『大宮競輪開設73周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:1月15日

 東日本発祥73周年「倉茂記念杯(GIII)」が、大宮競輪場で1月15日に幕を開けた。初日のメイン、特選では地元ライン3番手の平原康多が、吉田拓矢とのゴール勝負を制して1着。また、一次予選では、犬伏湧也が豪快なまくりで初めてのグレード戦を白星でスタートした。1月16日の2日目には、二次予選で勝ち上がりが争われ、500バンクを舞台に熱戦が展開される。
 なお、大宮競輪場では「競輪・オートレースにおける新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」に沿った開催となりますので、ご協力とご理解をお願いいたします。開催中の毎日、オリジナルクオカードなどが当たるスピードくじを先着で配布。埼玉県内のご当地グルメや人気グルメがそろうグルメ屋台ストリートの出店なども予定されています。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

 古屋琢晶、伊藤成紀の順で切って出て、前受けの林大悟は7番手に置かれる。が、打鐘の4コーナーで4番手の伊藤が仕掛ける。最終ホーム手前で伊藤が出切り主導権を握るが、そこを林がまくりで襲い掛かる。大外から山降ろしで加速をつけた林があっさり前団をのみ込む。続いた松岡貴久は、番手で絶好の流れ。後続との間合いを計り追い込んだ。
 「(新年1走目での白星に)恵まれました。気分はいいです、いまのところ。(林が)1番車だし好きなところ取って、(大宮は)長いし好きなところからいってくれればと全部、林君任せでした。引くのがちょっと遅かったし、早く引けばもっと楽に行けたはず。(状態は)普通に乗れていますね」
 最終ホーム手前から踏み上げた林大悟は、いったん中団まで追い上げてからまくり上げた。
 「反応はめっちゃ遅れていた。遅すぎていつもの力を出し切れてないので、そこは修正しないと。(バンクコンディションは)バックが向かい風で、しっかり風が吹いてますね」


<2R>

山岸佳太選手
山岸佳太選手
 打鐘の2センターで幸田望夢が押さえて出るが、後方から阿竹智史が巻き返す。阿竹はそのまま関東勢を叩いて先行策に出る。幸田から切り替えた山岸佳太(写真)は中四国ライン3番手の藤田昌宏をさばいて、単独のポジションを確保する。2センターから外に持ち出した山岸が、ゴール前で抜け出した。
 「(一次予選は)5着権利っていうのもあるんで、(阿竹は)あんなに早く来るとは思ってなかった。しっかりと気づいていれば、自分がもっとやれることもあったかなと。(幸田が叩かれて切り替えたのは)しょうがないかなと。(志村)太賀さんもいて人気にもなってたのもある。人の後ろだったんで、結構、冷静に走れたかなと。ただ、この風なんで自力選手にとってはキツいですね。自分の脚はそんなに悪くない」
 山形が外の山岸をけん制すると、志村太賀は逃げる阿竹と山形の間をピンポイントで突いて2着に伸びた。
 「(山岸が切り替えて)四国ラインの3番手が取れたんで、山形君は山岸君を警戒していくだろうから、僕は内をと。最後のコースは絶対にそこって思ってました。自分がそこを入ることによって、山形君も阿竹さんにも厳しくなるっていうのがありました。最近、セッティングを変えたりもしている。(前々回に)落車もしているけど、(感触は)そんなに悪くない」


<3R>

 先頭に立ってペースを握った松坂侑亮だが石井洋輝のカマシを受けて、山本伸一は7番手で最終2コーナーに突入する。バックから山本がまくりを打ち、松坂も合わせて出る。佐藤和也が松坂をブロックして外に膨れた山本だったが、直線でしっかりと伸び切って1着。
 「動ける積極型がそろっていたから出入りが激しくなるかと思ったが、そうはならなかったですね。風が強くてバックの仕掛けは、苦しいところで出切ることになってしまった。もうワンテンポ早く行けていればラインで決まったと思うけど、松坂君を見ながらいってしまった。感触は悪くない。ただ、ハンドル周りを変えてきたので、修正してマッチングできるように」
 コースを探していた村上博幸が最終4コーナーで内よりを選択。中近ライン3番手の伊藤正樹は、山本を追うように大外を踏んで2着。
 「(最終)バック9番手だったけど、前の2人が強いので信頼して付いていった。山本君が止まりかけて(村上が)内にいったので、僕は外のコースしかなかった。最近、調子は悪くなくて展開だけでした」


