『立川競輪開設69周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:1月4日

 今年も立川から始まる。21年のグレード戦線の幕開けとなる開設69周年記念「鳳凰賞典レース(GIII)」は、立川競輪場を舞台に1月4日に初日が行われた。メインの特選では、平原康多の先行を利した鈴木竜士が地元で白星。幸先のいいスタートを切り、二次予選に弾みをつけた。
 立川競輪場では新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、場内の滞留人数の上限を5000人様とさせていただきます。上限を超えた場合は、入場規制を行いますので、ご理解とご協力をお願いいたします。また、抽選会、ファンサービス品の配布も中止いたします。1月5日は川上真吾(98期)、鈴木彩夏(110期)、岡田亮太(117期)、岡本二菜(118期)の地元選手のリモートによるトークショー、山口健治さん、加藤慎平さん、坂本勉さん、市田佳寿浩さんらのリモート予想会もありますので、テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

<1R>

1R
 押さえて出て先行態勢を取った谷口友真に、打鐘の3コーナーから巻き返した平尾一晃が襲い掛かる。いったんは降りた坂本健太郎が付け直して、平尾、坂本で出切るが、小岩大介は連結を外してさばかれる。追い上げるように3番手に入った櫻井正孝が、直線で外を突き抜けた。
 「期の初めで相手のデータがほとんどない。だから戦略で戦っている自分としては怖い部分がある。本来のパフォーマンスを出し切れなかった。(結果的に大森慶一と独占も)あれだとワンツーがないパターン。ライン的には(自分が)不甲斐なかった」
 最終1センターで小岩を張って櫻井を追いかけた大森慶一は、直線で中のコースを鋭く伸びた。
 「(小岩に)押し込められてマズいなって思ったけど、なんとかでした。(櫻井に)追いついてからは勢いじゃないけど、それで内にいった。調子自体はいいと思う」


<2R>

 神田龍に次いで寺沼将彦が切って、周回中に前で構えていた山本直に順番が回ってくる。打鐘の3コーナーで出た山本が先行策。一本棒の隊列で4番手の寺沼は動けない。7番手の神田が最終バックで仕掛けるが前は遠い。後続の間合いを計って追い込んだ柏野智典が、勝機をモノにした。
 「セオリーというかこうなるだろうなと。みんなの思惑が重なって切らせて先行って感じでしたね。関東の先行かなって思ったけど、叩いてくれたので決まったと思いました。自分は終始余裕もありましたね。前回からフレームを換えて感触もいい」
 レースを支配した山本直が粘り込んで岡山ワンツー。
 「落ち着いて前の動きを見ながら行けました。掛かりがもう一歩でしたけど、後ろが柏野さんなので落ち着けましたね。前回は良くなかったけど、今回は修正できたので仕上がっていると思います」


<3R>

宮越孝治選手
宮越孝治選手
 打鐘の3コーナーで市橋司優人が叩いて出るが、その上を富山コンビがカマす。逃げる吉川起也との車間を空けた宮越孝治(写真)は、最終3コーナーで市橋を外に振って直線半ばで抜け出した。
 「サイコーの展開でした。7番(市橋)が仕掛けて来なかったんで、来るだろうっていうところでけん制を入れた。そのあとは(後続の)影が見えたんで踏ませてもらいました。(前々回まで)自転車が進まなかったんで、(前回の)平塚でゼロからセッティングをし直してずっと乗っていた。それでいまのところ落ち着きました。(平塚の)最終日でも結果が出て、この追加が楽しみだった。(年末年始をともに1着で)サイコーですね」
 5番手の木村幸希は仕掛けられず、桑原大志はコースを探して2着まで届いた。
 「どうするのかと思ってたけど、木村君はリズムが折り合ってなかった感じがした。さすがに木村君の外は届かないかと。小川(勇介)君を見て、外に行けば自分が内だしっていう感じでした」


<4R>

 赤板で切った吉武信太朗は、坂本周作の巻き返しを突っ張って出させない。しかし、その際に坂本の前輪を払って落車させてしまう。接触した佐藤雅彦も落車。そのままペースに入れて駆けていく吉武に対し、最終ホームから伊藤稔真が強烈ダッシュで襲う。山内卓也は離れ、2コーナーで出切った伊藤の番手には吉武がはまって直線へ。伊藤を交わして吉武が抜け出すも、その後ろで車間を切っていた岩津裕介が詰めて一気に突き抜けた。
 「初手の並びも考えていたし、吉武君が後方に下げていい感じに踏んでくれた。いいペースで踏んでいたし、ホームで仕掛けてきたのが1人だったのも見えたから4コーナー勝負だなと。吉武君が踏める態勢を取れていたし、ラインで決まると思って間合いだけ取っていた。落車を避けるのに脚を使っていたし立川は重いですね」
 山下一輝が岩津に続いて2着に入る。
 「(吉武の)失格は残念ですね。(自分の)前回の失格の仕方が悪かったし、発走前からドキドキしましたね。落車明けでフワフワしたけど、いい着を取れたしなんとかなりそう」


