『伊東競輪開設71周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:12月19日

 伊東競輪場で開催された開設71周年記念「椿賞争奪戦(GIII)」は、12月19日に最終日を終えた。決勝では見ごたえのまくり合戦を単騎の新田祐大が制して今年初優勝。昨年9月の青森記念以来、通算9回目のGIII制覇を遂げた。また、レインボーカップA級ファイナルは、磯島成介が1着。2着の道場晃規、3着の金ヶ江の3人がS級に特進を果たした。

決勝戦 レース経過

 大外枠ながら新田祐大が素早く飛び出して誘導員の後ろを占めた。寺崎浩平-村田雅一-椎木尾拓哉の近畿トリオが続き、その後ろは深谷知広-松坂洋平の南関勢。北津留翼-坂口晃輔が後ろ攻めとなり、単騎の長島大介が最後方。
 青板前の3コーナーから北津留-坂口、長島が踏み上げる。北津留が新田に並びかけると新田はすんなり4番手まで車を下げた。赤板前の3コーナーから寺崎率いる近畿トリオが上昇をはじめると、正攻法の北津留は誘導員を交わして突っ張る態勢を整える。両者で踏み合うも赤板過ぎに寺崎が前に出ると、村田は続いたが3番手の椎木尾は坂口に捌かれてしまい、寺崎-村田の後ろに北津留-坂口が入った。打鐘は寺崎-村田、北津留-坂口、椎木尾、長島、新田、深谷-松坂の一本棒で通過。最終ホームで北津留が仕掛けたが、寺崎に合わされてしまい2コーナーであっさり終了。今度は1センターからスパートしていた長島が前団に迫り、新田、深谷-松坂が続く。長島は2センターで寺崎を交わしたが、新田も2センターから踏み込んでいて、4コーナーを立ち直ったところで先頭に立つ。ゴール前は深谷が新田に鋭く迫ったが、新田は2分の1輪堪えて当所記念初Vを飾った。

新田祐大選手
新田祐大選手

 「今年はダメだなって、自分でもあきらめているところもあった。(優勝して)苦しいことだけじゃないんだって感じました」
 通算7度のGI制覇(4日制以上)。すでにグランドスラムに王手をかけている新田祐大(写真)だが、今年の初優勝に喜びを隠さずにこう口を開いた。今年は12年のロンドンに次いで、2度目の五輪を地元で8月に終えた。ケイリン、スプリトの2種目ともに不本意な結果だった。中ゼロの強行スケジュールでオールスターから復帰した新田は、優出を果たすも決勝は5着。その後も優勝には、なかなか結びつかなかった。
 「久々の優勝ってことで単純にうれしかった。本当だったら目指したところは、もっと上のところだった。もっと頑張らないとってあらためて感じました」
 延期された東京五輪に専念。今年はわずか4カ月足らずでグランプリ出場権を争わなければならないハンディもあり、通算8度目のグランプリ出場を逃した。しかしながら、グランプリチケットの勝負づけが済んだあとも、新田は松山記念、伊東記念と師走の輪界を盛り上げた。
 「今日(決勝は)そんなに上手なレースではなかった。ただ、この優勝っていうのは、来年以降プラスになる。自信をもって練習に取り組んで、レースでもガンガン攻めていけるようにしたい」
 単騎の決勝は、ナショナルチームのチームメイト寺崎浩平が主導権。打鐘では深谷知広を後方に置いて7番手のポジションだった。
 「深谷が(ラインが)2車だし、地元で勝ちたいっていう気持ちが誰よりもあったと思う。それで寺崎のレースになった。でも、そいういう風に考えていたんで対応もできた。(6番手で単騎の長島大介が)踏んでいって、深谷も同じタイミングで来るんじゃないかと。僕の動きで深谷が来づらくなるだろうし、自分にとっては有利な展開になった」
 最終ホーム手前で北津留翼が仕掛けるが不発。今度は長島が仕掛けると、続いた新田がその上をまくって、直線半ばからは強襲する深谷と2人の勝負になった。
 「ゴールした時はどっちが優勝したのか…、深谷かなって。一緒にオリンピックを目指してきたなかで、(深谷と)ゴール勝負ができたのはうれしい」
 先頭でゴールを駆け抜けて、長く凝縮された21年をしめくくった。
 「ナショナルチームと(S班の)赤パンツのプライドをここ何年かずっと背負ってきたけど、SSからは離れてしまう。(S班の)トップ9人から勝ち取るようなレースをしっかりと組み立てたい。明日、明後日からまたナショナルチームの練習が始まる。ヤンググランプリに出る寺崎、小原(佑太)、ガールズグランプリの小林優香がいるので、そのサポートをしながら、ナショナルチームから優勝が出てくれればいいと思います」
 来年の1月に36歳を迎える“年男”。精神的な支柱となり、ナショナルチームの後輩に自身の経験を伝えながら、来年はS班に返り咲く。