<4R>

金子幸央選手
金子幸央選手
 打鐘の3コーナー過ぎに土屋裕二と接触した相川永伍が落車。ラインが2車になった菊池岳仁は、2センター過ぎに仕掛けて最終ホームで主導権を奪う。3番手に渡邉豪大が飛び付き、8車の一本棒でバックを通過する。別線は動けず、金子幸央(写真)が菊池を差し切った。
 「そこ(相川の落車)だけが心残りです。菊池君がすかさず行ってくれたんですけど、(相川との接触で)自分も後輪がブルブルしてしまった。終始、壊れないかと心配でした。(菊池は)頼もしかったし、バック線の掛かり的に(別線の)巻き返しはキツいんじゃないかと。僕は安心してました」
 別線に出番を与えなかった菊池岳仁が、積極策で金子とワンツー。
 「今日(初日)は前のレースを見てても、長い距離を駆けるのはキツかなと。それで切って、切ってでも(別線は)なかなか駆けなんじゃないかと。うまくいきましたね。(最終)ホームで出切って自分のペースでいけば大丈夫かなと。感触もだんだん良くなっている」


<5R>

清水剛志選手
清水剛志選手
 単騎の清水剛志(写真)は、周回中から9番手。横関裕樹、坂本貴史が動いても清水は反応せず、最終ホーム手前で6番手から仕掛けた早坂秀悟ラインに乗る。早坂が出切ると、間合いを取った清水がその上をまくって長い直線を踏ん張って1着。
 「バックが向かい風だったので、脚を使わず一発狙おうかと。初手で早坂さんが前受けだったので、カマシと思い、そこに付いていこうと。最後は道中で踏み過ぎていっぱいになったけど1、2着ではあるかなと」
 北日本ライン3番手の金成和幸は、前の2人が包まれて、やむを得ず最終2センターから外を踏む。清水にタイヤ差まで迫る2着で、清水とのセットで好配当をメイクした。
 「(最終)3コーナーで坂本君が内に詰まっていて、飯野(祐太)君も追っていたからコースがないんで外に持ち出したら展開に恵まれた。1着を取ったかなと思ったけど、小倉(竜二)さんばりのハンドル投げができなかった。ピストシックスで自力を出しているのがいい方向に出たかな」


<6R>

 中団外併走から踏み込んだ堀内俊介が、最終ホーム手前で出る。その上をすかさず酒井雄多が叩いて主導権を奪う。5番手の谷和也は動けず、大西祐も後方のまま。番手で流れが向いた渡部幸訓が、追い込む堀内のスピード計りながらチャンスをモノにした。
 「酒井君の仕掛けがワンテンポ遅れた感じもあったけど、結果的にはそれが自分たちには良かった。酒井君とは久しぶりだったんで、今日(初日)の風でどの程度、(自分に)脚のたまりがあるのかなっていうのがあった。終わってみれば、もうちょっと自信をもって(最終)バックで車間を切れば良かった。風をとかいろいろトータルで考えると、明日(2日目)はもっといい走りができると思います」
 福島コンビを出させた堀内俊介は3番手確保。追い込みでラインの成清貴之と2、3着で勝ち上がった。
 「1回切ってからと。酒井君が来るようなら、しっかりと3番手を取り切ってっていう感じでした。そこからはもう少し早く仕掛けたかった。でも、風が強くて、脚も削られた。みんな2センターくらいから踏んでスライドしている形も多かった。それで落ち着いていきました。このコンディションで自分の状態がわからないところもあるけど、悪くはないかなと」


