『花月園メモリアルin小田原(GIII)レポート』 最終日編

配信日:6月9日
 小田原競輪場を舞台に開催された「花月園メモリアルin小田原(G3)」は9日に最終日を迎え、激戦を勝ち抜いた9選手によって決勝戦が行われた。レースは3車の長いラインを生かして守谷陽介が主導権。快調なペースで飛ばしたが、中団奪取の松谷秀幸のまくりが届いてG3初制覇。元ホームバンクの花月園メモリアルを制した。
決勝戦 レース経過
 号砲で田中誠がゆっくりと出て、目標の小川勇介を迎え入れる。隊列は小川-田中の福岡コンビが前受け、中団に守谷陽介-児玉広志-吉岡篤志の中四国勢、松谷秀幸-松坂英司の地元コンビが入り、佐藤朋也-布居寛幸が後攻めの形で落ち着く。
 残り3周の青板から佐藤が上昇を始めると、松谷はこのラインを追っていく。バック過ぎに誘導員を交わした佐藤を今度は松谷が斬って前に出る。赤板でさらに守谷が仕掛けて先行態勢に持ち込む。佐藤が打鐘前2コーナーからスパートするが、守谷がこれを突っ張って逃げる。守谷が快調に飛ばして、中団以降はもつれる。後退してきた佐藤をどかして四番手を確保した松谷はバックから力強くまくり上げる。好スピードで前団に迫ると、逃げ粘る守谷を直線で捕らえてG3初優勝を飾った。松谷を巧追した松坂が2着に流れ込み、地元ワンツー決着。最後まで粘り強く踏んだ守谷が3着に粘った。

松谷秀幸選手
松谷秀幸選手
 4月のF1シリーズでS級初優勝を飾った験(げん)のいい小田原バンク。松谷秀幸(写真)は気負うことなく、前に前に攻める自分のスタイルでG3初優勝をもぎ取った。
 「全部、地元なんですよ。チャレンジとA級の1、2班戦が川崎、それでS級がここで、G3もですからね。初優勝は全部、地元」
 高松宮記念杯(G1)を控えてSS班は不在。“持ってる”男が、地元でチャンスをモノにした。
 「今回は師匠(佐々木龍也)が欠場したんで、俺の分まで頑張ってこいって言われてきた。ただ、獲れるとは思ってなくて、獲るっていうより。いいレースをしようとした結果ですね」
 レースは赤板で先頭に立った松谷を守谷陽介が押さえて主導権。4番手に下げた松谷は小川勇介との中団争いを制すると、外に浮いた佐藤朋也が遅れた一瞬の隙を突いてまくりを敢行。
 「先行したラインの後ろと思っていました。(打鐘では)小川君に降りられそうになったけど、車輪が掛かっていたし。それからは外に佐藤さんがいて当たれなかったけど。空いたらすかさず出て行けた。自分で踏み上げていったからきつかった。(小川より)先に仕掛けないとって思っていた。(VTRを)見たら同時だったんで、よかったです」
 4度目の花月園メモリアルにして、地元勢が初の制覇。師匠の佐々木とともに汗を流した元ホームバンクのタイトルレースで、11月に行われる競輪祭(G1)の出場権を得た。
 「競輪祭ってどこでやるんですか? あッ、そういえばいつも小倉ですもんね(笑)。自分はコツコツちょっとずつなんで。ちょっとずつレースを覚えて、力をつけていきたい」
 ビッグレース未経験の松谷が、初々しさをのぞかせて満面の笑み。00年にヤクルトスワローズからドラフトで3位での指名を受けながら、プロ野球では怪我に泣かされ09年に輪界へ。苦労を重ねてた松谷にとってG3制覇は通過点だろう。

 2場所連続での落車で今シリーズを迎えた松坂英司は、松谷に喰らいつき地元ワンツー。シリーズの4日間で三度の松谷との決着に後輩の成長ぶりを実感する。
 「ひと皮むけた感じですよね、松谷君は。先行はもちろんだけど、これから自在でG1を獲ろうって気持ちだから。今日も小川君を入れないで、中団に戻ったらすかさずまくりに行った。あれなら行けるなって思いました。自分もこういう状態の中で、気持ちが引き締まったし。(ワンツーで)なによりです」

 佐藤のカマシを阻んだ守谷陽介が主導権。そのまま押し切るかに思われたが、ゴール寸前では地元両者に屈して3着。悔しそうな表情を見せながらも、岡山勢のあたたかい出迎えに頬は緩む。
 「勝負に勝ってレースに負けた感じですかね。出し惜しみしないようにと思っていたし。(三宅)伸さんが見てても、怒られないようにと。それに(途中欠場した)紀井孝之君の分までと思って走った。もうちょっと粘れる感じだったけど…」

 3連勝で臨んだ小川勇介だったが、松谷に合わされてシリーズ4度目のまくりは不発。
 「松谷さんのところをキメにいったけど、甘かったです。(松谷の)車輪がかかっていたんで。(脚を)ためずに中団、中団に行こうとした。収穫はそれだけです」


ゴール
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