『小田原競輪開設72周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:8月26日

 小田原競輪場で開設72周年記念「北条早雲杯争奪戦(GIII)」が、8月26日に幕を開けた。猛暑のなかでも初日から見ごたえのバトルが展開され、メインの特選は96期の同期ワンツー。深谷知広の先行を守澤太志が追い込んで幸先いいスタートを切った。27日の2日目は、初日特選組の9選手をはじめ、好メンバーによる二次予選で勝ち上がりが争われる。
 小田原競輪場では神奈川県への緊急事態宣言の発出に伴い、無観客での開催となりますので、ご理解をお願いいたします。テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

<1R>

 赤板手前で先頭に立った佐伯辰哉が先行態勢を取るが、6番手の早坂秀悟が巻き返して打鐘2センターで叩く。早坂ラインの3車が出切り、番手の杉森輝大に流れが向く。杉森は栗山俊介のまくりを張りながら、早めの追い込みで抜け出した。
 「余裕はあったので、明日(2日目)以降も問題なく走れると思います。早坂君には申し訳ないですけど、前に踏ませてもらいました。自力の感覚も脚の感覚も良くなっている。去年は落車が続いて苦しかったですけど、良くなってきていますね」
 茨城コンビに付けた地元の武田憲祐が、杉森に流れ込んで2着。
 「早坂君の得意パターンでって思っていました。わかっていてもキツいくらいのダッシュでした。杉森さんが踏んでくれたので2着に入れました。感じは悪くないと思います。初日をクリアできたんで、これをキッカケにしたいですね」


<2R>

岡光良選手
岡光良選手
 赤板手前で出た小森貴大は、緩めることなくそのままレースを支配して、後続を一本棒にして駆ける。久木原洋が4番手をキープ。阿部架惟都は打鐘の4コーナーから踏み込むが進まない。逃げる小森との車間を空けた川口公太朗は、詰めながら久木原のまくりをブロック。久木原マークの岡光良(写真)は、最終3コーナーで川口が空けたインから追い込んで1着。
 「久木原君のやりたいようにと思っていたし、理想の展開でした。ただ、川口君が車間を空けていたんで、(まくった)久木原君もうまくスピードが乗らなかったんじゃないかと。(川口は)脚があるから結構、もってくだろうと思ってました。(自分はあのコースを入って)傾斜を使えたんで楽でした」
 久木原のまくりを止めた川口公太朗は、岡にはすくわれはしたが小森を交わして2着に入った。
 「小森君はハナを切ったら誰も出させないっていう強気の走りだった。自分もそれに応えようと。でも、自分の技術不足ですね。内は来るかなと思ってたけど、戻り切れなかった。感じはだいぶいいと思います」


<3R>

近藤俊明選手
近藤俊明選手
 染谷幸喜にフタをしてから先頭に立った吉田智哉がペースを握るが、赤板の1センターから染谷が逆襲に出る。飯尾主税は付け切れず、染谷、近藤俊明(写真)の2車で叩き切る。インを進出した荻原尚人は5番手までで最終回。車間を詰める勢いで3番手からまくった吉田は不発。地元の近藤が、粘り込む染谷を差し切った。
 「(染谷は)どんな展開になっても主導権を取ってくれると思っていたので信頼していました。(前々回の)前橋で離れていたので、その時の教訓を生かして付け切れたと思う。調子も悪くないですね」
 持ち前の先行力で打鐘の3コーナー過ぎに吉田を叩いた染谷幸喜は、地元の近藤とのワンツーをメイクした。
 「1番車だったので、(別線の)どっちが前でも中団からって思っていました。切った上をなるべく早く叩こうと。(吉田に)フタをされたので、どれくらいやる気か見てから行く感じになりました。今回は中4日だったのでケアを中心にしてきました。普段、松戸で練習をしているので33バンクは問題ない」


<4R>

 6番手の鈴木陸来は、タイミングを取って赤板から踏み上げる。鈴木、小島歩で出切り、小林令が3番手に飛び付いて眞原健一はさばかれる。後方の野田源一は最終ホーム手前からのロングまくりで、逃げる鈴木に襲い掛かる。スピードの違いで前団を仕留めた野田が人気に応えた。
 「鈴木君の先行1車みたいなもんだから、(後ろから)切りにいって突っ張られちゃうとキツいかなっていうのがありました。前回の防府は7車立てで失敗してるんで、いったん動きのある状態にしてからと思ってました。自分の持ち味は地脚なんでちょっとでもピッチを上げて、あとは緩んだら行こうと。(まくりのタイミングは)自分のなかではドンピシャだったんですけど、スピードがそれほどなくてマズいパターンかなっていうのはありました」
 野田の踏み出しを離れながら追いかけた中村圭志は、2車身差でゴールに流れ込んだ。
 「(野田の)踏み出しが良くてキツかった。けど、(松本)大地さんが付いてるんで必死に踏みました。ゲンさん(野田)が踏むのはわかってたんですけど、ゲンさんが強かった。自分は着はまとまっているけど、いろいろ試していて、まだかみ合ってない」