 8番手からのまくり追い込みだった深谷知広が2着。一撃にかけた地元記念の準Vに肩を落とした。
 「(新田と)2人でゴール勝負できたのは良かった。欲を言えば(ラインの)松坂(洋平)さんとワンツーでの(上位が)3人なら良かった。今回は動いて動いてギリギリの勝ち上がりだったんで、(決勝は)基本的に人の動きを見てからと。人任せと決めてたんで、結果2着だったんで失敗ですね」

 松坂洋平は、深谷のスピードに対応して3着に流れ込んだ。
 「もう(深谷に)お任せしていたし、ああいう形になってくれればと。(前が)どういう風になっているかわからなかった。深谷君の後輪だけを見ていた」





レインボーカップA級ファイナル

 前受けの阿部将大が、池野健太を突っ張る。3番手の磯島成介(写真)のところに降りた池野が赤板手前で落車。太田将成が巻き込まれる。主導権をキープした阿部が、そのままグングンと踏み上げて逃げる。金ヶ江勇気が続いて、3番手に磯島、4番手に小堺浩二でレースは流れる。最終ホームを通過して番手の金ヶ江が車間を空けると、7番手の道場晃規が2コーナー過ぎにまくりを打つ。詰める勢いで前に踏んだ金ヶ江が直線で先頭に立つ。が、その外を磯島が伸びて一発勝負を制し、初のS級をつかみ取った。

磯島成介選手
磯島成介選手

 「阿部さんが突っ張ったので、3番手を取ろうと。後ろの太田さんが落車したので、1着を取れるように走った。金ヶ江さんが車間を空けていて直線勝負だなと。3番手だったのでしっかりと見えていた。初めてのS級です。今日は自力を出していないが、逃げ、まくりを出せる選手になりたい。前回の小田原は全然だったけど、(前々回の)西武園とか、その前はS級で戦えるようにとやっていました」
 落車のアクシデントは避けた道場晃規だが、最後方の7番手に陥った。別線は誰も仕掛けないなかで、最終2コーナー過ぎからまくりを敢行して2着に届いた。地元で単騎の戦いを強いられながらS級特進を決めた。
 「スタートから前にいこうかと思ったけど、みんなが出た。前受けで阿部さんが突っ張るのかなっていうのもあった。でも、前々にいなかったことでアクシデントを避けられた。3着をひろえたけど、もう少し早く踏めば、勝ちにつながったかもしれない。これからの課題ですね」
 「今年で一番悔しいかもしれない」と、振り返ったのは3着の金ヶ江勇気。突っ張った阿部が主導権をキープして願ってもない展開だったが、後ろから2人に交わされて3着。
 「(番手で)余裕はあったんですけど、思ったよりも風がキツくて結構、(脚を)削られた。心の余裕がなかったですかね…、勉強になりました」



次回のグレードレースは、「佐世保競輪GIII 九十九島賞争奪戦」が12月23日~26日の4日間に渡り開催されます。
今開催S級S班からは和田健太郎、好調の新山響平や深谷知広の先行型が参戦する好メンバーが出場予定です。
また、開催最終日第9レースにはレインボーカップA級チャレンジファイナルが開催されます。特別昇班を懸けての一発勝負にも注目です。
12月14日時点の出場予定選手データを分析した、「佐世保競輪GIII 九十九島賞争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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