『取手競輪開設68周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:11月10日

 取手競輪開設68周年記念「水戸黄門賞」が10日に開幕した。オープニングレースでいきなり3連単50万円オーバーの超大穴配当が飛び出す波乱の幕開けとなった。メインの特選3個レースは五十嵐力、鈴木竜士、吉澤純平の3人が勝ち名乗り。2日目は優秀「助さん格さん賞」をメインに、二次予選6個レースで準決勝への勝ち上がりを争う。
 2日目も場内イベント、ファンサービスは盛りだくさん。茨城県産のお菓子を先着1000名様にプレゼント。メインスタンド正面入口付近の特設ステージではスピーチーズライブパフォーマンス、メインスタンド2階ステージでは工藤元司郎氏による予想会、地元選手のトークショーが実施されます。ぜひ取手競輪場でお楽しみください。

<1R>

齋藤正国選手
齋藤正国選手
 オープニングレースは3連単57万円の超大穴配当が飛び出した。レースは打鐘で飛び出した坂本周作を末木浩二がすかさず叩いて先行策を取る。4番手確保からまくり上げた坂本を石川雅望が最終3コーナーで大きく外に弾くと関東ライン3番手の齋藤正国(写真)が空いたインコースを抜け出した。
 「(石川が)外に張った時に、入ってしまい、(石川が)戻ってこれなくなり邪魔をしてしまったのが申しわけない。(鹿内翔が)降りてくると思って構えていたから対応はできた。前2人の気持ちのおかげですね。感じはいいと思います」
 北日本ライン3番手の金澤幸司が冷静なコース取りから2着に突っ込んだ。
 「自分が話せることなんて何もないですよ。前2人のおかげ。それだけです。まさか2着までなんてね」
 柴崎俊光は目標不発の厳しい展開をしのいで3着に食い込んだ。
 「自分の判断が遅かった。中井君はいけるものだと思っていたので。もうひとつ伸びがほしかった。せめて2着までは届く感覚だったし、このあと修正します」


<2R>

 後ろ攻めの川村晃司が赤板で上昇して中団の本多哲也にフタをする。打鐘で叩きに出た川村を正攻法の連佛康浩が突っ張って先行。浮いた川村は中団に入り直す。7番手となった本多は4コーナーから巻き返すが、これに合わせて戸田洋平が最終2コーナーから番手まくり。最後まで踏み切った戸田が後続の追撃を振り切った。
 「連佛は頑張りすぎですね。頭が上がらないですよ。ありがたい。飛び付きくらいかなって思ってたけど、あいつはそんな小さいことを考えていなかったですね。いつも頑張ってくれる。4コーナーを回ってからはキツかったけど、なんとか最後まで粘れたし、悪くないですね。2日目からも頑張ります」
 断然人気の川村晃司は立て直して外を追い込んだが、4着に入るのが精いっぱいだった。
 「(連佛の)突っ張りは考えていなかった。もっと早く押さえれば良かったです。僕のミスでラインに迷惑をかけてしまった」


<3R>

筒井敦史選手
筒井敦史選手
 赤板の2コーナーで切った巴直也を小川祐司が打鐘で押さえて主導権を握る。8番手となった岸澤賢太は4コーナーから反撃に出るが、3番手の外で勢いが止まる。絶好展開となった筒井敦史(写真)が後方からまくってきた藤田勝也に合わせて鋭く追い込んだ。
 「恵まれました。小川が持ち味を生かして、絶妙のペースで先行してくれました。2車でキツかったけど、あれしかなかったですね。外はすべて4コーナーまで見えていました。これで沈められたらダメだなって。最後は外(から来た藤田勝也)に合わせて踏みました。僕にもっと余裕があればよかったんですけどね。現状ではあれがいっぱいいっぱいでした。1着はいい薬です」
 巴直也は3番手の内で詰まって仕掛けられなかったが、直線勝負で2着に入った。
 「かぶってしまって、踏めるところがなかったです。ちょっと難しかったですね。不完全燃焼でした」
 後方から大外をまくり上げた藤田勝也は3着まで。
 「8番手にはならない作戦だったんですけどね。まくり頃になったと思ったけど、思ったほど伸びなかった。道中から重く感じてました。後ろを連れていけず申しわけないです」


