展開は二分戦だった。初手は村上義弘に加藤慎平、萩原操と続いた中部近畿が正攻法、兵藤一也と木村貴宏のコンビが中団四、五番手に構えた。佐々木則幸に室井健一、加倉正義、立花成泰と続いた4者が後攻めの形で、隊列は落ち着いた。 戦闘開始は赤板前。佐々木が早々とした始動で主導権を奪うと、兵藤が五番手、村上は七番手に置かれ、打鐘から最終ホームに局面が移った。村上が巻き返しを始め、これに佐々木が素早く合わせて両者は壮絶な叩き合いに。二角過ぎに加藤が自力発進すると、ハグれた萩原に代わって加倉がマーク。立花をさばいた兵藤が加倉を追って、V争いは加藤、加倉、兵藤に絞られた。加倉が差し切り、加藤が僅かに失速すると、両者の間から兵藤が2着に伸び切った。
赤板前から最終回まで、村上と佐々木で超ド級の叩き合い。直後に加藤の自力発進と、目まぐるしい展開が加倉にチャンスをもたらした。番手マンだけに「慣れてない」としながら、選択した位置は佐々木と室井、四国組の三番手。それでも、加倉は諦めなかった。立花と取り合うリスクを回避すると、最終バックでは加藤に切り替え、ゴール寸前で差し切ってみせた。久々に記念の優勝メダルを手にし、笑みの絶えない表情でヒーローインタビューを始めた。 「今日は欲を出して良かった。(加藤を)抜けると思った。自分で仕掛けるのはね。思ってはいないけど、行かなくてはイカンかったかな。ただ、まくっていたら、優勝は兵藤だったでしょう。最後は兵藤が中割りでくるか、外を踏んでくるか。(今回)一番脚があるのは兵藤と思って、警戒した。流れが見えて、余裕もあった。慎平とか、他の人の動きも全て見えていた感じ。前検日から『調子が良い』と言っていて、それが結果になったのが嬉しい。準決勝Cを乗り越えたのも大きかった。次はオールスター。ツキが残っているか分からないけど、体の手入れとか、しっかりと調整して頑張ります」
加藤は3着惜敗とあって、さすがに悔しそう。村上と佐々木の力比べが長引く流れに最終バックから自力を繰り出したが、またもや今年初優勝を飾れず「また村上さんに借りができた。あそこまで駆けてくれたら、自分が優勝するしかない。なのに…。申し訳ない、自分が情けない」。自身を責め立てた。
一方、兵藤は2着入線に満足気。位置のない戦いからゴール前で際どい勝負に持ち込む内容に、「2着で精一杯だったかも。しょうがない。何回か仕掛けようかなとも思ったけど、前がフワッとフワッと外に張ってきて。最後のコース取りもあそこ(加藤と加倉の間)しかない。それにしても、狭かった」。 村上は9着と大敗した。「不完全燃焼! 今日はおもしろくないレースになったけど、花月園はおもしろくなりそう。順調にきている」と、オールスターへ向け手ごたえだけはつかんだ様子だ。 佐々木も大混戦を誘った一人。村上に主導権だけは譲らず、「叩かれたら終わり。正攻法からじゃ、村上さん相手にレースにならない。もう、いっぱい、いっぱいでした」と振り返った。