『平塚競輪開設72周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:4月10日

 平塚競輪場で開催されていた開設72周年記念「湘南ダービー(GIII)」は、4月10日に大会最終日を迎えた。12レースに行われた決勝戦はS級S班4人を始め豪華メンバーの激突で、夏を思わせる天候と同様の大熱戦に。郡司浩平を突っ張って平原康多がレースを支配し、番手の佐藤慎太郎が仕事をしつつ抜け出して、2月静岡に続き今年早くも2回目の記念Vを飾った。また、第6レースで争われた「第4回ガールズフレッシュクイーン」は、人気の尾方真生が2コーナーまくりで制した。

決勝戦 レース経過

 けん制気味のスタートとなり、平原康多が出かけるが、結局これを制して郡司浩平が正攻法の位置に入る。郡司-和田真久留-大塚玲、平原-佐藤慎太郎、山田庸平-井上昌己、古性優作-神田紘輔で周回を重ねる。
 青板3コーナーで古性が上昇開始。郡司は赤板で誘導を残したまま下げて正攻法の位置に古性となるが、この上を山田、平原の順で切り、2コーナーから平原が主導権を握る。平原ラインを追った郡司が山田をキメつつ3番手を確保かに、3コーナーから山田が内をすくってきてモツれる。態勢を立て直した郡司が外併走から最終ホーム入り口で巻き返して出ると、平原も反応良くペースアップ。1センターで車体が合うも、平原が出させず突っ張り切り、2コーナーで郡司は後退。郡司にピッタリ付けず佐藤の後位あたりで様子を窺っていた和田がすぐさままくりに転じ、これに古性も乗ってくる。しかし、和田は3コーーナー、2センターでの佐藤のブロックでダウン。和田の外を踏もうとしていた古性は咄嗟の判断で内に切り込んでいく。直線に入り、平原後位から佐藤が抜け出してV。山田をキメにいって絡んだ分伸び切れなかったが古性が粘る平原をギリギリで交わして2着に入った。


佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手

 会見場に現れた佐藤慎太郎(写真)は、開口一番、前を任せた平原康多への想いを口にした。
 「もうちょっと自分に余裕があれば、平原とワンツーを決められた。平原クラスの選手が、あれだけ風を切ってくれて、残せずに申し訳ない気持ちが強いです。自分が勝たないといけないって選手が、俺のことも考えたレースをしてくれたっていう気持ちが嬉しい」
 これまでビッグレースの舞台でも何度も連係してきた両者。超一流同士の、地区の垣根を超えた絆がある。それだけに、先行した平原を2着に残したかった。
 「(和田)真久留を目標にして、誰かがまくってくるんじゃないかって思っていた。そしたら結構なスピード差になるし、焦って踏んでしまった。内もうかつには空けられなかったので。冷静になれば、ワンツーを決められる態勢を作れたと思う。記念の決勝でそれぐらいの余裕がないと、これより上では厳しいと感じている」
 初日特選は古性優作、準決、決勝は平原の番手を回った。同地区の機動型に任せたのは、二次予選の一度だけ。与えられたメンバーの中で、勝つために常に最善の選択をしてきた。そのなかで、決勝戦は平原が気持ちの入った先行策に出た。再三、佐藤が仕事をして、地元勢を阻んだ。平原の気持ちに応えたいという想いが、地元勢の意地に勝った。
 「このレースを見て、北日本の自力が発奮してくれたらいいね。他地区の自力じゃなくて、自分たちがこれをやらないとって思ってほしい」
 北日本勢に奮起を促したのは、地区全体の先を見据える佐藤だからこそだろう。終わってみればオール連対。シリーズ3勝を挙げて、2月静岡記念以来のGIII優勝。デビューから四半世紀あまりが経った今でも、その輝きは増すばかりだ。
 「記念をなかなか勝てない時期もあった。そのなかでもトレーニングとか、レースに臨む姿勢だったりっていうのが、間違ってなかったって思える。新しい練習があれば取り入れるし、守る感じではないね。挑戦していきたい」
 佐藤が最前線で戦い続ける限り、漢字の競輪が衰退することは決してない。

 2着に入ったのは古性優作。後手を踏まされる苦しい展開のなかで、直線では山田庸平と火花散るデッドヒートを演じた。
 「まさか(初周で関東勢が南関勢を前に)入れると思わなかったので。郡司(浩平)君が後ろ攻めかなって思ったんですけど、入れた時点で難しかったですね。でも、チャンスはいっぱいありましたし、1コーナーでいこうと思ったんですけど、平原さんの掛かりがすごくていけなかったですね。2コーナーもいったんですけど、出なかったです。結局、初日が一番よかったですね。今日も(体と自転車の)一体感がなかったです」