<4R>

佐々木孝司選手
佐々木孝司選手
 佐々木孝司(写真)を押さえてハナに立った日野博幸は、打鐘から仕掛けてきた久木原洋を突っ張るように踏み上げる。それでも久木原は、最終1コーナーで強引に日野を叩いて主導権を奪取。マークの中田健太はホームで降りて連結を外してしまい、日野が久木原を追いかける。後方7番手となった佐々木が最終1コーナーから豪快にまくると、懸命に逃げる久木原を2センターで抜き去って先頭でゴール。ラインで上位独占を決めた。
 「2人(日野と久木原)が踏み合うとは思わなかったですね。あれで(久木原ラインの)4番手に付いて行ってもしょうがないと思って引きました。踏み出した感じは、ちょっと重かったです。レースの時間がちょっと早いのと、状態はいいけど少し疲れがありますね」
 佐々木にピタリと続いた中村敏之輔が2着をキープした。
 「(佐々木を)全然抜けません。強すぎます。踏み出しは大丈夫だったし、道中の余裕はあったけど、抜ける気はしなかったですね」


<5R>

北津留翼選手
北津留翼選手
 打鐘で突っ張ろうとした小林則之を強引に押さえた北津留翼(写真)だったが、その上を叩いた庄子信弘が流したことで内に詰まる。最終ホームで庄子を叩いた小林が主導権を取る。これで大きく車間の空いた7番手となってしまった北津留はバックから懸命にまくり上げる。逃げる小林をゴール寸前で北津留がとらえた。上がりタイムは10秒8。バンクレコードにあと0.1秒というハイラップを叩き出した。
 「押さえるタイミングを失敗しました。組み立てとかダメでしたね。先行できなくて変な焦りがあった。自分だけはかろうじて届いたけど、後ろに迷惑をかけてしまった。タイムは良かったかもしれないけど反省しかない」
 小林則之が2着に粘り、ライン3人の全員が二次予選への勝ち上がりを決めた。
 「先行はキツいとは思っていました。前を取って北津留君が早めに押さえにくるだろうからあとは庄子君が行った上を行こうと。想定どおりでしたね。先行してこの結果ならヨシでしょう」
 小林マークで3着の加藤圭一は検車場に戻って苦笑い。
 「小林さんがうまい組み立てだったし、すべて作戦どおりでした。絶好の展開だったから、せめて2着にはなりたかったね」


<6R>

 後ろ攻めの土屋壮登が打鐘めがけて一気に仕掛ける。合わせて踏み込んだ齋藤宗徳が3番手をキープし、人気の吉本哲郎は5番手で最終ホームを通過。齋藤が2コーナーから仕掛けると、車間を空けていた矢口啓一郎が番手まくりに出て、後続の追撃を振り切った。
 「土屋も先行基本に組み立てたいって言っていたので。出切ればなんとかするとは言ってました。あれだけ(積極的に)行ってくれたし、ごっそり抜かれたら嫌なので出させてもらいました。踏んだ感触は悪くないと思います。人の後ろで評価できない部分もあったけど、楽に脚は回せました」
 最終バックで俊敏に矢口の後位に切り替えた須藤誠が2着。しかしレース後は胸の内の葛藤を吐露した。
 「人としての余裕がないですね。シビアなレースをしていることと、前をかばいたい気持ちと矛盾がある。宗(齋藤)は同級生だし、あれだけ頑張ってくれたのに…。S級1班の点数がかかっていると、こういうことなんですかね。セッティングを戻して脚は問題ないです」


