田が誘導後位に入ると、そこを脇本が叩いて先行態勢に入る。芦澤が中団を確保し、単騎の井上が7番手に入ると、吉田は後方8番手に。吉田はホームから早めの巻き返しは見せたが、6番手の浦川の外で一杯になる。バックからは芦澤がまくって出るが、合わせるように目の前の野田が仕掛けたために不発。野田も脇本の踏み直しの前に、3番手成清の外でスピードが鈍る。これで優勝争いは近畿勢の一騎打ちに。番手無風で回った伊藤が粘る脇本を捕らえて、12年ぶりの記念優勝。芦澤後位から内々を踏んだ浦川が接戦の3着争いを制した。


伊藤保文選手
伊藤保文選手
 これまで脇本雄太とのワンツーは1度だけ。なかなか連係が決まらなかった伊藤保文(写真)だが、この決勝戦は違った。脇本が逃げて、すんなり番手をキープ。直線で鋭く差し切り、あっさりと12年ぶりの記念制覇を成し遂げた。
 「今日は脇本の頑張りに尽きますね。いつもは競り飛ばされてたから、あんなにきれいに付けられたのは初めて。優勝がこんなに近かったんですね。脚を溜められました。最後、成清(貴之)にコースを空ける余裕はなかったです。脇本はタイムもすごい出てましたね。でも付いていくのは全然(楽)でした」
 一方で自身の身体のデキは良好とは言えなかったと語る。今回の優勝を弾みにして、次走の小倉、さらに寬仁親王牌に向けて状態を高めていく。
 「調子はあんまりよくなかったです。でも集中はしていましたね。でも脇本を抜いて調子が悪いって言うのも…。やっぱり(調子は)良いんですかね」

 積極果敢な走りでレースを支配した脇本雄太だったが、最後は伊藤に交わされた。
 「雨が降ってきていたけど、それは言いわけにならない。自分はいつも通りのレースをするだけでした。力不足です。疲れの抜けきらない開催でした」

 地元の浦川尊明は芦澤が不発の展開から内を進出して3着に食い込んだ。
 「芦澤(大輔)が頑張ってくれました。優勝を狙うならもっと遅く仕掛けても良かったと思うけど、男気を感じましたね。自分のタイミングで中に入っていけた。優勝かと思ったけど、脇本がタレなかったです」

 脇本ラインの3番手を回った成清貴之は伸びきれず4着が精いっぱい。
 「ワッキー(脇本)がすごいカカりだった。展開は良かったんですけどね。力があれば伸びたと思う。もっと力をつけて」

 金子貴志は前を任せた吉田敏洋と共倒れに終わった。
 「しょうがないですね。あんな一本棒の展開になるとは思わなかったです。ワッキーもカカッてましたね。みんなの思惑もあるし、難しいですね」

 単騎の野田源一は4番手確保からの先まくりで見せ場を作った。
 「自分でレースを動かして、まくりにいって、力は出し切れました。もうちょっと成清さんのところにへばりついていければ良かったけど、雨でスリップも怖かった」

ゴール
ガールズケイリンコレクション取手 レース経過
 ダッシュよく飛び出した小林莉子が正攻法を確保すると、周回は小林―中川諒子―加瀬加奈子―中村由香里―石井寛子―梶田舞―山原さくらの並び。
 赤板で梶田から上昇を始めるが、中村の外まで上がったところで誘導員が退避する。そのまま小林が先頭に立ったが、2センターから中川が前に出る。そこに梶田も続こうとするが、加瀬がダッシュよく発進。中村が加瀬の仕掛けに続くと、中川は3番手で反撃の機会を待つ。梶田、山原はそれぞれ後方に置かれ万事休す。2センター、5番手からまくり上げる石井も届かない。4コーナー立ち直って、加瀬も懸命に踏み直すが、ラスト1周絶好の位置を確保した中村が直線鋭く捕らえて快勝。2着に加瀬、3着に中川と前々に攻めた3車で決着した。
逃げる加瀬を捉えた
逃げる加瀬を捉えた
ファンの声援に応える
ファンの声援に応える
表彰式で満面の笑み
表彰式で満面の笑み
 9レースはガールズケイリンコレクション2014取手ステージが争われた。激戦を制したのは中村由香里(写真)。近況は抜群の安定感を誇っていたが、強豪がそろった一発勝負でレース巧者ぶりを発揮した。
 「色んな展開を想定していたし、落ち着いて周りを見ながら走れました。加瀬ちゃんの動きが速かったので、速い選手に乗っていこうと。しっかり対応できたと思います。加瀬ちゃんはペースで駆けていたし、踏み直しもきつかった。その上をいくのは大変でしたね。最後はちょっと力んで踏んだけど勝てて良かったです」
 今年の大目標は年末の岸和田グランプリ。そこに向けての努力は怠らない。一戦ごとに進化を続ける。
 「3月名古屋のガールズケイリンコレクションは自力を出して7着だった。力が足りないと感じて、この3カ月で新しいトレーニングを取り入れました。今までのバンク練習、ウエイトにプラスして体の使い方も意識して、自転車と体が一体になってきた。今年のグランプリは岸和田ですからね。生まれ育った場所だし、絶対に出場したい。目の前の一戦一戦をしっかり走っていきます」

 加瀬加奈子は持ち味の先行勝負で力を出し切ったが、2着に敗れた。
 「梶田が行く前に仕掛けるしかないと思った。いい感じで先行できたんですけどね。(中村)由香里の(位置の)取り方が上手かった。逃げ切れたら最高だったけど、連にはからめたので。もう1枚ギアをかけても良かったですね」

 3番手をキープした中川諒子だが、前の2人を交わせなかった。
 「加瀬さんの後ろを取れれば良かったんですけどね。3番手になってバックで緩んでいたので仕掛けられれば良かったけど、中村さんに合わされると思っていけなかった」

 コレクション3連覇に挑んだ石井寛子は見せ場を作れず5着に終わった。
 「(加瀬、中村の)2人に前に出られてしまったし、5番手だと勝負権はないですね。練習不足の影響もあったけど、もっと頑張らないとダメですね」
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