『川崎競輪開設68周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:4月12日

 川崎競輪場を舞台に開催された平成28年熊本地震被災地支援・開設68周年記念・桜花賞「海老澤清杯(GIII)」は、11日に最終日が行われた。4日制の記念では初めてのナイターとなった今シリーズの決勝は、地元の郡司浩平が通算3度目の記念Vで桜花賞を制した。また、一発勝負での9レース「KEIRIN EVOLUTION(ケイリン エボリューション)」は、長島大介がまくりで勝利した。

決勝戦 レース経過

 号砲で迷わず前を取った浅井が正攻法に構えると、周回は浅井康太-中川誠一郎-稲垣裕之-椎木尾拓哉-渡邉雄太-郡司浩平-小原太樹-菅田壱道-永澤剛の並び。
 青板バックから上昇した菅田の動きに渡邉が続くが、この動きを内から稲垣がけん制する。2コーナー手前で菅田が切ると同時に渡邉も飛び出して打鐘前から主導権。先に動いた菅田は狙いどおりの4番手を確保する。一気にスピードが上がったことで内の浅井が踏み遅れ、6番手には稲垣が。これで浅井は後方8番手に置かれてしまう。渡邉がペースを落とすことなくハイピッチで飛ばすと、ホームからは郡司が徐々に車間を空けて後続の出方をうかがう。6番手の稲垣は2コーナー手前から巻き返すと、好回転で前団に迫ったが、引きつけた郡司がこれを3コーナーでブロック。一発で稲垣を仕留めると、惰性をもらって切り込んで来た椎木尾の動きには小原が冷静に対処する。稲垣を止めた郡司はそのまま踏み込んで地元(ホーム)記念初優勝。好追した小原と川崎コンビでワンツーを決めた。

郡司浩平選手
郡司浩平選手

 ウィナーズカップ初代王者に輝いた郡司浩平(写真)が、01年の高木隆弘以来となる地元勢の桜花賞制覇をグレードレース連覇で成し遂げた。
 昨年12月の佐世保記念では石井秀治に、そして今年2月の奈良では根田空史に記念初Vをプレゼントする先行策を披露。南関勢には欠かせないキーマンとなった郡司が、ホームバンクで主役の座をS班に渡すことなく演じ切った。
 「桜花賞は地元がなかなか獲れなくて、地元で期待もされていたんで最高の結果です」
 4分戦の細切れのなか、南関勢だけが3車のラインを形成。「郡司さんの前で走るのが目標だった」の渡邉雄太が迷いなく主導権を握ってグングンと飛ばす。最終ホームでは一本棒の展開。郡司は盤石の態勢を築くように、逃げる渡邉との車間を切った。
 「(別線に)粘られなかった時点で僕がしっかり番手でかばおうと思った。もしかしたらホームで(別線が)来るかと思ったけど、(渡邉)雄太も踏んでくれた。ただバックでは絶対に来ると思ったんで、車間を空けながらいつでも張れるようにはしていた」
 読み通り6番手からまくった稲垣裕之が抜群のスピードで迫ったが、郡司に焦りはなかった。車間を詰めながら稲垣をブロックすると、落ち着きはらった追い込み勝負から直線で抜け出した。
 「稲垣さんの勢いを止めながら、雄太には悪かったけど早めに踏ませてもらった。小原(太樹)さんが締めていてくれたのもありがたかったです」
 前述した奈良記念、トラック競技支援(田中晴基)、四日市記念(山中秀将)と2月は南関地区がGIIIを席巻。3月ウィナーズカップでは郡司が、ビッグ初制覇と南関勢に風は吹いている。
 「僕も番手を回らせてもらったし、できることをしようと。まだまだ先はあるんで気は抜けない。(平塚グランプリ出場権の獲得へ)一年間、そのつもりでやっている。まずは(GIを)獲るくらいのつもり、それで結果賞金で(グランプリに)乗れればいいけど。高いモチベーションで、そこ(GI)にピークをもっていけるように。(今年GII、GIIIを優勝して)あとひとつ」
 ビッグに続いて念願の桜花賞を手に入れた郡司の視界には、GI奪取の文字がしっかりととらえられている。