<7R>

 後ろ攻めから先に動いた下沖功児が誘導員の後位に収まり、中団は内に鈴木謙太郎、外は筒井裕哉で併走が続く。下沖は打鐘から徐々にペースを上げて逃げる。中団争いを制した鈴木が最終2コーナーから一気にまくって後続を千切った。
 「引けなかったんで勝負するしかなかった。こういう展開も考えてました。無理やり出ていったので、最初は出が悪かったけど、3コーナーから伸びてくれました。いつもやってないことなんですけど、こういうレースも少しずつ増やしていかないとって思ってます。結果的には良かったです」
 筒井マークの三谷政史が最終バックから鈴木を追いかけるような形で2着に。
 「(筒井)裕哉さんのおかげです。展開的には危ないと思いました。裕哉さんに(鈴木を)追いかけてくれって思ってたんですが、自分も差し込んでしまっていたし、あそこで入れられなかった。申しわけなかったです。落車のあとですけど、昔のフレームに戻して感覚はいいですね」
 三谷に続いた小林卓人がそのまま3着に流れ込んだ。
 「前が併走だったんで、どうなるかなって思いながら見てました。前に離れないように集中して付いていきました。3着に入れたんで良かったです」


<8R>

 後ろ攻めから動いた堀僚介は、赤板2コーナー手前で津村洸次郎を押さえて主導権を握る。7番手まで引いた津村は、打鐘の2センターから反撃。最終1センター過ぎに堀を叩いて先頭に躍り出る。後方で脚を溜めていた守澤太志は、2コーナーからまくり出ると、津村の抵抗を力でねじ伏せて人気に応えた。
 「なんとかですね。組み立てはあんなもんじゃないですか。作戦どおりにいきました。仕掛けた時も、車は進みました。(取手は相性がいいが)勝ち上がっていけば、相手も強くなりますからね」
 番手の安部貴之は、直線で守澤に迫るも2着でゴール。
 「抜けそうにはなかったです。追走いっぱいでした。抜けたら今の点数じゃないですよ。守澤はどんな展開になっても3着には来るって感じでした。すごいスピードが出ている感じだった」
 津村洸次郎は守澤にまくられるも、3着に粘った。
 「守澤さんは絶対中団を譲らないだろうと思ったので、いつもはしないですけど引きました。(堀を)交わしに行った時に、ちょっと持っていかれてフワッとしましたね。その時に脚を使ってしまった。出切ってからは踏めていたと思います」


<9R>

 断然の人気を集めた山崎賢人が圧巻のスピードで期待に応えた。鈴木雄一朗、渡邉豪大の順で切ったうえを桜井雄太が叩いて出るが、前受けから下げた山崎もすかさず巻き返す。最終1コーナーで出切ると、3番手以下を大きく引き離して完勝。力の違いを見せた。
 「久々だったのでちょっと緊張しました。周りが動いてくれたのでやりやすかったですね。感触はちょっと重かったけど、いつもどおり走れました。余裕はあったし、2日目以降もしっかり勝ち上がらないと」
 菅原晃は追走いっぱいの2着。山崎の強さを称える。
 「山崎君が強かった。踏み出しだけ集中して、先行したら誰もまくれないと思ったし、後ろは見ずに付いていった。あいつ(山崎)より俺の方が緊張した。ピタリと続いたように見えたかもしれないけど、最終ホームでは脚がピリピリしてましたよ」
 伏兵の桜井雄太が山崎にまくられながらも3着に踏ん張った。
 「たまたまです。山崎君に行かれてからは後ろの様子とか、何もわからなかった。でも1回前に出たのが結果的には良かったですね」