<5R>

柏野智典選手
柏野智典選手
 後ろ攻めから上げた吉本卓仁が、青板バックで誘導を切って前に出る。そこを叩いて箱田優樹が赤板2コーナーから先行勝負。すんなり3番手に収まった吉本は、巻き返してくる菅原大也に合わせて最終ホームからまくる。2コーナーで先頭に立った吉本をゴール寸前で交わした柏野智典(写真)が1着を奪った。
 「ちょっとスタートがイメージと違ったので。(吉本)卓仁やりづらいかなって思ったんですけど、箱田君が押さえてきた時の反応と判断が良かったですね。自分も余裕はありました。今回からオールスターで一度だけ使ったフレームに換えたんですけど、大き目のフレームなのでレースが流れてくれれば楽ですね」
 ロングまくりで2着に粘って1番人気に応えた吉本卓仁もホッと一息。
 「自分がスタートで失敗してしまったので、もう自分で取り返すしかないと思っていました。後ろは点数上位の柏野さんでしたし、簡単に後手は踏めないなと。思ったよりも箱田君が踏んでくれたので良かったですね。久留米の落車でエース機が壊れて前回から新車に換えたんですけど、ゲンさん(野田源一)にみてもらいながらって感じです」


<6R>

佐藤友和選手
佐藤友和選手
 中団から先に切り来た角令央奈を掛水泰範が突っ張って、小原佑太にとっては仕掛けやすい流れに。赤板手前でスピードに乗せて出た小原が主導権を握り佐藤友和(写真)まで出切るが、掛水と鈴木誠で3番手はもつれる。そのまま小原が逃げて、鈴木に押し込まれた掛水は最終ホームで落車に見舞われる。アクシデントを避けて4番手で立て直した久米良が追い込むも、結果は佐藤が小原を交わして北日本ワンツー。
 「(鈴木)誠さんが失格で残念な結果になった。僕も余裕がなくて、後ろを確認はしたけどやっと(小原を)抜けました。(前回はそれまで)やっていたトレーニングが悪い方向に出てしまって、また考え直してやったトレーニングがいい方に出た。それでとりあえずひと安心です」
 2周以上を駆けた小原佑太は、久々の33バンクに戸惑いはあったものの、さすがのスピードを披露した。
 「(掛水が角を)まさか突っ張るとは。それでも慌てず逃げられたのは良かった。誠さんがからまれてしまったんで、自分が上バンクに上がらなければ(ラインの)3人で決まったのかなと。久々の33バンクだったんで、流すところとか踏むところを試行錯誤した。暑かったのも含めて、それを考えながらやれば、(2日目以降はもっと)いいパフォーマンスになるかなと」


<7R>

芦澤辰弘選手
芦澤辰弘選手
 後ろ攻めから上昇した渡邉一成は、中団の鶴良生に併せ込んだ後、赤板で前団を押さえる。主導権を握った渡邉はペース駆け。藤井將の中団まくり、鶴の後方まくりを不発に終わらせて直線へ。最後は芦澤辰弘(写真)が、余裕を持って差し切った。
 「(渡邉)一成さんが強かったですね。前を取れれば前からで、後ろからなら押さえて駆けるって感じだったので想定した展開になりました。あの形になればあとは自分がしっかりと仕事してって思っていました。(最終)2センターで後ろを確認しても来てなかった。自分は余裕はありましたね」
 渡邉一成は33走路を丸2周逃げて2着。
 「前か中団からしか考えていなかったので、後ろ攻めになったのはビックリ。顔見せから暑くてキツかったですね。鶴君が中団だったのでフタをしてから出れば、あとはタイミング次第で突っ張るか考えようと。普段やらない押さえ先行だったので、ペースがわからなくて前半に踏みすぎましたね。こんなにキツいのは久々ですね」


<8R>

 赤板1センターで出た北野良栄が様子を見るようにペースを落とすと、石塚輪太郎はそのタイミングを逃さず踏み込んで主導権を奪う。3番手の北野を離して、石塚がリズム良く風を切る。北野は空いた車間が詰まらず、山内卓也が最終バックから踏んで近畿勢を追いかけるが、勝負は近畿の2人。番手の渡辺十夢がゴール前で交わした。
 「(石塚は)力で強引に行ってくれた。自分はしんどかったけど、しっかり付いていけたし、最後は交わせた。正直、残り半周くらいまではしんどくて、余裕がなかった。(石塚とは)やっぱり相性がいいと思ってた通りでした」
 前回の向日町FIでは連勝で決勝に進出していた石塚輪太郎は、引き続き上々の動きを見せて2着に逃げ粘った。
 「細切れで33なんで、7、8番手にだけはならないように。あそこで構えちゃうと絶体絶命なんで、思い切って行った。最終バックくらいまでは踏めてたけど、4コーナーからはタレた。もうひと粘りですね。でも、前回の向日町で(3場所前の)岸和田からの新車が結構、いい感じになった。それでキッカケをつかんだ感じがあった」