<7R>

 打鐘の4コーナーから仕掛けた伊早坂駿一が、最終ホーム手前で先頭に立つ。しかしながら、関東勢に乗る形で谷口遼平がまくる。谷口に合わせて笠松将太が番手発進。谷口と笠松が接触して両者が落車すると、小堺浩二、合志正臣が巻き込まれる。最終3コーナーのアクシデントを外に避けた原口昌平が、直線で抜け出した。
 「(最終)バックで内に詰まって、谷口君が出切るかわからなかった。そこを見ていて、谷口がいけるかなと外に持ち出したところで落車。ギリギリで避けられました。最後は1車交わすだけだったので、なんとかですね」
 前の2人が落車して最終3コーナーで先頭になった志智俊夫は、直線ではいっぱいも2着に我慢した。
 「谷口君を迎え入れようと内に降りたところで落車があって、その勢いのまま内を切り込んでいった。今回はギアをグランプリレーサーがしているのを参考に小さいのにしてみたが違いはわからなかった。自分はなんでも一緒みたいですね。ギアは戻したり、試したりしていきたい」

<8R>

稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
 高久保雄介が押さえて出る。中団の外併走でタイミングと取っていた鈴木薫は、打鐘の2センターから踏み込んで高久保を叩いて駆ける。小原丈一郎も構えることなく最終ホームから反撃に出るが、伏見俊昭は連結を外す。小原が1人で出切り、鈴木が追いかける。5番手の高久保がまくり追い込むが一息。稲垣裕之(写真)が、その外を追い込んで前団をまとめてとらえた。
 「高久保君は警戒されていたので、仕掛けが遅くなって苦しくなったけど(届いて)良かった。感触は良かったです。人の後ろも増えてきたので、そのセッティングはかたまってきた。体は日に日に変わるのでメンテナンスをしてコンディションを上げていきたい」
 鈴木マークの佐藤礼文は、高久保をけん制するように外に張りながら追い込んだ。
 「(小原が1車で来て)内から来るか気にしながら、(鈴木)薫を入れてでしたね。薫が駆けてくれていたので後ろに入れた。9車立ては初めてに近いし、波で脚を削られたりした。(道中で)どんだけ脚をためられるかですね」


<9R>

 蒔田英彦に次いで緒方将樹が押さえて出て、黒沢征治は7番手。ペースを握った緒方は、最終ホーム手前から仕掛けた黒沢に合わせてフルアクセル。それでも黒沢は力の違いで出切る。黒沢に成田和也まで出切るが、開坂秀明は大坪功一にさばかれる。蒔田のまくりを成田が外に振って、内を突いた大坪は成田に当たって落車。アクシデントのあった成田だが、番手からきっちり黒沢を交わした。
 「黒沢君の気合の入った走りを後ろで感じてました。前(緒方)も踏んでたんでどうかなと思ったけど、(あそこを仕掛けるのは)気持ちじゃないですかね。信頼して付いていました。(後ろに)開坂さんがいないのはわかってて、3番(蒔田)も来てたし、しっかりと対応できた」
 地元で力の違いを見せた黒沢征治だったが、一瞬のちゅうちょをこう吐露して2日目の二次予選に気持ちをスイッチする。
 「先行というかホームで駆けたい。ホームが追い風なんで、そこで(スピードに)乗せたいっていう考えではいました。一瞬、まくりが頭をよぎったんですけど、その時には体が動いていました。体の方が調子がいい。頭の方は一瞬、弱気になってしまった。早めに叩き切れれば、もうちょっといい展開になった。そこが反省点です。ここに向けて自分のできることはやってきた。あとは(初日を)走って、もうちょっと修正できると思う」


