『松戸競輪燦燦ムーンナイトカップ(GIII)レポート』 最終日編

配信日:6月13日

 松戸競輪場でナイター4日制シリーズとして開催された「燦燦ムーンナイトカップ(GIII)」は、6月12日に最終日が行われた。S級決勝は、単騎で9番手と絶対的に不利な態勢もモノともせず脇本雄太が豪快なまくりを決めてダービー王の貫禄を見せ付けた。また、ガールズケイリンの決勝は、早めの巻き返し策に出た児玉碧衣を日野未来がゴール前で捕らえて嬉しい2度目のVを飾った。

決勝戦 レース経過

 号砲で阿部拓真が出て、高橋晋也-阿部の北勢が前受け。3番手以下は菊池岳仁-久木原洋-横山尚則-真崎新太郎の長い関東勢が占め、7、8番手に青野将大-加藤圭一の神奈川勢、単騎の脇本雄太は最後方で周回を重ねる。
 青板で神奈川コンビが上昇を開始。青野は菊池の外で併走してから再度踏み込んで3コーナーで高橋を押さえて先頭に立つ。高橋が3番手に入り、5番手に菊地、脇本は相変わらず最後方に位置したまま打鐘。高橋が猛然とスパートし、2センターで青野を叩いて先行勝負に出る。そこを関東勢が巻き返して一気にペースが上がる。菊池が口の空いた3番手に入ってから再度高橋を襲う一方、1センターで敢然と踏み出した脇本が2コーナーから加速して物凄い勢いで迫ってくる。阿部のけん制で不発に終わった菊池の煽りを受けた脇本だったが、こらえて直線山下ろしでひと伸び。粘る高橋をゴール寸前で逆転した。
脇本雄太選手
脇本雄太選手


 今年のダービー王・脇本雄太(写真)がまたもや松戸の燦燦バンクを熱狂の渦に巻き込んだ。「あの時のダービーかと思うくらいの大声援だったし、展開もそれに近かったので思い出しました。声援が大きくてうれしかった」。令和元年に行われた松戸の日本選手権競輪では完全Vの偉業を達成。今回も4日間異次元の走りで圧倒し、パーフェクトの優勝。決勝では単騎9番手からの豪快なまくりにファンの興奮も最高潮に達していた。
 「(初手は)中団が良かったけど、みんなSが早い。9番手だったけど、慌てずに自分が仕掛けたいところから行こうと。菊池君の煽りや、自分の行きたいタイミングのところで真崎さんの離れたのも見えた。それは仕方ないなって。最後の最後まで(1着の)自信がなくてハンドルを投げたところで届いたと」
 レースでは常に包囲網を敷かれる存在。決勝でも一番後ろからの巻き返しになったが、動じることなく自分の力を信じて仕掛けた。
 「(開催中は)日に日に(体が)重たくなっていたので、不安だったが、ラスト1回。気持ちだけで走った。展開を作ることは下手だったけど、力ずくでいった。苦しい展開だったけど、なんとか届いて良かったと思う」
 東京五輪まではナショナルチームの活動で年間に出走する本数は限られていたが、今年からは競走間隔、調整面など、ここ数年経験したことのない未知の領域に踏み込んでいる。今後もファンの期待に応える走りを求めて全力疾走が見られそうだ。

 4日間のシリーズを通して主導権を握った高橋晋也。「30メートルラインでは獲ったと思った」と脇本を苦しめたが、悔しい2着となった。「今までの自分なら2着でやったーだけど、今回は悔しい」。
 「いろいろと考えたが、結果、いい形になった。連日に比べると距離が短いし、残れると思ったが、脇本さんとの力の差が大きかった。ただ脇本さんを苦しめられたのは自信になった。前回の川崎では脇本さんの相手にならなかったが、今回は苦しめようと思っていた。脇本さんは先行屋、自力屋として憧れの選手。今開催はすごいい収穫の多い開催だった。またイチからやり直します」と、今後の活躍に期待が膨らむ形でシリーズを終えた。

 高橋晋也に続いた阿部拓真。昨年12月の広島以来でGIIIの決勝に進出。前回と同様に3着という結果だったが、自身が感じたことはまた違ったもののようだ。
 「菊池君が構えてくれた分、いい展開になりましたね。高橋君に踏み出しで口が空いて、余裕はなかった。脇本さんを止めるのは難しかったですね。大きく外に振れば、脇本さんが膨らむとは思ったけど、技量不足です。悔しい3着ですね。番手絶好だったので、脚があれば、先着できたと思うし、高橋君も差せたと思う。まだまだ力も技も足りない。脇本さんとはなかなか戦えないし、高橋君と脇本さんのスピードを体感できたのは良かった」