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渡辺正光選手
渡辺正光選手
 新年早々3連単80万円超のビッグ配当が飛び出した。畑段嵐士が前団を切って、小林泰正らの関東ラインを受ける。7番手まで下げた竹山陵太だったが、打鐘3コーナーからカマして主導権。畑段の反撃に合わせて最終バック中団から小林がまくり上げるも、中村敏之輔に止められてしまう。ゴール前は横一線の勝負となったが、北日本ライン3番手を回っていた渡辺正光(写真)が竹山と中村の中を割って突き抜けた。
 「竹山さんがうまくタイミングを取って行ってくれました。3番手で余裕はありました。肩鎖関節脱臼明けで不安はありましたけど、走った感じは問題なさそうですね。外は乗れていなかったですけど、練習はしていたので」
 畑段の仕掛けに乗って直線で外を踏んだ藤木裕が2着に強襲。
 「(畑段)嵐士はいつどんな時でも前々に攻めてくれるから、付いていくことに集中していました。(最終)4コーナーからは嵐士が踏まないコースを踏もうと思っていました。(前々回の)伊東から良くなって、前回の広島記念も準決に乗れたので良くなっています」


<6R>

荒井崇博選手
荒井崇博選手
 金ヶ江勇気が打鐘手前で先頭に立ち、荒井崇博(写真)、中村雅仁まで出切る。4番手は単騎の立花成泰と高橋築の併走。金ヶ江もそのままペースを上げるが、後方から根本哲吏が反撃に出る。最終1センターで根本をけん制した荒井が、今度は番手まくりを打って期待に応えた。
 「(根本を)止めにいったけど、止まる雰囲気じゃなかった。自分の中じゃ高橋君が1回切るっていうのは頭になかった。あとは、まぁ前(金ヶ江)が走りやすいようにと」
 根本が荒井に合わせられると、岡部芳幸は最終2コーナーで俊敏に切り込んで荒井に続いた。
 「金ヶ江君が主導権を取れば、(荒井は)ほぼ番手から出ていくだろうと。そしたら中村君のところをっていう感じでした。根本君が全部やってくれた。自分はもうちょっと楽にっていう感じですね」


<7R>

 前受けの池野健太はいったん後方に下げて打鐘からの巻き返し。2センターで出切った池野の番手で稲毛健太は、大きく車間を切って別線をけん制する。ギリギリまで前をかばって徐々に詰めて行った稲毛は、寸前で交わして池野を2着に残した上で1着を手にした。
 「(カマシの方が)決まると思っていた。押さえ先行ではもたないし、次につながるレースをしてもらおうと思っていた。(直線の)30メートル線までは抜かないようにと。自分も気持ちがわかるんで、(最終)4コーナーで並ばれたら力が抜けちゃう。(番手は)普段風を切ってるぶん楽ですね。(前々回の)佐世保が終わってから練習ができたので状態はいいと思う」
 打鐘から全開で踏んだ池野健太が、好援護を受けて2着に逃げ粘った。
 「あれだけ点数をもっている自力を付けているので、自分の気持ちを見せないとと思っていた。一番やりやすい並びになりました。だいぶタレたので後ろの先輩のおかげです。立川にしては風は吹いていないけど、バックで風を感じました」


<8R>

山中貴雄選手
山中貴雄選手
 嶋津拓弥が切った上を打鐘で藤井昭吾が叩くが、前受けから引いて態勢を整えた阿竹智史が力ずくでカマして主導権を奪取。最終ホームで出切った阿竹を、同期の山中貴雄(写真)が番手で余裕を持って援護しながら直線で抜け出した。
 「阿竹さんにすべて任せていた。踏み出した時に勢いが違ったので、出切ってからはワンツーを決めたいなって思っていたんですけど。3番手(大屋健司)が強かったですね。とくになにか変えたわけじゃないですけど、最近は生活リズムもいいので調子はいいのかなって」
 久々の積極策に出た阿竹智史は、ゴール前で失速して3着。
 「車番的に中団が取れると思っていたんですけど、誰も出なかったので前からになりました。自分の嫌いなペースじゃなかったので出切るまでは良かったんですけど、バックからがキツかったですね。久々の先行だったので最後は急にタレた感じですね。新年一発目で先行するとは、自分でも思っていなかった」


