『松戸競輪開設71周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:8月21日

 松戸競輪場で開設71周年記念「燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯(GIII)」が、8月21日に始まった。一次予選から33バンクで白熱のバトルが展開された。初日のメイン、特選では新田祐大が突っ張り先行でレースを支配して、番手の佐藤慎太郎が追い込んで勝ち星を挙げた。22日の2日目には二次予選の7個レースで勝ち上がりが争われる。
 松戸競輪場では緊急事態宣言の発出に伴い、無観客での開催となりますので、ご理解をお願いいたします。テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

<1R>

佐藤博紀選手
佐藤博紀選手
 赤板の1センターで強引に叩いて出た林大悟と荒井崇博が連結を外して、主導権を握った林には近畿コンビが続く。5番手で態勢を整えた佐藤博紀(写真)が、最終2コーナーまくりで前団をのみ込んだ。
 「前回(西武園)は落車していたけど、体は走ってみた感じは問題ない。あとは気持ちだけですね。林君も堀(僚介)君も積極的なタイプだったのでタイミングを見て様子を見ながらいこうと思っていた。窓場(千加頼)君のヨコを通過する時に気をつけながらいきました」
 佐藤博マークの佐藤康紀は窓場にさばかれ、逃げた林大悟が2着に残った。
 「初手は理想的だった。切った瞬間に行こうと思ったけど、前の2人も気合が入っていたので、自分のタイミングで行きました。(堀に)後ろに入られたのもわかったし、脚はいっぱいでした。掛かっていない感じがあった」


<2R>

 神奈川勢が主導権。3番手は金野俊秋を制して、湊聖二が確保する。赤板2コーナー手前から末木浩二が巻き返し、逃げる松坂侑亮に襲い掛かる。大塚玲が外に振ると、空いたインを進出した湊が番手を奪う。小林大介は末木を追わず、最終バックで松坂をねじ伏せた末木に切り替えた湊が追い込んで1着。
 「末木君が突っ張るか、引いて巻き返すかのどちらかと思っていたので、それに合わせて動こうと。金野君にすんなり3番手にいかれるのもあれなので、遠慮なくこだわった。末木君がすんなりいくと思ったら、松坂君もいい掛かりで大塚君のけん制もあったので、判断が難しかった。最後まで踏めました。落車の影響はない」
 湊とは別で単騎になった山形一気が、5番手から外を伸びて結果的に徳島ワンツーでの決着になった。
 「作戦はノープランで、最悪まくろうと思っていた。内に包まれる感じで自力を出せなかったけど余裕はあった。ただ、伸びはもう少し欲しい。レースを見てしまったし反省ですね。脚はめちゃくちゃいい感じではなかったけど、修正はできると思います」


<3R>

 前受けの池田勇人が青板のバック過ぎに高橋和也を突っ張り、両ラインでもつれる。そのタイミングを晝田宗一郎が逃さずに仕掛けて、赤板2コーナー手前で先頭に立つ。晝田ラインの3車が出切り、中団は池田が収まる。晝田が後続を一本棒にして駆けて、番手の岩津裕介にとっては絶好の流れ。岩津が余裕をもって抜け出した。
 「別線が脚力を消耗し合ってたんで、自分たち楽に出られたんでラインで決まるかなと思った。最後に藤岡(隆治)さんが(2)センターくらいで差し込んでたんで、内に誰かが来たんだろうと。体の方は悪くないし、いい感じです。ただ、なかなかこんなに人気になることがなかったんで緊張しました」
 中四国3番手の藤岡隆治が2着。ラインでの上位独占をメイクした晝田宗一郎が、重責を果たしてホッと胸をなでおろす。
 「後ろからだったらセオリー通り切って、(別線を)出させないでと思ってた。そしたら前がやり合ってくれた。でも、自分自身がめちゃくちゃ重かったし、最終ホームではいっぱいだった。(ここまで)ほぼ思ったような練習ができなくて、外では1回しかやってない。感覚がズレてるかなっていうのがあります」


<4R>

 赤板過ぎに先頭に立った渡邉雄太後位に、才迫開が飛び付いて岡本英之と併走。前団の隊列が短くなったところを真船圭一郎がカマす。3番手に入った渡邉は、車間を詰める勢いで最終バック手前からまくって1着。
 「5番(才迫)も結構、踏んでいたので、突っ張られるかなと思ったんですけど後ろで止まったので粘りかと。先行も頭には入っていましたね。真船さんがカマシしてきたので、1回出させた。赤板からずっと踏んでキツかったですね」
 併走を踏み勝った才迫開が、渡邉を追いかけて2着に入った。
 「後ろだったらある程度ペースをつくって踏んで、(渡邉が)落ち着いてきたので引けなかった。小回りなので遅れないようにと思っていました。いつもと違うことをしたので、勉強のつもりで胸を借りた」