ガールズ決勝戦 レース経過

 スタートの早い篠崎新純が出て行って正攻法の位置を確保。その後位に1番車の奥井迪が入り、日野未来が続く。児玉碧衣はその後ろ4番手で、以下は青木美保、高尾貴美歌、飯田風音で周回。
 初手で位置が取れなかった飯田が赤板2コーナーからダッシュ。合わせて踏み出す奥井を3コーナー過ぎに叩いて主導権を奪う。奥井は2番手に入り、その直後には早くも児玉が上がってきていた。篠崎は車を引いて3番手に入れる状況だったが、児玉は迷わずそのまま飯田に襲い掛かる。察知した飯田も踏み上げてモガき合いになるが、2コーナーでは児玉が叩き切って先頭に。一気に後続を引き離した児玉だったが、追って仕掛けた日野のスピードがいい。飯田を交わして児玉を追おうとした奥井を制して児玉に迫った日野。粘る児玉をゴール前で捕らえてみせた。
日野未来選手
日野未来選手


 日野未来(写真)が児玉碧衣、奥井迪らの強豪を相手に金星を挙げ通算2度目の優勝を飾った。松戸は競輪選手としてデビューする前からイベントに出演するなど縁の深い競輪場。「応援してくれた人たちがいたのでうれしかった。前回、松戸にきたときは成績が悪くて、今回は1着スタートでこの成績なのでうれしい」。
 「ジャンで飯田さんがすごいダッシュで、奥井さんを追っかけようと思った所で児玉さんがシュっと行ってすごいスピードだった。奥井さんと児玉さんで併走して篠崎さんの前が空いていて、そこしか覚えていなくて。強い人が前にいて、意識するといつも勝てないので、意識せずに外しかないと思って踏んだ。児玉さんがものすごいスピードで、車間を詰めて行って後ろ姿が見えた。練習のバイクで引っ張ってもらっていた時のスピード感覚で、その練習は得意だったので、必死に踏んだ。差した感覚があって、抜けたと思ってうれしかった」とゴール直後は優勝を確信し、右手を突き上げた。
 「今年は競輪祭(ガールズグランプリトライアル)が目標。そのためにも賞金を積み重ねられて良かった。(競輪祭に)出るのは当たり前で、優勝目指したい」と、明確な目標に向かって突き進む。

 人気を集めた児玉碧衣はまたも4日制の開催を制することはできなかったが、力勝負で全力を出し切った。
 「初手の位置は奥井さんが前で飯田さんが後ろでジャンからいくしかないなと。飯田さんがジャンで動いていったものの、奥井さんも前に出ていたし、飯田さんもダッシュ良くて前半からかなり踏まされた。前に出たが、後半はバタバタして自転車が進まず。奥井さんとの踏み合いか飯田さんとの踏み合いになるとは思っていた。それより後ろのことは気にしていなかった。しっかりとジャンから動けてダッシュ良い飯田さんと連日先行している奥井さんの上をいけて、前に出られたのでそこは満足」
 今年はグランプリ女王復権などに注目が集まるが、「このレース勝ちたいとかこのタイトル取りたいって目標を掲げると、取ったときにモチベーションが下がってしまうからあえて目標は掲げずに目の前に一戦、一戦に集中していきたい」と、今後も目の前のレースに集中していくことを誓った。

 3着に入った奥井迪にとってはまた一つ課題の見つかるレースとなった。
 「ホームで碧衣ちゃんがきた所で怯んだのがもったいなかった。スピードが違いました。そこを強く強化しないと。完敗です。碧衣ちゃんと走れることで課題がみつかる。次はそれを生かして。平塚(6月29日初日のオールガールズ)でも碧衣ちゃんと同じグループなので。今回は一緒に走れて刺激もらったし、今後につながる」
 現在は賞金ランキングで4位の位置に付けているが、「あんまりグランプリを意識するよりも、一戦一戦、バックを取る競走をしていきたい」と今後も自らのレーススタイルを貫く。





次回のグレードレースは、第73回高松宮記念杯競輪が6月16日~19日の日程で岸和田競輪場にて開催されます。
SS班8名をはじめとして、全国各地から強豪が集結!概定番組は東西対抗形式で、勝ち上がり戦は東西に分かれて戦います。他のGIでは見られないメンバー構成となるので、大激戦が期待されます。

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