<10R>

五十嵐力選手
五十嵐力選手
 杉森輝大を叩いた坂本貴史を最終ホームで根田空史が叩いて出る。追い上げた松浦悠士が坂本を締めて3番手を確保。最終2コーナーで後方からまくり上げた杉森輝大は思うように車が進まない。バック過ぎからまくった松浦を五十嵐力(写真)が巧みにブロックしてから抜け出した。
 「根田のおかげです。誰かが仕掛けてこれるスピードじゃなかったんですけど、松浦も調子がいいんでしょうね。根田のかかりは悪くなかったと思いますよ。松浦は(自分の横を)スレスレで仕掛けてきていたので、前回の失格(反省を)を生かして止めました。1着はうれしいですね」
 五十嵐のブロックで勢いが止まった松浦悠士だったが、最後まで踏み続けて2着に食い込んだ。
 「(3番手で)休んでしまったけど、意外に脚は余っていたので、仕掛けていけば良かった。失敗しました。(セッティングを換えた)自転車はいいと思います。しっかり自分を信じて仕掛けていけば良かった。五十嵐さんのブロックがうまかったですね。練習ほどキツくなかったし、ダッシュもいいのでセッティングはいいと思う。あとはタテ脚を出すイメージでしっかり走るだけ」
 松浦マークの小倉竜二が3着を確保して優秀戦に駒を進めた。
 「松浦のスピードが良かったので、(3番手に)入らずにそのまま仕掛けて行っちゃえば面白かったかも。ゴール前はハンドルを投げてバランスを崩してひとりロデオみたいでした」


<11R>

芦澤辰弘選手
芦澤辰弘選手
 打鐘前に切った山田英明は別線の動きを確認しながらスローペースに落とす。打鐘の4コーナーから吉田敏洋が一気に踏み込んで先行。このラインを追う形からまくりに出た鈴木竜士が最終バックで吉田をねじ伏せると、そのまま後続の追撃を振り切り、初の地元記念で白星スタートを切った。
 「いつもどおり作戦はなしで走りました。内外併走になったんですけど、吉田さんの3番手から詰まったところで行けたんで良かったと思います。こんなに出ているので悪くないです。とりあえず良かったです」
 落車明けの芦澤辰弘(写真)が鈴木にきっちり続いて2着。地元ワンツー決着となった。
 「ジャンのところは難しかったと思うけど、落ち着いて力勝負をしてくれました。僕はまず付き切ることだと思ってました。自分のやれることを精いっぱいやろうと。練習してきて、それがちゃんとレースに出たんでホッとしてます」
 地元勢のまくりを懸命に追った松谷秀幸が3着に入った。
 「ジャンのところの山田君の動きがよくわからなかったですね。鈴木君の位置も分かってなかった。想定では5番手くらいの位置を取る予定だった。でも臨機応変には動けてますね。あとは脚の問題です」


<12R>

吉澤純平選手
吉澤純平選手
 前受けの佐藤博紀は、8番手から上昇してきた山中秀将を赤板で突っ張る。山中が車を下げると、今度は稲垣裕之が一気に仕掛けて打鐘で佐藤を叩いて先行態勢に。山中は再び8番手に置かれたが、打鐘の2センターから反撃に出る。しかし、椎木尾拓哉のけん制を受けて失速。2コーナー手前から千葉コンビの外をまくった吉澤純平(写真)は、猛スピードで稲垣を抜き去ると、後続を突き放して快勝した。
 「流れの中で置いていかれないようにっていうのを気を付けていました。細切れだったので、先に山中さんが行くのは想定内でした。自転車を換えた松戸(前回10月千葉記念in松戸)の時よりも、練習に近い感覚で踏めていて、対応できています」
 最終バックから武田豊樹を追うようにまくった山崎芳仁が、直線で大外を伸びて2着に入った。
 「(佐藤)博紀が頑張ってくれたから、外を回して行けました。山中の突っ張られた後の巻き返しは、思ってたよりも早かったですね。自分の感触は悪くなかったと思います」
 吉澤の踏み出しで車間が空いた武田豊樹だったが、なんとか前団を乗り越えて3着に入った。
 「キツかった。(吉澤が)8番手になっちゃったし、仕掛けもちょっと遅くなったから。(自分は)なんとか3着で、耐えたのは耐えたけど…。もうちょっと食らいついて行きたかったです」
 稲垣裕之は7着に沈んだが、久しぶりに先行で長い距離を踏んだ。
 「山中君が突っ張られたのは予想外でしたね。自分は前を叩いて誰も来なかったので駆けました。先行でもまくりでも長い距離を踏みたいと思っていたので、収穫はありました。最近は人の後ろのレースが多くて、自力のレースが少なかったので、道中に感じたセッティングをしっかり煮詰めていきたいです」