『宇都宮競輪開設58周年記念(GIII)レポート』 最終日編
 
配信日:5月20日


 5月17日から行なわれていた開設58周年の宇都宮記念競輪「ワンダーランドカップ争奪戦」は、20日が最終日。注目の決勝戦は松岡貴久、北津留翼、飯野祐太ら若手自力型の脱落で、武田豊樹が先行一車の組み合わせとなった。

決勝戦ダイジェスト
 スタートは内から神山雄一郎、渡辺晴智、伊藤保文と3車で併走になるが、伊藤が正攻法に構え、中団に神山。隊列は伊藤-岩見潤-田川辰二-内藤宣彦-武田豊樹-神山-後閑信一-渡辺晴智-海野敦男で落ち着いた。
 隊列に変化のないまま赤板ホームを通過。打鐘前に八番手の渡辺が武田に追い出しをかけるように車を持ち出すと、武田は打鐘の3コーナーから上昇を開始する。中団には静岡コンビが続き、その後ろに単騎の内藤がスイッチ。叩いてからペースを落としていた武田が最終ホームから一気に踏み上げると、七番手に下げた伊藤は口が空いてしまう。武田は残り1周のロングスパート、伊藤は車間を詰めた勢いでバックから猛然とまくり上げるが後閑のヨコで力尽きる。2センターから二度、三度と後方に目をやった神山は、直線入り口で最後の波を作るとそのまま武田を捕えにかかる。地元戦9回目のVへ神山は懸命に車を進めるが、中を割った後閑、そして外から渡辺の強襲に遭い横一線でのゴールとなる。写真判定の結果は、中を割った後閑がタイヤ差で優勝。神山は僅差の2着で涙を飲んだ。


後閑信一選手
後閑信一選手
 打鐘過ぎの3角から踏み上げた武田豊樹が、ホームから主導権を握り一本棒の展開。地元ファンは神山雄一郎の地元記念Ⅴ9を確信したことだろう。だが、三番手から直線で鋭く中を割った後閑信一(写真)がタイヤ差で先着し、05年久留米記念以来となるVを飾った。
 「今回は神山さんを援護するつもりで来たのに、申し訳ない気持ちで複雑ですね。4角で9番(伊藤)が見えたので『来た~』と言ったけど…。神山さんは武田君を最後までかばっていたからね。あそこで踏んでくれれば神山さんの優勝でしょう。僕も中を割られないように内を締めながら踏んだが、無欲の分だけ逆にリラックスして惰性で伸び過ぎましたね。今回は宮杯に向けて五百バンクの感触を掴みたかったし、準決でもまくりが出たので調子は上がっていると思う。今回はそれなりの手応えがありました。今日は地元ファンの野次が凄かったし、今度は神山さんに恩返しをしたい」
 久々の記念Vにも複雑な表情を浮かべ、終始恐縮する姿が印象的だった。
 九分九厘Vの展開をものに出来ず、ゴール前で涙を飲んだ神山雄一郎は無念の表情で振り返る。
 「武田君が頑張ってくれたが仕方ないですね。踏み出しのタイミングも、もうワンテンポ早いか遅いか微妙な処だった。後閑君が内から来たのは分かったが、まさか肘を掛けるわけにもいかないしね」と、流れる汗を拭いながら振り返る。
 終始レースを支配した武田豊樹は「僕も早めに掛けているし、五百ですんなり3番手の後閑さんにも当然チャンスはありますね。今日は失敗の許されないレースだったし、いい先行ができたと思う。これで宮杯に向けて戦える手応えを掴めたし、地元に帰って更にキッチリと仕上げたい」
 直線で大外を強襲し、写真判定にまで持ち込んだ渡辺晴智は「今日は中団が欲しかったけど取れなかったので、道中は何も考えられなかった。まくって来た伊藤(保文)さんが強かったので、4角で被ってしまいました。先輩(海野敦男)も付いているのに、何も出来ずに情けないです」と帰り支度を急いだ。
 バックの手前から猛然とまくり上げた伊藤保文は4角で力尽きる。「車間を空けて前との差を詰める勢いで思い切り踏んだけど、あそこまでが一杯でした」
 伊藤を援護して4着に入った岩見潤も「伊藤君は掛かりも良くスピードに乗っていたし、本当に頑張ってくれました」


ゴール




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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
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