『川崎競輪 アーバンナイトカーニバル(GIII)レポート』 最終日編

配信日:8月13日

 川崎競輪場で開催された「アーバンナイトカーニバル(GIII)」は、8月12日に最終日が行われた。激戦を勝ち抜いた9名で争われたS級決勝では、打鐘過ぎ2センターから仕掛けて一気に前団を飲み込んだ山岸佳太が押し切り。6月四日市に続く、通算3度目のGIII制覇を達成した。
 また併せて開催された「アーバンナイトヴィーナス(FII)」は、先行した中嶋里美の番手から内村舞織がまくりを決めて優勝を飾った。

決勝戦 レース経過

 号砲で藤木裕と五日市誠が飛び出すが、藤木が踏み合いを制して正攻法の位置を確保。これで伊藤信-藤木、山岸佳太-五日市、鈴木裕-大塚玲-佐藤龍二、片岡迪之-加倉正義で周回中の並びはすんなり定まった。
 青板3コーナーから片岡が上昇。赤板1センターで片岡が押さえた上を、さらに鈴木が押さえて先頭に。片岡と、内をすくってきた伊藤で4番手は併走になるが、打鐘で片岡は前団を叩きにいく。鈴木もペースを上げて両者で踏み合いになる一方、後方で構えていた山岸が2センターから巻き返す。ホームで鈴木を制して片岡が出掛かるが、2コーナーではその上を行った山岸の主導権へと変わる。五日市が続き、3番手には遅れ気味の加倉をドカして切り替えてきた鈴木。そこを伊藤のまくりが襲う。伊藤は好スピードで上がってきたが、3コーナーで五日市のけん制を受けて勢いが鈍る。このまま山岸を先頭に直線へ。マークの五日市と、中を割って伸びた鈴木が迫るが、山岸が押し切った。

山岸佳太選手
山岸佳太選手

 鈴木裕が赤板1センターから前に出て、打鐘前に伊藤信にすくわれた片岡迪之が前に踏んだところを山岸佳太(写真)は逃さなかった。2センターからカマすと、鈴木を叩いた片岡を2コーナーで飲み込み、6月四日市以来となる今年2度目のGIIIを制覇。勝負の大一番で明暗を分けたのは、精神的な余裕だ。
 「競輪祭(の出場権)や優勝を狙ってるから、みんな駆けたくないだろうし、バック本数は自分が一番持ってる。僕は四日市で優勝してたし、気持ちに余裕はありました」
 二次予選でも連係した五日市誠に対する信頼感も山岸の思い切った仕掛けをあと押しした。
 「五日市さんは絶対付いてきてくれると思ってた。二次予選で連係して、(最終)4コーナーで仕事してくれてたのも見てた。安心してました」
 優勝を狙いに行った四日市の優勝は追い込んでのもの。今回は力勝負を制しての結果に「自分のなかではスッキリした勝ち方だったと思う」と山岸は胸を張る。
 「GIIIは獲れるねってみんなに言われるんで(苦笑)。でもGIは出たり出なかったりで、活躍出来てないのは痛感してる。そこが目標ですね。あとは練習するだけです」
 これで今年はGIII優勝が2回。山岸が次に見すえるのはビッグレースでの活躍だ。

 片岡に叩かれた鈴木裕だったが、内を粘り強く踏んで加倉を飛ばすとバックで外を踏んで五日市の後ろに。直線では中を鋭く割って2着に突っ込んだ。
 「ずっと踏みっぱなしで体力がなくなりました。片岡君を突っ張ると山岸君に簡単に出切られちゃうと思って、どうしようか迷いながら走っていた。そしたら山岸君に出られてしまったので、夢中で追って山岸君ラインに切り替えた。伊藤君がまくってきて止まったから最後は内だと。3コーナーで迷わず内を踏めば優勝でしたね。外を踏む意識があった分、遅れてしまった」

 山岸マークの五日市誠にも優勝のチャンスはあった。
 「余裕がなかったし、抜けない。山岸君が出切った辺りから抜ける感じはしなかった。伊藤さんにまくられるのはマズイと思ってとりあえず振ったけど、練習と経験が足りないですね。展開も良くなったし、(山岸は)仕掛けどころを逃さず行ってくれた。付いて行きやすかったです。初めてこれでGI(競輪祭)に出られるので、そこに向けて準備したい」