<5R>

竹村勇祐選手
竹村勇祐選手
 切って出た吉田茂生の上を北日本ラインが出る。近藤夏樹は7番手に構えて、一本棒の隊列で橋本智昭が駆ける。最終2コーナー手前から吉田がまくりを打つと、竹村勇祐(写真)が絶妙なブロックで止める。粘り込む橋本を交わした竹村が1着。
 「吉田君が強いので、4番手にいたから止めないといけないなと。自分的には車間を詰めた時の手応えは行かれたと思ったが、自分の感覚よりも自転車が進んでくれた。いいレースができたと思う」
 吉田のまくりが不発であおりを受けた山口泰生だったが、直線で鋭く伸びて逃げた橋本と2着を分け合った。
 「(吉田が)レースをつくってくれた。中団を確保してくれて仕掛けてくれてダメだったけど、ラインのために頑張ってくれた。最後は当たらないように入ったけど。見ながら入ったので、少ししか踏めずに踏み込みが遅れましたね」
 逃げた橋本智昭は、写真判定の末に山口と同着。
 「最低限の一次予選をクリアできたので良かった。残りは力の限り頑張りたい。緊張して感覚はわからなかったけど、踏めているので悪くないのかと思います」


<6R>

嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手
 嘉永泰斗(写真)が石井洋輝を突っ張り、青板3コーナーから激しい主導権争い。赤板2コーナー手前で嘉永が合わせ切るが、篠原龍馬がタイミング良く仕掛ける。合わせる嘉永を叩いて、篠原が先行。坂田章は続けず、番手に嘉永が入って最終回。嘉永が力を振り絞りバック手前からまくりを打ち、粘り込む篠原をとらえた。
 「作戦通りの感じでした。もう石井君は出させたくなかった。初手から(石井を)後ろに置いて、押さえに来たら全部突っ張るつもりでした。篠原さんまで突っ張り切れたら良かった。(石井を)突っ張り切ってホッとしているところがあった。ただ自分のデキも悪くないし、(島田竜二と)ラインで決まったんで良かった」
 果敢に攻めた嘉永に続いた島田竜二が流れ込んで2着。同県の後輩をたたえて、大粒の汗をぬぐう。
 「展開がすごいキツかったです。後ろに加倉(正義)さんも付いていたし、(嘉永が)いいレースをしてくれた。最後もしっかりと差し切ったんで、100点のレースですね。(嘉永)泰斗のおかげです」


<7R>

根田空史選手
根田空史選手
 後ろ攻めから飛び出した野口大誠を市川健太が内からすくって赤板の2コーナーで先頭に立つ。前受けから後方まで下げていた根田空史(写真)が反撃開始。最終ホームで市川を叩いて主導権を取る。マークの春日勇人は離れて、根田のひとり旅。後続を大きく引き離して圧勝した。
 「メンバー的にも駆けやすかった。単純に前を取れたら前で、あとは自分のタイミングで詰まったらゴーという感じで。バンク自体が重い走路で、フレームも初速が出なくてスピードに乗ってからは伸びていく。新車は踏み出しと体のタイミングを合わせれば大丈夫。疲れも大丈夫ですね」
 第2先行の形になった市川マークから金子真也が2着に入った。
 「野口君も(市川と)同じことを考えていたと思うし、根田君が1人で飛んで来てくれたので良かった。(最終)ホーム過ぎか1コーナーぐらいから自分で出ようかなと思ったんですけど、市川君も伸びていった。調子は普通くらいですね」


<8R>

稲毛健太選手
稲毛健太選手
 赤板前に飛び出した嶋田誠也が、青野将大に合わせてペースを上げる。いったん3番手に収まった青野は、打鐘の2センターからスパート。あっさり嶋田を叩いて逃げる。これに反応した稲毛健太(写真)がそのまま力づくでまくり上げると、懸命に抵抗する青野を直線で抜き去った。
 「もう少し嶋田君が早く来てくれればやりやすかったが、来るのが遅くて(青野に)中団を取られた。引いてからでもなんとかなる距離だったので引いた。(最終)ホームで青野君が行かなければ行こうと思っていた。先に行かないとラインで決まらないから。車の出は悪くなかったけど、道中は重たかった」
 青野将大は持ち味の先行勝負で2着に粘り込んだ。
 「ホームとバックを取って先行できた。展開的にやりやすかったけど、展開をつくったわけじゃないのでたまたま。33(バンク)で1周なので粘りたかったけど、稲毛さんが強かった。踏み直すほどペースを上げられなかった」