<9R>

 水谷好宏の上昇を曽我圭介が誘導を切って突っ張る。いったん、8番手に戻った水谷は打鐘で一気に巻き返して主導権を奪う。ごちゃつく展開となりかけたが、中団に抜け出した阿部大樹はすぐに巻き返す。最終ホーム過ぎに水谷を叩き切った阿部には、内をすくって後位を取り切った藤田大輔、志村太賀で続く。そのまま直線に戻ってくると、ゴール前で中を割って志村が1着。
 「情けないレースをしてしまいました。自分の後ろが藤田君だったので入ってくるかなって意識はしていたけど…。当たってもこないし自分から当たれば遅れて(阿部)大樹に迷惑を掛けると思って…。難しかったですね。結果なんとかリカバリーはできたけど、内容的に納得できないですよね」
 休まずロングまくりに出た阿部大樹は2着に粘った。
 「今日(初日)はもう行けるタイミングから仕掛けようと思っていました。ちょっとちゅうちょしてしまったのが、最後タレてしまった原因ですね。後ろが藤田さんだとは気づかなかったです」


<10R>

長島大介選手
長島大介選手
 長島大介(写真)は青板のバック過ぎに東矢昇太を突っ張ってから、岡山コンビを受けて3番手をキープする。城戸俊潔が駆けるが、3番手の長島が打鐘の2センターからスパートする。力の違いで余裕をもって出切った長島は、ラインを上位独占に導くロングまくりで断然の人気に応えた。
 「作戦はなにも考えてなくて、バックを取る競走を心がけていた。(東矢に)あのスピードで押さえに来られたら、しっかり踏んでおかないと、仕掛けが遅くなっちゃうんで。レースの流れは全部見えてました。予選なんで(脚が)たまった位置から、しっかりと仕掛けようと思ってた。相手を考えずに自分のタイミングで行こうと。そういう風にやってかないと、上の方で戦った時に。そういうイメージを視野に入れていかないと」
 長島に付けた齋藤登志信は、半車輪まで詰めたところがゴール。長島をたたえて、こう振り返る。
 「(長島に)離れるか離れないかは俺次第だと。でも、そこまで苦しいっていうのはなかった。自分にある程度余裕があったのも、長島君がそういう走りをしてくれたからだと思います」


<11R>

 前受けした佐々木豪は、青板バックで押さえにきた坂本周輝を突っ張って主導権を渡さない。先に降りた新山将史らに迎え入れられた坂本が中団に入ると、今度は後方となった幸田望夢が赤板2コーナーから反撃に出る。好スピードで上がってきた幸田と佐々木で激しいモガき合いとなるが、最終1センターで幸田を振り切って佐々木が逃げまくる。坂本は内に詰まって動けず、愛媛勢ペースで終始し、番手の渡部哲男が有利に抜け出した。
 「佐々木君が1回突っ張ってくれて、ジャン前にはもうひとつのラインが来ると思っていました。けど、来なかったので、駆けてくれましたね。最近は気持ちの面が大きいと思いますけど、しっかりと戦って結果を出して自分に自信を取り戻していければと思っています」
 2着も別線を出させなかった佐々木豪で、愛媛ワンツーが決まった。
 「ギリギリのタイミングで来れば出させても良かったですけど、遅かったので突っ張りました。もう少しカンって(スピードを)上げても良かったかもしれないですけど、2周半自分のペースで踏み切れたので悪くないですね。前回、前々回とダメだったけど、今回はしっかりとやってこれたので。ワンツーが決まって良かったです」


<12R>

守澤太志選手
守澤太志選手
 8番手でタイミングをうかがっていた松井宏佑は、青板の3コーナーから踏み上げる。前受けから合わせて踏み込む深谷知広から松井が主導権を奪って飛ばす。6番手から清水裕友も仕掛けるが、3番手の深谷もペースを上げて松井に襲い掛かる。最終ホームで出切った深谷に、北日本勢が続く。1コーナーから眞杉匠がようやく踏み上げるが、先行策の深谷の掛かりがいい。番手の守澤太志(写真)が計ったように深谷を差して、96期の同期ワンツーで決着した。
 「(深谷は)しっかりとペースを上げて、本当に強いレースでした。めちゃめちゃ強いのは知っているし、やっぱり強かった。自分も付き切ってからも余裕があったんで悪くない」
 一度は松井に叩かれた深谷知広だったが、3番手から主導権を奪い返して2着に粘り込んだ。
 「自分のなかでは松井を合わせにいったんですけど、松井も強かった。しっかり踏み合って結果の位置だと思う。そこから仕掛けていけたんで、自力選手としてやるべきことはできたかなと」
 思惑が外れて後方に置かれた眞杉匠は、まくりで3着に届くも主導権を握れず二次予選から仕切り直し。
 「(周回中は)後ろ中団で(一番後ろのラインが)切ったところを叩いて先行しようと思ってた。そしたら流れで、ああなっちゃいました。今日(初日)は風を切ってないので(調子は)わからないけど、(2日目は)しっかりと主導権を取れるように」