 シリーズの気配は抜群だった伊藤信。山岸ライン目がけて1センターからまくったが、五日市のけん制を乗り越えることができなかった。
 「ジャンでしゃくったら片岡が行くかなと思ったけど、山岸も来てたっすね。バック踏んでる間に行かれたからキツかった。どっちが良かったのかはわからないけど、なかなかこういう(優勝を狙える)機会はないんで」

 地元でGIII初優勝を狙った大塚玲は8着。「判断ミスですね。詰まっちゃったから外を踏んだほうがいいかなと思ったら合わされた。甘かったですね」と山岸ラインにスイッチを狙った1センターでの判断を悔やんだ。





ガールズケイリン決勝戦 レース経過

 号砲で比嘉真梨代、内村舞織が飛び出して前団を占める。中嶋里美が内村の前に入り、最後方の高橋梨香が車を上げて4番手に入って赤板。
 比嘉、中嶋、内村、高橋、栁原真緒、荒牧聖未、増茂るるこの並びで、打鐘まで来て誘導は退避。スローペースの中、4コーナーで中嶋がスパートする。ホームで中嶋、内村と出切って、合わせて踏んだ比嘉が3番手の態勢に。5番手の柳原が仕掛けたのは2コーナーから。これを見た内村はすかさず番手まくりで応戦する。柳原は前とスピードが合って止まってしまい苦しくなる。3コーナーでは高橋が3番手からまくりに行き、終始柳原追走だった荒牧は内に入っていく。内村を先頭に直線へ。柳原がもう一度伸びるが、高橋、比嘉を交わすまでがやっと。内村が押し切って4日制シリーズを制した。


内村舞織選手
内村舞織選手

 主導権を握った中嶋里美の番手から内村舞織(写真)が番手まくりを放ち「アーバンナイトヴィーナス」を制した。
 「他力ではなく、自分で組み立てようと思っていました。準決勝で柳原(真緒)さんを差せなかったから、今日(決勝)は先に仕掛けるしかないと思っていたので。準決勝の負けを生かせましたね。去年(11月当所)の決勝は、(大久保)花梨とか(高木)真備さんと走って、何もしなくて終わったので、何かして4、5着ならっていう思いもありました。タテ脚も磨けているのかなって思います」
 今月末までが選考期間の競輪祭(ガールズグランプリトライアルレース)出場にも一歩近づいた。
 「今年も競輪祭に出たいですね。出て、しっかり戦えるようにしたいです。今月はあと松阪(FII)があるので、そこでもしっかり結果を出せるように頑張ります」
 同県の児玉碧衣を目標に、まだまだ結果を残す。

 人気を集めていた柳原真緒は、直線で内村に迫るも2着まで。
 「落ち着いていればギリギリ(内村を)差せたかもしれないですね。キレがなかったです。(今シリーズで)一番良かったのは準決勝ですね。4日制で疲れが出てしまったのかもしれない。でも、(児玉)碧衣さんとか梅川(風子)さんなら、あれを超えて行くと思うのでまだまだですね」

 内村の3番手から踏んだ高橋梨香が3着に入った。
 「7番車だし、初手は後ろからで追い上げて行こうと思っていました。6番(比嘉真梨代)と併走みたいになったからキツかったですけど、そこは気合でした」

 荒牧聖未は動けないまま6着に敗れた。
 「スタートは出てみてから、どうなるかって感じでした。何も自分からしないで終わったので、その反省を次に生かしたいです」




次回のグレードレースは、8月14日~18日の5日間、名古屋競輪場において「第62回オールスター競輪」が開催されます。
ナショナルチーム所属選手や、期待の若手選手など、競輪界のスターが勢ぞろいする今開催。
男子同様、ファン投票によって選ばれたガールズ選手による「ガールズドリームレース」(8/17土曜日9R)と「アルテミス賞レース」(8/15木曜日9R)も注目です!
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