 レースをメイクしたのは平原康多だ。久しぶりの先行策で佐藤の優勝に大きく貢献。清々しい表情で振り返った。
 「想定外のスタートになりましたね。前か前中団っていうのは考えていたんですけど。(打鐘で切る時に)あのペースでいって、来たら出させてって思っていたんですけど、遅かったので。スイッチが入りましたね。(佐藤)慎太郎さんといいレースができたと思う。あれで逃げ切れれば脇本(雄太)にも勝てるんでしょうけど、ダメでした。でも、慎太郎さんの優勝は自分の優勝みたいなものなので」





第4回ガールズフレッシュクイーン レース経過

 山口真未、杉浦菜留、吉川美穂、永禮美瑠、太田瑛美、尾方真生、西脇美唯奈での周回。
 打鐘手前まできて、山口が徐々に誘導との車間を開けていくなかで太田が上昇を始める。ジワジワ上がってくる太田に対し、山口も4コーナーあたりからペースを上げて応戦するが、太田が叩き切って最終ホーム手前から先行態勢に入る。太田には初手の並び通り尾方、西脇で続いてくるも、吉川が俊敏に西脇を阻んで尾方の後ろにスイッチ。叩かれた山口らも内に残っていて飛び付く形で、逃げる太田の後ろは2列併走となったものの、関係なく尾方が2コーナー外併走からまくる。すぐに太田を交わして先頭に立った尾方には吉川、そして杉浦が3番手に切り替えてきて直線へ。尾方のスピードは最後まで衰えず、2人の追撃を許さずにそのまま押し切った。


尾方真生選手
尾方真生選手

 尾方真生(写真)が、昨年の悔しさを晴らして『フレッシュクイーン』の座に輝いた。周回中は6番手の位置取り。先頭の山口真未は後ろを警戒してなかなかペースを上げずにいると、5番手の太田瑛美が最終ホームで叩いて出る。この動きを追った尾方は、外併走の形から2コーナーでまくり上げて先頭へ。尾方後位に飛び付いた吉川美穂が追いかけるが、尾方との差は全く詰まらない。尾方が力強く踏み直してVゴールを駆け抜けた。
 「太田さんが先行するかなと思っていたけど、少し外に浮き気味になってしまって迷っちゃった。でも、迷ったところで仕掛けられましたね。外併走をすることがあまりなくて、山口さんが内でヨコにいたので、いってしまえって思って仕掛けました。最終3コーナー、2センターと回して、そこから踏み直せました」
 昨年のガールズグランプリを始め、西武園で行われたフレッシュクイーン、ガールズケイリンコレクションなど、一発勝負のレースにはこれまでも数多く出走したが、どれも1着をつかむことができなかった。
 「単発レースはいっぱい走っているけど、1着が1回もなかった。展開は思っていたのと違ったんですけど、嬉しいです。平塚はやっぱり苦手かな。重かったです。もっと脚を付けて、年末(のガールズグランプリ)も出られるように頑張りたい。いわき平(のガールズケイリンコレクション)でも、まずは3着以内を目指して走りたいです」
 純粋な脚力はガールズケイリン界トップクラス。経験を積み、勝負強さを培えば、女王の座が見えてくる。

 最終ホームで尾方後位にスイッチした吉川美穂が流れ込んでの2着。
 「やっぱり(尾方)真生ちゃんが強いので、真生ちゃんより前の位置から展開したいと思っていました。真生ちゃんの仕掛け所に合わせていければって思っていたんですけど、太田さんが来ると思っていなくて。想定外でしたけど真生ちゃんの後ろに巧く入れたんですけど、2センター、4コーナーから追い込む脚がなかったですね。回転が上がったところからもうひと踏みできるようにしたいですね」

 スタートで山口真美後位の2番手の位置を取った杉浦菜留は、前がまくられると、最終バックで吉川後位に切り替えて3着に続いた。
 「山口さんがSを取るかなって思っていたので、番手が欲しいと思っていました。本当はもうちょっと早く切り替えたかったんですけど、(吉川)美穂さんも巧かったので。美穂さんがいった後も迷ってしまって巧く切り替えられなかった。(永禮美瑠と後輪が接触して)ちょっと緩んでしまったんですけど、そこからまた踏み直せたので。凄く緊張したんですけど、3着に入れたので」





次回のグレードレースは、川崎競輪場開設73周年記念「桜花賞・海老澤清杯」が4月14日~17日の日程で開催されます。
本開催は、守澤太志、吉田拓矢、宿口陽一、郡司浩平、松浦悠士、清水裕友のS級S班6名に加え、地元神奈川の白戸淳太郎、福田知也、内藤秀久ら充実したメンバーが勢ぞろいです。
GIIIに6名のSS選手が出走するのは珍しく本開催でも大激戦が期待されます。

3月31日時点の出場予定選手データを分析した、川崎記念GIII 「桜花賞・海老澤清杯」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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