<10R>

松岡篤哉選手
松岡篤哉選手
 打鐘の4コーナーから坂井洋が、ダッシュを利かせて一気。外に振って大きな波をつくった月森亮輔をスピードの違いでとらえる。関東ラインが出切り、吉本哲郎が自ら追い込むと中田健太がけん制。脚をためた松岡篤哉(写真)が、その外をまくり気味に追い込んで突き抜けた。
 「車番が悪かったので1回動かしてからと。相手の動き待ちで得意なパターンではなかったけど、思ったような展開にはなった。周回中から脚をためられたし、思ったより状態はいい」
 後続が迫るゴール前で坂井を利した中田健太が、最後のハンドル投げで2着を確保した。
 「(坂井)洋の持ち味を生かす競走をしてくれたが、大宮記念というのを意識してくれたのかな。洋のダッシュと自分のダッシュを考えれば相手は離れ待ちをしてくると思っていたので、月森君の動きは警戒していた。洋のカマシに月森君の動きを見ながら付けられたのは収穫。脚は良いしあとはセッティングが85点くらいなので、それを100になるようにいじるかどうかですかね」


<11R>

犬伏湧也選手
犬伏湧也選手
 嶋津拓弥がペースを落とすと、単騎の高橋幸司が最終ホーム手前からカマす。高橋が出切り、番手に嶋津が飛び付く。しかしながら、高橋を目標にして踏み込んでいた犬伏湧也(写真)が、さらに加速して南関勢、高橋をとらえる。最終3コーナーで出切ってからも犬伏のスピードは落ちず、そのままラインでの上位独占で、初めての記念で白星を飾った。
 「前を取って後ろに引いて、緩んだところで叩いていこうかなと思ってた。でも予想以上に(別線が)踏んでたので、出切るのが遅かった。けん制があったところも、さらっと回していけたんで調子はいいのかなと。ラインで決まったんで良かった。もっと踏んでいけそうな感じもあった。直線で踏み直せたも大きい。僕は日に日に上がっていく方なんで、初日にしてはデキが良かった」
 橋本強は、大宮の長い直線でも半車身まで詰め寄ったところがゴール。犬伏を称える。
 「ごちゃごちゃと考えるより、前から引いて巻き返そうと。(犬伏は)ラインで決まるように走ってくれましたね。ペースで踏んでいたし、しっかりと(最終)4コーナーからも踏み直していた」


<12R>

平原康多選手
平原康多選手
 「突っ張りの作戦だった」と、森田優弥が振り返ったように、4車の地元勢は、前受けから別線を出させるムードはない。打鐘で深谷知広を突っ張った森田が、そのまま駆ける。深谷は8番手からの出直しを強いられる。5番手の山田庸平が最終2コーナー手前からまくりを打ち、森田との車間を空けていた宿口陽一も合わせる。宿口が山田にわずかに出られると、平原康多(写真)は井上昌己を張って踏み場をつくる。平原が追い込む吉田拓矢と踏み合いを制した。
 「ヨシタク(吉田拓矢)が見えたんで、すかさず踏みました。あと一歩遅れてたら行かれちゃってたと思います。余裕がないわけじゃないんで、大丈夫かなと。(前回で)落車してたけど、思ったよりも体も悪くない。自転車も全部、換えてきて、それなりに走れている」
 単騎の吉田拓矢は、最終ホームで7番手。九州勢と地元ラインが重なり隊列が短くなったところを2センターから外に持ち出す。平原には及ばずの2着もシャープな伸びが光った。
 「(打鐘の2センターで)詰まって(井上の内に)行っちゃったけど、あそこは勝負するところではないんで。(山田)庸平さんが行ったんで、自分も行ったけど、最後は平原さんに気づかれてダメだった。感じは悪くない」
 地元ライン4番手の武藤龍生が3着。内を締めながらソツなく立ち回り、平原に食い下がった。
 「(前の)3人に任せてました。久しぶりのレースだったんで緊張感があった。日にちが空いたわりに、うまく仕上げられたかなと思います」