 大仕事をした郡司の後ろできっちりインを締めていた小原太樹が、陰の立役者。直線では踏み負けることなく2着をキープした。
 「自分のあれ(ミス)で壊さないようにと思っていた。(別線に)ごっそり行かれてしまうこともあるんで。冷静に郡司君の動きを見られたし、自分の仕事ができた。それでゴール勝負ができたのはよかったです」

 インを切って南関3車を受けた菅田壱道は、3着に追い込むも悔しがることしきり。郡司のブロックが誤算だった様子で唇をかむ。
 「郡司が前に踏むっていう頭でいたんで…。自分は郡司が前に踏む態勢しかとってなかった。優勝が見えただけに悔しい。脚を余した。郡司が横に振った時に、内が全部空いてたし優勝するんだったらそこでした」

 渡邉雄太は、地元ワンツーの大役を果たす先行策を初めての記念決勝の舞台で遂行した。
 「残りたかったですけど、いまの僕じゃ無理ってことがわかりました。3コーナーで郡司さんがめちゃめちゃ外にいたんで、そこは踏まないとヤバいと思って踏みました」

9R KEIRIN EVOLUTION(ケイリン エボリューション) レース経過



長島大介選手
長島大介選手

 国際競技大会のルールで争う「KEIRIN EVOLUTION(ケイリン エボリューション)」川崎ステージは長島大介(写真)がまくりで優勝した。大塚英伸が5番手を取った以外、初手は枠なりの並び。打鐘で動きはなく、誘導が退避すると先頭の和田真久留が最終ホームから一気にペースを上げる。すぐに大塚がカマしてきたが、和田はこれを簡単に合わせてそのまま逃げていく。すると、そこに長島のまくりが襲いかかる。長島は猛スピードで迫ると最終バックを先頭で通過。勢いそのまま先頭でゴールを駆け抜けた。
 「とりあえずスタートは(枠の)順番で。真久留君の先行だろうなと。それだったら追い込みで。誰か来てくれれば(和田が)かぶったところを自分が行こうと思ってたけど。大塚さんが行ったけど、突っ張ってしまったので。そこからは苦しかったけど、自分が上を走ってたから有利かと。真久留君のとこさえ越えれば何とかいけるかと。ただまっすぐ走れなかったですね。最近は状態が上がってきてるので。5月はダービー、地元の宇都宮記念があるから勝負なので。調子をピークに上げたい」

 初周から長島の後ろにいた吉田茂生が、最後までマークして2着に入る。
 「車番順で長島さんの後ろにいて、早めに行くならついて行こうと思ってたし、遅めなら自分で出ることも考えてました。武藤君が内をすくってきたときはヒヤッとしたけど。長島さんが行ったので、自分は追って行って。抜ければよかったけど。3コーナーで前2人が併走してたので、自分で行こうか迷ってしまいました。でも、2着ならやった方でしょう」

 脚色が良かったのは伏兵の飯塚隼人。最後尾から鋭く迫って3着に入る。
 「車番が外だから、一発狙いしかなかったので。ただ、だれかが行くだろうなとは予測はしてたし、前が行ったのが見えたので自分も踏みました。ディスク(ホイール)の方が車が流れるから良いですね。これで点数が上がりますね。競輪の方ももうちょっと頑張ります」

 和田真久留は地元の期待と人気に応えられず。「ほかの選手がもう少し動くかと思ったけど。皆の組み立てが淡白でしたね。大塚さんが前に出たいのか、どうしたいのかが分からなくて。ペースで踏んでたけど、長島さんが隠れてきた感じだったから、合わせ切れなかった。組み立てが甘いというか…仕方ないですね。競輪があるので頑張ります」と肩を落とした。

 大塚英伸は思い切って勝負に出たが、突っ張られて後退。6着に終わる。
 「(スタートで)2車拾ったけど(武藤に内をすくわれた)。あれがなければ(長島がまくって行った)あの位置だったんですけどね。(カマして)出切る予定だったけど、出切れないと思って。そこから下がればカンナっぽく番手に入れるかと思ったけどダメでしたね」