<9R>

野口裕史選手
野口裕史選手
 大石崇晴が押さえて出るが、古川貴之がインで粘る。隊列が短くなったところを、野口裕史(写真)が赤板手前から踏み込んで主導権を握る。最終2コーナーで4番手で大石と古川が重なり、野口ラインに流れが向く。番手から詰め寄る大槻寛徳をわずかに退けた野口が押し切った。
 「昨日の前検日に練習をしたら相当キツかったけど、今日(初日)の朝は楽でした。ただ、レース内容が…。大石君頼みというか、自分で行けば良かった。そのあともすぐに行く時に、(実戦が)久しぶりだったので(前のラインに)ピッタリ付いていってしまった。車間を空けてドーンと行ければ良かった。(欠場明けで)体力が落ちているんですけど、いまやれることを精いっぱいやりたい」
 番手の大槻寛徳は、好展開も微差の2着にこう振り返る。
 「(野口に付いて)みんなが言うほど、そこまでいっぱいにはならなかった。けど、自分の感覚で抜きにいったら出なかった。自転車が出てない。(自転車を)いじります。セッティングもあるし、体に力が入らない感じがある。しっかりと修正したい」


<10R>

 樋口開土は中団の岩本俊介にフタをする形から、赤板過ぎに木村幸希を叩いて出る。すかさず反撃に出た岩本は、樋口を打鐘過ぎに強引に叩いて主導権を奪う。ライン3車でしっかり出切って、4番手以下を大きく離す。完全に南関勢のペースとなり、岩本がそのまま力強く押し切った。
 「もっと後ろに置かれるかなと思ったけど、スタートでいい位置を取れた。長い距離を踏めて手応えは良かったですね。ホームでも重くて(樋口が)外併走もキツいと思って、引かないであの位置にいた。前回のオールスターはいい薬になりましたね。うぬぼれていたわけじゃないけど、自信をもっていってあの結果だった。今日(初日)に関しては良かったですね。今はどういうレースをするかが大事だと思っているし、それがGIにもつながっていくと思う」
 好マークから迫った中村浩士だが、逆転はならず。岩本の強さをたたえる。
 「後手、後手に回ったらこのバンクは厳しいので、あの仕掛けになった。上位陣と戦っていろいろな選手の後ろを回りましたけど、ここで仕掛けるだろうっていうところで仕掛けてくれた。(南関ラインで)ワンツースリーが決まって南関を盛り上げられたと思う」


<11R>

 青板の3コーナーで前に出た中川誠一郎は鈴木謙太郎を出させず、そのまま先行策に出る。鈴木は中団の4番手に入り、前受けから下げた南潤は後方7番手で最終ホームを通過。2コーナーからまくり上げた南だが、車は思うように進まない。鈴木も前との車間は詰まらず、中川ラインで上位独占の態勢。最後は番手の橋本強が、粘る中川をゴール前でとらえた。
 「南君が前を取って2周半で突っ張ると思ってた。そしたら下げて中川さんが駆けるなと思ったから踏み出しに集中していた。スプリントで戦っている人なので、駆け引きがうまいですね。中川さんがどんどん掛かっていてまくられる心配はないと思った」
 2着の中川誠一郎は、先行で長い距離を踏み切った。
 「まさか後ろからと思っていなくて。33(バンク)で久しぶりに押さえたから誘導のラインが不安でした。中団がもつれていたから先行しようと。バンクコンディションが自分向きではなかった。まさかの先行でしたね。踏む距離が長かったので2着で勘弁ですね。疲労感は否めないが、モガくと悪くない」


<12R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 前団に構えた新田祐大は、押さえに来た黒沢征治とのスピードを見極めながら青板の3コーナーから突っ張って敢然と風を切る。新田が主導権をキープして、佐藤慎太郎(写真)、佐々木雄一、永澤剛とラインが崩れることなく追走。後方の松浦悠士は打鐘から仕掛けるが、外に浮いた吉田拓矢の動きに小休止。最終ホームを通過して、2コーナーで6番手から松浦が再度、踏み込む。しかしながら、逃げる新田の番手の佐藤が、ブロックして松浦のスピードが鈍る。ハンドル投げで佐藤が勝ち切った。
 「(新田が)スケールの大きいレースをしてくれてうれしいです。今日(初日)の僕の1着は新田の頑張りに尽きます。気持ち的にもひとまわりスケールが大きくなって帰ってきてくれてうれしい。自分は(松浦のまくりを)止められる場所じゃなかったけど、無理やり対応した」
 吉田の動きで一度はスピードを緩めた松浦悠士は、再加速のまくりで2着。ただ、地元の和田健太郎とのタッグだっただけに、納得のいかない顔をする。
 「新田さんが突っ張るとは思ってなかったです。新田さんのいつものスタイルなら、踏ませての中団なのかと。(自分が仕掛けて)行こうとしたら、吉田君が仕掛けそうな雰囲気があった。それでちょっと見てしまった。踏んだりやめたりしたわりには出たかなと。でも、まくり切れてないし、和田さんを連れてあんな競走では悔いが残ります」
 4車で結束した北日本ライン。先頭を務めた新田祐大は、4着に沈んだものの2周半を駆ける積極策で力をアピールした。
 「残り2周半の前から、ほかのラインが動き始めた。それを見て自分の力を出すレースをやってみました。感覚は悪くないと思う。残り1周半から1周のところで松浦が見えたんで、仕掛けて来たのかなと。結果としてそれで早い段階でスパートをしてしまった」