『豊橋競輪開設60周年記念(GIII)レポート』 最終日編
 
配信日:9月6日


 豊橋競輪場で開催された開場60周年記念「ちぎり賞争奪戦」も今日で最終日を迎えた。ライン3車となった中部勢の2段駆けで永井清史の優勝が磐石だと思われた決勝戦だったが、番手まくりの永井のさらに外を石丸寛之が豪快にまくり優勝をさらった。ファンも圧巻のスピードで中部作戦を捻じ伏せた。

決勝戦 レース経過
 号砲と同時に合志正臣が踏み上げて誘導後位へ。石丸寛之を受けて石丸―合志が前団。松本―岡部、桐山―遠澤と細切れで、高橋―永井―島野の地元中部軍が後攻めで周回が進む。
  赤板では誰も動かなかったが、打鐘前の2コーナーから高橋が一気のスパートで前団に襲い掛かり主導権奪取。石丸を斬った松本が四番手キープ、石丸が六番手、桐山は八番手で最終ホームを通過。最終二角から石丸が渾身のまくりを打つと、永井も合わせて番手まくり。三角入り口で永井に迫った石丸のスピードが優り、四角では永井を捕らえて直線へ。石丸後位から交わしにかかる合志を振り切った石丸が嬉しい今年記念初優勝。合志が食い下がり、四角外に持ち出した岡部が3着に強襲した。


石丸寛之選手
石丸寛之選手
 自身4度目の記念制覇を果たした石丸寛之。磐石の中部作戦を粉砕して引き揚げてきた姿にはもはや王者の風格が漂う。
  「今日はアップのローラーの時から、異常に感触が良く妙な確信めいた自信があったし、冷静にレースを見れる余裕もありました。オールスターに向けてかなり追い込んだ練習をしてきたし、疲れが残る中でこの結果を出せたことで、自分の調整方法に間違いがなかった事も実証できました」
  レースは赤板ホーム過ぎから上昇した高橋和也が打鐘前に発進。全開で風をきると番手の永井清史が最終二角から番手まくりを打ち抜け出す。誰もが永井の優勝を確信したが、その外を石丸寛之が圧巻のスピードで襲い掛かり豪快にまくりきった。
  「今日はスタートで前をとって、4番手なり6番手なり中団を取る作戦でした。うまく6番手が取れましたね。4番手に入った松本が動けばそれに乗っていくつもりだったけれど、松本も位置を取るのにかなり脚を使っていたみたいで、動く素振りがなかったので二角から先に仕掛けました。踏み出しの出も良かったし、警戒していた島野さんのブロックもしのげたので勝利を確信しましたね。これで、オールスターに弾みがつきました。せっかくファン投票でドリームに選んでもらったのに、今年はここまで重賞勝ちが無かったので、少し肩身が狭かったけれど、これで胸張って本番を迎えられます」

 誰もが一度は優勝を確信した永井清史だったが、もがき合いで石丸に屈すると、そのまま力尽き4着。初の記念タイトルはまたしても手元からすりぬけた。
  「高橋は良い感じで出切れたし、途中までは万全だったんですけれどね、僕も車間を切って出る準備をしていたけれど、高橋が徐々にタレてきて自然と車間が詰まってしまい、上手くスピードをつなげる事が出来なかった。番手から出た時点でスピードは中途半端。石丸さんをしのげるようなスピードではなかった。結果的にはもう少し早く番手から出ていれば結果は違ったのかも知れないですね。それにしてもこの結果は本当に悔しいですね」

 石丸を追走し、2着に流れ込んだ合志正臣は、引き揚げてくるなり石丸の強さに舌を巻く。
  「あれは抜けない、今の俺では抜けない。石丸さんの踏み出しの鋭さは半端じゃ無いですよ。シュボーンって感じで飛んでいった。3.92のギアとは思えないです。僕も必死に追ったけれど、一枚も二枚もギアが足りない感じでしたね。ただ、千切れるような感覚は無かったので、僕自身もかなり良い状態に戻ってきているのでしょう。それにしても抜きたかったな…」

 3着入線は連日鋭いタテ脚を見せていた岡部芳幸。検車場では淡々とレースを振り返る。
  「永井がもう少し石丸に合わせてくれれば僕にチャンスもあったけれど、石丸を踏みきらせてしまったからね。松本も位置を取るのに脚を使っていたし、展開が厳しかった。今日の競走で3着なら良くやった方ですよ」

 定石どおりの発進策を見せた高橋和也だが、永井の優勝をアシストする事はできず「最終ホームで別線に叩かれないように、全開で踏んだんですけどね…。結果的には僕のスピードが足らなかったという事です。勉強になったし、また一から出直しです」とガックリうなだれると、3番手を固めた島野浩司は「地元記念だから『チャンスがあれば』と思っていたけれど、前の二人があれだけ頑張ってくれた結果だから仕方ない。僕も余裕が無く、何の仕事も出来なかったですからね」と高橋と永井をねぎらった。