<9R>

河村雅章選手
河村雅章選手
 早めに動いた小原丈一郎が、坂井洋に併せ込んで赤板を迎える。小原が打鐘手前から再び踏み込んで主導権を握ると山田裕哉が番手で粘る。隊列が短くなったところを坂井がスパート。最終2コーナー手前で坂井、河村雅章(写真)まで出切るが、山崎充央は付け切れない。3番手に入った小原以下を大きくちぎった両者のゴール勝負は、番手の河村に軍配が上がった。
 「坂井君は踏み出しがすごくいいんで、そこをしっかりと付いていかないとっていうのはありました。強いんで抜くのもキツいかなって思ったけど、自分の自転車が出た。脚の状態もすごくいいですね」
 「なんとか2人抜いて、地元の意地は見せられたかと」とは、山崎充央。ラインの3番手で連結を外したものの、5番手で立て直し直線で追い込む。ゴール前で小原、山田を交わして3着に入り、3連単は1番人気で決まった。
 「あれ(坂井の踏み出し)に付いていけたら、この点数じゃない。107、108点はあるでしょう。あれがいまの脚力。俺の精いっぱい」


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 村上義弘がスタートを出て人気の近畿ラインは前団。赤板目がけて大谷靖茂が踏み込むと、南潤は突っ張る。それでも大谷は強引に叩きに出るが、主導権をキープしたのは南。大谷は後退して、最終1センターから花田将司が仕掛ける。が、花田は中団まで。逃げる南と車間空けた村上が、きっちりと交わした。
 「初戦でもあるし、(南)潤が力を出し切れないレースよりも、みんなが力を出し切れるレースを選んでくれた。潤に感謝です。潤が気迫の面でも上回っていたし、しっかり見て駆けていた。潤は点数を落としているけど、こんなものではない。脇本(雄太)に追いつく素材を持った選手だし、これからの成長が楽しみ。潤が頑張ってくれたし、(筒井)裕哉が番手を回してくれて責任感があった。ワンツースリーで最高の形になった」
 別線に先頭を明け渡すことなくレースをつくった南潤が、2着に粘り込んだ。
 「感触は悪くなかったし、脚を使ったけど残れた。初日は特別風が強いとは思わなかった。直線が長いので、そこを意識して走れました」


<11R>

鈴木庸之選手
鈴木庸之選手
 周回中、中団にいた鈴木庸之(写真)は、赤板手前から後方の南関勢をけん制する。それでも蒔田英彦が2コーナーから踏み込むと鈴木は素早く反応。最終ホーム手前から仕掛けて、スピードの違いで逃げる蒔田を2コーナーでとらえる。ラインを上位独占に導くロングまくりで鈴木が押し切った。
 「蒔田さんが(打鐘の)2センターで流していたので、とりあえず勢い良く行って掛かり次第では外併走でもいいかなって感じでしたね。競輪祭くらいからラインで決まっていなくて、引っかかっていたので今日(初日)は決めたかった。レース中も軽く感じたし、硬くした車輪もいい感じですね」
 鈴木ライン3番手の武藤篤弘が、ゴール寸前で柴田洋輔を交わして2着に上がった。
 「鈴木君が強かったです。自分も付いていって、直線勝負をして前を抜けたので悪くない。今回から新車に換えて、冬場で重い中でも前を抜けているので悪くないですね」


<12R>

鈴木竜士選手
鈴木竜士選手
 郡司浩平、菅田壱道と切ったところで、平原康多は打鐘の3コーナー過ぎにスムーズに押さえて主導権を握る。一本棒の8番手になった清水裕友は反撃のタイミングを失って、平原が徐々にペースを上げる。3番手キープの菅田は空いた車間がなかなか詰まらず、最終2コーナーからまくった郡司も不発になる。番手で願ってもない展開が訪れた鈴木竜士(写真)が、平原を楽に差し切って新年の地元記念を1着スタート。
 「(平原の先行に)シビレました。めちゃくちゃ強かった。あそこから先行してくれる平原さんの気持ちが伝わってきたし、僕も感じるものがありました。僕はただ付いてただけ、平原さんが全部やってくれました。(前検日の)昨日からバンクの重さも体の重さも感じないので、(自分の状態は)いいのかと」
 「先行になるかもしれないっていうのもあったんで、自分のなかではビックリはしてないです」とは、先行策で別線をクギ付けにした平原康多
 「(前受けの)清水君が突っ張るそぶりをしてから引いたんで、(自分が)1回出てからは(清水は)来ないと思った。(グランプリを)ワッキー(脇本雄太)と走って、この3日間いろいろ考えることもあった。新年になって気持ちを切り替えてやれていると思います」