 中部後位と絶好の位置をとった松本一成だったが仕掛けを躊躇し7着。レース後は反省の弁が口から出てくる。  「上手く中団が取れたんですけどね…。その事でかえって欲が出てしまった。1Cで前が詰まって仕掛けるタイミングがあったけれど、永井の仕掛けを期待して動かなかったら石丸さんに行かれてしまった。人の動きを期待して自分で動かなかった事に後悔が残ります」


ゴール


ルーキーチャンピオン(11R) レース経過
 スタートで勢いよく飛び出した上原龍が正攻法に構え、関東スジで芦澤辰弘がマーク。山崎晃―重倉高史―坂口晃輔の中部トリオに村上直久が付け、単騎の才迫勇馬が続く。後方待機は緑川修平―山崎司の福島コンビで周回が進む。
  赤板では山崎晃が後ろの出方を警戒しながら、打鐘前には山崎晃が上原を叩いて主導権奪取。ほとんど流さず逃げまくる。単騎の才迫が坂口のアウトまで追い上げたが、坂口にキメられ後退する。最終2コーナーから重倉が番手まくりを敢行、以下坂口―村上―上原―芦澤で3コーナーに入る。2センターで各車外に膨れ気味になったところを、芦澤が鋭くインを突いて伸びてくる。番手まくりの山崎晃を坂口が捕らえるかに、内からゴール前で外に持ち出した芦澤が鋭く伸び切り、ルーキーチャンピオンの座に輝いた。

芦澤辰弘選手
芦澤辰弘選手

 若手の登竜門・ルーキーチャンピオンレース「若鷲賞」が95回生の精鋭9名によって争われた。
  激戦を制したのは芦澤辰弘。レースは予想どおり中部勢による二段駆けの展開となり、重倉高史と坂口晃輔のマッチレースかと思われた。しかし、芦澤が後方から内を鋭く伸び、直線で目の覚めるようなスピードを見せて優勝をさらった。
  「控え室で先輩から『自力型の多いレースでは内が空くから意識しとけ』と言われたんで、体が自然に動きました。今日は上原さんが中団を取って、行ける所まで行ってくれると信じていました。仕掛けが遅かった分、最後に内が空きましたね。自分の憧れは渡邉晴智さんや、合志正臣さんのようなキレのある選手。今回は緊張して話しかけられなかったけど、二人の先輩を将来の目標に頑張っていきたい。でも、A級1,2班戦で思うように勝てていないし、自分は21歳で未熟なので、まだまだ自力で頑張っていきたいと思います。ヘルニアで苦しんでいる兄(大輔)に良い報告ができるので良かったです」

 2着は坂口晃輔。重倉追走から差し脚を伸ばし優勝が見えたが、ゴール寸前で夢と消えた。
  「才迫君が飛んできたのが分かったけど、(山崎)晃さんが合わせ切ったんでこれはいけると。村上さんも内をすくってくるタイプではないし、重倉さんがスピードに乗ったんで前で決まったと思った。あとは重倉さんとの一騎打ちだと思ってたんだけどね。村上さんが外を踏んだ分、内が空きましたね。せっかく晃さんが駆けてくれたのに…。獲りたかった。次に一緒になったときは晃さんに借りを返さないといけないね」
 
  重倉高史は実力のなさを痛感。レース後、ガックリと肩を落とす。
  「作戦通りにいったけどダメでした。山崎(晃)は全開で行ってくれたけど、ホームが向かい風で休む所がなかった。脚は一杯だったし、直線で踏み直す余力は残っていなかった。まだまだ力がないし、道中のペダリングが課題。帰って練習しろってことですね」

  村上直久も思いのほか車が伸びず4着。流れ込みが精一杯だった。
  「いけるかと思ったんですけどね。後ろに付いていただけで終わってしまったし、前を一車も抜けていないのは重症ですね。とにかく情けない」と悔やむ。

 上原龍は仕掛けをためらったことを敗因に挙げた。
  「スピード的にいけると思ったんですけどね。村上さんが怖くて前を見てしまった。村上さんが仕掛けるのを待ってからと思ったのが間違っていましたね。2センターで外にあおりを喰ってしまったし、村上さんの位置に自分がいれば面白かったかも」

 福島コンビは後方不発に終わり凡走。緑川修平は勝ちにこだわったことが裏目に出た。
  「後ろ攻めは作戦通り。中部勢が逃げて、上原さんがそれに付いていって、上原さんが動いたところに乗って行こうと思っていた。結果にこだわり過ぎたことで小さいレースをしてしまった。ホームで緩んだし、あそこで行くべきでしたね。自分の弱さが競走に出てしまった」

  山崎司も脚を使わずに終わってしまった。
  「最終ホームで緩んだんで行って欲しかったですね。前を任せた結果だから仕方ないけど、全く力を出し切れずに終わってしまった。何をしにきたんだろうって感じです」
 

ルーキーチャンピオンゴール




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